アサヒグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アサヒグループホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の酒類・飲料・食品メーカー。日本、欧州、オセアニア、東南アジアを中心にグローバルに事業を展開し、「スーパードライ」等の強力なブランドを保有しています。2024年12月期は、各地域でのプレミアム戦略推進や価格改定効果などにより、売上収益、各利益ともに前期を上回る増収増益となりました。


※本記事は、アサヒグループホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. アサヒグループホールディングスってどんな会社?


国内外で酒類、飲料、食品事業を展開するグローバル企業。「スーパードライ」等のブランド力を有します。

(1) 会社概要


1949年に大日本麦酒の分割により朝日麦酒として発足しました。1989年にアサヒビールへ商号変更し、2011年に持株会社制へ移行して現商号となりました。近年は大型M&Aを推進し、2016年の欧州事業、2020年の豪州CUB事業の買収を通じてグローバル化を加速させています。

連結従業員数は28,173名、単体では265名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行となっており、機関投資家が高い比率を占めています。第3位にはカストディアンバンクであるステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーが名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 18.97%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 7.09%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性8名の計18名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表者は取締役兼代表執行役社長Group CEOの勝木敦志氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
勝木 敦志 取締役兼代表執行役社長Group CEO ニッカウヰスキー入社後、同社へ転籍。豪州子会社CEO、同社CFOなどを経て、2021年より代表取締役社長兼CEO。2024年より現職。
谷村 圭造 取締役兼執行役Group CPO 1989年同社入社。人事部門ゼネラルマネジャー、CHROなどを歴任。2024年より取締役EVP兼Group CPO、2025年3月より現職。
﨑田 薫 取締役兼執行役Group CFO 1988年同社入社。調達部門ゼネラルマネジャー、CFOなどを歴任。2024年より取締役EVP兼Group CFO、2025年3月より現職。
福田 行孝 取締役 東洋エンジニアリングを経て2001年同社入社。財務部門ゼネラルマネジャー、アサヒプロマネジメント社長、同社常勤監査役などを経て、2025年3月より現職。
大島 明子 取締役 1991年同社入社。経営企画部担当部長、Head of Internal Audit、常勤監査役などを経て、2025年3月より現職。


社外取締役は、大八木成男(元帝人会長)、佐々江賢一郎(元外務事務次官)、大橋徹二(コマツ会長)、松永真理(松永真理事務所代表)、佐藤千佳(日本電気CDO)、メラニー・ブロック(Melanie Brock Advisory代表)、田中早苗(弁護士)、宮川明子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「欧州」「オセアニア」「東南アジア」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、ビール類・焼酎・洋酒・ワイン等の酒類、各種飲料、ベビーフード・菓子・サプリメント等の食品、および薬品の製造・販売を行っています。「アサヒスーパードライ」「三ツ矢サイダー」「カルピス」「ミンティア」などの主要ブランドを有し、多様なニーズに対応しています。

収益は、卸売業者や小売店、消費者への製品販売による対価が主となります。運営は、アサヒグループジャパンが統括し、アサヒビール、ニッカウヰスキー、エノテカ、アサヒ飲料、カルピス、アサヒグループ食品などの事業会社が行っています。

(2) 欧州


中東欧および西欧において、ビールの製造・販売を行っています。「Pilsner Urquell」「Peroni Nastro Azzurro」「Kozel」などのグローバルブランドやローカルブランドを展開し、プレミアム戦略を推進しています。

収益は、流通業者や小売店、料飲店への製品販売によって得ています。運営は、英国に拠点を置くAsahi Europe & International Ltdが統括し、傘下の各国の製造・販売子会社が事業を行っています。

(3) オセアニア


オーストラリアおよびニュージーランドにおいて、酒類および飲料の製造・販売を行っています。「Great Northern」「Victoria Bitter」「Carlton Draught」などのビールブランドや、清涼飲料水などを展開しています。

収益は、酒類・飲料製品の販売から得ています。運営は、Asahi Beverages Pty Ltdが地域統括会社として機能し、CUB Pty Ltd(豪州酒類)、Asahi Beverages (NZ) Limited(NZ酒類)、Asahi Lifestyle Beverages(豪州飲料)などが事業を担っています。

(4) 東南アジア


マレーシアを中心に、東南アジアにおいて飲料および乳製品の製造・販売を行っています。「WONDA」「Goodday」などのブランドを展開し、ハラル市場などの地域特性に合わせた製品を提供しています。

収益は、飲料や乳製品の販売代金から得ています。運営は、Asahi Holdings Southeast Asia Sdn. Bhd.が統括し、Etika Beverages Sdn. Bhd.などの子会社が事業を行っています。

(5) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、国際的な調達機能、研究開発、および新規事業の探索などを行っています。これには、グローバルな調達戦略の立案や、持続的な発展につながる中長期的な研究開発が含まれます。

収益は、グループ会社へのサービス提供や外部への製品・技術提供などから得ています。運営は、Asahi Global Procurement Pte. Ltd.(シンガポール)、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ、アサヒバイオサイクルなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上収益が継続的に増加傾向にあり、順調な拡大を示しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加基調を維持しており、収益性が向上しています。特に直近の当期利益は過去最高水準に達しており、事業ポートフォリオの強化やコスト効率化の成果が現れています。

