フジックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、縫い糸、刺しゅう糸および手芸用各種糸の製造販売を行う企業です。直近の業績は、国内需要の低迷や製造コストの高止まり、海外経済の減速などが響き、売上高は前期比で減収となりました。利益面でも営業損失、経常損失、当期純損失を計上し、赤字転落となっています。


※本記事は、株式会社フジックス の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジックスってどんな会社?


創業100年を超える歴史を持ち、家庭用・工業用の縫い糸や刺しゅう糸の製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1921年に京都市で創業し、絹手縫い糸の販売を開始しました。1951年には日本初の合繊ミシン糸を開発・発売し、業界をリードしてきました。1993年に中国・上海に合弁会社を設立してアジア展開を本格化させ、1996年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。その後、ベトナムやタイにも拠点を設立し、生産・販売体制を拡充しています。

連結従業員数は357名、単体では105名です。筆頭株主は資産管理会社と見られる株式会社FJ興産で、第2位以降には個人株主や創業家関係者が名を連ねています。また、京都を地盤とする金融機関の親会社などが主要株主となっています。

氏名 持株比率
FJ興産 11.52%
鈴 木 直 子 6.89%
藤 井 太 郎 6.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤井一郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤 井 一 郎 代表取締役社長 1980年入社。1994年常務取締役、1996年代表取締役専務、1997年代表取締役副社長を経て、1998年より現職。
松 尾 勇 治 常務取締役管理部長 2003年入社。財務課長、経営企画室長などを歴任。2018年取締役管理部長兼財務課長を経て、2020年より現職。
藤 井 翔 太 常務取締役経営企画室長 京都銀行を経て2015年入社。経営企画室長代理、理事経営企画室長などを経て、2020年より現職。
上 原 康 裕 取締役生産部長 1988年入社。上海富士克制線有限公司生産部長、常州英富紡織有限公司総経理などを歴任し、2020年より現職。
伊 藤 和 夫 取締役アパレル資材部長 1987年入社。シオン社長、FUJIX VIETNAM社長などを歴任。2022年取締役アパレル資材部長兼東日本販売課長を経て、2023年より現職。
川 嶋 伸 久 取締役監査等委員 1982年入社。上海富士克貿易総経理、アパレル資材部長などを歴任。2016年取締役アパレル資材部長を経て、2022年より現職。


社外取締役は、吉田薫(吉田薫法律事務所代表)、山田善紀(税理士法人川嶋総合会計代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「アジア」事業を展開しています。

(1) 日本


縫い糸、刺しゅう糸および手芸用各種糸の製造販売を行っています。主な顧客はアパレルメーカー、縫製業者、手芸店などです。国内市場向けの製品供給に加え、海外子会社への半製品供給なども行っています。

収益は、国内外の顧客への製品販売による代金です。運営は主にフジックス(親会社)が行い、工業用縫い糸の製造を行う株式会社FTC、縫製副資材の卸売を行う株式会社シオン、株式会社ニットマテリアルといった国内連結子会社も事業を担っています。

(2) アジア


中国、ベトナム、タイなどを拠点に、工業用縫い糸および刺しゅう糸の製造販売を行っています。日系アパレル企業の海外生産拠点や、現地企業を主な顧客としています。また、日本への製品供給拠点としての役割も担っています。

