帝国繊維 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

帝国繊維 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

帝国繊維は東京証券取引所プライム市場に上場する企業です。消防ホースや救助工作車などを扱う防災事業を主力とし、祖業である麻などの繊維事業、不動産賃貸事業も展開しています。直近の業績は、防災事業における救助工作車やセキュリティ機材の受注拡大などにより、増収増益と好調に推移しています。


※本記事は、帝国繊維の有価証券報告書(第100期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月17日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 帝国繊維ってどんな会社?


同社は消防・防災関連製品の製造販売を主力とし、社会の安心・安全を支えるリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1907年に帝国製麻として設立され、1959年に現在の帝国繊維に商号変更しました。1961年に東京証券取引所市場第一部に指定され、長年にわたり事業を拡大してきました。近年では2021年に新たな生産拠点として下野工場を新設し、防災車輌の製造機能を強化するなど、さらなる成長に向けた基盤整備を進めています。

現在は連結で362名、単体で191名の従業員を擁する体制で事業を展開しています。同社の筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には海外の投資ファンド、第3位には取引先である都市銀行が名を連ねており、多様なステークホルダーによって支えられています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.26%
NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC 5.68%
みずほ銀行 4.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長執行役員最高経営責任者(CEO)は白岩強氏が務めています。全取締役7名のうち、社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
白岩強 代表取締役会長執行役員最高経営責任者(CEO) 1969年富士銀行入行。1992年帝国繊維入社、2012年社長を経て、2022年より現職。
桝谷徹 代表取締役社長執行役員最高執行責任者(COO) 1975年帝国繊維入社。防災統括部長などを歴任し、2021年社長就任。2022年より現職。
岡村建 取締役副社長執行役員 1987年富士銀行入行。みずほ銀行を経て2016年帝国繊維入社。2022年より現職。
中尾徹 取締役常務執行役員防災統括部送排水システムグループ部長 1990年帝国繊維入社。防災統括部の各職を経て、2022年より現職。


社外取締役は、髙木裕康(東京丸の内法律事務所パートナー)、深澤正宏(元安田不動産社長)、成田信子(元検事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「防災」「繊維」および「不動産賃貸」事業を展開しています。

(1) 防災


各種消防ホース、防災機器、救助工作車や空港用化学消防車などの防災特殊車輌の製造、仕入、販売を行っています。また、官公庁や民間事業所向けに、販売した製品の修理や保守管理などの役務提供も行い、多発する災害の脅威から社会の安心・安全を守っています。

顧客への製品販売や保守サービス提供による対価を収益源としています。運営は同社が主体となり、帝商やキンパイ商事などの子会社が地域別販売会社として機能するほか、テイセンテクノが特殊車輌の製造を担っています。

(2) 繊維


創業からの事業であり、主にリネン(麻)や麻化合繊混紡製品、高機能な特殊繊維素材の製造、加工、販売を行っています。アパレル向け素材のほか、耐熱や耐切創などの機能を活かした官公庁向けの防護服など、多様なニーズに応える製品を提供しています。

繊維製品や加工品の販売代金を主な収益源としています。同社が開発や製造を推進し、販売会社であるキンパイ商事が製品の販売を行うほか、テイセン産業が重布や繊維製品の縫製、加工、販売を担当しています。

(3) 不動産賃貸


栃木県鹿沼市や岐阜県大垣市などの保有資産を活用し、ショッピングセンター等に向けた商業用建物の賃貸事業を展開しています。中核である防災事業を支える、安定的かつ継続的な収益基盤としての役割を果たしています。

不動産の賃貸借契約に基づく継続的な賃貸料を収益源としています。この事業は同社が単独で運営管理を行っており、長期的な契約を通じて安定したキャッシュ・フローの創出に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


