ゴールドウイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゴールドウイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のスポーツ用品メーカー。「THE NORTH FACE」等の有力ブランドを国内で展開し、登山・スキー・フィットネス等のウエアや用品を製造販売します。直近の業績は、売上高が前期比で増加し、当期純利益も増加する増収増益となりましたが、経常利益は微減となりました。


※本記事は、株式会社ゴールドウイン の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゴールドウインってどんな会社?


有力ブランドのライセンスビジネスと自社ブランド展開を軸に、高機能スポーツウエアを提供する企業です。

(1) 会社概要


1951年に富山県で津沢メリヤス製造所として創業し、1963年に現社名へ改称しました。1978年に米国の「THE NORTH FACE」の国内販売を開始し、その後も「HELLY HANSEN」等の有力ブランド権を取得して事業を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は1,460名、単体では1,236名が在籍しています。大株主は、信託銀行のほか、総合商社の三井物産や韓国の証券預託機関が名を連ねており、創業家関連の財団や企業も安定株主として存在しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.60%
三井物産 9.49%
コリア セキュリティーズ デポジトリー サムスン 7.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は渡辺貴生氏が務めています。社外取締役比率は31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 貴生 取締役社長執行役員(代表取締役) 1982年入社。ザ・ノース・フェイス事業部長、事業統括本部長などを歴任し、2020年より現職。
西田 明男 取締役会長(代表取締役) 1977年入社。営業統括、代表取締役社長などを経て、2020年より現職。
本間 永一郎 取締役副社長執行役員 1982年入社。ナナミカ代表取締役社長、総合企画本部長、グローバル本部長などを経て、2023年より現職。
西田 吉輝 取締役相談役 1978年入社。調達管理部長、富山地区関係会社担当などを経て、2023年より現職。
白崎 道雄 取締役専務執行役員管理本部長 経営企画本部長を経て、2022年より管理本部長。2023年より現職。
森 光 取締役専務執行役員ザ・ノース・フェイス事業本部長兼グローバルブランド事業本部長 ザ・ノース・フェイス事業部長、事業本部長などを歴任し、2024年より現職。
金田 武朗 取締役常務執行役員総合企画本部長 グローバル本部副本部長、経営企画本部長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、秋山里絵(馬場・澤田法律事務所弁護士)、好本一郎(元日本マクドナルド上席執行役員)、為末大(株式会社Deportare Partners代表取締役)、土谷明(元株式会社IDホールディングス専務執行役員)、井本直歩子(元国連児童基金教育専門官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スポーツ用品関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) スポーツ用品関連事業


登山用ウエア、マリンウエア、トレーニングウエア、ウインターウエアなどの各種スポーツ用品を製造・販売しています。「THE NORTH FACE」「HELLY HANSEN」「Goldwin」等のブランドを展開し、一般消費者やアスリート向けに高機能製品を提供しています。

収益は主に消費者への製品販売による代金および提携先への卸売売上から得ています。運営は主にゴールドウインが行い、一部製品の企画・販売を株式会社ナナミカ、株式会社アンパスィ、株式会社ウールリッチジャパン等の子会社や、海外現地法人が担っています。

(2) その他


上記に含まれない事業として、機能アンダーウエアや防塵服(ハイテックウエア)の販売、ベンチャー投資、不動産関連事業などを行っています。また、ゴルフ場の運営も行っています。

