ニチレイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチレイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチレイは東京証券取引所プライム市場に上場し、加工食品の製造や低温物流事業を展開しています。業績トレンドとして、直近の連結売上高は主力の加工食品と低温物流が国内外で伸長し増収を達成しています。利益面でも、コスト上昇の影響を受けたものの物流事業が堅調に推移し、営業利益ベースで増益となりました。


※本記事は、株式会社ニチレイの有価証券報告書(第108期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチレイってどんな会社?


同社は、食品事業と低温物流事業を主力とし、食のインフラを支える企業です。

(1) 会社概要


1942年に帝国水産統制として設立され、1945年に日本冷蔵へ商号を変更し、1985年に現在のニチレイとなりました。1949年に東京証券取引所などに上場しました。1952年に調理冷凍食品の販売を開始して以来、水産、畜産、低温物流などへと事業を拡大し、2005年に持株会社体制へ移行しています。

連結の従業員数は17,763名、単体では234名です。大株主については、筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務を行う信託銀行となっています。また、第3位株主には生命保険会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.23%
日本カストディ銀行(信託口) 9.98%
日本生命保険相互会社 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長(CEO)は嶋本和訓氏が務めています。社外取締役は5名で、構成比は約31.3%です。

氏名 役職 主な経歴
嶋本和訓 代表取締役社長(CEO) 1996年入社。ニチレイロジグループ本社営業戦略部長、同社代表取締役社長等を経て2026年4月より現職。
大櫛顕也 代表取締役会長 1988年入社。ニチレイフーズ代表取締役社長、日本冷凍食品協会会長等を経て2026年4月より現職。
竹永雅彦 取締役上席執行役員(COO) 1989年入社。ニチレイフーズ家庭用事業部長、同社代表取締役社長等を経て2026年4月より現職。
田邉弥 取締役上席執行役員 1992年入社。ニチレイフレッシュファーム代表取締役社長、ニチレイフレッシュ代表取締役社長等を経て2023年4月より現職。
鈴木健二 取締役上席執行役員(CFO) 1991年入社。財務部長、経営管理部長、コーポレートマネジメント本部長等を経て2026年4月より現職。
髙久祐一 取締役上席執行役員(CSO・CGO) 1994年入社。ニチレイロジグループ本社経営企画部長、同社情報戦略部担当等を経て2026年4月より現職。


社外取締役は、鍋嶋麻奈(元DBS証券代表取締役)、濱逸夫(元ライオン代表取締役会長)、濱島健爾(元ウシオ電機代表取締役社長)、吉丸由紀子(元日産自動車室長)、山口裕視(元三井物産戦略研究所代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品」「低温物流」「不動産」および「その他」事業を展開しています。

食品


調理冷凍食品や農産加工品などの加工食品のほか、エビやカニなどの水産品、鶏肉や牛肉などの畜産品の加工・販売を行っています。また、レトルト食品やウエルネス食品、アセロラ飲料や包装氷など、食と健康に関わる幅広い商品を提供しています。

販売先からの代金が主な収益源です。加工食品事業はニチレイフーズやニチレイフレッシュなどが、水産事業および畜産事業はニチレイフレッシュなどが運営を担っています。海外市場向けには、北米、欧州、アジアの各地域の子会社を通じて事業を展開しています。

低温物流


食品などの温度管理が必要な商品に対する保管サービスや輸配送サービス、配送センター機能の提供を行っています。さらに、物流センターの運営事業や物流コンサルティング、凍氷の製造・販売なども手がけています。

顧客である荷主企業から受け取る輸配送や保管のサービス対価が収益源です。事業の統括はニチレイロジグループ本社が行い、国内事業はロジスティクス・ネットワークや各地の地域子会社が、海外事業は欧州や中国、東南アジアの各子会社が運営しています。

不動産


オフィスビルおよび駐車場の賃貸や、不動産の管理などを展開しています。主に自社保有物件を活用して、安定的な不動産事業を推進しています。

テナントからの賃貸料などが主な収益源です。当事業は親会社である同社自身が行っているほか、不動産の賃貸・管理業務については、子会社であるニューハウジングが運営を担当しています。

その他


バイオサイエンス事業として、診断薬や医療機器などの製造および販売を行っています。また、グループ内の人事給与、経理、法務などに関連する業務サービスや、環境・事務サポートなどの事業を展開しています。

