※本記事は、かどや製油株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. かどや製油ってどんな会社?
同社は、ごま油や食品ごまの製造・販売を主力事業として展開し、高いブランド力を持つ企業です。
■(1) 会社概要
1858年に香川県小豆島で創業し、ごま油の製造販売を開始しました。1957年に加登屋製油として設立され、1976年にかどや製油へ商号を変更しています。2004年にジャスダックに上場し、2013年には東京証券取引所市場第一部への上場を果たしました。2017年にはカタギ食品を子会社化しています。
現在の従業員数は連結で530名、単体で407名です。筆頭株主は総合商社であり製品の販売代理店を務める三菱商事で、第2位も原材料の仕入や販売代理店を務める三井物産となっています。第3位の小澤物産は補助材料の仕入先であり、強固な取引関係を持つ企業が上位株主を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 26.88% |
| 三井物産 | 21.91% |
| 小澤物産 | 11.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は北川淳一が務めており、社外取締役の比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北川淳一 | 代表取締役社長 | 1994年三菱商事入社。Sesaco Corporation社長、UCC Europe副社長などを経て、2024年にかどや製油へ出向。2025年より現職。 |
| 久米敦司 | 代表取締役会長 | 1978年三井物産入社。欧州三井物産社長などを歴任後、2018年にかどや製油へ入社し、2019年に代表取締役社長へ就任。2025年より現職。 |
| 長澤昇 | 取締役副社長執行役員海外販売本部長 | 1987年三井物産入社。米国三井物産副社長などを経て2020年に同社へ出向。海外事業本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 井尻尚宏 | 取締役専務執行役員生産本部長 | 1984年同社入社。研究開発部副部長、油脂部長などを経て2014年に取締役就任。事業開発プロジェクト室長などを歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、齋藤聖美(元ジェイ・ボンド東短証券代表取締役社長)、大西賢(元日本航空代表取締役社長)、竹田真(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ごま油事業」「食品ごま事業」および「その他」を展開しています。
■ごま油事業
主に家庭用および業務用の純正ごま油や調合ごま油、ならびにごま油の副生成物である脱脂ごまなどの製造および販売を行っています。国内外の多様なニーズに応える製品を展開しています。
収益源は、一般消費者や加工ユーザー、外食産業などに対する製品の販売代金です。同事業の運営は主にかどや製油が行っており、販売にあたっては総合商社などの販売代理店を通じて流通させています。
■食品ごま事業
主に家庭用および業務用のいりごま、すりごま、ねりごまなどの製造および販売を行っています。加工ユーザー向けを中心に高付加価値商品の提案などを進めています。
収益源は、小売店や外食産業、食品メーカー等に対する各種食品ごまの販売代金です。同事業の運営は、主にかどや製油および連結子会社のカタギ食品が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、仕入商品の販売などを行っています。
収益源は、仕入れた商品の販売代金です。同事業の運営は主にかどや製油が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が継続的に拡大しており安定した成長を見せています。利益面では原材料価格やエネルギーコストの上昇の影響を受けた時期もありましたが、製品の適正価格の実現や原価改善効果により、直近の経常利益および当期利益は増加傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 337億円 | 357億円 | 395億円 | 400億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 32億円 | 34億円 | 34億円 | 41億円 |
| 利益率(%) | 12.3% | 9.6% | 9.6% | 8.6% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 22億円 | 23億円 | 24億円 | 27億円 |
■(2) 損益計算書
直近2年間の損益状況を見ると、販売数量の増加と製品単価あたりの収益性改善により、売上総利益および営業利益がともに増加しています。コストコントロールが機能し、高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 395億円 | 400億円 |
| 売上総利益 | 101億円 | 113億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 28.3% |
| 営業利益 | 32億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 9.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管料が17億円(構成比22%)、給料及び手当が14億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のごま油セグメントは、国内外での底堅い需要と適正な価格設定により売上を牽引しています。食品ごまセグメントも高付加価値商品の販売拡大により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ごま油 | 311億円 | 314億円 |
| 食品ごま | 83億円 | 86億円 |
| その他 | 1.0億円 | 0.2億円 |
| 連結(合計) | 395億円 | 400億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 57億円 |
| 投資CF | -3億円 | -7億円 |
| 財務CF | -9億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.1%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、パーパス(社会的存在意義)として「ごまの価値を極限まで高めることで世界に貢献する」を掲げています。また、ビジョンとして「ごまを通じて社会課題の解決に取り組み、社員と会社の両方が持続的に成長する」ことを目指し、ステークホルダーへの価値提供と企業価値の向上を推進しています。
■(2) 企業文化
行動指針となるバリューとして「ごまのパイオニアであり続ける」「お客様第一主義」「誠実・公平・偽りなく行動」「差別なく、異なる考え方・文化・社会に敬意を払い続ける」「自ら挑み、常に変化を生む」を定めています。これらに基づき、熱心な顧客を基盤とする「ファンベース経営」を実践し、持続的な成長を図る文化を重んじています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2028年度を最終年度とする中期経営計画を策定しています。いかなる経営環境下でも「ごま製品の安定供給」という社会的責任を果たしつつ、継続的に利益を確保できる経営体質の確立を目指しており、資本効率性指標である「ROE」を重要指標として掲げています。
* ROE:中長期的に8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
顧客の声を起点とした新商品やチャネルの開発、脱脂ごまに含まれるタンパク質を活用した新たな収益の柱の創造に取り組んでいます。また、ブランド力を活かした米国市場における更なる成長や、DX推進による生産効率化の追求、サプライチェーン上の社会課題解決、経営基盤の強化を重点施策として実行しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上のためには人的資本が重要課題であるとの認識のもと、組織・人事施策全体を整理し、人材育成への投資を強化しています。社員一人ひとりが会社の方針と方向をそろえ、成果だけでなく挑戦のプロセスや主体的な行動を評価する人事制度を導入し、能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.4歳 | 15.5年 | 7,655,372円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 52.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学・通商環境等に関するリスク
使用するごま種子は海外依存度が高く、主要生産国の地政学的要因や輸出入規制により、原料価格の変動や調達の安定性に影響が生じる可能性があります。また、包装資材や物流コストの上昇、海外市場の関税措置などが業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 品質と安全に関するリスク
提供する製品の品質維持のため、国際規格の取得や自己点検、外部監査等の安全管理を推進しています。しかし、予見不可能な要因により品質・安全に関わる問題が発生した場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法律等の諸規制・コンプライアンスに関するリスク
食品製造業に関わる特有の法律のほか、国内外の様々な法令・規制の適用を受けています。法令遵守の体制強化に努めていますが、解釈の相違や予期せぬ法令違反が生じた場合、制裁金や事業活動の制限等が発生するリスクがあります。
■(4) 関連当事者との取引に係る独立性に関するリスク
総合商社等との間に主要な取引関係があります。公正な取引条件で独立性を担保しているものの、取引関係が解消した場合などには、直ちに代替の企業を見つけることが困難となり、事業に影響を与える可能性があります。



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