※本記事は、ヒューリック株式会社の有価証券報告書(第96期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒューリックってどんな会社?
都心部を中心とした不動産事業を中核に、保険やホテル運営なども手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1957年3月、日本橋興業として設立されました。1965年11月に旧富士銀行の保険代理店業務を継承し、2007年1月に現在のヒューリックへ社名変更しました。2008年11月に東京証券取引所市場第一部に上場し、直近では2024年にリソー教育グループやレーサムを子会社化して事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で3,495名、単体で234名となっています。大株主の状況は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には生命保険会社、第3位には総合リース会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.85% |
| 明治安田生命保険(相) | 6.21% |
| 芙蓉総合リース | 5.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性5名の計15名で構成され、女性役員比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西浦 三郎 | 代表取締役会長 | 1971年富士銀行に入行し、常務執行役員などを歴任。みずほ銀行の取締役副社長等を経て、2016年3月より現職。 |
| 前田 隆也 | 代表取締役社長 | 1984年大成建設に入社。2007年に旧ヒューリックへ入社し、取締役常務執行役員等を歴任。2022年3月より現職。 |
| 中嶋 忠 | 取締役副社長 | 1980年野村不動産に入社し、取締役専務執行役員等を歴任。2016年8月に同社へ入社し、2024年3月より現職。 |
| 原 広至 | 取締役副社長 | 1988年富士銀行に入行。みずほ銀行の支店長等を経て、2015年5月に同社へ入社。経営企画部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、宮島司(慶應義塾大学名誉教授)、山田秀雄(第二東京弁護士会元会長)、福島敦子(元NHK契約キャスター)、辻伸治(SOMPOホールディングス元取締役)、秋田喜代美(東京大学名誉教授)、髙橋祐子(電通グループ元執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」「保険事業」「ホテル・旅館事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 不動産事業
東京23区の駅近を中心に約250件の賃貸物件を保有し、オフィスビルや商業施設等の不動産賃貸業務を行っています。また、物件の建替や開発、J-REIT等からのアセットマネジメント業務も手掛けています。
テナント企業からの不動産賃貸収入や、開発・取得した収益不動産の外部顧客への売却による不動産売却収入が主な収益源です。運用報酬などのアセットマネジメント収入も得ており、運営は主に同社やヒューリックリートマネジメントが担っています。
■(2) 保険事業
多数の損害保険会社や生命保険会社と代理店契約を締結し、法人顧客を中心に火災保険や自動車保険、生命保険などの各種保険商品を販売・提案しています。個人顧客向けのきめ細やかなサービスも展開しています。
保険会社からの代理店手数料や、募集業務に関連する集金代行業務に伴う手数料が主な収益源です。運営は主に子会社のヒューリック保険サービスが行っています。
■(3) ホテル・旅館事業
「THE GATE HOTEL」シリーズや「ビューホテル」シリーズ、高級旅館「ふふ」シリーズを中心に、国内でホテルおよび旅館の運営事業を展開し、宿泊客にきめ細やかなサービスを提供しています。
宿泊客からの宿泊料金や、併設するレストランの飲食代、その他付帯サービスの利用料が主な収益源です。運営は主にヒューリックホテルマネジメントやヒューリックふふが行っています。
■(4) その他
同社保有ビルなどの建築工事請負や設計・工事監理業務のほか、こども教育事業、再生可能エネルギー発電所等の環境インフラ事業、介護施設向け食品の企画開発なども展開しています。
顧客からの工事請負代金や、教育事業における生徒からの受講料、小売電気事業による売電収入などが収益源です。運営はヒューリックビルドやリソー教育グループなどの各子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、営業収益が一時的な変動を含みつつも拡大傾向にあり、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は連続して増益を達成しています。利益率も安定して20%台を維持しており、着実な成長を遂げています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業収益 | 4,471億円 | 5,234億円 | 4,464億円 | 5,916億円 | 7,274億円 |
| 経常利益 | 1,096億円 | 1,232億円 | 1,374億円 | 1,543億円 | 1,729億円 |
| 利益率(%) | 24.5% | 23.5% | 30.8% | 26.1% | 23.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 696億円 | 792億円 | 946億円 | 1,023億円 | 1,143億円 |
■(2) 損益計算書
営業収益は前期から大幅に増加し、それに伴い売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。利益率は若干の低下が見られるものの、引き続き高い水準を保っており、強固な収益基盤を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,916億円 | 7,274億円 |
