サッポロホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サッポロホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サッポロホールディングスは東京証券取引所プライム市場および札幌証券取引所に上場し、酒類や食品飲料の製造・販売を主力とする企業です。直近の業績では、売上収益が5,069億円と前期比で減収となったものの、事業構造改革やコスト見直しの効果等により営業利益は244億円と大幅な増益を達成しています。


※本記事は、サッポロホールディングス株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. サッポロホールディングスってどんな会社?


酒類事業や食品飲料事業をグローバルに展開する持株会社です。

(1) 会社概要


1949年に日本麦酒として発足し、1964年にサッポロビールへ社名変更しました。2003年に純粋持株会社へ移行しサッポロホールディングスとなりました。2011年にポッカコーポレーションを子会社化し、その後北米やアジアの海外ビール会社等を傘下に収め、酒類と食品飲料を展開するグローバル企業へと成長しています。

従業員数は連結6,102名、単体144名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位には海外の金融機関や信託銀行が名を連ねており、国内外の機関投資家から広く資本を集める構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.19%
GOLDMAN,SACHS & CO.REG 4.35%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505018 4.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は時松浩氏が務めています。社外取締役は7名選任されており、取締役会における社外取締役比率は63.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
時松浩 代表取締役社長 1984年江崎グリコ入社。1991年同社入社。営業本部長等を経てポッカサッポロフード&ビバレッジ代表取締役社長等を歴任し2025年3月より現職。
松出義忠 専務取締役 1988年同社入社。経理部長や神州一味噌代表取締役社長、サッポロビール取締役等を歴任し、2025年3月より現職。
松風里栄子 専務取締役 1990年博報堂入社。ポッカサッポロフード&ビバレッジ代表取締役副社長等を経て2024年より同社常務取締役。2025年3月より現職。
宮石徹 取締役(監査等委員長・常勤監査等委員) 1986年同社入社。サッポロビール営業本部長等を経て、サッポログループ食品代表取締役社長等を歴任し2024年3月より現職。


社外取締役は、庄司哲也(元エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ代表取締役社長)、内山俊弘(元日本精工代表取締役社長)、種橋牧夫(元東京建物代表取締役会長)、岡村宏太郎(IFM Investors シニア・アドバイザー)、藤井良太郎(ペルミラ・アドバイザーズ シニア・アドバイザー)、山本光太郎(山本綜合法律事務所設立)、田内直子(元味の素監査部専任部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「酒類事業」、「食品飲料事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 酒類事業


ビール、発泡酒、ワイン、その他の酒類の製造および販売を行っています。また、ライオンチェーンのビヤホールやレストランなどの飲食店経営も展開しており、国内だけでなく北米やアジアなど海外市場の顧客に対しても広く製品とサービスを提供しています。

収益源は、小売業や卸売業を通じた酒類の販売代金および飲食店での飲食代金です。運営はサッポロビールや恵比寿ワインマート、サッポロライオンなどの国内子会社に加え、北米のSLEEMAN BREWERIES LTD.やSTONE BREWING CO.,LLC、ベトナムのSAPPORO VIETNAM LTD.が担っています。

(2) 食品飲料事業


飲料水および食品の製造と販売を行っています。レモン関連商品やスープ、お茶飲料などを幅広く展開しており、国内市場の消費者に加え、シンガポールやマレーシアなどの海外市場における顧客に向けても製品を提供しています。

収益源は、小売業や卸売業を営む企業等を通じた飲料および食品の販売代金です。事業の運営は、主に国内のポッカサッポロフード&ビバレッジが行っているほか、海外においてはシンガポールのPOKKA PTE. LTD.やマレーシアのPOKKA ACE (MALAYSIA) SDN. BHD.などが担っています。

(3) その他事業


酒類事業および食品飲料事業の報告セグメントに含まれない事業を展開しています。グループ全体の事業を補完する製品やサービスを提供し、法人顧客等に向けて付加価値を創出しています。

収益はサービスの提供による各種手数料や販売代金等から得ています。運営は同社およびグループ内の関連子会社がそれぞれの機能に応じて担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の連結業績を見ると、売上収益は安定して推移しており、直近の2025年12月期は前期比で微減となったものの、税引前利益は大幅な増益を達成しました。利益率も回復傾向にあり、事業ポートフォリオの見直しやコスト構造改革が収益性の改善に寄与していることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 4,372億円 4,784億円 5,186億円 5,124億円 5,069億円
税引前利益 212億円 114億円 121億円 72億円 227億円
利益率(%) 4.8% 2.4% 2.3% 1.4% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 123億円 55億円 87億円 77億円 195億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期から微減となったものの、営業利益は前期の約4.3倍に急拡大しています。前期に計上された海外子会社買収時ののれん減損損失の反動等もあり、営業利益率は大きく改善し、グループ全体の稼ぐ力が強化されていることが分かります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 5,124億円 5,069億円
営業利益 56億円 244億円
営業利益率(%) 1.1% 4.8%

