※本記事は、ミヨシ油脂の有価証券報告書(第100期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミヨシ油脂ってどんな会社?
食品事業と油化事業を二本柱とし、油脂の力を活かしたものづくりで幅広い産業に製品を供給する企業です。
■(1) 会社概要
1921年に繊維工業用石鹸の製造を目的に設立されました。1941年にマーガリンの製造を開始して食品分野に進出し、1949年に現在のミヨシ油脂に社名を変更して東京証券取引所に上場しました。その後、粉末油脂やチョコレート用油脂などへ事業を拡大し、2023年にはマレーシアに子会社を設立しています。
従業員数は連結で599名、単体で539名です。筆頭株主は事業会社の山崎製パンおよび日清オイリオグループで、それぞれ同率の株式を保有しています。両社とは製品の販売や油脂原料の購入などで取引関係があり、業務提携先としての関係性を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山崎製パン | 10.01% |
| 日清オイリオグループ | 10.01% |
| ミヨシ協力会 | 4.95% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長兼CEOは三木逸郎氏が務めています。取締役7名中2名が社外取締役(比率28.6%)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 三木逸郎 | 代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) | 2011年ミヨシ油脂入社。経営企画室長や代表取締役専務執行役員などを経て、2021年より現職。 |
| 竹下昇一 | 代表取締役専務兼COO(最高執行責任者) | 1977年ミヨシ油脂入社。油化本部営業部長や取締役兼CSOなどを経て、2025年より現職。 |
| 持田智也 | 取締役兼CMO(最高マーケティング責任者) | 日経BPにて日経トレンディ等のプロデューサーを経て、2021年ミヨシ油脂入社。戦略企画本部長等を経て2025年より現職。 |
| 小野寺哲 | 取締役執行役員兼CPO(最高生産責任者) | 1988年ミヨシ油脂入社。生産本部千葉工場長や生産統括部長等を経て、2025年より現職。 |
| 加藤太彦 | 取締役執行役員兼CFO(最高財務責任者)管理本部長 | 農林中央金庫にて事務企画部長や農中情報システム代表取締役専務を経て、2023年ミヨシ油脂入社。2025年より現職。 |
社外取締役は、村山憲二(元新日本監査法人シニアパートナー)、黒田佳奈子(WOMAN COLLEGE代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」および「油化事業」と「その他」事業を展開しています。
■食品事業
マーガリン、ショートニング、粉末油脂、ホイップクリームなどの食用加工油脂を製造し、主に製パン、製菓、即席麺メーカーなどの需要家へ販売しています。環境対応や健康志向など、市場のニーズを捉えた高付加価値製品の開発と提案を行っています。
顧客である食品メーカー等に対する製品の販売代金が主な収益源です。運営は主にミヨシ油脂が製品を製造し、需要家やミヨシ商事などの代理店を経由して販売を行っています。また、山崎製パンなどの主要株主にも製品を供給しています。
■油化事業
脂肪酸、グリセリン、香粧品原料、重金属処理剤、各種界面活性剤などの工業用油脂や化成品、環境関連製品を提供しています。自動車、タイヤ、塗料、トイレタリー、紙・パルプ分野など、さまざまな産業分野の顧客に向けて製品を供給しています。
顧客である各産業のメーカー等に対する製品の販売代金が主な収益源です。運営は主にミヨシ油脂が製品の製造・販売を担うほか、ミヨシ商事などの代理店を通じた販売も行っています。また、マレーシアの子会社などで生産体制の強化を進めています。
■その他
食品事業および油化事業に付随する業務として、原料の供給、製品の物流業務、油脂原料を扱う倉庫業および港湾輸送業などを展開しています。
各種サービスの手数料が主な収益源です。運営は、原料供給をミヨシ共栄が、物流業務をミヨシ物流が、倉庫・港湾輸送業を関連会社の日本タンクターミナルがそれぞれ担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は着実な拡大傾向が続いています。一方で利益面は、原材料価格やエネルギーコストの変動の影響を受けやすく、一時的に落ち込む局面もありましたが、直近では販売価格の適正化や固定資産売却などにより大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 475億円 | 527億円 | 562億円 | 570億円 | 595億円 |
| 経常利益 | 10億円 | -13億円 | 26億円 | 30億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | -2.5% | 4.6% | 5.3% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | -4億円 | 20億円 | 28億円 | 97億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増収となったものの、原材料価格やエネルギー価格の高止まり、物流費などの諸コストの上昇により売上原価が増加し、売上総利益率は低下しています。さらに、本社移転関連費用などの計上も重なり、営業利益率も低下する結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 570億円 | 595億円 |
