※本記事は、不二製油株式会社の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 不二製油ってどんな会社?
植物性素材を活用した油脂や業務用チョコレート等の食品素材をグローバルに製造販売する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1950年に設立されました。1955年に日本初のハードバターの製造を開始し、1967年には大豆たん白事業へと進出しました。1978年に東京証券取引所市場第一部へ上場を果たし、グローバル展開を加速させています。2025年には完全子会社を吸収合併し、事業持株会社体制へ移行しました。
現在の従業員数は連結で5,891名、単体で1,550名です。大株主については、筆頭株主が事業会社である伊藤忠フードインベストメントとなっており、第2位および第3位には資産管理業務等を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠フードインベストメント | 42.52% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.97% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長最高経営責任者(CEO)は大森達司氏が務めています。社外取締役比率は63.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大森達司 | 代表取締役社長最高経営責任者(CEO) | 1983年に同社入社。事業本部乳化・発酵事業部長、最高業務執行責任者(COO)などを経て、旧不二製油の代表取締役社長を歴任。2025年より現職。 |
| 田中寛之 | 取締役上席執行役員最高執行責任者(COO) | 1990年に伊藤忠商事へ入社し、食糧部門長代行等を歴任。2022年に同社へ入社し、最高経営戦略責任者や取締役に就任。2025年より現職。 |
| 前田淳 | 取締役上席執行役員最高財務責任者(CFO) | 1990年に同社入社。経営企画グループリーダーや海外子会社の社長等を歴任。2023年に最高財務責任者に就任し、2024年より現職。 |
| 戸川雄介 | 取締役常勤監査等委員 | 1986年に同社入社。乳化・発酵食品部門統括室長、旧不二製油の経営管理部長や経営企画部門長等を歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、梅原俊志氏(元日東電工代表取締役専務執行役員)、辻智子氏(元ファンケル取締役執行役員)、中川理惠氏(元ミスミグループ本社代表執行役員)、立川義大氏(伊藤忠商事食糧部門長)、十河哲也氏(元NTN執行役CFO)、池田裕彦氏(大江橋法律事務所パートナー)、谷保廣氏(公認会計士谷会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「植物性油脂」「業務用チョコレート」「乳化・発酵素材」「大豆加工素材」の報告セグメントで事業を展開しています。
■植物性油脂
パーム油やパーム核油等を基礎原料とした食用加工油脂、食用油、チョコレート用油脂などの製造販売を行っており、食品メーカー等に提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。同社をはじめ、FUJI VEGETABLE OILやPROVENCE HUILESなど、各地域の子会社が運営を行っています。
■業務用チョコレート
チョコレート、コンパウンド、ココア製品などの製造販売を行っており、製菓メーカーやベーカリーなどに提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に同社や、Blommer Chocolate Company、HARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOSなどが担っています。
■乳化・発酵素材
クリーム、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材、豆乳加工品などの製造販売を行い、製菓・製パン・調理用途の素材として顧客に提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は同社のほか、フジサニーフーズやオーム乳業などの子会社が行っています。
■大豆加工素材
大豆たん白素材、大豆たん白食品、水溶性大豆多糖類などの製造販売を行い、食肉加工や総菜加工メーカー等に提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は同社やフジサニーフーズ、天津不二蛋白などのグループ会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益および税引前利益ともに、直近の2期間で堅調な成長を示しています。主要原材料価格の上昇に伴う販売価格の改定や、海外事業における費用削減などが寄与し、大幅な増益を達成しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 6,712億円 | 7,723億円 |
| 税引前利益 | 69億円 | 234億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 39億円 | 111億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあり、収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,712億円 | 7,723億円 |
| 売上総利益 | 816億円 | 1,109億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.2% | 14.4% |
| 営業利益 | 115億円 | 298億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が58億円(構成比7.5%)、製品発送費が56億円(同7.2%)、従業員給料及び手当が35億円(同4.5%)を占めています。また、売上原価においては、材料費及び商品等払出原価が5,592億円(構成比84.6%)、従業員給付費用が564億円(同8.5%)となっています。
