※本記事は、サッポロホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. サッポロホールディングスってどんな会社?
酒類、食品飲料、不動産の3事業を柱とする純粋持株会社です。創業150周年を見据え、構造改革と成長戦略を推進しています。
■(1) 会社概要
同社の起源は1876年に設立された開拓使麦酒醸造所に遡ります。1949年に日本麦酒(現同社)として発足し、1964年にサッポロビールへ社名変更しました。2003年には純粋持株会社へ移行し、現社名となりました。2011年にはポッカコーポレーションを子会社化し、食品飲料事業を強化しています。
連結従業員数は6,402名、単体従業員数は118名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は外資系証券の関連口座であり、上位は金融機関や機関投資家が占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.99% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.90% |
| NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN(CASHPB) | 4.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は時松 浩氏です。社外取締役比率は約63.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 時松 浩 | 代表取締役社長 | 江崎グリコを経て旧サッポロビール入社。サッポロ不動産開発社長、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社長等を歴任し、2025年3月より現職。 |
| 松出 義忠 | 専務取締役 | 旧サッポロビール入社。経理部長、神州一味噌(現サッポログループ食品)社長、サッポロホールディングス常務取締役等を経て、2025年3月より現職。 |
| 松風 里栄子 | 専務取締役 | 博報堂入社。ポッカサッポロフード&ビバレッジ経営戦略本部長、Pokka Pte. Ltd. グループCEO等を経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、庄司哲也(元エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ社長)、内山俊弘(元日本精工社長・会長)、種橋牧夫(元東京建物会長)、岡村宏太郎(元トムソン・ロイター・マーケッツ社長)、藤井良太郎(元ペルミラ・アドバイザーズ日本代表)、山本光太郎(弁護士)、田内直子(元味の素監査部専任部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「酒類事業」「食品飲料事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 酒類事業
国内ではビール・発泡酒、ワイン等の製造・販売、およびビヤホール等の飲食店経営を行っています。海外ではベトナム、カナダ、アメリカ等でビールの製造・販売を行っています。
主な収益は酒類製品の販売代金および飲食サービスの提供対価です。運営は主にサッポロビール、サッポロライオン、SLEEMAN BREWERIES LTD.、SAPPORO VIETNAM LTD.、STONE BREWING CO.,LLC等が行っています。
■(2) 食品飲料事業
飲料水および食品(レモン製品、スープ等)の製造・販売を行っています。国内市場に加え、シンガポールやマレーシア等でも事業を展開しています。
主な収益は飲料水・食品の販売代金です。運営は主にポッカサッポロフード&ビバレッジ、サッポログループ食品、POKKA PTE. LTD.、POKKA ACE (MALAYSIA) SDN. BHD.等が行っています。
■(3) 不動産事業
オフィス、住宅、商業、文化施設等の複合施設「恵比寿ガーデンプレイス」および商業複合施設「サッポロファクトリー」等の管理・運営を行っています。
主な収益は保有物件の賃貸料収入等です。運営は主にサッポロ不動産開発が行っています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、その他の事業活動を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は回復傾向にあり、直近では5300億円台に達しています。利益面では、2021年12月期に黒字転換して以降、安定して利益を計上していましたが、直近の2024年12月期は営業利益率が低下しました。これは主に海外事業におけるのれんの減損損失計上などが影響しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 4,347億円 | 4,372億円 | 4,784億円 | 5,186億円 | 5,308億円 |
| 税引前利益 | -194億円 | 212億円 | 114億円 | 121億円 | 116億円 |
| 利益率(%) | -4.5% | 4.8% | 2.4% | 2.3% | 2.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -161億円 | 123億円 | 55億円 | 87億円 | 77億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上収益は増加しましたが、営業利益は減少しました。売上総利益率は改善傾向にありますが、その他の営業費用の増加等が営業利益を圧迫しました。これは主に、米国子会社の株式取得時に生じたのれんの減損損失を計上したことによるものです。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 5,186億円 | 5,308億円 |
| 売上総利益 | 1,568億円 | 1,649億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.2% | 31.1% |
| 営業利益 | 118億円 | 104億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 2.0% |
■(3) セグメント収益
酒類事業は国内でのビール販売好調や円安効果等により増収となりましたが、海外事業での減損損失計上により減益となりました。食品飲料事業はコスト構造改革の効果等により増益となりました。不動産事業はオフィス稼働率の向上等により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 酒類事業 | 3,892億円 | 4,002億円 | 90億円 | 47億円 | 1.2% |
