※本記事は、株式会社ニチレイ の有価証券報告書(第107期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニチレイってどんな会社?
同社グループは、冷凍食品などの加工食品事業と、食品物流を担う低温物流事業を中核とする企業グループです。
■(1) 会社概要
1942年に帝国水産統制として設立され、1945年に日本冷蔵へ商号変更しました。1949年に株式を上場し、1985年には現社名である株式会社ニチレイへ変更しています。2005年に持株会社体制へ移行し、加工食品、水産、畜産、低温物流などの事業を分社化しました。
連結従業員数は16,626名、単体では235名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には日本生命保険相互会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.47% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.75% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は大櫛顕也氏が務めています。社外取締役比率は31.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大 櫛 顕 也 | 代表取締役社長 | 1988年同社入社。経営企画部長、ニチレイフーズ社長などを経て2019年4月より現職。 |
| 竹 永 雅 彦 | 取締役(上席執行役員) | 1989年同社入社。ニチレイフーズ社長などを経て2023年4月より現職。 |
| 田 邉 弥 | 取締役(上席執行役員) | 1992年同社入社。ニチレイフレッシュ社長などを経て2023年4月より現職。 |
| 鈴 木 健 二 | 取締役(上席執行役員) | 1991年同社入社。財務部長などを経て2025年4月より現職。コーポレートマネジメント本部長。 |
| 髙 久 祐 一 | 取締役(上席執行役員) | 1994年同社入社。経営企画部長などを経て2025年4月より現職。戦略本部長。 |
| 嶋 本 和 訓 | 取締役(上席執行役員) | 1996年同社入社。ニチレイロジグループ本社社長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、鍋嶋麻奈(株式会社和喜愛愛代表取締役)、濱逸夫(ライオン株式会社相談役)、濱島健爾(ウシオ電機株式会社特別顧問)、吉丸由紀子(株式会社ニフコ執行役員)、山口裕視(株式会社三井物産戦略研究所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「加工食品」「水産」「畜産」「低温物流」「不動産」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 加工食品事業
冷凍食品(米飯類、コロッケ類、チキン加工品など)、レトルト食品、アセロラ製品などの製造・加工・販売を行っています。家庭用・業務用市場向けに多様な商品を提供しています。
商品の販売対価として収益を得ています。主な運営会社は、株式会社ニチレイフーズ、株式会社キューレイ、株式会社ニチレイウエルダイニングなどです。
■(2) 水産事業
えび、たこ、かに、魚卵などの水産品や水産加工品の調達・加工・販売を行っています。世界各地から素材を調達し、多様なニーズに対応しています。
商品の販売対価として収益を得ています。主な運営会社は、株式会社ニチレイフレッシュ、株式会社フレッシュまるいちなどです。
■(3) 畜産事業
鶏肉、豚肉、牛肉などの畜産品や畜産加工品の調達・加工・販売、および肉用鶏の飼育・販売を行っています。
商品の販売対価として収益を得ています。主な運営会社は、株式会社ニチレイフレッシュ、株式会社フレッシュチキン軽米などです。
■(4) 低温物流事業
冷蔵倉庫における保管、凍結、加工などの保管サービスや、輸配送サービス、物流コンサルティングなどを提供しています。国内最大規模の低温物流ネットワークを有しています。
荷主からの保管料、荷役料、運送料などから収益を得ています。運営は、株式会社ニチレイロジグループ本社、株式会社ロジスティクス・ネットワーク、各地域のニチレイ・ロジスティクス各社などが担っています。
■(5) 不動産事業
所有するオフィスビルや駐車場の賃貸、および不動産管理を行っています。
テナントからの賃貸料収入を得ています。主な運営会社は、同社および株式会社ニューハウジングです。
■(6) その他
診断薬・医療機器等の製造・販売、人事給与関連業務、緑化管理・清掃サービスなどを行っています。
製品販売やサービス提供の対価として収益を得ています。主な運営会社は、株式会社ニチレイバイオサイエンス、株式会社ニチレイビジネスパートナーズなどです。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。経常利益も概ね安定的に推移しており、直近では増益基調です。利益率は5%台を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,728億円 | 6,027億円 | 6,622億円 | 6,801億円 | 7,021億円 |
| 経常利益 | 335億円 | 317億円 | 334億円 | 383億円 | 399億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 5.3% | 5.1% | 5.6% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 95億円 | 124億円 | 93億円 | 92億円 | 102億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6,801億円 | 7,021億円 |
