六甲バター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

六甲バター 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

六甲バターは、東京証券取引所プライム市場に上場し、「Q・B・B」ブランドで知られるチーズやナッツ、豆菓子などの製造販売を主力とする食品メーカーです。当期よりナッツ事業子会社等を連結化して連結決算へ移行しており、売上高は433億円、経常利益は13億円を計上し、安定した事業基盤を築いています。


※本記事は、六甲バター株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 六甲バターってどんな会社?


同社は「Q・B・B」ブランドのチーズを中心に、ナッツや豆菓子等の食品の製造販売を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1948年にマーガリン製造を目的として創立し、1954年に現在の六甲バターへ社名を変更しました。1958年よりプロセスチーズの製造を開始し、事業を拡大しています。2013年の東証一部上場を経て、2025年にはナッツ事業を展開するミツヤグループ本社を完全子会社化し、ベトナムにも新会社を設立しました。

現在の従業員数は連結で726名、単体で505名体制となっています。筆頭株主は資本・業務提携等で協力関係にある事業会社の三菱商事で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は都市銀行となっています。

氏名 持株比率
三菱商事 16.52%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.86%
三菱UFJ銀行 4.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長兼CEOは塚本浩康氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
塚本浩康 取締役社長兼CEO(代表取締役) 2000年同社入社。購買部長などを経て2013年取締役に就任。常務、専務、副社長を歴任し、2021年代表取締役社長に就任。2023年より現職。
三宅宏和 取締役会長 1976年同社入社。生産管理グループ長などを経て2007年取締役に就任。生産本部長、代表取締役社長、代表取締役会長を歴任し、2025年より現職。
中村行男 取締役専務執行役員生産本部長兼神戸工場長 1984年同社入社。生産管理部長などを経て2015年取締役に就任。常務取締役などを歴任し、2024年より現職。
斎藤保典 取締役常務執行役員営業本部長兼マーケティング本部管掌 1988年同社入社。東京支店長や家庭用営業部長などを経て2017年取締役に就任。常務取締役などを歴任し、2024年より現職。
岡英一 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。内部監査室長、執行役員内部監査室長などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、佐藤容子(弁護士)、新山陽子(京都大学名誉教授)、田口泰(三菱商事農畜産本部畜産部長)、今津龍三(今津代表取締役社長)、早川芳夫(早川会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「チーズ」「ナッツ」および「その他」事業を展開しています。

(1) チーズ


大部分を同社が製造販売し、一部は関連当事者などの外部加工業者に製造を委託し、同社が販売しています。主要製品はプロセスチーズを中心としたチーズ製品であり、一般消費者向けの家庭用や業務用として幅広く提供しています。

主に小売店や卸売業者への製品販売によって収益を得ています。事業の運営は主に同社が担っており、海外向けには持分法適用関連会社や新設したベトナムの子会社などが事業を展開しています。

(2) ナッツ


ナッツや豆菓子などの食品を製造販売しています。2024年から2025年にかけてミツヤグループ本社を完全子会社化し、ナッツ事業において製造から販売までの一貫した体制を構築しました。

製品の販売を通じて顧客から収益を得ています。事業の大部分は連結子会社のミツヤグループ本社、ミツヤおよび千成堂が製造販売を担い、一部を同社が販売しています。

(3) その他


「チーズ」および「ナッツ」の各セグメントに含まれない食品の販売などを主な事業として展開しています。幅広い食文化の提供に貢献するための周辺商品を取り扱っています。

食品の販売代金から収益を得ており、同社を中心に製品の仕入および販売業務を運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社は2025年12月期より連結決算へ移行したため、売上高や経常利益については当期の数値のみを記載しています。当期の連結売上高は433億円、経常利益は13億円、当期利益は10億円となりました。原材料価格の高騰に対応した価格改定の効果などにより、安定した利益水準を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - - - - 433億円
経常利益 - - - - 13億円
利益率(%) - - - - 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 2億円 4億円 10億円 10億円

