ゴールドウイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゴールドウイン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するゴールドウインは、アウトドアやアスレチック関連を中心としたスポーツ用品の製造・販売を主力とする企業です。「ザ・ノース・フェイス」等のブランドを展開しています。直近の業績は、売上高1375億円、経常利益339億円と増収増益の一方、純利益は241億円で減益となっています。


※本記事は、株式会社ゴールドウインの有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゴールドウインってどんな会社?


アウトドアやアスレチック関連のスポーツ用品の製造・販売を主力とし、複数ブランドを展開する企業です。

(1) 会社概要


1951年に富山県で津沢メリヤス製造所として設立され、1963年に現在のゴールドウインに改称しました。1995年に東京・名古屋両証券取引所の市場第一部に上場し、2022年には東証プライム市場へ移行しました。近年はナナミカの設立やカンタベリーオブニュージーランドジャパンの吸収合併など事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,536名、単体で1,287名です。大株主の構成は、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は事業会社の三井物産、第3位はコリア セキュリティーズ デポジトリー サムスンとなっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.15%
三井物産 9.55%
コリア セキュリティーズ デポジトリー サムスン(常任代理人シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 7.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長CEOは渡辺貴生氏です。社外取締役比率は31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 貴生 代表取締役社長CEO 1982年入社。ノースフェイス事業部長、事業統括本部長などを歴任し、2020年代表取締役社長執行役員を経て2025年6月より現職。
本間 永一郎 取締役副社長 1982年入社。ナナミカ代表取締役社長、経営企画室長などを歴任し、2023年取締役副社長執行役員を経て2025年6月より現職。
白崎 道雄 取締役専務執行役員CFO管理本部長 2019年執行役員経営企画本部長兼経営企画室長などを経て2025年6月より現職。2026年4月に取締役副社長執行役員CFOに就任。
森 光 取締役専務執行役員COOザ・ノース・フェイス事業本部長兼グローバルブランド事業本部長 2015年ノースフェイス事業部長などを経て2025年6月より現職。2026年4月に取締役副社長執行役員COOなどに就任。
金田 武朗 取締役常務執行役員CSO総合企画本部長 2020年グローバル本部副本部長などを経て2025年6月より現職。2026年4月に取締役専務執行役員CSO総合企画本部長に就任。
新井 元 取締役常務執行役員CRDOR&D本部長 1991年入社。ゴールドウイン事業部長などを経て2025年6月より現職。2026年4月に取締役常務執行役員CRDO R&D本部長に就任。
川田 慎二 取締役常務執行役員ゴールドウイン事業本部長 1992年入社。ウールリッチジャパン代表取締役社長などを経て2025年6月より現職。2026年3月にGOLDWIN LONDON LIMITED社長に就任。


社外取締役は、秋山里絵(馬場・澤田法律事務所所属)、好本一郎(元スターバックスコーヒージャパン代表取締役COO)、為末大(アスリートソサエティ代表理事)、土谷明(元インフォメーション・ディベロプメント執行役員)、井本直歩子(元国連児童基金教育チーフ)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スポーツ用品関連事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) スポーツ用品関連事業


主に繊維製品を中心とした各種スポーツ用品の企画・製造・販売を展開しています。「ザ・ノース・フェイス」などのアウトドア関連、「カンタベリー」などのアスレチック関連、「ゴールドウイン」などのウインター関連ブランド商品を提供し、一般消費者やスポーツ愛好家が顧客です。

消費者にスポーツウエアや関連用品を販売することで収益を得ています。スポーツウエア関係は主にゴールドウインが製品企画・製造・販売を行い、中国、韓国、欧州、北米等では各現地法人が販売を担います。また、アンパスィやナナミカ等の子会社が特定のブランドの企画・販売を行っています。

(2) その他の事業(物流・施設運営など)


スポーツ用品の物流管理、ベンチャー投資、ゴルフ場の運営、旅行業など、スポーツ事業を支え、顧客に豊かな体験価値を提供する周辺事業を展開しています。

物流サービスや施設運営、旅行企画等の対価として収益を得ています。物流部門はゴールドウインロジテム、保険・不動産事業はゴールドウインエンタープライズが担当し、アルパインツアーサービスが旅行業、PLAY EARTH PARKが施設開発を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が順調に拡大を続け、直近では過去最高を更新しています。経常利益も概ね増加傾向にあり、利益率は20%台後半の高い水準を安定して維持しています。主力ブランドの堅調な推移が収益拡大を牽引しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 982億円 1151億円 1269億円 1323億円 1375億円
経常利益 203億円 281億円 326億円 308億円 339億円
利益率(%) 20.6% 24.4% 25.7% 23.3% 24.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 120億円 185億円 205億円 242億円 245億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。値引きの抑制や商品ミックスの改善、在庫の健全性を重視した販売姿勢により、売上総利益率が向上し、営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1323億円 1375億円
売上総利益 689億円 729億円
売上総利益率(%) 52.1% 53.0%
営業利益 219億円 259億円
営業利益率(%) 16.6% 18.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が161億円(構成比34%)、賃借料が78億円(同17%)、広告宣伝費が70億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