収益は製品販売代金のほか、投資収益や施設運営収入等から構成されます。運営はゴールドウインのほか、株式会社ゴールドウインベンチャーパートナーズ、株式会社ゴールドウインエンタープライズ、関連会社のゴールドウイン開発株式会社などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けています。利益面でも高い水準を維持しており、経常利益率は20%を超える高収益体質を実現しています。当期純利益も増加基調にあり、成長性と収益性を兼ね備えた堅調な推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 905億円 982億円 1,151億円 1,269億円 1,323億円
経常利益 160億円 203億円 281億円 326億円 308億円
利益率(%) 17.7% 20.6% 24.4% 25.7% 23.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 103億円 120億円 185億円 205億円 242億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しました。営業利益率は依然として高い水準を維持していますが、販売費及び一般管理費の増加により、営業利益額および利益率は前期と比較してやや低下しました。全体として、増収ながらもコスト増により営業減益となる構造が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,269億円 1,323億円
売上総利益 672億円 689億円
売上総利益率(%) 52.9% 52.1%
営業利益 238億円 219億円
営業利益率(%) 18.8% 16.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が157億円(構成比33%)、賃借料が73億円(同16%)、広告宣伝費が63億円(同13%)を占めています。売上原価は売上高に対して約48%程度で推移しています。

(3) セグメント収益


全ての領域で売上が好調に推移しています。特にライフスタイル領域はインバウンド需要の回復もあり売上規模が最も大きく、全社の成長を牽引しています。ファッション領域も売上を伸ばしており、パフォーマンス領域は冬物販売の回復により底堅く推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
パフォーマンス 418億円 400億円
ライフスタイル 742億円 806億円
ファッション 109億円 117億円
連結(合計) 1,269億円 1,323億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュに加え、投資活動でもプラスを確保し、それらを原資として借入返済や自己株式取得などの財務活動(支出)を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 186億円 244億円
投資CF -15億円 2億円
財務CF -94億円 -148億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」をパーパスとして掲げています。スポーツの起源である「遊び」を通じて、変化し続ける人間と自然のあるべき姿を模索し、これからの地球と人間をめぐる新しい未来の実現を目指しています。また、2030年に向けた長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」をスタートさせています。

(2) 企業文化


同社は、5つのValueとして「Play(遊ぶ)」「Imagine(想像する)」「Engage(挑戦する)」「Create(生み出す)」「Respect(敬意を示す)」を掲げています。また、「スポーツと環境を第一に考え、仕事と遊びに境界を引かない暮らしを営む」ことを重要な価値観として共有しており、従業員が能力を最大限に発揮できる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的な事業成長を通じた企業価値向上を目標とし、2030年に向けた長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」のもとで経営を進めています。財務指標としては、収益性・効率性を重視し、以下の目標を掲げています。

* 自己資本利益率(ROE):20.0%以上
* 有利子負債比率(D/Eレシオ):0.3倍以下
* 2033年3月期 全世界売上高(Goldwinブランド):500億円

(4) 成長戦略と重点施策


「事業と環境の二つのサステナビリティの両立」を目指し、自社ブランド「Goldwin」のグローバル展開を成長戦略の中核に据えています。また、「THE NORTH FACE」ブランドの安定成長や、新規事業「PLAY EARTH PARK」の開発、人的資本への投資にも注力しています。

* 2026年3月期 売上高:1,405億円
* 2026年3月期 営業利益:259億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本の最大化を経営の最重要項目とし、5つのValueに共感し行動する人材の育成を目指しています。多様な視点や価値観を尊重し、女性・外国人・キャリア採用者を積極的に登用する方針です。また、自律的なキャリア形成を支援する研修制度や、柔軟な働き方を可能にする環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 16.4年 7,143,719円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.9%
男性育児休業取得率 78.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.5%
男女賃金差異(正規) 67.8%
男女賃金差異(非正規) 77.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(84.7%)、従業員一人あたり年間研修時間(9.1時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替レート変動リスク


同社グループの製品調達は海外生産比率が高く、為替レートの変動が原価に影響を及ぼす可能性があります。為替予約等でリスク回避を図っていますが、大幅な変動は業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 消費者の嗜好および気象状況のリスク


取り扱うスポーツ用品やアパレルは、景気変動や消費者の嗜好変化に加え、天候の影響を強く受けます。特に冷夏や暖冬などの天候不順は、シーズン商品の売上に大きく影響し、業績変動の要因となります。

(3) 知的財産権に関するリスク


同社は多くの商標権等を保有しており、ブランドビジネスを展開しています。第三者による知的財産権の侵害や、模倣品の発生等はブランドイメージの低下を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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