(2) 損益計算書


同社は当期より連結決算へ移行しており、当期の売上高は433億円となりました。原材料価格等の高騰による影響を受けつつも、チーズ製品の価格改定などを実施したことで、売上総利益は堅調に推移し、営業利益は14億円を計上しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 - 433億円
売上総利益 83億円 84億円
売上総利益率(%) - 19.4%
営業利益 19億円 14億円
営業利益率(%) - 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が15億円、運賃が13億円、広告宣伝費が8億円を占めています。また、当期の総製造費用においては、原材料費が約237億円(構成比76.6%)、経費が約37億円(同11.9%)、労務費が約35億円(同11.5%)となっており、原材料費の比率が高いコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


当期より製品種類別に管理する体制へ移行し、「チーズ」「ナッツ」「その他」の3セグメントとなりました。主力であるチーズ事業が売上の大部分を占めており、ナッツ事業は子会社化による一貫体制の構築を通じてシナジー創出を図っています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
チーズ - 421億円
ナッツ - 6億円
その他 - 5億円
連結(合計) - 433億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF - -17億円
投資CF - -22億円
財務CF - 16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「健康で、明るく、楽しい食文化の提供によって社会に貢献する」を経営理念として掲げています。この理念の実現に向け、世界中の人々に美味しい食文化を届け、地域社会や地球環境を次世代に伝えることを事業活動の中心に据え、持続的な成長と社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


「開発先導型活力企業」を掲げ、世界初のスティックチーズや日本初の個包装スライスチーズを開発するなど、新しい価値の創造に挑戦し続ける文化が根付いています。価値の源泉を「人と企業風土と技術力」と位置づけ、全役員・従業員が「六甲バターフィロソフィ」を共有し、最高のチームワークで働くことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けて「高付加価値創造企業」への変革と持続的な収益拡大、企業価値向上の実現を目指しています。中長期経営方針「ビジョン2030」に基づき、2025年から3年間を対象とした「中期経営計画2027」を策定し、事業成長戦略および基盤強化戦略を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業における高付加価値化やプライム市場上場企業に求められるコーポレート・ガバナンス体制の強化に取り組んでいます。また、ナッツ事業においてはミツヤグループとの資本・人材等の経営資源の共有を図り、新たな市場開拓や海外事業の拡大など、様々なシナジーを創出することで成長戦略を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を大切な経営資本と位置付け、一人ひとりの個性と能力を引き出すことで、継続的な人材育成を行っています。「開発先導型人間」の育成を目指し、定年延長によるシニア層の活性化や、非正社員から限定正社員への登用などの多様な人材の活用を推進するとともに、仕事と生活の調和を図る柔軟な働き方の実現に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.0歳 15.0年 6,378,250円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.7%
男性育児休業取得率 30.0%
男女賃金差異(全労働者) 54.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 91.8%


また、同社は「人的資本・多様性」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、非正社員から正社員への登用人数(計4名)、自己啓発支援/実務力向上支援の単年度制度利用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要原材料の市況変動


同社グループが生産する製品の主原料であるナチュラルチーズやナッツ類の大半は海外から調達しています。そのため、海外生産地における気候変動や国際的な需給条件の悪化によって価格が変動した場合、原価上昇を通じて同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は購入契約の方法や時期を慎重に検討し、価格変動リスクの軽減に努めています。

(2) 為替相場の変動


海外からの原材料調達比率が高いため、為替レートが円安に進行した場合には仕入コストが上昇し、利益率を圧迫するリスクがあります。同社グループは為替相場の変動によるリスクをヘッジするため、外貨建債務等の一部について為替予約取引等のデリバティブ取引を行っていますが、すべてのリスクを完全に回避できるものではありません。

(3) 市場競合の激化


事業を展開する多くの市場において、他社との厳しい価格競争に直面しています。また、国際的な経済連携協定(TPPやEPAなど)の発効により乳製品の関税水準が引き下げられた場合、原料調達面でのメリットがある一方で、海外からの直接輸入が増加し、販売市場における競争がさらに激化することで業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 食品の安全性確保


消費者の「食の安全・安心」に対する関心が高まる中、全ての工場で「食品マネジメントシステムFSSC 22000」の認証を取得し、品質管理を徹底しています。しかし、予期せぬ品質問題の発生や、食品業界全般に対する風評被害が生じた場合、ブランドイメージの低下や製品回収による損失が発生し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。