| 売上総利益 | 2,309億円 | 2,768億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.0% | 38.1% |
| 営業利益 | 1,634億円 | 1,868億円 |
| 営業利益率(%) | 27.6% | 25.7% |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が152億円(構成比17%)、給料及び手当が138億円(同15%)、支払手数料が103億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である不動産事業は、賃貸収入や販売用不動産の売却が順調に推移し、大幅な増収となりました。また、ホテル・旅館事業やその他事業などの成長領域も着実に売上を伸ばし、全セグメントで前期を上回る結果となっています。
| 項目 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 5,173億円 | 6,280億円 | 1,704億円 | 1,981億円 | 31.5% |
| 保険事業 | 37億円 | 39億円 | 10億円 | 11億円 | 28.2% |
| ホテル・旅館事業 | 488億円 | 539億円 | 17億円 | 17億円 | 3.2% |
| その他 | 219億円 | 416億円 | 22億円 | 21億円 | 5.0% |
| 連結(合計) | 5,916億円 | 7,274億円 | 1,634億円 | 1,868億円 | 25.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,534億円 | 2,692億円 |
| 投資CF | -6,020億円 | -5,445億円 |
| 財務CF | 3,006億円 | 2,723億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も26.0%で非製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「安心と信頼に満ちた社会の実現」を企業理念とし、持続可能な社会の実現と企業としての継続的な成長を目指しています。あらゆるステークホルダーの信頼を得られるよう努力し、事業活動の展開を通じて社会と共創・共生していくことが同社の存在意義であるとしています。
■(2) 企業文化
「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応してビジネスモデルを進化させる文化を重視しています。多様なバックグラウンドやスキルをもつ従業員が活躍できる環境整備に取り組み、一人ひとりがプロフェッショナルとして高い品質の価値提供に努めることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
新・中長期経営計画(2026-2036)において、2036年の目指す姿を「不動産事業を核として、多様な価値創造をおこない、変革・進化・成長を続ける企業グループ」と定めています。
* 2029年経常利益:1,800億円
* オフィス比率50%以下、重点エリア比率50%
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産事業をベースに多様な成長事業を取り込み、強靭な事業ポートフォリオを形成する方針です。流動性の高いアセットやインフレ耐性アセットへの投資を進め、都市型データセンターの供給や海外事業にも注力します。環境・インフラ事業や高齢者・健康事業などの成長領域で事業を拡大します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
環境変化に柔軟に対応できる組織を目指し、多様な人材の採用と育成に力を入れています。新卒採用は男女半数を目途とし、入社年次や職位に応じた研修や選択型研修を提供しています。また、各種資格取得支援も推進し、専門性をもつプロフェッショナル人材の育成と労働生産性の向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.8歳 | 7.5年 | 22,954,867円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 63.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育休復職率(100.0%)、介護による離職率(0.0%)、有給休暇取得率(81.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産賃貸事業に関するリスク
テナント企業の不動産ニーズは景気の変動に影響を受けやすく、経済情勢の悪化や入居者の信用力低下による空室率の上昇、賃料の値下げなどが生じた場合、不動産賃貸収入が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 不動産価値の低下に関するリスク
保有する事業用不動産において、市況の悪化に伴う賃料水準の低下や空室率の上昇などにより減損処理が必要となった場合や、販売用不動産の価値が低下した場合、想定通りの収益が確保できず業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 開発・建替に伴うリスク
既存ビルの建替に伴うテナント立ち退き費用等の特別損失の発生や、新規開発における工事費の高騰、工期の遅れなどにより事業が計画通りに進捗しない場合、利益計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。



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