バイオサイエンス製品の販売代金や各種サービスの提供対価が収益源です。バイオサイエンス事業はニチレイバイオサイエンスが運営し、シェアードサービス業務などはニチレイビジネスパートナーズやニチレイアウラが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は増収トレンドを維持しています。利益面においても、コストダウン施策や販売価格の改定、物流事業における保管・輸配送収益の向上などにより、安定した利益率を確保しつつ緩やかな増益基調で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,027億円 6,622億円 6,801億円 7,021億円 7,161億円
経常利益 317億円 334億円 383億円 399億円 401億円
利益率(%) 5.3% 5.1% 5.6% 5.7% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 124億円 93億円 92億円 102億円 128億円

(2) 損益計算書


売上高は増加していますが、売上原価の増加幅が同水準であり、売上総利益率および営業利益率は前年度と同等の水準を維持しています。これは、コスト上昇に対して適切な価格転嫁や事業構造の見直しを進めている結果と推測されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,021億円 7,161億円
売上総利益 1,262億円 1,292億円
売上総利益率(%) 18.0% 18.0%
営業利益 383億円 390億円
営業利益率(%) 5.5% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び従業員給料・賞与・手当が261億円(構成比29%)、運送費及び保管費が207億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の食品事業は水産・畜産事業の構造改革により減収となりましたが、低温物流事業が国内外で保管や輸配送需要を着実に取り込み、増収に貢献しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品 4,337億円 4,264億円
低温物流 2,596億円 2,820億円
不動産 33億円 33億円
その他 56億円 44億円
連結(合計) 7,021億円 7,161億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金をもとに借入金の返済や設備投資を行っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.4%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 532億円 487億円
投資CF -324億円 -331億円
財務CF -168億円 -32億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「食からひろがる幸せを、ニチレイが未来へつなぐ」というミッションを掲げています。また、ビジョンとして「食と人と地球の架け橋になる、価値創造カンパニー」を定め、冷やす力を活かした食のバリューチェーンを通じて新たな価値を生み出し、人と地球がともによろこぶ食の未来をつなぐことを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「ニチレイズム」という価値観を重視しています。これは「誠実に向き合う」「質を追求する」「期待を超えて挑む」「力を合わせ共創する」「人を大切にする」という5つの行動指針から成ります。社会の一員としてステークホルダーと広く対話し、共に考え、行動することで、豊かな食生活と健康を支える企業文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長に向けたグループ中期経営計画「Compass×Growth 2027」を推進しています。本計画の最終年度となる2027年度において、以下の財務目標の達成を目指しています。

・売上高 7,773億円
・営業利益 452億円
・ROE 10%以上
・ROIC 8%以上
・海外売上高比率 30.4%

(4) 成長戦略と重点施策


新たな企業経営理念のもと、会社や部門の垣根を越え、グループ総合力を最大化する組織運営を目指しています。M&Aを含む海外事業の拡大や、低温物流事業と食品事業のシナジー最大化に向けた取組みを推進するとともに、長期視点での新価値創造や企業ブランド向上を促進します。IT・DX分野の組織体制変更による経営の高度化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略と人材戦略の連動を重視し、長期経営目標の実現に向けた人材を重点的に確保・育成・配置しています。特に、グループシナジーを牽引する「経営人財」、事業拡大を支える「海外人財」、情報基盤整備を担う「DX・IT人財」の強化に注力しています。また、多様な人材が活躍できるDE&Iや健康経営の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 17.8年 7,726,943円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.3%
男性育児休業取得率 86.7%
男女賃金差異(全労働者) 74.9%
男女賃金差異(正規雇用) 78.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性取締役・監査役比率(18.8%)、従業員エンゲージメントスコア(70pt)、人財投資額(12億円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品に関する品質問題


食品の製造・販売において、衛生基準の超過、異物混入、アレルギー表示不備などが発生するリスクがあります。大規模な商品回収等が生じた場合、同社グループの社会的信用が毀損し、業績に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、食品安全マネジメントシステムの導入など品質保証体制の強化に努めています。

(2) 多様な人財の確保及び育成


少子高齢化に伴う労働力不足や雇用情勢の変化により、必要な人財の確保や育成が計画通りに行えなかった場合、事業運営に影響を与えるリスクがあります。同社は従業員エンゲージメントの向上や女性活躍の推進、年間休日日数の増加など、多様な人財が安心して働ける職場環境づくりを進めています。

(3) 気候変動への対応


脱炭素社会への移行が加速する中、冷凍・冷蔵技術を基盤とし電力を多く消費する同社にとって、CO2排出削減の遅れは対応費用の増加につながるリスクがあります。また、異常気象の頻発によるサプライチェーンへの影響も懸念されます。同社は自然冷媒への切り替えや再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。

(4) 為替変動の影響


同社グループは、主要事業において商品や原材料の一部を海外より調達しており、海外子会社も保有しているため、為替変動の影響を受けます。予測を超えた急激な変動があった場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、為替予約取引を実施するなど影響を最小限にとどめるよう努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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