■(3) セグメント収益
植物性油脂セグメントは販売価格の改定やチョコレート用油脂の好調な販売により、増収増益を牽引しました。業務用チョコレートセグメントは、前期間の赤字から黒字転換を果たしており、収益の改善が進んでいます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 植物性油脂 | 2,348億円 | 3,044億円 | 268億円 | 334億円 | 11.0% |
| 業務用チョコレート | 3,386億円 | 3,752億円 | -142億円 | 24億円 | 0.6% |
| 乳化・発酵素材 | 998億円 | 1,045億円 | 17億円 | 11億円 | 1.1% |
| 大豆加工素材 | 351億円 | 329億円 | -8億円 | -9億円 | -2.7% |
| 調整額 | -372億円 | -448億円 | -2億円 | -0億円 | - |
| 連結(合計) | 6,712億円 | 7,723億円 | 133億円 | 360億円 | 4.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.8%となっており、いずれも市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -488億円 | 548億円 |
| 投資CF | -218億円 | -468億円 |
| 財務CF | 1,132億円 | -386億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「不二製油グループ憲法」において、ミッション「私たち不二製油グループは、食の素材の可能性を追求し、食の歓びと健康に貢献します。」を掲げています。また、ビジョンとして「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」を設定し、持続的な成長と社会課題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
創業の精神である「挑戦と革新」を重視しています。顧客の課題や困りごとに共に挑み、同社グループの技術力を活かした解決策を提案する課題解決型ビジネスの姿勢が根付いています。また、従業員全員がバリュー(価値観)を共有し、プリンシプル(行動原則)を実践することで、すべてのステークホルダーへの貢献を追求する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度を対象とする中期経営計画「United for Growth 2027」において、事業持株会社体制の下でガバナンス強化と資本効率の改善を推進しています。最終年度となる2027年度に向けた主な数値目標は以下の通りです。
* 事業利益:450億円
* ROE:10.0%以上
* FUJI ROIC(投下資本利益率):6.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な企業価値向上のため、植物性油脂や業務用チョコレート等の成長領域における収益力の安定化と競争力強化に注力しています。また、原料調達のサステナビリティ対応やトレーサビリティの確保を進め、価格競争に依存しない高付加価値製品へのシフトを推進しています。さらに、新たな市場を開拓する挑戦領域の育成にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Hataraki-Gai(働きがい)」をグループ共通の概念とし、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。グローバルな事業展開を支えるため、事業戦略と連動したキーパーソンの最適配置や計画的な育成を行うとともに、経営人材のサクセッションプランを実行し、組織の持続的な成長とイノベーションの創出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 16.0年 | 8,332,205円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 16.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 89.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 75.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 76.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 57.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) カカオ相場高騰による業績影響
業務用チョコレート事業等において、主要原料であるカカオ豆の価格高騰や供給不足が継続した場合、調達コストの増加や販売数量の減少を招く恐れがあります。これに対して同社グループは、カカオ原料に依存しないコンパウンドチョコレートの拡販や適正在庫の管理により、リスクの低減に努めています。
■(2) 原材料の調達リスク
パーム油や大豆など、特定の農産物原料に依存しているため、気候変動や自然災害、地政学的な要因による供給不安や価格のボラティリティリスクが存在します。同社グループは、多様な原料を活用した油脂加工技術の強化や、サプライチェーン全体での安定供給体制の構築により、影響の緩和を図っています。
■(3) バリューチェーン上の人権・環境リスク
事業活動において、主原料の生産地である農園や周辺コミュニティにおける人権問題、および自然環境への負荷が懸念されます。これらの問題への対応が不十分な場合、社会的信用の失墜や取引停止につながるリスクがあります。同社グループは、サステナブル調達やデュー・ディリジェンスを推進し、リスクの防止と軽減に取り組んでいます。



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