小松マテーレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松マテーレ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

小松マテーレは東京証券取引所プライム市場に上場し、合繊ファブリックなどの企画・製造・販売を中心とした繊維事業を主力としています。直近の業績では、国内外での高付加価値商品の拡販等により売上高416億円の増収および経常増益を達成した一方で、投資有価証券評価損等の計上により当期純利益は減益となりました。


※本記事は、小松マテーレ株式会社の有価証券報告書(第114期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 小松マテーレってどんな会社?


繊維事業を中心に、合繊ファブリック等の企画・製造・販売を展開する化学素材メーカーです。

(1) 会社概要


1943年、絹・人絹織物の精練・染色加工を行う小松織物精練染工として石川県小松市に設立されました。1963年に小松精練へ社名を変更し、1970年に大阪証券取引所第二部に上場、1980年には東京証券取引所第一部銘柄に指定されています。2018年に現在の小松マテーレに社名を変更しました。

従業員数は連結で1,227名、単体で835名です。筆頭株主は投資ファンドであるTHE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.で、第2位は事業会社である東レ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
THE SFP VALUE REALIZATION MASTER FUND LTD.(常任代理人立花証券) 10.36%
東レ 9.79%
日本マスタートラスト信託銀行 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は中山大輔が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中山 大輔 代表取締役社長 1992年入社。国際営業部長等を経て、2024年に代表取締役社長就任。2026年より現職。
米谷 俊泰 代表取締役専務生産本部長 1991年入社。小松精練(蘇州)董事長などを経て、2025年に専務取締役就任。2026年より現職。
小川 直人 常務取締役技術開発本部長 倉庫精練社長を経て2016年顧問。コマクソン社長等を経て、2020年に常務取締役就任。2026年より現職。
佐々木 久衛 取締役会長 東レを経て、2020年代表取締役社長。2024年に代表取締役会長就任。2026年より現職。
中村 重之 取締役 1994年入社。法務部長兼内部監査室長などを経て、2020年に取締役就任。2026年より現職。
米澤 和洋 取締役(常勤監査等委員) 1983年入社。第3工場長などを経て、2022年に監査役就任。2025年より現職。


社外取締役は、大西洋(元三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員)、山下修二(元小松製作所常務執行役員)、堀内節郎(堀内法律事務所代表弁護士)、坂下清司(北陸監査法人代表社員)、横越亜紀(北國フィナンシャルホールディングス常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「繊維事業」および「その他の事業」を展開しています。

繊維事業


衣料ファブリック、資材ファブリック、薄膜ファブリックなどの企画・開発・製造および販売を行っています。高感性・高機能素材や環境配慮型商品を国内外のアパレルブランドや資材メーカー向けに提供しています。

収益源はファブリックの製造・販売および染色加工の受託代金です。主に同社およびコマクソン、吉田産業などの子会社が製造・販売を行い、小松美特料(蘇州)貿易有限公司などの海外拠点がグローバルな販売体制を担っています。

その他の事業


繊維事業に付随する物流サービスおよびその周辺事業を展開しています。主に生機や製品の保管、包装、出荷、輸送などの物流業務をグループ内外の顧客に提供し、サプライチェーンの効率化に貢献しています。

収益源は製品の保管・輸送に伴う物流サービス料や関連事業の提供対価です。主に子会社であるコマツインターリンクが物流事業の運営を担い、グループ全体の効率的な事業活動を支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大しており、特に直近2期は増収傾向が続いています。経常利益も概ね安定して推移し、利益率は7%台を維持していますが、当期純利益は投資有価証券評価損等の影響で変動が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 314億円 354億円 367億円 395億円 416億円
経常利益 22億円 17億円 26億円 28億円 32億円
利益率(%) 6.8% 4.7% 7.2% 7.2% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 6億円 12億円 24億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も堅調に推移しています。利益率も改善傾向にあり、高付加価値商品の拡販やコストダウンの取り組みが収益性の向上に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 395億円 416億円
売上総利益 84億円 94億円
売上総利益率(%) 21.2% 22.6%
営業利益 22億円 25億円
営業利益率(%) 5.5% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が17億円(構成比25%)、試験研究費が6億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


繊維事業は国内外で高付加価値素材が堅調に推移し、増収増益を牽引しています。一方、その他の事業はわずかに減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
繊維事業 390億円 411億円
その他の事業 5億円 5億円
連結(合計) 395億円 416億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 48億円 18億円
投資CF -57億円 8億円
財務CF -13億円 -28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「小松マテーレは人々の感動を創造します。」「小松マテーレは地球・社会に貢献します。」「小松マテーレは社員と共に成長します。」の三つの理念を基本方針としています。これらの理念に基づき、“驚き”と“感動”があふれる素材を創造し続ける「化学素材メーカー」を目指し、社会的な責任を果たしながら事業展開しています。

(2) 企業文化


同社は、事業環境の急激な変化をいち早く感知し、柔軟に対応する組織体制を重視しています。長年培ってきたファブリック加工技術や周辺技術を継承・進化させながら、社員一人ひとりがプロ意識を持って自らを高め、多様な個性を活かす風土を持っています。また、地球環境保護やコンプライアンスを重視した事業運営を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画「KFW-2026」において、事業領域の拡大と基盤強化を基本方針に掲げています。持続的な企業価値向上に向けて、成長性と収益性の双方を高めることを目指し、以下の数値目標を設定しています。

・売上高:420億円
・営業利益:25億円
・営業利益率:6.0%
・自己資本利益率(ROE):6.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中期経営計画に基づき重点課題に取り組んでいます。海外市場の新規開拓を進める「海外事業の拡大」、環境配慮型素材群(マテレコ)の拡充を図る「サステナブル商材・事業の推進」、独自製品の付加価値を高める「製品事業の推進」を主軸とします。加えて、人的資本の拡充や製造・職場環境の整備による組織基盤強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「社員と共に成長します」という理念のもと、人的資本を重要な経営資源と位置付けています。「人材開発」「柔軟な働き方の推進」「多様性・共生・尊重」を重点テーマとし、社員一人ひとりが高い専門性とプロ意識を持って能力を最大限に発揮できる環境を整備しています。これにより、組織力の強化と持続的な成長を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 15.9年 5,981,496円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 55.6%
男女賃金差異(全労働者) 70.9%
男女賃金差異(正規労働者) 71.4%
男女賃金差異(非正規労働者) 53.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.5%)、CO2排出量重量原単位削減率(26.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的活動及び海外進出に関するリスク


同社グループは、アジア、中東、欧州、北米を中心に生産および販売活動をグローバルに展開しています。そのため、進出先における政治・経済の不安定化、法律や規制の予期せぬ変更、ストライキ等の労働争議、人材確保の難しさ、戦争やテロ等による社会的混乱が発生した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) サイバーセキュリティに関するリスク


事業活動において情報システムを広範に活用し、顧客や技術、生産に関する重要な機密データを保有しています。ランサムウェア等のサイバー攻撃や不正アクセス、内部不正による情報の漏洩・消失、あるいはシステムの停止が生じた場合、事業継続が困難となり、社会的信用の低下や損害賠償を通じて業績に影響する可能性があります。

(3) 環境負荷に関するリスク


環境配慮型素材「マテレコ」の展開などサステナビリティに注力していますが、事業活動において重大な環境負荷を発生させた場合、ブランド力の低下や営業活動の停滞を招く恐れがあります。また、国内外における環境規制の強化に伴い、コンプライアンス対応に向けた設備投資等のコストが増加するリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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