※本記事は、株式会社ルックホールディングスの有価証券報告書(第64期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ルックホールディングスってどんな会社?
同社は国内外でアパレル関連事業を展開し、婦人服や雑貨の企画から製造、販売までを一貫して手がけています。
■(1) 会社概要
1962年に婦人既製服の製造販売を目的として設立され、1981年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。その後、1986年に市場第一部へ指定替えとなり、海外にも合弁会社を設立して事業を拡大しました。2002年にルックへ商号変更し、2018年には持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。
同社グループの従業員数は連結で884名、単体で64名体制となっています。大株主については、筆頭株主が事業会社である八木通商で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はスポーツ用品等の事業を展開する美津濃となっており、事業会社や金融機関が上位に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 八木通商 | 10.03% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.72% |
| 美津濃 | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は澁谷治男氏が務めており、社外取締役の比率は22.2%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 多田和洋 | 代表取締役会長 | 1988年に入社後、取締役執行役員ブティック事業部長等を経て2015年に代表取締役社長に就任。持株会社化に伴う事業会社の社長なども歴任し、2025年より現職。 |
| 澁谷治男 | 代表取締役社長 | 1987年に入社し、事業本部長や代表取締役社長を歴任。同社においては取締役、常務、専務を経て、2025年より現職。海外子会社の代表取締役等も兼務する。 |
| 斉藤正明 | 常務取締役 | 1992年に入社し、経営企画室長兼販売人事部長などを経験。2020年に取締役上席執行役員経理担当となり、グループ各社の役員も務めながら2024年より現職。 |
社外取締役は、井上和則(元東京ブラウス代表取締役)、秋葉絢子(慶應義塾大学病院整形外科医師)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレル関連事業」「生産及びOEM事業」「物流事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) アパレル関連事業
婦人服や紳士服、皮革製品などの企画、仕入、製造を行い、直営店舗や百貨店、ECサイト、専門店を通じて一般消費者等へ提供しています。日本、韓国、欧州、米国など地域ごとに事業拠点を置き、ブランドごとの包括的な戦略を展開しています。
収益源は、一般消費者や専門店などからの商品販売代金です。日本における運営はルックやA.P.C.Japanが行い、韓国ではアイディールックなどが展開しています。欧州や米国では現地子会社が皮革製品等の卸売や直営店販売を担っています。
■(2) 生産及びOEM事業
グループ内外の企業を顧客とし、アパレル関連商品の生産やOEM(相手先ブランドによる生産)受託による製造サービスを提供しています。国内外の協力工場などを活用し、多様なニーズに応じた製品供給体制を構築しています。
収益源は、グループ会社や外部のアパレル企業からの生産受託に伴う製造代金や加工賃などです。運営は主にルックモードが行っており、生産工程の一部についてはラボ・オーフナトへ加工委託を行う体制をとっています。
■(3) 物流事業
主に国内のグループ会社を対象として、アパレル関連商品の入荷、出荷、保管、検査などの物流業務全般を請け負うサービスを提供しています。グループ内のサプライチェーンを支える重要なインフラ機能としての役割を担っています。
収益源は、国内の子会社などからの物流業務受託に伴う業務委託手数料などです。運営はエル・ロジスティクスが行っており、グループ内の各事業会社と連携しながら効率的な物流センターの運営や配送体制の構築を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は411億円から555億円規模まで拡大したのち、当期は521億円へと落ち着いています。経常利益も大きく伸長した時期を経て、その後は緩やかな減少傾向にあります。利益率も一桁台前半から半ばで推移しており、堅実ながらも外部環境の影響を受けやすい状況が窺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 411億円 | 547億円 | 555億円 | 547億円 | 521億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 40億円 | 36億円 | 29億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 7.3% | 6.4% | 5.3% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 27億円 | 25億円 | 19億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が前期比で減少したことに伴い、売上総利益も微減となりました。売上総利益率は約60%と高い水準を維持していますが、販売費及び一般管理費の負担などの影響もあり、営業利益は前期の25億円から18億円へと減少しています。利益率の改善が今後の課題として浮かび上がっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 547億円 | 521億円 |
| 売上総利益 | 328億円 | 315億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.0% | 60.4% |
