※本記事は、美樹工業株式会社の有価証券報告書(第64期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 美樹工業ってどんな会社?
総合建設業として建設工事や住宅の建築・販売事業を展開し、地域に根差した経営を行う企業です。
■(1) 会社概要
1952年に兵庫県姫路市で創業し、1956年に大阪ガスの指定工事会社となりました。1972年には積水化学工業の代理店として子会社を設立し、住宅事業を拡大しました。2004年にジャスダック(現東京証券取引所スタンダード市場)に上場し、直近ではエスデイ設計室やヒョウ工務店等を買収しています。
従業員数は連結で590名、単体で305名体制で事業を運営しています。大株主については、筆頭株主が三木佳美氏であり、第2位は三木博也氏、第3位はフレンド商会となっています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長は岡田尚一郎氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡田尚一郎 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。建築土木営業部長、建設事業本部長等を経て、2015年より現職。 |
| 山下直彦 | 常務取締役建設事業本部長 | 1994年同社入社。建設事業本部次長、大阪営業所部長等を経て、2023年より現職。 |
| 瀬川典弘 | 常務取締役ガス事業本部長 | 2003年同社入社。道路事業部長、土木事業部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、園田学(元神戸製鋼所業務部担当部長)、寺本真裕美(寺本社会保険労務士事務所代表)、伊藤史子(NKC入社)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」「住宅事業」および「その他」事業を展開しています。
■建設事業
建築工事、土木工事、都市ガス導管敷設工事、給排水衛生空調設備工事、ガス設備工事等の施工に加え、太陽光発電事業や不動産物件の賃貸・管理を行っています。
公共機関や民間からの工事請負代金等を収益源とし、運営は主に美樹工業およびヒョウ工務店、三樹エンジニアリング等が行っています。
■住宅事業
積水化学工業のユニット住宅の建築・販売やリフォーム工事、戸建住宅の建築・販売、不動産物件の賃貸・管理を行っています。
住宅購入者等からの販売代金やリフォーム工事代金を収益源とし、運営は主にセキスイハイム山陽およびリブライフが行っています。
■その他事業
飲食事業の経営や、持分法適用関連会社を通じた鋼板加工等の事業を行っています。
顧客からの飲食代金等を収益源とし、運営はリブライフ等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、全体として増加傾向にあります。経常利益および当期利益も堅調に推移しており、特に直近の事業年度では収益性が大きく向上しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 264億円 | 308億円 | 322億円 | 273億円 | 362億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 12億円 | 13億円 | 12億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 3.8% | 4.1% | 4.2% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 6億円 | 7億円 | 6億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益が大きく伸びています。増収効果に加えて追加工事の請負等による採算拡大が寄与し、営業利益率は大きく改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 273億円 | 362億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.6% | 22.1% |
| 営業利益 | 11億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が21億円(構成比39%)、賞与引当金繰入額が2億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて増収を達成しています。特に建設事業は大型物件工事の進捗や子会社の寄与により売上と利益が大きく伸長し、住宅事業も販売棟数の増加やリフォーム工事の好調により利益率が改善しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 153億円 | 226億円 | 8億円 | 20億円 | 8.7% |
| 住宅事業 | 118億円 | 133億円 | 3億円 | 6億円 | 4.5% |
| その他事業 | 2億円 | 2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 4.1% |
| 調整額 | - | - | -0.1億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 273億円 | 362億円 | 11億円 | 26億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業はマイナスですが、将来の成長を見据えて借入等による資金調達を行い、設備等への投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | -21億円 |
| 投資CF | -7億円 | -5億円 |
| 財務CF | 6億円 | 31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「信用第一」を掲げています。顧客が期待する品質・納期に応え、施工後の顧客満足度向上を図ることによる「顧客からの信用」をはじめ、「地域からの信用」「社会からの信用」「社内の信用」の高揚を経営の基本としています。
■(2) 企業文化
社員全員が当事者意識をもって目標達成することによる信用の高揚を重視しています。また、原価率の低減や経営基盤の拡充に努めることで、企業として安定した収益の成長を続け、株主の期待に応える文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
安定的な成長を目指し、一層の経営体質強化に向けた利益重視の観点から、売上高経常利益率を重要な経営指標としています。
* グループ全体の売上高経常利益率5.0%以上
* 単体での売上高経常利益率8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
収益力の向上として各事業での原価率低減や経営効率化を推進し、人材確保と教育研修の充実に取り組みます。また、環境保護や顧客ニーズに応える工事品質の向上を通じて企業価値を高め、有利子負債の削減による自己資本の充実で財務体質の改善を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の安定化および拡大を図るため、専門的スキルと全体を統括するマネジメント力を兼ね備えた優秀な人材を継続的に確保・育成することを重視し、教育研修・人材育成の充実に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.2歳 | 12.7年 | 5,853,004円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.3% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 57.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(20.4%)、有給休暇取得率(59.0%)、月平均残業時間(18.8時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制等について
建設業界および不動産業界は、建設業法や建築基準法、宅地建物取引業法などの法的規制を受けており、これらの法律の改正や、許認可・登録の取消し、更新不可等が発生した場合、業績に重要な影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 建設・住宅業界について
公共投資の削減や民間建設投資の減少による影響のほか、雇用不安や金利上昇、地価下落、住宅借入金等特別控除制度の変更による住宅需要の減退などが生じた場合、販売在庫の増大等を通じて財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 不動産賃貸について
商業用および居住用の土地・建物の賃貸事業において、周辺地域の賃貸借条件や需給環境の変化などにより、賃貸借契約の内容変更や解除が発生した場合、同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。



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