記事タイトル:「フジックス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、フジックスの有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フジックスってどんな会社?
縫い糸、刺しゅう糸、手芸用各種糸の製造販売を中心に、国内外で事業を展開する老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1921年の創業以来、縫製用副資材の提供を続けてきました。1950年に藤井繊維として設立し、翌年には日本初の合繊ミシン糸を開発しました。1993年に現在のフジックスへ商号変更し、同年に中国合弁会社を設立して海外展開を本格化しました。1994年の上場を経て、現在もアジア圏を中心とした生産・販売網の拡充を進めています。
従業員数は連結で346名、単体で99名です。筆頭株主は事業会社であるFJ興産で、第2位は創業家とみられる藤井太郎氏、第3位は個人投資家の鈴木直子氏となっています。国内外の子会社と密接に連携し、各地域に根ざした生産体制と販売網を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| FJ興産 | 11.52% |
| 藤井太郎 | 6.18% |
| 鈴木直子 | 6.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤井一郎氏が務めており、社外取締役の比率は37.5%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤井一郎 | 代表取締役社長 | 1980年4月同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役専務、代表取締役副社長等を経て、1998年6月より現職。 |
| 松尾勇治 | 常務取締役管理部長 | 2003年12月同社入社。財務課長、経営企画室長兼財務課長、取締役管理部長等を経て、2020年6月より現職。 |
| 藤井翔太 | 常務取締役経営企画室長 | 2010年4月京都銀行入行。2015年4月同社入社。取締役経営企画室長等を経て、2020年6月より現職。 |
| 上原康裕 | 取締役生産部長 | 1988年4月同社入社。上海富士克制線有限公司生産部長、同社理事等を経て、2020年6月より現職。 |
| 伊藤和夫 | 取締役アパレル資材部長 | 1987年4月同社入社。シオン代表取締役社長、FUJIX VIETNAM CO.,Ltd.社長等を経て、2023年4月より現職。 |
社外取締役は、山田善紀(税理士法人川嶋総合会計代表社員)、吉田薫(吉田薫法律事務所代表)、寺町雅人(監査法人京立志社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「アジア」事業を展開しています。
■(1) 日本
同社および国内子会社3社が担当し、縫い糸、刺しゅう糸および手芸用各種糸を製造・販売しています。顧客は国内の縫製業者や手作りホビーを楽しむ一般消費者、さらにはグループの海外子会社まで多岐にわたります。
製品の販売代金が主な収益源です。同社が製品の製造・販売を担うほか、FTCが工業用縫い糸の製造販売、シオンが縫製副資材の卸売、ニットマテリアルがニット用糸を中心とした販売を行うなど、グループ各社が役割を分担して事業を運営しています。
■(2) アジア
中国やベトナム、タイなどにある海外子会社7社が担当し、工業用縫い糸および刺しゅう糸の製造、撚糸加工、販売を行っています。主な顧客は、日系企業を含むアジア諸国や欧米市場向けの縫製業者です。
縫い糸や刺しゅう糸の販売代金、および撚糸加工の加工賃が主な収益源です。運営は、製造・販売を担う上海富士克制線有限公司などの各地域子会社のほか、加工を専門とする常州英富紡織有限公司などが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は54億円から58億円のレンジで推移していますが、直近は減少傾向にあります。利益面では、一時的に最終黒字となった期もありましたが、原材料価格の高止まりや操業度の低下などが影響し、継続的に経常損失を計上する厳しい経営環境がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 54億円 | 57億円 | 58億円 | 56億円 | 55億円 |
| 経常利益 | -2億円 | -1億円 | -0.1億円 | -1億円 | -1億円 |
| 利益率(%) | -3.1% | -2.2% | -0.1% | -1.9% | -2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1億円 | -0.8億円 | 0.4億円 | -0.4億円 | -0.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少と製造コストの高止まりにより、売上総利益率は低下しています。これに伴い、営業利益のマイナス幅も前年より拡大しており、収益性の改善が急務となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 56億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 12億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.0% | 22.6% |
| 営業利益 | -2億円 | -2億円 |
| 営業利益率(%) | -3.5% | -4.1% |
販売費及び一般管理費(当期15億円)のうち、給料及び手当が5.3億円(構成比37%)、運賃及び荷造費が0.9億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、日本セグメントは国内での節約志向や衣料品の生産低迷により微減となりました。また、アジアセグメントでも中国やタイにおける衣料品消費の低迷などが響き、前年を下回る結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 44億円 | 43億円 |
| アジア | 13億円 | 11億円 |
| 連結(合計) | 56億円 | 55億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益を確保しつつ、資産売却等も進めて借入金の返済等を行っている改善局面にあると考えられます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 0.7億円 |
| 投資CF | -3億円 | 7億円 |
| 財務CF | -1億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-1.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「誠実」の社是のもと、「すぐれた技術とまごころがつくり出す製品を通じて社会に奉仕する」ことを経営理念として掲げています。ユーザーへ価値ある製品とサービスを提供することで、株主、投資家、取引先、従業員や地域社会など、すべてのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社是である「誠実」を企業活動の原点とし、法令遵守と社会倫理の遵守を徹底する文化を築いています。「フジックスグループ企業行動規範」を制定し、役職員への継続的な周知を図ることで、適正かつ効率的な業務執行と高い倫理観をもった組織運営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、全てのステークホルダーに長期安定的に貢献するため、連結・個別ともに堅実で安定的な利益の確保を重要な経営目標と位置付けています。具体的な数値目標は掲げていませんが、中長期的にも経常利益の確保と売上高経常利益率の向上を目指す方針を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
まずは経常損失の解消を喫緊の課題とし、早期に実施可能な収益改善策を実行しています。並行して、工業用縫い糸の国内外の製造・販売体制の再構築による競争力強化、環境負荷軽減への対応、国内事業の効率化を通じたシナジー創出、そして手芸・ホビー分野での独自性の高い商品提案による海外市場のシェア拡大を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業構造の変化や経営課題に的確に対応できる人材の確保と育成、そして多様な人材が能力を十分に発揮できる環境整備を重視しています。各年次や職位に応じた研修制度の充実、自律的なキャリア構築を支援する資格取得制度のほか、健康経営への投資やワークライフ・バランスへの配慮を通じた職場環境の改善に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 52.0歳 | 23.0年 | 4,475,512円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | - |
※同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下等のため公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性労働者の割合(25.0%)、年次有給休暇の取得率(72.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 染色工程における水使用と排水処理への取り組み
アジア各国の環境汚染に対する法規制が厳しくなるなか、縫い糸の染色工程で必要となる大量の水使用や排水処理に関する規制強化が生産体制に影響を及ぼすリスクがあります。同社は各国の法規制を遵守し、水使用量の削減や排水処理設備の充実に努めています。
■(2) 製品仕様などに対する環境対応
アパレル業界全体で環境負荷軽減の取り組みが進む中、縫い糸についても環境に配慮した製品の供給が求められています。リサイクル原料などは調達が不安定かつ高価であり製造コスト上昇の懸念がありますが、同社はコスト抑制に努めつつ環境配慮型素材への切り替えを進めています。



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