鳥越製粉 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥越製粉 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥越製粉は東京証券取引所スタンダード市場および福岡証券取引所に上場し、小麦粉、プレミックス等の食品製造や精麦・飼料の製造販売を主要事業として展開しています。直近の業績では、精麦の販売価格上昇や出荷数量増加等が寄与し、売上高は微増、営業利益および経常利益は大幅な増益を達成し、堅調な推移を示しています。


※本記事は、鳥越製粉株式会社の有価証券報告書(第91期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鳥越製粉ってどんな会社?


鳥越製粉は、小麦粉やプレミックスなどの食料品製造と、精麦および飼料の製造販売を主力とする老舗企業です。

(1) 会社概要


1935年に米・雑穀の売買等を目的として鳥越商店を設立し、1940年に製粉・精麦業へ転換しました。1951年に鳥越製粉へ商号変更し、1962年に東京証券取引所等へ株式を上場しました。その後、国内外の企業と業務提携や子会社化を進め、2022年に精麦・飼料事業を統括する鳥越グレインホールディングスを設立しました。

従業員数は連結で354名、単体で223名です。筆頭株主は鳥越商店で、第2位は事業会社の三井物産、第3位は金融機関の福岡銀行です。

氏名 持株比率
鳥越商店 6.00%
三井物産 5.50%
福岡銀行 4.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は鳥越徹が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鳥越徹 代表取締役会長兼社長 1988年三和銀行入行。2000年同社入社。常務取締役、代表取締役社長執行役員等を経て2016年より現職。
高峰和宏 取締役副会長製造本部管掌 1976年同社入社。常務執行役員、取締役常務執行役員、代表取締役社長執行役員を経て2016年より現職。
中川龍二三 取締役常務執行役員管理本部長 1983年同社入社。執行役員経理部長、取締役執行役員管理本部長兼経理部長などを経て2020年より現職。
阪東一光 取締役常務執行役員研究開発本部長、営業部管掌 1985年同社入社。執行役員営業部長、石橋工業代表取締役社長などを経て2025年より現職。


社外取締役は、倉富純男(西日本鉄道代表取締役会長)、酒見俊夫(西部ガスホールディングス相談役)です。

2. 事業内容


同社グループは、食料品、飼料、およびその他の事業を展開しています。

(1) 食料品事業


同社および連結子会社が小麦粉、ライ麦粉、家庭用・業務用プレミックス、品質改良剤などの食品、また丸麦、押麦などの精麦を製造・販売しています。顧客は食品メーカーや卸売業者、ベーカリーなどです。
収益は、製造・仕入れた製品を直接または卸売業者等を通じて販売することで得ています。事業の運営は同社に加え、カネニ、大田ベーカリー、久留米製麺、鳥越精麦、石橋工業、中島精麦工業などの子会社が行っています。

(2) 飼料事業


同社グループにおいて、畜産や養殖などに使用される飼料用商品の製造および仕入販売を行っています。主な顧客は畜産農家や飼料販売業者です。
収益は、飼料の販売代金から得ています。事業の運営は、子会社である石橋工業および中島精麦工業が製造販売を担い、カネニが飼料用商品の仕入販売を行っています。

(3) その他事業


農産物の保管業務など、食料品および飼料事業に付帯するサービスを提供しています。
収益は、政府所有の輸入小麦等に係る受取保管料や荷役料から得ています。運営は同社および石橋工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は227億円から263億円へと概ね増加傾向にあります。経常利益は12億円から17億円の範囲で推移し、直近では利益率が改善して増益となっています。当期利益も一定の水準を維持しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 227億円 244億円 264億円 262億円 263億円
経常利益 12億円 15億円 14億円 14億円 17億円
利益率(%) 5.3% 6.1% 5.2% 5.4% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 5億円 6億円 5億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は前年同期比で微増となりましたが、売上原価の低減などにより売上総利益が拡大しました。その結果、営業利益率も上昇し、収益性の改善が見られます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 262億円 263億円
売上総利益 49億円 52億円
売上総利益率(%) 18.6% 19.9%
営業利益 11億円 13億円
営業利益率(%) 4.1% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が16億円(構成比41%)、給料及び手当が8億円(同20%)を占めています。売上原価については、原材料費が111億円(構成比81%)、経費が19億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


製粉や食品は販売価格の値下げや出荷数量減少により減収となりましたが、精麦は販売価格上昇や出荷数量増加により増収を牽引しました。また、その他事業も受取保管料等の増加により伸長しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
製粉 118億円 116億円
食品 71億円 68億円
精麦 59億円 64億円
飼料 13億円 13億円
その他 0.4億円 0.6億円
連結(合計) 262億円 263億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

鳥越製粉は、営業活動によりキャッシュ・フローを創出し、投資活動では有形固定資産の取得に資金を投じました。財務活動では、配当金の支払い等により資金が流出しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 19億円 31億円
投資CF -4億円 -22億円
財務CF 5億円 -15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業活動を通じて、同社を支えて頂いている全ての人に豊かさと夢をもたらし、地域社会、日本そして世界の人々の生活文化の向上に貢献し、世の中になくてはならない企業になる」という企業理念を掲げています。お得意様や消費者に信頼される製品の安定的供給を通じて社会に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社では「人は財産である」との考え方のもと、「人材」ではなく「人財」という言葉を用いています。この考え方に沿って、「安心して働ける環境をつくる」「キャリア開発や計画的育成を行う」「より参画的で革新的な組織づくりに寄与する」「鳥越製粉の『らしさ』を継承する」という方針に基づき、人事制度を構築し運用する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「TTC150 Stage3」において、厳しい経営環境下でも持続的に成長するための目標を掲げています。当初の売上高目標は市場環境の変化により修正されましたが、利益目標は据え置かれています。

- 2026年12月期目標 売上高:280億円
- 2026年12月期目標 営業利益:13.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長に向けた仕上げの期間として、各事業で重点施策を推進しています。製粉や食品事業では顧客ニーズを捉えた製品創出と差別化体制の構築、精麦・飼料事業ではグループ会社の強みを活かした事業拡大を図ります。また、デジタル技術による生産性向上や、IR強化を通じた企業価値の向上にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は経営戦略と人財戦略を連動させるため、経営陣で構成される経営人財委員会で採用や人事を決定しています。ジョブローテーションによる複数業務の経験や、階層別・年齢別キャリア研修、国内外への留学など体系的な社員研修制度を運用しています。また、年1回のキャリア面談による個々人へのサポートや従業員満足度調査を通じた職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.9歳 17.4年 5,326,849円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 27.3%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -


※労働者の男女の賃金の差異は、女性活躍推進法の規定により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の平均勤続年数(16.5年)、女性の平均勤続年数(11.9年)、労働組合員数(184名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貿易の自由化の進展
環太平洋パートナーシップ(CPTPP)や経済連携協定(EPA)の発効などによる貿易のグローバル化や自由化の進展が、主原料である小麦や大麦、製品の輸入動向に影響を与え、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 麦に関する制度改革
外国産麦の政府売渡価格の相場連動制導入や即時販売方式への移行など、国家貿易制度の見直しや国内の麦政策の変更による原料価格の変動に対して、適切な製品価格への改定ができない場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原料麦の安定調達および品質・コスト変動
天候や世界的な穀物需要の逼迫、地政学的リスクにより、主要原料である麦の安定調達が困難になることや品質が低下する懸念があります。また、為替や物流費の上昇等のコスト増加分を製品価格に転嫁できない場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。