大型案件の受注状況により一時的な増減はありますが、直近5年間において安定した売上水準を維持しています。特に直近の2期は、防災分野での市場開拓が奏功し、増収増益基調へと力強く回復しており、高い利益水準を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 330億円 299億円 280億円 315億円 336億円
経常利益 57億円 53億円 36億円 46億円 53億円
利益率(%) 17.3% 17.7% 12.7% 14.5% 15.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 37億円 21億円 27億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて売上総利益率も改善しており、本業の収益力が着実に向上しています。各種コストの適正な管理が行われている結果、営業利益および営業利益率ともに堅調な伸びを示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 315億円 336億円
売上総利益 86億円 96億円
売上総利益率(%) 27.4% 28.6%
営業利益 35億円 41億円
営業利益率(%) 11.0% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が19億円(構成比34%)、賞与が7億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の防災セグメントは、救助工作車やセキュリティ機材の受注増加に加え、送排水ビジネスの拡大により大きく伸長しました。一方、繊維セグメントは原料価格高騰等の影響で微減となり、不動産賃貸セグメントは安定的に推移しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
防災 250億円 273億円
繊維 59億円 58億円
不動産賃貸 5億円 5億円
その他 0.4億円 -
連結(合計) 315億円 336億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で稼いだ利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 20億円 29億円
投資CF -0.1億円 -8億円
財務CF -12億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「防災事業を通じ、社会や事業の安心・安全を守る」を企業理念として掲げています。また、「一味ちがった優れた企業」「発展し成長を続ける企業」「社会や公共に大きく貢献する企業」の実現を目指し、防災業界におけるリーディングカンパニーへと進化すべく事業に取り組んでいます。

(2) 企業文化


「人を創る」「仕事を創る」「人と仕事を繋ぐ企業文化を創る」をテーマに掲げています。人材育成を成長への投資と捉え、「人を育む企業文化の下、自立・自律する人材を育てる」ことを推進しており、社員一人ひとりが主体的に学び、挑戦を尊重しながら成長し続ける組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「テイセン2028」では、以下のような具体的な数値目標を掲げて、着実な収益拡大と企業価値の向上を目指しています。

* 2028年度における連結営業利益水準:58億円以上
* 2028年度における連結経常利益水準:70億円以上
* 総還元性向:50%水準を目指す

(4) 成長戦略と重点施策


先進的防災事業を確立し、安心安全な未来を創ることをミッションとしています。市場創造と圧倒的市場競争力の確立、生産拠点の革新、アライアンスによる収益機会の創出を戦略テーマに掲げ、以下の施策を推進します。

* 自治体・コンビナート・原子力向け送排水ビジネスの拡大
* セキュリティビジネスや次世代型防災特殊車輌の市場開拓
* 生産拠点の「技術集約拠点」への脱皮と機能強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが主体的に学び、成長し続ける環境を整え、自立・自律した人材を育成する方針です。「テイセンビジネスカレッジ」としての研修体系や社内公募留学制度などを通じて成長を支援します。また、フレックスタイム制度等の導入による柔軟な働き方や、安全衛生教育を通じた職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.9歳 11.1年 7,682,692円


※平均年間給与は税込で、基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.2%
男女賃金差異(正規雇用) 70.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 41.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(69.8%)、離職率(3.4%)、定期健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法令基準等の改正に伴う市場変化


消防防災関連分野における各種法律や安全基準の改正、規制強化によって市場環境が変化するリスクです。これらの変化に迅速に対応できない場合、市場シェアの喪失や競争力の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社の参入と競争激化


同社が優位性を持つ市場へ競合他社が新たに参入し、競争が激化するリスクです。また、新たな商材や技術の出現により同社の市場が侵食される懸念もあり、常に製品性能の向上や最先端技術の提供が求められています。

(3) サプライチェーンの毀損・寸断


自然災害や地政学的要因などにより、部品や原材料の供給網が寸断されるリスクです。また、天候不順や需給バランスの変化によって主要原材料の仕入価格が高騰し、収益性が圧迫される可能性もあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。