フジッコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジッコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する食品メーカー。「おまめさん」や「ふじっ子煮」などの煮豆・昆布製品、「カスピ海ヨーグルト」等の製造・販売を主力とします。直近の業績は、価格改定やプロモーション効果により売上高は571億円と増収を確保した一方、原材料価格や物流費の高騰が響き、営業利益は11億円と減益になりました。


※本記事は、フジッコ株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジッコってどんな会社?


昆布や豆を中心とした日本の伝統食材を現代の食卓に提案する食品メーカー。健康創造企業を目指しています。

(1) 会社概要


1960年、創業者山岸八郎が神戸市にて株式会社富士昆布を設立し、とろろ昆布の製造販売を開始しました。1985年にフジッコへ商号変更し、1990年に大証二部へ上場、1997年には東証・大証一部へ指定替えを果たしました。2013年には北海道工場および鳴尾工場の新棟を建設して生産体制を強化し、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は1,146名(単体929名)です。大株主は、筆頭株主が代表取締役社長の資産管理会社である有限会社ミニマル興産、第2位が資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同代表の資産管理会社となっており、創業家に関連する保有比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
有限会社ミニマル興産 21.69%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.28%
エフ・エス・ケー 3.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表者は代表取締役社長執行役員の福井正一氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
福井正一 代表取締役社長執行役員経営全般・経営企画担当 1995年入社。常務、専務を経て2004年より社長を務める。2021年より現職。
石田吉隆 取締役専務執行役員コア事業・営業・海外担当 1983年入社。取締役、常務を経て2021年より現職。
荒田和幸 取締役常務執行役員生産・国内グループ企業担当 1986年入社。執行役員、上席執行役員を経て2025年4月より現職。
寺嶋浩美 取締役常務執行役員人財・広報・品質保証担当 1987年入社。執行役員、上席執行役員を経て2025年4月より現職。
倉谷光彦 取締役(常勤監査等委員) 1985年入社。経理部長を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、小瀬昉(元ハウス食品グループ本社社長)、池田純子(元ブレインズ・カンパニー社長)、上谷佳宏(弁護士法人東町法律事務所代表社員弁護士)、中山聡(中山聡公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「惣菜製品」「昆布製品」「豆製品」「ヨーグルト製品」「デザート製品」「その他製品」の各分類で事業を展開しています。

(1) 惣菜製品


日配惣菜、おかず畑惣菜、調味食品、中華惣菜などを提供しています。スーパーマーケット等の量販店や百貨店を通じて一般消費者に販売されます。

これらの製品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っていますが、日配惣菜の製造はフジッコNEWデリカ、中華惣菜の製造・小売販売はフーズパレットが担っています。

(2) 昆布製品


「ふじっ子煮(佃煮昆布)」「ふじっ子(塩こんぶ)」「純とろ(とろろ昆布)」「だし昆布」などの昆布加工食品を提供しています。創業以来の主力事業の一つです。

製品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(3) 豆製品


「おまめさん(煮豆)」シリーズ、「大豆水煮」「蒸し豆」「豆菓子」などを提供しています。昆布製品と並ぶ同社の基幹事業です。

製品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(4) ヨーグルト製品


「カスピ海ヨーグルト」「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」およびサプリメント「善玉菌のチカラ」などを提供しています。健康志向の高まりに対応した製品群です。

製品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(5) デザート製品


「フルーツセラピー」などのナタデココ入りデザートを提供しています。食後のデザートや間食需要に対応しています。

製品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

(6) その他製品


通販限定商品や機能性素材などを提供しています。

製品および素材の販売により収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は642億円から一時539億円まで減少しましたが、直近では571億円まで回復傾向にあります。一方、経常利益は原材料高騰等の影響を受け、47億円から15億円台へと縮小しています。当期純利益も減少傾向にありますが、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 642億円 551億円 539億円 557億円 571億円
経常利益 47億円 35億円 16億円 19億円 16億円
利益率(%) 7.3% 6.4% 2.9% 3.4% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 21億円 15億円 11億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は増加しているものの、売上原価の上昇により売上総利益率はほぼ横ばいから微減となっています。販管費の増加も重なり、営業利益は15億円から11億円へ減少し、営業利益率は2.0%まで低下しました。コスト増を売上増で吸収しきれていない状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 557億円 571億円
売上総利益 164億円 165億円
売上総利益率(%) 29.5% 28.9%
営業利益 15億円 11億円
営業利益率(%) 2.7% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が35億円(構成比23%)、給料及び賞与が28億円(同18%)、広告宣伝費が21億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


