シノブフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シノブフーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シノブフーズは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、弁当、おにぎり、調理パン、寿司、惣菜等の製造卸販売を主力事業としています。直近の業績は、新規取引先の開拓や既存取引の拡大により売上高が堅調に推移し増収となった一方、原材料やエネルギーコストの高騰等の影響を受け経常利益は微減となりました。


※本記事は、シノブフーズ株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シノブフーズってどんな会社?


弁当やおにぎり、惣菜などの製造卸販売を手掛け、中食業界で多様な温度帯の商品を提供する企業です。

(1) 会社概要


1971年に志のぶ寿司として設立され、パック寿司の製造販売を開始しました。1979年に「おにぎりQ」を発売し、1986年に現在のシノブフーズへ商号変更しています。1987年の株式上場を経て、2020年には成長分野である冷凍食品事業へ参入するなど、中食業界における事業領域を拡大し続けています。

現在の従業員数は連結571名、単体571名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業法人のエムで、第2位および第3位には創業家とみられる個人株主が名を連ねており、関係会社や個人株主が上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
エム 9.11%
松本 隆次 6.37%
佐々木 真司 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は松本崇志氏が務めています。取締役7名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
松本 崇志 代表取締役社長執行役員 1991年関西ランチ入社。1994年同社常務取締役、2005年代表取締役副社長を経て、2008年6月より現職。
西村 寿清 代表取締役副社長執行役員CVS事業担当兼CVS営業本部長 1994年同社入社。2005年常務取締役、2012年専務取締役を経て、2022年7月より現職。
清水 秀輝 取締役常務執行役員管理本部長 1994年同社入社。2012年取締役管理本部長兼管理部長を経て、2015年4月より現職。
長尾 正史 取締役執行役員経営財務本部長 1990年監査法人トーマツ入所。2011年同社入社。2016年エス・エフ・ディー代表取締役社長を経て、2024年4月より現職。
吉井 淳 取締役執行役員NB事業担当兼東日本統轄本部長 1987年日本盛入社。2018年同社入社。2020年執行役員東京統轄本部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、中野由里(スプラウトビーンズ代表取締役)、小田寛明(ジャパンインベストメントアドバイザー顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品製造卸販売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

食品製造卸販売事業


弁当、おにぎり、調理パン、寿司、惣菜、冷凍食品などの製造卸販売を行っています。「手作り感」や「出来立て感」を重視した商品づくりを特徴とし、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、カフェチェーン、生協、ドラッグストアなど幅広い顧客に向けて、定温・チルド・冷凍の3温度帯で製品を提供しています。

収益源は、自社工場で製造した米飯製品や惣菜などの小売店に対する卸売代金です。主要な取引先としてファミリーマートがあり、同社売上の約半分を占めています。事業の運営は同社が主体となって行い、子会社のマイツベーカリーが主に原材料の仕入や販売を、エス・エフ・ディーが不動産賃貸業務を担い事業を支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上収益が継続して増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。一方、経常利益は2024年3月期まで増加したものの、その後は原材料やエネルギーコストの高騰等の影響により横ばいから微減で推移しています。ただし、当期利益は直近で大幅な増加を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 487億円 510億円 548億円 577億円 620億円
経常利益 15億円 19億円 24億円 24億円 23億円
利益率(%) 3.2% 3.7% 4.4% 4.1% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 1億円 12億円 10億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、原材料価格の上昇等により売上総利益率はわずかに低下しています。また、事業拡大に伴う人件費や物流費の増加により販売費及び一般管理費が増加し、営業利益率も低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 577億円 620億円
売上総利益 85億円 90億円
売上総利益率(%) 14.8% 14.5%
営業利益 23億円 23億円
営業利益率(%) 4.0% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が25億円(構成比37%)、給料及び手当が24億円(同36%)を占めています。また、当期の製造費用における主な内訳は、材料費が342億円(構成比65%)、労務費が125億円(同24%)となっています。

(3) セグメント収益


単一セグメントのため、全社の業績を反映しています。当期は生協向けの宅配弁当やカフェチェーン向け商品の拡大に加え、成長分野である冷凍事業の強化により売上を伸ばしました。「手作り感」を重視した商品リニューアルや価格以上の満足感を提供する取り組みも奏功し、全体として増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品製造卸販売事業 577億円 620億円
連結(合計) 577億円 620億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 32億円 34億円
投資CF -17億円 -18億円
財務CF -22億円 -35億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「おいしさと楽しさ」をモットーとし、消費者ニーズに応える商品づくりを通じて健康で豊かな食文化の向上に貢献することを企業理念として掲げています。顧客、取引先、社会からの信頼を得るとともに、従業員、株主、企業のそれぞれが充足することを目指し、持続可能な企業としての役割を果たすことを方針としています。

(2) 企業文化


同社は世界市民の一員であるとの自覚のもと、事業活動を通じて持続可能な地球環境と満足度の高い社会の実現を目指す価値観を重視しています。「良品づくり」を基礎に置き、全社的な視点でサステナビリティに関する課題解決に取り組むとともに、性別や国籍等を問わず多様な人材が活躍できる風通しの良い組織文化の構築を推進しています。

(3) 経営計画・目標


「良品づくり」を基礎とした新たな価値・市場への挑戦をテーマとする新中期経営計画(2026年3月期~2030年3月期)を策定し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。最終年度となる2030年3月期の経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:700億円
* 連結経常利益率:5.0%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「販売」「コスト」「サステナビリティ」「財務」の4つの基本戦略を柱としています。販売面では冷凍事業や新規市場への積極的なアプローチを推進し、コスト面では調達方法の見直しやDX推進による効率化を図ります。また、環境負荷低減や人財育成を通じた持続可能な経営基盤の構築と、成長事業への投資及び株主還元強化を並行して進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ジェンダーをはじめとするダイバーシティの実現に向け、性別・国籍・年齢を問わず多彩な人材一人ひとりのスキルと経験を向上させることを方針としています。次世代を念頭に置いた階層別・職種別の研修や短期トレーニー派遣を実施し、実践的なリーダーシップ力やコミュニケーションスキルの向上を図るとともに、安心して働ける職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 9.5年 5,898,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 10.7%
男性労働者の育児休業取得率 75.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 82.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 78.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 96.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大幅な気候変動と原材料調達リスク


弁当や惣菜の製造において、米や野菜などの農産物・畜産物を主要原材料としています。大幅な気候変動による生産地での収穫不足や自然災害の増加、地政学リスク、為替レートの変動などにより、原材料の調達価格が上昇したり供給不足に陥ったりした場合、コスト上昇分を製品価格に転嫁できず業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 大規模災害等によるサプライチェーンの寸断


関東から中四国地区にかけて複数の工場を稼働させています。大規模な地震や台風などの自然災害、あるいは感染症の拡大などにより、電気や水道などのライフラインの停止、生産設備への被害、物流の遮断が発生した場合、製品の製造や供給が困難となり、工場の稼働停止や売上高の減少につながるリスクがあります。

(3) 特定の取引先への高い依存度


同社の売上高のうち、ファミリーマート向けの販売が全体の約半分を占めています。同社は新製品の開発や品質向上に努め、取引関係の強化を図っていますが、取引先の出店政策や価格政策などの経営戦略が変更された場合、同社の経営成績や財政状態に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 食の安全性と風評被害リスク


「安全・安心」を重視し、国際的な食品安全システムの認証に基づく衛生・品質管理を徹底しています。しかし、取り組みの範囲を超える食材の問題が発生した場合や、同社製品に直接関係がない事象であっても風評被害によって社会的信用が低下した場合、製品の回収対応や売上の減少などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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