項目 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上収益 20,278億円 22,361億円 25,111億円 27,691億円 29,394億円
税引前利益 1,254億円 1,998億円 2,060億円 2,419億円 2,670億円
利益率(%) 6.2% 8.9% 8.2% 8.7% 9.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 928億円 1,535億円 1,516億円 1,641億円 1,921億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益計算書を見ると、売上収益の増加に伴い、営業利益も着実に伸長しています。売上総利益率はほぼ横ばいから微増で推移し、営業利益率も安定的に改善しており、コスト管理と売上拡大のバランスが取れた収益構造となっています。為替影響を除いたベースでも増収増益を達成しており、本業の好調さがうかがえます。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上収益 27,691億円 29,394億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 2,450億円 2,691億円
営業利益率(%) 8.8% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が2,325億円(構成比29%)、その他が1,551億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに売上収益が増加しました。日本は主力ブランドの強化により増益を確保し、欧州はプレミアムビールやノンアルコールビールが好調で大幅な増収増益となりました。オセアニアは飲料事業が好調で増収となりましたが、原材料費高騰の影響等で減益でした。東南アジアは主力ブランドの販売好調とコスト効率化により大幅増益となりました。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期) 利益(2023年12月期) 利益(2024年12月期) 利益率
日本 13,629億円 13,629億円 1,113億円 1,363億円 10.0%
欧州 6,887億円 7,810億円 594億円 658億円 8.4%
オセアニア 6,522億円 7,154億円 897億円 818億円 11.4%
東南アジア 578億円 661億円 10億円 18億円 2.7%
その他 215億円 265億円 52億円 38億円 14.5%
調整額 -140億円 -125億円 -216億円 -205億円 -
連結(合計) 27,691億円 29,394億円 2,450億円 2,691億円 9.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF 3,475億円 4,037億円
投資CF -1,177億円 -1,187億円
財務CF -2,267億円 -2,728億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、グループ理念「Asahi Group Philosophy(AGP)」に基づき、未来のステークホルダーからも信頼される存在を目指しています。AGPはMission、Vision、Values、Principlesで構成され、コーポレートステートメント「Make the world shine “おいしさと楽しさ”で、世界に輝きを」を通じて、その社会的価値や意義を表明しています。

(2) 企業文化


同社はAGPにおいて、受け継がれてきた大切にする価値観(Values)と、ステークホルダーに対する行動指針・約束(Principles)を掲げています。これに基づき、従業員一人ひとりが「ありたい企業風土」の醸成に取り組み、挑戦と革新を続ける文化を重視しています。また、サステナビリティと経営の統合を掲げ、社会課題の解決と事業成長の両立を目指す姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「中長期経営方針」において、長期戦略のコンセプトとして「おいしさと楽しさで“変化するWell-being”に応え、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを掲げています。2030年までの中期的なガイドラインとして、以下の数値目標を設定しています。

* EPS(1株当たり当期利益)の年平均成長率(CAGR):一桁台後半から二桁
* ROE(自己資本利益率):11%以上(調整後ROEは14%以上)
* ROIC(投下資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


ビールを中心とした既存事業の持続的成長に加え、その事業基盤を活かした周辺領域や新規事業・サービスの拡大を目指しています。具体的には、プレミアム戦略の推進、ノンアルコール・低アルコール飲料などのBAC(Beer Adjacent Categories)への投資強化、DXやR&Dといったコア戦略の強化を図ります。

* グローバル5ブランド(Asahi Super Dry、Peroni Nastro Azzurroなど)の拡大
* BAC領域での新市場拡大とイノベーション推進
* サステナビリティと経営の統合による社会価値と事業成長の最大化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人的資本の高度化」を掲げ、「ありたい企業風土の醸成」「継続的な経営者人材の育成」「必要となるケイパビリティの獲得」の3つの取り組みを推進しています。従業員と会社が共に成長し、中長期的な企業価値向上を実現することを目指し、多様な人材の活躍推進やグローバルな人材マネジメント体制の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 44.6歳 1.0年 12,181,758円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 23.1%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 55.4%
男女賃金差異(正規雇用) 57.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業拡大とM&Aリスク


同社は欧州や豪州などで大型M&Aを行い、多額の「のれん」や無形資産を計上しています。事業統合によるシナジーが想定通り創出できなかった場合や、市場環境の変化により事業価値が毀損した場合には、減損損失が発生し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) アルコール規制と社会的価値観の変化


不適切な飲酒による健康被害や社会問題への懸念から、世界的に酒類販売に関する規制が強化される可能性があります。また、消費者の健康志向の高まりやアルコールに対する価値観の変化により需要が減少した場合、ブランド価値の毀損や売上収益の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新による競争環境の変化


低アルコール・ノンアルコール飲料の台頭や、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの出現など、業界の競争環境が変化しています。同社がこれら技術革新や消費者ニーズの変化に迅速に対応できず、コスト構造や顧客体験で劣後した場合、競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 気候変動に関わるリスク


地球温暖化による異常気象の激化は、農産物原料の品質や収量、水資源の確保に影響を与え、調達コストの上昇や操業停止のリスクをもたらします。また、脱炭素社会への移行に伴う炭素税の導入や環境配慮型製品への需要変化への対応が遅れた場合、コスト増加や売上減少につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。