| 売上総利益 | 116億円 | 113億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.4% | 18.9% |
| 営業利益 | 30億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が31億円(構成比34%)、給料手当及び賞与が27億円(同28%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品事業は外食・土産需要の回復と製品価格の適正化により増収となりましたが、諸費用の増加で減益でした。油化事業も販売価格の適正化等により微増収を確保しましたが、原材料高騰等の影響により減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 食品事業 | 397億円 | 421億円 | 19億円 | 14億円 | 3.4% |
| 油化事業 | 167億円 | 169億円 | 10億円 | 4億円 | 2.6% |
| その他 | 6億円 | 5億円 | 0.1億円 | 0.7億円 | 15.3% |
| 調整額 | -5億円 | -3億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 570億円 | 595億円 | 30億円 | 20億円 | 3.3% |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%で市場平均を下回っています。
営業利益と固定資産売却による資金を元手に借入金の返済などを進めており、財務基盤の改善に向けた取り組みが行われている改善型の局面といえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 23億円 |
| 投資CF | -25億円 | 53億円 |
| 財務CF | 2億円 | -52億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人によし、社会によし、未来によし。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、油脂の力を活かした「ものづくり」を通して、すべての人から信頼される企業であり続けることを目指しています。食品と油化の二本柱で環境に左右されない持続的成長基盤を確立し、社会課題の解決に貢献していく姿勢を明確にしています。
■(2) 企業文化
環境問題や社会問題の解決を目指すESGを重視した経営を推進し、SDGsに事業活動を関連づけています。また、多様性を尊重する「DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」の推進に力を入れており、社員一人ひとりが自分らしさを大切にしながら安心して働き続けられる企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は株主資本の効率的運用による投資効率の高い経営を図るため、2030年度に向けて特定の財務指標を目標として掲げています。
* 自己資本利益率(ROE)8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
第二次中期経営計画において、事業の拡大と収益力の強化に取り組んでいます。食品事業では新製品開発を通じた新しい「味」の創出や製品ポートフォリオの改善による「進化」を、油化事業では独自の環境視点に基づく主力製品の拡販や研究開発分野の拡大による「深化」を推進し、海外市場への展開も強化しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は価値創造の中核であり、最も重要な資本であると位置づけています。社員がキャリア形成に主体的に取り組めるよう支援し、階層別研修や目的別研修など多様な学びの機会を提供しています。また、全社で1on1面談を実施し、上司による部下の成長支援を通じて一人ひとりの強みを活かした育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.4歳 | 17.3年 | 7,221,680円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、過去5年間における女性社員の育児休業からの復帰率(100%)、障がい者雇用率(2.42%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料相場と為替レートの変動リスク
パーム油等の油脂原料を海外から仕入れているため、市況や為替相場の変動が仕入価格に影響を与えます。原材料価格の高騰を製品価格に転嫁できない状況が継続した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。サプライヤーの複数確保や収益管理の徹底で対応しています。
■(2) 食品の安全性に関するリスク
社会全般にわたる食品の安全性問題が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。国際的な食品安全システム認証(FSSC22000等)の取得やトレーサビリティシステムの構築を通じて、安全に関するリスクの未然防止に努めています。
■(3) 退職給付債務の変動リスク
退職給付費用や債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されています。年金資産の運用利回りの悪化や割引率の低下が発生した場合、将来認識される費用や債務が増加し、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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