製品別の売上高を見ると、全カテゴリーで前年を上回っています。主力の「惣菜製品」は横ばいを維持し、「昆布製品」は価格改定後も堅調です。「豆製品」と「ヨーグルト製品」はプロモーション効果もあり4〜5%台の成長を見せ、全体の増収に寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
惣菜製品 191億円 191億円
昆布製品 157億円 159億円
豆製品 99億円 105億円
ヨーグルト製品 65億円 68億円
デザート製品 27億円 27億円
その他製品 19億円 21億円
連結(合計) 557億円 571億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の儲けを示す営業CFはプラスを維持し、その範囲内で投資と借入返済や配当支払いを行っている健全型のキャッシュ・フロー状態です。前期よりも営業CFが増加し、投資余力が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 28億円 45億円
投資CF -34億円 -28億円
財務CF -13億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念「フジッコの心」において、「自然の恵みに感謝し 美味しさを革新しつづけ 全ての人々を元気で幸せにする 健康創造企業を目指します」という姿を掲げています。この理念のもと、全社一丸となってその実現に取り組み、成長戦略と効率経営の両輪を推進することで企業価値の向上に注力する方針です。

(2) 企業文化


同社は「5つの健康」(健全経営、健康経営、健康提供、健康社会、地球健康)をパーパスとして掲げています。サステナブル経営の実現には従業員自らが変化し変革を受け入れる姿勢と共通の価値観が必要と考え、一人ひとりの個性と能力を尊重するダイバーシティ宣言に基づき、イノベーションを生み出す組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2025年度を初年度とする「2025-2027中期経営計画」をスタートさせています。本期間をビジョン実現に向けた持続的成長基盤の形成期間と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高600億円台
* 連結営業利益率5%以上
* 当期純利益率3%台
* PBR1.0倍
* ROE3%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、「コアビジネスの事業強化と領域拡大」「圧倒的な競争優位性の確保」「効率経営の追求」「経営基盤の強化」の4つの基本戦略を実行します。特に昆布・豆・ヨーグルトを中心とした開発強化、自社技術を活かした周辺商品開発、既存品のリフレッシュに取り組みます。また、DX推進による業務効率化や人的資本経営の推進により、持続的な成長基盤を固める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「フジッコ人財育成方針」を策定し、個人の強みとチームの多様性を活かしてイノベーションを生み出す組織を目指しています。キャリア自律の支援や、同社独自の「まめこん検定」を通じた豆・昆布への関心深化、論理的思考力やデジタルリテラシーの向上を促進する研修を実施しています。また、ダイバーシティ宣言に基づき、心理的安全性の高い職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 18.3年 5,871,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 53.3%
男女賃金差異(全労働者) 68.1%
男女賃金差異(正規雇用) 77.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(37.1%)、障がい者雇用率(2.50%)、有給休暇取得率(61.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達及び価格の変動


主原料である昆布や豆は天候不順等による生産量の減少や価格変動の影響を受けやすく、また一部原材料の海外調達に伴う為替リスクもあります。これに対し、在庫備蓄、産地の複数確保、為替予約等によりリスクの低減を図っています。

(2) 食品の安全性の問題


品質に対する要求が高まる中、品質問題や風評被害が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。「ポジティブリスト制」や製品履歴管理システムの運用、事故防止委員会の設置などにより、品質保証体制の強化に努めています。

(3) 人手不足


工場作業員の確保難や時給単価上昇による人件費増加が業績に影響する可能性があります。これに対応するため、AIやロボット技術を活用した生産ラインの省人化・機械化を進め、特に人手がかかる工程の効率化に取り組んでいます。

(4) 特定の販売チャネルへの依存


主要な販売チャネルがスーパーマーケットであるため、流通環境の変化や新興チャネルの台頭が業績に影響する可能性があります。コンビニエンスストア、ドラッグストア、通信販売、業務用食材等のチャネル拡大や海外市場開拓を推進し、販路の分散化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

【面接対策】フジッコの中途採用面接では何を聞かれるのか

昆布、煮豆の総菜食品で圧倒的なシェアを誇るフジッコへの転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われるほか、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、ともに働く仲間として多角的に評価されるので、事前にしっかり対策をすすめましょう。