収益は、現地および周辺国の顧客への製品販売による代金です。運営は、上海富士克制線有限公司、上海新富士克制線有限公司、富士克國際(香港)有限公司、FUJIX VIETNAM CO.,LTD.、FUJIX INTERNATIONAL Co.,Ltd.などの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は50億円台後半で推移していましたが、直近では減少傾向にあります。利益面では、原材料価格の高騰や需要低迷の影響を受け、経常損益および当期純損益において赤字となる期が目立っています。特に直近の第76期は減収となり、各利益段階で損失を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58億円 54億円 57億円 58億円 56億円
経常利益 1.5億円 -1.7億円 -1.2億円 -0.1億円 -1.0億円
利益率(%) 2.5% -3.1% -2.2% -0.1% -1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.3億円 -1.3億円 -0.8億円 0.4億円 -1.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しています。販売費及び一般管理費は微減となりましたが、売上総利益の減少をカバーするには至らず、営業損失幅が拡大しました。原材料価格の上昇や工場操業度の低下による製造コストの高止まりが利益を圧迫する構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 58億円 56億円
売上総利益 15億円 14億円
売上総利益率(%) 25.0% 24.0%
営業利益 -1.2億円 -2.0億円
営業利益率(%) -2.0% -3.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比36%)、その他が2億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費や労務費などが含まれますが、製造コストの高止まりが課題となっています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、衣料品消費の低迷や節約志向の高まりを受け、売上高が減少しました。利益面でも減収やコスト増により損失幅が拡大しています。アジアセグメントは、中国やベトナムでの新規販路開拓や円安効果により増収となりましたが、競争激化やコスト高により損失が続いています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 46億円 44億円 -0.2億円 -1.8億円 -4.1%
アジア 12億円 13億円 -0.9億円 -0.4億円 -3.3%
調整額 - - -0.1億円 0.3億円 -
連結(合計) 58億円 56億円 -1.2億円 -2.0億円 -3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フジックスのキャッシュ・フローの状況について解説します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費などの非資金項目や棚卸資産の減少により、プラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入による支出が収入を上回ったため、マイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いにより、マイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.1億円 1.4億円
投資CF -0.9億円 -2.9億円
財務CF -0.7億円 -0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「すぐれた技術とまごころがつくり出す製品を通じて社会に奉仕する」ことを経営理念としています。縫製業者や刺しゅう業者、手作りホビーを楽しむ人々へ価値ある製品とサービスを提供し、株主、投資家、取引先、従業員、地域社会など全てのステークホルダーに長期安定的に貢献できる企業グループを目指しています。

(2) 企業文化


「誠実」を社是として掲げており、この精神のもとで事業活動を行っています。ものづくりに対する真摯な姿勢と、顧客や社会に対する誠実な対応を重視する企業文化があります。

(3) 経営計画・目標


全てのステークホルダーに貢献するために、連結・個別ともに堅実で安定的な利益の確保を重要視しています。具体的な数値目標は掲げていませんが、中長期的には経常利益の確保と売上高経常利益率の向上を目指しています。当面の喫緊の課題として、多額の経常損失の縮小と解消を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


多額の経常損失の解消を最優先課題としつつ、中長期的な成長に向けて以下の施策に取り組みます。工業用縫い糸では、変化するニーズを捉え、営業戦略の練り直しや製造・販売体制の再構築を行い、アジア地域でのシェア拡大を図ります。

また、環境負荷軽減への要請に対応するため、製品仕様や生産技術の研究を継続します。手芸・ホビー分野では、独自製品や用途提案により欧米やアジア市場でのシェア拡大を目指します。国内事業においては、さらなる効率化により収益力の維持向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材が必要なスキルを身につけ能力を最大化できるよう、各年次・職位ごとの研修や勉強会を実施し、継続的な育成に取り組んでいます。また、イノベーション創出のため多様な個人の掛け合わせを重視し、性別や年齢に関わらず活躍できる環境整備や、専門性を持つ中途採用も行っています。健康経営への投資やワークライフ・バランスの推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.9歳 22.4年 4,391,135円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(70.5%)、総合職に占める女性労働者の割合(20.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) アジア事業展開に伴うリスク


同社グループは中国、タイ、ベトナム等に生産・販売拠点を展開しており、今後も比率が高まる見込みです。しかし、為替変動、法規制の変更、賃金上昇等のリスクがあります。特に環境規制の強化による染色用水の使用制限や排水処理の許認可動向は、生産体制に大きな影響を与える可能性があります。

(2) 持続的社会の構築に向けたリスク


アパレル業界における環境負荷軽減の取り組みが進む中、リサイクル原料や環境配慮型素材への対応が求められています。しかし、これらの原料は調達が不安定で価格も高いため、収益性やコスト競争力の維持との両立が課題となる可能性があります。対応の遅れは顧客からの評価低下を招く恐れがあります。

(3) 原材料価格および製造コストの変動


原油価格の変動等による原材料価格の上昇や、国内外のインフレに伴う製造コストの増加が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に製品価格への転嫁が困難な状況下では、収益性が圧迫されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。