| 営業利益 | 25億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が92億円(構成比31%)、従業員給料及び賞与一時金が45億円(同15%)、販売代行手数料が40億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の日本事業は売上が横ばいながらも安定した利益を確保していますが、韓国事業は為替レートの変動や秋物販売の不振により減収減益となりました。欧州やその他海外は売上規模は小さいものの増収傾向にあります。生産及びOEM事業は減収減益、物流事業は増収増益と、セグメント間で明暗が分かれています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 242億円 | 243億円 | 18億円 | 17億円 | 7.2% |
| 韓国 | 283億円 | 257億円 | 16億円 | 9億円 | 3.5% |
| 欧州 | 10億円 | 10億円 | -2億円 | -2億円 | -18.2% |
| その他海外 | 4億円 | 5億円 | -0.6億円 | -0.3億円 | -5.7% |
| 生産及びOEM事業 | 7億円 | 5億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 5.5% |
| 物流事業 | 1億円 | 1億円 | 0.2億円 | 0.4億円 | 36.3% |
| 連結(合計) | 547億円 | 521億円 | 25億円 | 18億円 | 3.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ利益を借入の返済に充てつつ、投資も手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | 25億円 |
| 投資CF | -12億円 | -7億円 |
| 財務CF | -4億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客さま第一主義」を経営理念に掲げています。ファッションを通し顧客満足度を高める事を基本とし、企画・製造・販売の一貫した営業活動によって新しいライフスタイルや価値を創造し、生活文化の向上に貢献することを目指しています。同時に、確かな実績で株主に応え、働く人達の豊かな生活の向上を実現することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、あらゆるステークホルダーと共に持続可能な社会の実現に向けて役割を果たすために、「サステナビリティ基本方針」を定めています。人材を最も大切な資産の一つと捉え、多様な個性や感性を持った人材が、年齢や性別にとらわれず自由にチャレンジできる環境を整えることで、創造性の豊かな組織文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、売上高と営業利益を経営目標の達成状況を判断する重要指標と位置づけ、これらを安定的に持続させることを目指しています。現在推進中の中期経営計画では、最終年度となる2028年度に向けて収益性を高め、安定した事業基盤の構築を推し進めています。
・連結売上高:700億円(2028年目標)
・連結営業利益:50億円(2028年目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として、日本と韓国における主力ブランドの積極的な新規出店を推し進め、更なる収益基盤の強化に取り組みます。また、新規エリアへの販路拡大として、東南アジア地域での特定ブランドの卸売販売を計画しています。環境問題への対応としては、温室効果ガス排出量の削減に向けたアクションプランを策定しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な個性を活かすことで持続的な企業価値の向上を共創するため、教育・研修制度の充実や若手の積極登用を進めています。「マルチ・タスク人材の育成」や「DX推進をリードできる人材の育成」に加え、販売職から本部スタッフへの転換推進などを重点施策として掲げ、生産性の向上と柔軟な職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 48.7歳 | 21.9年 | 6,405,757円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 50.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 56.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 66.3% |
※男性労働者の育児休業取得率については、該当する対象者がいないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性の割合(17.4%)、従業員の所定外労働時間(月平均1.66時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向・消費動向に関するリスク
売上全体の約半分を占める国内市場において、個人消費の全般的な水準が業績に大きく影響します。ファッショントレンドの急激な変化など想定外の外部環境の変化リスクに対し、トレンドの影響を受けにくい雑貨類の展開を拡げるなどしてリスクの低減を図っています。
■(2) 季節の天候不順や自然災害等によるリスク
冷夏や暖冬などの異常天候は季節商品に対する購買意欲を低下させるため、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自然災害や未知の感染症の流行が生産体制や消費に悪影響を与えるリスクに対しては、危機管理規程に基づく管理体制を構築して対応しています。
■(3) 海外事業及び海外生産に関連するリスク
売上の約半分を海外子会社が占め、国内販売製品の大半を海外で製造・調達しているため、為替レートの変動や進出国の政治・経済の混乱がリスクとなります。これに対しては、特定の国や地域に依存せず幅広く展開し、為替予約等によるヘッジを行っています。
■(4) 独占販売契約及びライセンス契約に関するリスク
オリジナルブランドに加え、独占輸入販売契約やライセンス契約に基づくブランドを展開しています。不測の事態により契約が継続できなくなるリスクに備え、特定のブランドに過度に依存することなく、複数の軸となるブランドを育成・展開することでリスク分散を図っています。



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