(3) セグメント収益


酒類事業は国内ビール販売の好調や価格改定効果により増収となり、前期ののれん減損の反動もあって利益が大幅に伸長しました。一方、食品飲料事業は構造改革に伴う事業譲渡や海外工場の一時的稼働停止の影響等で減収となり、株式譲渡に伴う減損損失の計上等から減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 営業利益(2024年12月期) 営業利益(2025年12月期) 営業利益率
酒類事業 4,064億円 4,091億円 73億円 303億円 7.4%
食品飲料事業 1,188億円 1,068億円 52億円 19億円 1.8%
その他 1億円 - 11億円 - -
調整額 -129億円 -91億円 -80億円 -78億円 -
連結(合計) 5,124億円 5,069億円 56億円 244億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の営業利益で借入金の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均と同水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.3%で市場平均を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 361億円 446億円
投資CF -58億円 -30億円
財務CF -254億円 -423億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を経営理念として掲げています。また、「ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指す」ことを経営の基本方針とし、時代とともに変容する「豊かさ」の本質に向き合い、自然、社会、心の豊かさに貢献する企業活動を実践しています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティ方針として「大地と、ともに、原点から、笑顔づくりを。」を掲げています。創業以来培ってきた独自の存在価値を大切にしながら、環境との調和、社会との共栄、多様な人財の活躍を重視する文化が根付いており、すべての事業が提供する時間と空間を通じて、人々と地域社会のWell-being(心身の健康と幸福)に貢献する行動様式を推進しています。

(3) 経営計画・目標


2023年から2026年までの4か年の中期経営計画を推進しており、事業ポートフォリオの見直しや各事業のポジショニングに沿ったマネジメントの実現により資本効率を高めることを目指しています。財務目標としては、以下の指標を掲げています。

* ROE:8%
* EBITDA年平均成長率(CAGR):10%程度
* 海外売上高年平均成長率(CAGR):10%程度

(4) 成長戦略と重点施策


中長期ビジョン「世界をフィールドに豊かなビール体験、顧客体験を創造する企業」の実現に向け、国内では基幹ブランドへのマーケティング投資倍増と外食事業を活用した顧客接点の拡大を図ります。海外では北米等でブランド強化や他社との協業による市場拡大を推進します。また、健康機能価値の提供、事業持株会社体制への移行による組織改革、M&Aを含めた成長投資にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業構造の転換に迅速に対応するため、グループ人財戦略(2023-2026)を策定しています。「多様性と流動化の加速」「優先度の高い人財への集中投資」「100%の力を発揮できるしくみ・環境の整備」の3つを戦略の柱とし、女性やグローバル、DX・IT人財への積極的な投資や、社内外での越境挑戦を促す文化醸成、育児や介護と仕事が両立できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.8歳 18.5年 10,139,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全従業員) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(パート・有期) -

※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、算定に必要な従業員または対象者が在籍していないため「-」となっています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の女性管理職比率(17.9%)、50歳以上社員へのキャリア面談実施率(約18%)、サッポロビールにおける男性育児休業取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業の成長戦略の未達リスク


市場環境の変化や買収・提携等の事業において、事前調査の不足や相手先のガバナンス欠如により、当初の目的が達成されないリスクがあります。国内のビール需要減少や競合激化、海外市場での構造改革の遅れなどが収益性の低下や減損損失の発生を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料等の調達リスク


気候変動や自然災害、地政学リスク、サプライヤーの減少等により、主要な原材料や資材の価格が高騰する、あるいは必要な数量を期限通りに確保できないリスクがあります。これにより調達コストが増加し、生産計画の遅延や事業の中断が発生して、グループの業績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人的資本経営の推進リスク


経営戦略の実行に必要不可欠な女性、経営人財、グローバル人財、DX・IT人財などに対する投資が不足し、十分な確保や育成が進まないリスクがあります。成果創出に繋がる組織・人員体制の構築が滞ることで労働生産性や企業競争力が低下し、中長期的な収益力や事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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