※本記事は、シノブフーズ株式会社 の有価証券報告書(第55期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シノブフーズってどんな会社?
おにぎりや弁当、サンドイッチなどの「中食」を製造し、大手コンビニやスーパーに供給する食品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1971年に「株式会社志のぶ寿司」として設立され、パック寿司の製造販売を開始しました。1979年には画期的なフィルム包装の「おにぎりQ」を発売し、業容を拡大しました。1987年に大阪証券取引所に上場を果たし、生産拠点の全国展開を進めました。2013年には現物株市場の統合に伴い東京証券取引所(現スタンダード市場)に上場しています。
2025年3月31日現在、従業員数は連結・単体ともに555名です。筆頭株主は大阪市にある株式会社エムで、第2位と第3位は個人株主の松本隆次氏、佐々木真司氏となっています。上位株主には役員持株会や取引先持株会も名を連ねており、安定株主比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エム | 8.44% |
| 松本隆次 | 5.90% |
| 佐々木真司 | 5.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名(監査役含む)の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は松本崇志氏が務めています。社外取締役は2名選任されており、取締役会における社外取締役比率は約29%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松本崇志 | 代表取締役社長執行役員 | 1991年関西ランチ入社。シノブフーズ常務、専務、副社長を経て2008年6月より現職。 |
| 西村寿清 | 代表取締役副社長執行役員CVS事業担当兼CVS営業本部長 | 1994年同社入社。常務、専務を経て2022年7月より現職。マイツベーカリー社長も兼任。 |
| 清水秀輝 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1994年同社入社。管理部長、管理本部副本部長を経て2015年4月より現職。 |
| 長尾正史 | 取締役執行役員経営財務本部長 | 監査法人トーマツを経て2011年入社。2024年4月より現職。エス・エフ・ディー社長兼任。 |
| 吉井淳 | 取締役執行役員NB事業担当兼東日本統轄本部長 | 2018年入社。東京統轄本部長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、中野由里(税理士)、小田寛明(トモニホールディングス元常務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品製造卸販売部門」および「その他」事業を展開しています。
■食品製造卸販売事業
弁当、おにぎり、調理パン、寿司および惣菜等の開発・製造を行っています。主な顧客はファミリーマートをはじめとするコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア等です。「手作り感」や「出来立て感」を重視した商品開発を行い、安全・安心な中食商品を提供しています。
収益は、製造した製品をコンビニエンスストアチェーンやスーパーマーケット等の顧客へ販売することで得ています。運営は主にシノブフーズが行っており、原材料の仕入・販売を行う子会社マイツベーカリーが製造をサポートしています。また、不動産賃貸業務を行う子会社エス・エフ・ディーもグループに含まれます。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近5期間で拡大を続けています。一方、利益面では原材料価格やエネルギーコストの高騰などの影響を受け、2025年3月期は経常利益、当期純利益ともに前期を下回りました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 455億円 | 487億円 | 510億円 | 548億円 | 577億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 15億円 | 19億円 | 24億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 3.2% | 3.7% | 4.4% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 11億円 | 1億円 | 12億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は微減となりました。原材料価格の上昇等を吸収すべくコスト低減に努めていますが、人件費や物流費の増加が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 548億円 | 577億円 |
| 売上総利益 | 80億円 | 85億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.6% | 14.8% |
| 営業利益 | 24億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が23億円(構成比37%)、給料及び手当が22億円(同35%)を占めています。物流コストと人件費が主要なコスト要因となっています。
■(3) セグメント収益
同社は食品製造卸販売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な利益情報は開示されていませんが、品目別では「おにぎり類」「調理パン類」が前年比で伸長し、売上全体の増加に寄与しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 食品製造卸販売事業 | 548億円 | 577億円 |
| 連結(合計) | 548億円 | 577億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ資金を借入金の返済や設備投資に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 32億円 |
| 投資CF | -17億円 | -17億円 |
| 財務CF | -16億円 | -22億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%でスタンダード市場の製造業平均(57.5%)をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「おいしさと楽しさ」をモットーに、消費者ニーズに応える商品づくりを通じ、健康で豊かな食文化の向上に貢献することを理念としています。顧客、取引先、社会に信頼され、従業員、株主、企業それぞれが充足することを目指しています。
■(2) 企業文化
「良品づくり」を基礎として、新たな価値や市場への挑戦を重視する文化があります。消費者ニーズの多様化や厳しい競争環境の中で、手作り感や出来立て感を大切にした商品開発に注力し、誠実なモノづくりを通じてステークホルダーからの信頼獲得を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
新中期経営計画(2026年3月期~2030年3月期)を策定しており、最終年度の数値目標として以下を掲げています。
* 連結売上高:700億円
* 連結経常利益率:5.0%
* ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では、「良品づくり」を基礎とし、「販売戦略」「コスト戦略」「サステナビリティ戦略」「財務戦略」の4つを基本戦略としています。特に販売面では、冷凍事業や新市場(海外含む)へのアプローチを強化します。コスト面では機械化やデジタル化を進め、効率向上を図ります。
* 2026年3月期 連結売上高見込み:600億円
* 2026年3月期 営業利益見込み:23.6億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ジェンダーをはじめとするダイバーシティの実現に向け、性別・国籍・年齢を問わず、多彩な人財のスキル向上を目指しています。次世代を念頭においた研修・教育を実施し、風通しの良い組織構築と、誰もが安心して働ける職場環境の整備を進めることで、人財の定着と育成に力を注いでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 9.4年 | 5,704,000円 |
※平均年間給与は、入社1年以上の従業員を対象に賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 10.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 92.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 82.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 75.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 96.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 固定資産の減損について
事業用の有形固定資産について、時価の下落や将来キャッシュ・フローの状況によっては減損処理が必要となる可能性があります。これにより、経営成績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 大幅な気候変動について
気候変動による原材料の収穫不足や自然災害の増加は、調達価格の上昇や供給不足を招く恐れがあります。また、環境意識の高まりにより炭素排出量の多い商品の需要が減少した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 災害等について
関東から中四国にかけて8工場を展開していますが、大規模な自然災害や事故によりライフライン停止、物流遮断、システム障害等が発生した場合、製造・供給が困難となり、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定の取引先への依存について
売上高の半分以上をファミリーマートが占めています。同社の出店政策や価格政策などの経営戦略が変更された場合、シノブフーズの経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。



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