※本記事は、かどや製油株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. かどや製油ってどんな会社?
ごま油および食品ごま製品の製造・販売を行う老舗食品メーカーであり、ごまの価値を追求し続ける企業です。
■(1) 会社概要
1858年に小豆島で創業し、1957年に加登屋製油として設立されました。1961年には小豆島に新工場を竣工し、生産体制を強化。1976年に現社名であるかどや製油へ商号変更しました。2017年にはカタギ食品を子会社化して事業領域を拡大し、2024年には袖ケ浦工場に研究開発機能を集約するなど、技術力の向上にも注力しています。
同社グループ(連結)の従業員数は545名、単体では418名です。大株主の構成は、筆頭株主が総合商社の三菱商事で、第2位も同じく総合商社の三井物産、第3位は流体搬送機器等の販売を行う事業会社となっています。商社との強固な関係性がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 26.88% |
| 三井物産 | 21.91% |
| 小澤物産 | 11.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.6%です。代表取締役社長は北川淳一氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 北川 淳一 | 代表取締役社長 | 三菱商事にて油脂部、Olam事業部長、グローバル消費財部長などを歴任。2024年4月にかどや製油に入社し、執行役員経営企画部長を経て、2025年4月より現職。 |
| 久米 敦司 | 代表取締役会長 | 三井物産にて専務執行役員欧州・中東・アフリカ本部長などを歴任。2018年4月にかどや製油に入社し、代表取締役社長を経て、2025年4月より現職。 |
| 井尻 尚宏 | 取締役専務執行役員生産本部長 | 1984年に入社。研究部長、生産企画部長などを歴任。2021年に取締役常務執行役員生産本部長となり、2025年4月より現職。 |
| 長澤 昇 | 取締役専務執行役員海外事業本部長 | 三井物産にて米国三井物産副社長などを歴任。2020年に入社し海外事業本部長、経営企画部長を経て、2025年4月より現職。 |
| 中山 裕章 | 取締役 | 三菱商事にて生活原料本部長などを歴任。2020年に入社し国内事業本部長などを務め、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、齋藤聖美(元ジェイ・ボンド東短証券代表取締役社長)、大西賢(元日本航空会長)、竹田真(弁護士・東京芝法律事務所)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ごま油事業」「食品ごま事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ごま油事業
家庭用および業務用の「ごま油」や、ごま油製造の副産物である「脱脂ごま」等の製造・販売を行っています。小豆島工場や袖ケ浦工場で製造される高品質なごま油は、家庭の食卓から外食産業まで幅広く利用されています。
収益は、主にスーパーマーケットや食品加工メーカー、外食チェーン等への製品販売による代金です。運営は主にかどや製油が行っています。
■(2) 食品ごま事業
家庭用および業務用の「いりごま」「すりごま」「ねりごま」等の製造・販売を行っています。ごま本来の風味を活かした多様な製品ラインナップを展開し、加工食品の原料としても供給しています。
収益は、製品の販売代金です。運営は、かどや製油および連結子会社のカタギ食品が行っており、グループ全体で市場ニーズに対応しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、仕入商品の販売などを行っています。
収益は、商品の販売代金です。運営は主にかどや製油が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、300億円台前半から直近では390億円台まで拡大しています。経常利益は30億円台で安定的に推移しており、利益率は8〜12%台を維持しています。当期純利益も20億円台前半で安定しており、堅実な成長トレンドにあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 314億円 | 322億円 | 337億円 | 357億円 | 395億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 40億円 | 32億円 | 34億円 | 34億円 |
| 利益率 | 10.0% | 12.3% | 9.6% | 9.6% | 8.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 28億円 | 22億円 | 23億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は約38億円の増収となりました。売上総利益も増加しましたが、売上総利益率は若干低下しています。営業利益は微増しており、コスト増の環境下でも利益を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 395億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 101億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.4% | 25.7% |
| 営業利益 | 31億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 8.7% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管料が16億円(構成比23%)、給料及び手当が14億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ごま油事業は、国内家庭用や業務用、北米向けの販売が好調で増収となり、利益も増加しました。食品ごま事業は、価格改定やねりごまの販売好調により増収となりましたが、原材料価格の上昇等が影響し、利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ごま油 | 276億円 | 311億円 | 28億円 | 29億円 | 9.2% |
| 食品ごま | 79億円 | 83億円 | 3億円 | 2億円 | 2.9% |
| その他 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 54.5% |
| 調整額 | - | - | 1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 357億円 | 395億円 | 31億円 | 32億円 | 8.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
かどや製油グループは、原則として営業活動で得た自己資金で資金需要を賄う方針です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前利益や減価償却費の増加があったものの、法人税等の支払い、棚卸資産や売上債権の増加により、前期から収入が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、工場設備投資等による有形固定資産の取得支出が主な要因でした。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いが主な支出要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 30億円 | 4億円 |
| 投資CF | -2億円 | -3億円 |
| 財務CF | -9億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様に常に感謝の心を持ち、安心・安全かつ価値あるごま製品を提供することで、健康でより豊かな食生活に貢献する。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、ステークホルダーの期待に応えられる企業を目指し、ごま製品の安定供給という社会的責任を果たしていく方針です。
■(2) 企業文化
同社は、「ごまのパイオニアであり続ける」「お客様第一主義」「誠実・公平・偽りなく行動」「差別なく、異なる考え方・文化・社会に敬意を払い続ける」「自ら挑み、常に変化を生む」という5つのバリュー(大切にする価値観)を定めています。これらに基づき、ファンを基盤として中長期的に企業価値を向上させる「ファンベース経営」を実践する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年度を最終年度とする中期経営計画を推進しており、資本効率性指標である「ROE」を重要指標として設定しています。
* ROE(自己資本利益率):中長期的に8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「ファンベース経営」の実践を通じ、中長期的な企業価値向上を目指しています。具体的には、日米市場でのファン層拡大、新商品開発、DXによる生産性向上、サプライチェーン上の課題解決などに取り組む方針です。
* ファンの声を起点にした新商品/チャネルの開発
* 脱脂ごまに含まれるタンパク質の活用による新たな収益の柱の創造
* 商品力/ブランド力を活かした米国市場における更なる成長
* DX推進による生産効率化(コストダウン)の追求
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員と会社の両方が持続的に成長する」ことをビジョンに掲げています。人事制度の改定や研修の充実、自己啓発支援などを通じて、従業員の自律的なキャリア形成を支援するとともに、在宅勤務や時差出勤などの柔軟な働き方を整備し、働きがいのある職場作りを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 15.3年 | 7,159,590円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.6% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 84.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 37.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原料調達に関するリスク
主要原材料であるごま種子はほぼ全量を海外からの調達に依存しています。そのため、生産国の天候不順、経済情勢、地政学的リスク、為替変動などの影響を受けやすく、調達価格の高騰や調達難が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 品質と安全に関するリスク
食品メーカーとして、製品の品質と安全性の確保は最重要課題です。万が一、製品への異物混入や品質不良などの問題が発生した場合、大規模な製品回収や社会的信用の失墜を招き、業績やブランド価値に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 国内における自然災害に関するリスク
主力工場である小豆島工場をはじめ、複数の生産拠点を有していますが、地震や台風などの大規模な自然災害が発生した場合、生産設備の損壊や物流の寸断により、製品の安定供給が困難となり、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 国内景気、人口減少に関するリスク
国内市場を主要な収益基盤としているため、日本の人口減少や少子高齢化による市場縮小の影響を受ける可能性があります。また、国内景気の悪化や消費者の節約志向の高まりにより需要が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。