※本記事は、株式会社ジェイ・エス・ビー の有価証券報告書(第37期、自 2024年11月1日 至 2025年10月31日、2026年01月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジェイ・エス・ビーってどんな会社?
学生マンション「UniLife」の運営管理を中核に、高齢者住宅や学生支援サービスも展開する企業です。
■(1) 会社概要
1976年に京都で創業し、学生向け物件の仲介業を開始しました。1990年にジェイ・エス・ビーを設立してグループ経営体制へ移行し、全国展開を進めました。2017年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2018年には市場第一部へ指定替えとなりました。2019年には東京学生ライフなどの株式を取得して完全子会社化し、事業基盤を強化しています。
2025年10月31日時点で、連結従業員数は1,254名、単体では245名です。筆頭株主は岡靖子氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岡 靖子 | 33.96% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.06% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 7.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は森高広氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森 高広 | 取締役社長(代表取締役) | 1997年シティビルサービス入社。2004年同社へ転籍。企画開発本部長等を経て、2025年2月より現職。 |
| 安藤 英二 | 取締役副社長 | 2000年同社入社。ジェイ・エス・ビー・ネットワーク西日本事業部長兼九州支社長等を経て、2025年2月より現職。 |
社外取締役は、清原裕平(公認会計士・税理士)、福島裕記(元日本生活協同組合連合会常勤監事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産賃貸管理事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産賃貸管理事業
主に学生マンションの企画提案、入居者募集、建物管理、家賃回収代行などを行っています。不動産オーナーに対して土地活用の企画を提案し、竣工後は一括借上(サブリース)や管理受託を行うことで、学生等の入居者に住まいを提供します。また、自社で開発した学生マンションの運営も行っています。
収益は、入居者からの家賃収入や、不動産オーナーからの管理運営受託手数料、仲介手数料などが主な源泉です。運営は主に同社および株式会社ジェイ・エス・ビー・ネットワークなどの連結子会社が行っており、建物メンテナンス業務や家賃債務保証業務などもグループ会社が連携して提供しています。
■その他
企業の採用活動支援や学生向けの就職活動支援を行う「学生支援サービス」、留学生向けの「日本語学校事業」、および収益不動産の販売を行う「不動産販売事業」を展開しています。
学生支援サービスでは企業説明会の企画運営受託料、日本語学校では授業料、不動産販売事業では不動産の売却代金が収益となります。運営は株式会社OVO等の子会社や同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益が前期まで増加基調でしたが、当期は減益となりました。当期利益についても前期と比較して減少しています。
| 項目 | 2021年10月期 | 2022年10月期 | 2023年10月期 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 528億円 | 579億円 | 638億円 | 695億円 | 760億円 |
| 経常利益 | 52億円 | 62億円 | 71億円 | 79億円 | 73億円 |
| 利益率(%) | 9.9% | 10.7% | 11.1% | 11.3% | 9.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 36億円 | 43億円 | 79億円 | 49億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は減少しました。売上総利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 695億円 | 760億円 |
| 売上総利益 | 124億円 | 137億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.9% | 18.0% |
| 営業利益 | 81億円 | 77億円 |
| 営業利益率(%) | 11.7% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、租税公課が24億円(構成比39%)、給与手当が10億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産賃貸管理事業が売上高の大部分を占めており、前期比で増収となりました。その他事業は前期比で減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年10月期) | 売上(2025年10月期) |
|---|---|---|
| 不動産賃貸管理事業 | 685億円 | 755億円 |
| その他 | 10億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 695億円 | 760億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ジェイ・エス・ビーのキャッシュ・フローについて解説します。
同社は不動産賃貸管理事業を単一セグメントとしており、季節的な需要変動により第2四半期に売上高・営業利益が偏在する傾向があります。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に当期純利益や減価償却費、法人税等の支払いによって増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因で使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入や長期借入金の返済、配当金の支払いにより増加しました。
| 項目 | 2024年10月期 | 2025年10月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 82億円 | 68億円 |
| 投資CF | -53億円 | -93億円 |
| 財務CF | 27億円 | 25億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安心・安全・快適・環境・健康・福祉」に配慮した豊かな生活空間の創造を目指しています。健全な若者の育成と魅力溢れる社会の実現に対し、おもてなしの心と笑顔で貢献することを理念としています。また、「UniLife」ブランドを通じて、若者の成長と社会課題の解決に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
新しい領域に挑戦する「探索」と既存事業の成長を図る「深化」を両立させる「両利きの経営」と、規模だけでなく社員一人ひとりが知識を生み出し組織の学習スピードを高める「社員全員の経営」を重視しています。また、人間性とテクノロジーの融合による独自の価値創出を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年10月期を最終年度とする中期経営計画『GT02』において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:788億円
* 営業利益:87億円
* ROE:15%以上
* 自己資本比率:40%以上
* 管理戸数:104,000戸
■(4) 成長戦略と重点施策
「創造する組織」への進化を目指し、業務改革を最重要項目として設定しています。具体的には、ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の3本柱を推進します。また、人的資本への投資や気候変動対応、事業ポートフォリオの最適化に取り組み、持続的な企業価値向上を図ります。
* 自社物件開発投資:270億円
* 新規事業/DX投資:20億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員は資産である」というコンセプトのもと、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出す経営を目指しています。生活と仕事の調和、新しいワークスタイルへの対応、ダイバーシティ推進、教育研修の充実を通じて、社員エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月期 | 43.4歳 | 12.0年 | 5,231,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.0% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 91.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 学生マンション事業への依存
売上の大半を不動産賃貸管理事業、特に学生マンション事業が占めています。少子化による学生数の減少や競合の激化などにより同事業の環境が悪化した場合、グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。これに対し、学生支援サービスなどの中核事業の育成や、付加価値の高い物件供給に努めています。
■(2) 不動産市況の変化
日本経済の急速な悪化により不動産市場が影響を受けた場合、家賃収入や仲介手数料の減少、保有不動産価値の下落による減損処理などが発生する可能性があります。経済動向や不動産関連指標を注視し、リスクの軽減に取り組んでいます。
■(3) 少子化リスク
18歳人口の減少に伴い、将来的に学生数が減少する可能性があります。予測を上回るペースで出生数が減少し、大学進学等の状況が変化した場合、特定地域での市場縮小などが起こり得ます。進学率等の統計情報の収集や教育機関の動向を注視し、影響の低減に努めています。



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