大倉工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大倉工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する大倉工業は、ポリエチレンフィルムなどの合成樹脂や光学機能性フィルム、建材の製造販売を主力とするメーカーです。2025年12月期の業績は、新規材料事業におけるハイエンドディスプレイ向け製品の好調などにより、売上高867億円、営業利益62億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、大倉工業株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大倉工業ってどんな会社?


合成樹脂フィルムや光学機能性フィルム、建築資材の製造販売を幅広く展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1947年7月に四国住宅として設立され、1955年11月に大倉工業へ名称を変更してポリエチレン加工業へ進出しました。1962年1月に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。1971年には建材事業の基盤となるパーティクルボード工場を完成させ、1987年には新規材料事業部などを新設して事業領域を拡大してきました。

現在の従業員数は連結で1,883名、単体で1,054名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には事業会社である住友化学が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.86%
住友化学 5.97%
大倉工業従業員持株会 3.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は福田英司氏が務めています。全役員11名のうち、社外取締役は5名で構成されています。

氏名 役職 主な経歴
神田 進 代表取締役会長 1977年4月同社入社。2013年1月合成樹脂事業部長、2018年3月代表取締役社長を経て、2025年1月より現職。
福田 英司 代表取締役社長執行役員 1993年4月同社入社。2023年1月合成樹脂事業部長、2024年3月取締役専務執行役員を経て、2025年1月より現職。
田中 祥友 取締役常務執行役員 1977年4月同社入社。2018年3月常務取締役、2021年4月サステナビリティ委員長などを経て、2024年1月より現職。
植田 智生 取締役上席執行役員 1985年4月同社入社。2009年3月新規材料事業部長、2017年3月取締役などを経て、2024年3月より現職。
香川 清造 取締役上席執行役員 1988年4月同社入社。2020年3月建材事業部長、2024年3月上席執行役員を経て、2025年3月より現職。
長尾 誠司 取締役(常勤監査等委員) 1991年4月同社入社。2017年3月コーポレートセンター経理部長、2021年4月内部統制・監査室長を経て、2022年3月より現職。


社外取締役は、北田隆(公認会計士北田隆事務所開設所長)、馬場俊夫(馬場法律事務所開設所長)、飯島奈絵(日本生命保険相互会社社外取締役)、渡邊洋一(四国税理士会丸亀支部支部長)、齋藤伸(住友化学経営企画室担当部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、合成樹脂事業、新規材料事業、建材事業およびその他の事業を展開しています。

合成樹脂事業
ポリエチレンやポリプロピレンの各種包装用フィルム、アグリマテリアル製品を製造販売し、主に食品や日用品メーカー、農業従事者などを顧客としています。
製品の販売による収益が主であり、運営は大倉工業、KSオークラ、九州オークラ、埼玉オークラなどが担っています。

新規材料事業
大型液晶テレビ用などの光学機能性フィルム関連製品を製造販売し、主に光学部品メーカーや最終製品メーカーを顧客としています。
製品の販売による収益が主であり、運営は大倉工業が中心となって行っています。

建材事業
パーティクルボードや加工ボードなどの建築資材の加工および製造販売を行っており、主に住宅関連企業などを顧客としています。
製品の販売による収益が主であり、運営は大倉工業やオークラプレカットシステムなどが担っています。

その他
情報処理システム開発事業やホテル事業、不動産の賃貸等の事業活動を展開し、幅広い顧客にサービスを提供しています。
顧客からのシステム販売や宿泊料金などによる収益が主であり、運営はオークラホテルやオークラ情報システムなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績は、売上高が773億円から867億円へと増加傾向にあります。経常利益も43億円から64億円へと拡大しており、利益率も改善傾向を示して安定した収益基盤を維持しています。

項目 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 773億円 789億円 812億円 867億円
経常利益 43億円 54億円 51億円 64億円
利益率(%) 5.5% 6.9% 6.3% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 38億円 29億円 44億円 38億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに拡大しています。特に営業利益は生産性の向上やコスト削減の寄与により大きく増加し、収益性が高まっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 812億円 867億円
売上総利益 152億円 175億円
売上総利益率(%) 18.7% 20.2%
営業利益 46億円 62億円
営業利益率(%) 5.6% 7.1%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が29億円(構成比25%)、給料が24億円(同21%)、研究開発費が16億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である合成樹脂事業が安定した売上を維持する中、新規材料事業が大型液晶テレビ用光学フィルムの好調により大きく売上を伸ばし、全社の増収を牽引しました。建材事業やその他事業も底堅く推移しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
合成樹脂事業 519億円 527億円
新規材料事業 146億円 189億円
建材事業 129億円 132億円
その他 19億円 19億円
連結(合計) 812億円 867億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 58億円 99億円
投資CF -57億円 -80億円
財務CF 9億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人ひとりを大切に」「地域社会への貢献」「お客様を第一に」を経営理念として掲げています。社会から信頼される企業であり続けるために、事業を通じて社会との共生を念頭に置いた企業の成長を目指し、持続的発展可能な社会づくりへの貢献を推進しています。

(2) 企業文化


同社は変化する社会環境の中で環境、社会、統治を重視した事業運営を行っています。社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、誠実かつ粘り強い人材の力を活かしながら、経営戦略の中心にサステナビリティを据えた積極的な活動を推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2027年度を最終年度とする中期経営計画において事業領域拡大を掲げ、以下の数値目標達成を目指して事業を推進しています。

・売上高850億円
・営業利益53億円
・調整後ROE7.5%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は経営ビジョンにおいて事業ポートフォリオの深化を掲げています。国内事業は研究開発機能の強化と高機能・高付加価値事業への注力を行い、汎用化・労働集約型事業は海外生産やパートナー企業との連携を模索します。また、資本構成バランスの最適化や株主還元の拡充も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は経営戦略や成長戦略を支える人材を採用・育成するため、人的資本への投資を強化しています。事業環境の変化に対応して新たな価値を創出するため、イノベイティブかつチャレンジブルなリーダーシップを持つ人材の育成を目指し、教育プログラムの再構築や多様な人材の採用促進、健康経営の推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.5歳 16.5年 6,066,344円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 85.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性比率(34.3%)、障がい者雇用率(3.0%)、年次有給休暇取得率(57.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 合成樹脂事業における原料価格の変動
同社の合成樹脂事業で製造するフィルムの主原料は石油化学製品であるため、原油価格や為替の変動が原料価格動向に大きく影響します。価格変動分を製品価格に転嫁できなかった場合、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規材料事業における特定の地域情勢の影響
新規材料事業における光学機能性フィルム関連製品の売上高は、顧客の製造拠点が集中する中国向けが多くを占めています。今後、中国の経済、政治、法律、社会情勢などに何らかの変化が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 建材事業における新設住宅着工戸数の増減
建材事業の製品は主に住宅の建築資材として使用されています。そのため、国内における人口減少等に伴う新設住宅着工戸数の減少による需要低下や、それに伴う価格競争の激化が起こった場合、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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