不二製油 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

不二製油 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4事業を展開するBtoB食品素材メーカーです。2025年3月期は、価格改定や販売数量増により増収となりましたが、カカオ豆相場の急騰や構造改革費用の影響等により、最終損益は赤字となりました。


※本記事は、不二製油株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 不二製油ってどんな会社?


植物性油脂や業務用チョコレートなどを展開する食品素材メーカーです。植物性素材の可能性を追求しています。

(1) 会社概要


1950年に伊藤忠商事の全額出資により設立され、1961年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、1978年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たします。2015年には持株会社体制へ移行し、不二製油グループ本社へ商号変更しましたが、2025年4月に完全子会社の不二製油を吸収合併し、事業持株会社として現在の商号となりました。また、2019年には米国の業務用チョコレート会社Blommer Chocolate Companyを買収しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結5,654名、単体131名です。筆頭株主は伊藤忠商事のグループ会社である伊藤忠フードインベストメントで、第2位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
伊藤忠フードインベストメント合同会社 42.59%
日本カストディ銀行(信託口) 9.44%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は大森達司氏です。社外取締役比率は63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
大森 達司 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) 1983年入社。執行役員、不二製油代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
田中 寛之 取締役上席執行役員最高執行責任者(COO) 1990年伊藤忠商事入社。同社食糧部門長代行等を経て2022年不二製油グループ本社入社。2025年4月より現職。
前田 淳 取締役上席執行役員最高財務責任者(CFO) 1990年入社。FUJI EUROPE AFRICA B.V.社長等を経て、2023年7月より現職。
戸川 雄介 取締役常勤監査等委員 1986年入社。不二製油経営企画部門長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、梅原俊志(元日東電工代表取締役専務執行役員)、辻智子(元ファンケル取締役執行役員)、中川理惠(元ミスミグループ本社代表執行役員)、立川義大(伊藤忠商事執行役員)、十河哲也(元NTN執行役CFO)、池田裕彦(大江橋法律事務所パートナー)、谷保廣(公認会計士谷会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「植物性油脂」「業務用チョコレート」「乳化・発酵素材」「大豆加工素材」および「その他」事業を展開しています。

(1) 植物性油脂


パーム油やパーム核油などの植物性油脂を主原料とした食用加工油脂、食用油、チョコレート用油脂などを提供しています。主な顧客は食品メーカーなどです。

顧客への製品販売により収益を得ています。運営は主に不二製油、FUJI OIL (SINGAPORE) PTE. LTD.、FUJI VEGETABLE OIL, INC.などが行っています。

(2) 業務用チョコレート


パンや菓子などに使用される業務用チョコレート製品を提供しています。高い機能性とおいしさを兼ね備えた製品を展開しており、食品メーカーやベーカリーなどが主な顧客です。

顧客への製品販売により収益を得ています。運営は主に不二製油、Blommer Chocolate Company, LLC、HARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAなどが行っています。

(3) 乳化・発酵素材


クリーム、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材、豆乳加工品などを提供しています。製菓・製パン・調理用途として、食品メーカーや外食産業などに利用されています。