報告セグメントはスポーツ用品関連事業の単一セグメントですが、収益はブランドのカテゴリごとに分類されています。ライフスタイル領域が売上の過半を占め、すべての領域で増収となっており、事業全体の好調さがうかがえます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
パフォーマンス 400億円 407億円
ライフスタイル 806億円 823億円
ファッション 117億円 131億円
その他 - 15億円
連結(合計) 1323億円 1375億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 244億円 263億円
投資CF 2億円 -135億円
財務CF -148億円 -137億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.9%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」をパーパスとして掲げています。スポーツの起源である「遊び」を通じて常識やルールを更新しながら、変化し続ける人間と自然のあるべき姿を常に模索し、これからの地球と人間をめぐる新しい未来の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、自然と共生し、持続可能な社会を実現することを経営の根幹に据えています。従業員一人ひとりの多様な経験やバックグラウンドを成長の原動力と捉え、「Play(遊ぶ)」「Imagine(想像する)」「Engage(挑戦する)」「Create(生み出す)」「Respect(敬意を示す)」という5つのValue(価値観)を掲げ、これを意識して行動する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的な事業成長を通じて企業価値を向上することを目標としています。2030年に向けた長期ビジョン「PLAY EARTH 2030」のもと、収益性・効率性をはかる経営指標として自己資本利益率(ROE)を安定的に創出するとともに、成長投資と財務健全性のバランスを保持することを目指しています。

* 自己資本利益率(ROE):20.0%以上
* 有利子負債比率(D/Eレシオ):0.3倍以下

(4) 成長戦略と重点施策


自社ブランドのグローバル展開を成長戦略の中核に位置づけています。基幹ブランド「ザ・ノース・フェイス」の安定的な成長を図りつつ、ウィメンズ・キッズ・フットウェアなどの周辺カテゴリーへの展開を加速させます。また、マルチブランド戦略による相乗効果の創出や、豊かな体験価値を提供する新規事業の確立にも取り組んでいます。

* 2027年3月期目標 売上高:1,454億円
* 2027年3月期目標 営業利益:261億円
* 2027年3月期目標 経常利益:341億円
* 2033年3月期目標 自社ブランド全世界売上高:500億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最大の資産と捉え、「スポーツと環境を第一に考え、仕事と遊びに境界を引かない暮らしを営む」という価値観を共有しています。持続的な成長を実現するため、多様な視点を尊重し、経験・技能・キャリアが異なる人材を積極的に採用・登用しています。従業員の成長をサポートする研修制度や、柔軟に働ける職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 15.8年 6,518,809円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 71.1%
男女賃金差異(全労働者) 67.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、復職者面談実施率(19.0%)、従業員一人あたりの研修時間(16.50時間)、年次有給休暇取得率(81.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替レート変動に伴う調達コスト増大

同社の製品調達は海外生産比率が高いため、為替レートの変動は外貨建ての直接取引および商社等を経由する間接取引の製品調達コストに直接的な影響を及ぼします。為替予約取引等でリスク回避を図っていますが、急激な変動は業績に影響を与える可能性があります。

(2) 嗜好の変化および気象状況による需要変動

同社が扱う商品は景気の変動による個人消費の動向や消費者の嗜好の変化に影響を受けやすい性質があります。加えて、特定の季節に利用される商品においては、暖冬や冷夏、天候不順などの気象条件が売上や在庫状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業展開に伴うカントリーリスク

同社グループは中国や韓国、欧米などに生産・販売拠点を有しています。展開する国や地域における法律の改正、規制の強化、貿易摩擦、政治的・社会的・経済的な混乱、紛争などが発生した場合には、サプライチェーンや販売活動に支障をきたす恐れがあります。

(4) 個人情報の漏洩およびサイバーセキュリティ

同社は通信販売の展開により多くの顧客の個人情報を保有しています。外部からのハッキングなどの不測の事態により個人情報が漏洩した場合、同社グループの信用失墜による売上の減少や損害賠償費用の発生が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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