| 売上総利益 | 1,201億円 | 1,262億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.7% | 18.0% |
| 営業利益 | 369億円 | 383億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料・賞与・手当が248億円(構成比28.2%)、運送費及び保管費が214億円(同24.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の加工食品事業と低温物流事業が増収を牽引しました。加工食品は主力商品の拡販や海外での売上拡大が寄与し、低温物流は輸配送需要の取り込み等により増収となりました。一方、水産・畜産事業は低収益商材の削減等により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 加工食品 | 2,906億円 | 3,113億円 |
| 水産 | 616億円 | 585億円 |
| 畜産 | 788億円 | 638億円 |
| 低温物流 | 2,403億円 | 2,596億円 |
| 不動産 | 29億円 | 33億円 |
| その他事業 | 59億円 | 56億円 |
| 連結(合計) | 6,801億円 | 7,021億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ニチレイは、事業活動を通じて安定的に資金を生み出し、将来の成長に向けた投資と株主還元を両立させる財務戦略を展開しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業の根幹である本業で得られた収入を示しており、同社は安定した収益基盤を維持しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資やM&Aなど、将来の事業拡大に向けた支出を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得など、資金調達や株主への還元に関する動きを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 624億円 | 532億円 |
| 投資CF | -316億円 | -324億円 |
| 財務CF | -313億円 | -168億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「くらしを見つめ、人々に心の満足を提供する」をミッションとして掲げています。また、「地球の恵みを活かしたものづくりと、卓越した物流サービスを通じて、豊かな食生活と健康を支えつづけます」というビジョン(目指す姿)のもと、事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「お客様第一、安全第一、品質第一を貫く」「健全な利益を追求する」「透明性の高い経営を推進する」「持続可能な社会の実現に取り組む」「変革と創造に挑戦する」という5つの価値観を大切にしています。これらは日々の行動や意思決定の基準となるものです。
■(3) 経営計画・目標
長期経営目標「N-FIT 2035」および中期経営計画「Compass×Growth 2027」を策定しています。2035年の目標として、営業利益率10%、ROIC10%、海外売上高比率40%を掲げています。また、2027年度の中期経営計画では以下の数値目標を設定しています。
* 売上高:8,000億円
* 営業利益:560億円
* ROIC:8%以上
* ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の強化と資本効率の向上」を基本方針とし、競争優位領域の深掘りとグループシナジーの発揮、海外事業拡大、人的資本経営の推進に取り組みます。具体的には、加工食品と水産・畜産事業の統合によるシナジー創出、欧州・ASEAN・北米での海外事業拡大、食品物流プラットフォームの強化などを重点施策として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「サステナビリティ基本方針」を実現する最重要資産を人財と位置づけ、「働きがい」と「健康経営」を土台とした人財戦略を推進しています。多様な人財の確保と育成(DE&I)、新たな価値創造、個人に即した学習機会の提供を掲げ、女性管理職比率の向上や男性の育児休業取得推進、海外事業人財の育成などに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.6歳 | 18.1年 | 7,434,707円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 47.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品や原材料等の価格変動
同社グループが取り扱う鶏肉等の畜産品や水産品などは、市況や作柄、漁獲量等により価格が大きく変動する可能性があります。コスト上昇分をコストダウンや価格改定で吸収できない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 為替変動の影響
主要事業において原材料の一部を海外から調達しており、また海外子会社を有しているため、為替変動の影響を受けます。特に米ドル、タイバーツ、ユーロなどの為替レートが予測を超えて急激に変動した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 持続可能な食の調達
人権や労働環境への配慮、水産資源管理などへの社会的要請が高まる中、法規制の強化等が想定されます。取組みが不十分な場合、原材料の安定調達に支障をきたすだけでなく、社会的信用の毀損や対応費用の発生により、業績に影響を与える可能性があります。



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