顧客への製品販売により収益を得ています。運営は主に不二製油、フジサニーフーズ、WOODLANDS SUNNY FOODS PTE. LTD.などが行っています。

(4) 大豆加工素材


大豆たん白素材、大豆たん白食品、水溶性大豆多糖類などを提供しています。大豆の栄養と機能性を活かした製品として、食品メーカーなどに販売されています。

顧客への製品販売により収益を得ています。運営は主に不二製油、フジフレッシュフーズ、天津不二蛋白有限公司などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2025年3月期は大幅な増収となりました。一方、利益面では変動が見られ、2025年3月期は売上高の増加にもかかわらず、利益率が低下し、当期純損失を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,648億円 4,338億円 5,574億円 5,641億円 6,712億円
経常利益 176億円 144億円 97億円 168億円 53億円
利益率(%) 4.8% 3.3% 1.7% 3.0% 0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 30億円 25億円 17億円 -52億円 -297億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約19%増加しましたが、売上総利益率はやや低下しました。売上原価の増加等が利益率を圧迫し、営業利益率は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,641億円 6,712億円
売上総利益 829億円 792億円
売上総利益率(%) 14.7% 11.8%
営業利益 182億円 99億円
営業利益率(%) 3.2% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、発送費が183億円(構成比26%)、従業員給与及び諸手当が160億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントで前期比増収となりました。特に業務用チョコレート事業は売上が大きく伸長しましたが、利益面ではカカオ豆価格高騰の影響を受けました。植物性油脂事業は増収増益となり、全体の業績を下支えしました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
植物性油脂 1,854億円 2,073億円
業務用チョコレート 2,534億円 3,347億円
乳化・発酵素材 899億円 942億円
大豆加工素材 355億円 351億円
連結(合計) 5,641億円 6,712億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、円滑な事業活動に必要十分な流動性の確保と財務健全性の向上を基本方針としています。

当連結会計年度は、運転資本の増加等により、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に減少しました。また、業務用チョコレート事業における設備投資の増加等により、投資活動によるキャッシュ・フローの支出が増加しました。一方で、短期借入金の増加等により、財務活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 482億円 -506億円
投資CF 88億円 -217億円
財務CF -500億円 1,149億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「不二製油グループ憲法」のミッションとして「私たち不二製油グループは、食の素材の可能性を追求し、食の歓びと健康に貢献します。」を掲げています。また、ビジョンとして「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」を目指す姿として定めています。

(2) 企業文化


同社グループは創業以来、「植物性素材」にこだわり、「挑戦と革新」の精神のもとで事業を展開してきました。グループ社員全員が共有すべき価値観(バリュー)と行動原則(プリンシプル)を「不二製油グループ憲法」に明文化し、これを判断・行動の拠り所としています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Reborn 2024」では、2024年度を最終年度とする数値目標を設定していましたが、カカオ豆相場の急騰等の影響により未達となりました。今後は2030年までのロードマップに基づき、新しい価値を生み出せる企業グループへの変革を目指します。

* 連結営業利益:235億円(目標)に対し実績99億円
* ROE:8.0%(目標)に対し実績1.0%
* FUJI ROIC:5.0%(目標)に対し実績1.6%

(4) 成長戦略と重点施策


今後は、事業軸での経営資源の一元管理と最適配分を強化するため、事業持株会社制へ移行しました。カカオ豆等の原料価格変動への対応として、チョコレート用油脂の供給体制強化や、高品質なコンパウンドチョコレートの拡販を進めます。また、収益性が悪化した米国Blommer社の構造改革を実行するとともに、環境・人権に配慮したサステナブル調達を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「Reborn 2024」において「人材活用」をテーマに掲げ、「グローバル経営を支える人材の確保・育成・適正配置」「DE&Iの推進」「コミュニケーションの強化」の3つの方針のもと取り組んでいます。特に日本においては、キャリア自律支援施策の拡充や社内公募制度、副業制度などを通じ、従業員の自律的な成長を促しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.4歳 15.0年 9,951,890円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 25.5%
男性労働者の育児休業取得率 33.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 70.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 74.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -%


※非正規雇用の賃金差異については、対象者がいない等の理由により記載がありません。

また、同社は「サステナブル調達」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、パーム油TTP比率(95%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) パーム油・カカオ豆等の主要原料相場の変動


同社グループの製品コストの大部分は原材料費が占めており、主要原料であるパーム油やカカオ豆等の国際市場価格の変動は業績に大きな影響を与えます。特にカカオ豆価格の高騰は、同社グループの調達コスト増加や製品需要への影響を通じて、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 米国Blommer社の収益性悪化


米国子会社Blommer社は、気候変動によるカカオ豆の不作と相場急騰の影響を強く受け、収益性が悪化しています。構造改革による固定費削減や生産性向上に取り組んでいますが、これらの施策が計画通りに進捗しない場合や、カカオ豆価格の高騰が長期化した場合、同社の業績回復が遅れ、グループ全体の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) サステナビリティ課題への対応


環境や人権に関する国際的な規制強化やステークホルダーからの要請が高まっています。特に欧州の森林破壊防止規則(EU-DR)への対応など、サプライチェーン全体でのサステナビリティ確保が求められています。これらの対応に遅れが生じた場合、社会的信用の失墜や取引停止などのリスクが生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。