| 食品飲料事業 | 1,209億円 | 1,188億円 | 17億円 | 52億円 | 4.4% |
| 不動産事業 | 241億円 | 270億円 | 89億円 | 73億円 | 27.1% |
| その他 | 1億円 | 1億円 | 0億円 | 11億円 | 1604.3% |
| 調整額 | -158億円 | -154億円 | -77億円 | -80億円 | - |
| 連結(合計) | 5,186億円 | 5,308億円 | 118億円 | 104億円 | 2.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で創出した現金を投資活動や借入金の返済に充てる健全型の傾向を示しています。投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスですが、前年に比べ支出幅は縮小しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払等によりマイナスとなりました。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 454億円 | 361億円 |
| 投資CF | -164億円 | -58億円 |
| 財務CF | -271億円 | -254億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率)は29.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を経営理念に掲げています。また、経営の基本方針として、「ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指す」ことを定めています。自然、社会、心の「豊かさ」に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同グループは、北海道の「開拓使」をルーツとする創業以来の強みを持ち、「サッポログループ行動憲章」のもと、誠実な企業活動の実践を重視しています。また、サステナビリティ方針として「大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。」を掲げ、環境との調和や社会との共栄を目指す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2023年から2026年までの4か年の中期経営計画を推進しています。基本方針は「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」です。
* ROE:8%
* EBITDA年平均成長率(CAGR):10%程度
* 海外売上高年平均成長率(CAGR):10%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
構造改革として事業ポートフォリオの最適化を進め、不動産事業への外部資本導入等を検討しています。成長戦略としては、海外酒類事業でのブランド強化、国内酒類事業でのビール・RTDへの集中投資、不動産事業での保有物件の価値向上とまちづくり推進を掲げています。また、DXの推進やサステナビリティ経営にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「多様な人財の活躍」をサステナビリティの最注力課題としています。「多様性×流動化=変化への挑戦」「人的資本投資=個と組織の強化」「働き続けたい環境整備=100%の力発揮」を戦略の柱とし、女性管理職比率の向上、社内外副業の推進、経営・グローバル・DX人財の育成などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 45.7歳 | 20.3年 | 9,523,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
サッポロホールディングス単体は純粋持株会社であり従業員規模が小さく、算出に必要な対象者がいない項目(男性育休取得率など)があるため、ここでは実態を正確に表す中核事業会社・サッポロビール株式会社の数値を記載します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 93.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.0% |
※なお、海外子会社を含めたサッポログループ全体の女性管理職比率は15.0%となっています。
また、同社は「サッポリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役員比率(15.2%)、人財育成投資額(286百万円)、ワークエンゲージメント(偏差値54)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業ポートフォリオ
市場環境の変化に対し、事業やブランドのポートフォリオの組み換えが柔軟に進まない場合、経営計画が未達となる可能性があります。また、買収・提携・協業した事業において、経営環境の悪化等により期待したシナジー効果が発揮できない場合や減損損失が発生した場合、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料等の調達
市況悪化や為替変動による原材料価格の上昇、気候変動や地政学リスク等による調達難や納期遅延が発生する可能性があります。これらが長期化した場合、製造計画への影響やコスト増により、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 多様な人財の確保と育成
労働市場における競争激化等により、経営、グローバル、DX・IT等の戦略上必要な人財を十分に確保・育成できない可能性があります。また、エンゲージメント悪化等による生産性低下や退職者増加が起きた場合、企業競争力の低下を招き、グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) アルコール関連問題
世界保健機関(WHO)の戦略や各国の法規制など、アルコールに対する規制が一層強化される可能性があります。また、健康志向の高まり等によるアルコール需要の縮小が進んだ場合、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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