日華化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日華化学 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日華化学は東証スタンダード及び名証プレミア市場に上場し、界面活性剤などの化学品とヘアケア等の化粧品をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、主力の化学品や化粧品がともに堅調に推移し増収、営業利益も過去最高を更新して増益となる一方、為替差損等により経常利益は減益となっています。


**日華化学転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**

※本記事は、日華化学の有価証券報告書(第112期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日華化学ってどんな会社?


界面活性剤等の化学品やヘアケア用化粧品の製造・販売をグローバルに展開するイノベーションカンパニーです。

(1) 会社概要


同社は1941年に設立され、界面活性剤など工業薬品の製造を開始しました。1982年に頭髪化粧品分野に進出し、現在の事業基盤を確立しています。1993年に名証第二部へ上場を果たし、その後も山田製薬や大智化学産業を子会社化するなど、M&Aを活用しながら化学品と化粧品の事業領域を拡大し続けています。

現在の従業員数は連結で1,576名、単体で628名となっています。筆頭株主は役員関係会社とみられる江守プランニングで、第2位は関係者団体の日華共栄会です。第3位には、同社の化学品事業における仕入および販売先であり、事業拡大や取引関係の強化を目的に資本提携を結んでいる長瀬産業が名を連ねています。

氏名 持株比率
江守プランニング 14.50%
日華共栄会 10.94%
長瀬産業 8.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員CEOは江守康昌氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は40.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
江守康昌 代表取締役社長執行役員CEO 1985年三菱化成に入社し1989年同社入社。海外法人社長等を経て1997年代表取締役に就任し国内外の要職を歴任。2021年より現職。
龍村和久 代表取締役副社長執行役員COO化粧品部門長デミコスメティクスカンパニープレジデント 1995年日本オラクルに入社し2004年同社入社。化粧品部門のプレジデントやグループ会社代表を歴任し、2021年より現職。
児島大司 取締役常務執行役員COO to Chemicals化学品部門長 1984年三井物産に入社し基礎化学品本部等の要職を歴任。2023年同社に入社し執行役員を経て、2024年より現職。
李晶日 取締役執行役員中国事業統括 1993年同社入社。中国事業に長く携わり各法人の要職を歴任。2013年執行役員に就任し、2017年より中国事業統括および現職。
澤崎祥也 取締役執行役員CFO(Administration)管理部門長 1992年同社入社。財務企画部長や経営企画部長、社長室長などを経て2016年に取締役に就任し、2021年より現職。
稲継崇宏 取締役執行役員CTO化学品部門界面科学研究所長 1997年同社入社。特殊化学品部門の研究開発を中心に担当し、2017年執行役員および研究所長に就任。2021年より現職。


社外取締役は、相澤馨氏(元日東電工代表取締役専務執行役員)、山岡美奈子氏(元ファンケル取締役専務執行役員)、坂本修一氏(元旭化成専務執行役員)、朝倉浩一氏(慶應義塾大学理工学部教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品事業」「化粧品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 化学品事業


繊維化学品、特殊化学品、クリーニング・メディカル用薬剤、機能化学品、先端材料などの製造・販売を行っています。アパレルや自動車、半導体など多様な業界を顧客とし、環境対応型製品の開発にも注力しています。

収益源はこれらの化学製品の販売代金です。運営は同社を中心に、大智化学産業やサイエンスコ日華などの国内子会社・関連会社のほか、中国、台湾、韓国、米国などグローバルに展開する多数の海外子会社が行っています。

(2) 化粧品事業


ヘアケア剤、ヘアカラー剤、パーマ剤、スキャルプケア剤、スタイリング剤などの頭髪用化粧品の製造・販売を行っています。主に美容室などのサロン向けに、高品質なプロフェッショナル用商材を提供しています。

収益源はこれらの化粧品や医薬部外品の販売代金です。運営は同社のデミコスメティクスカンパニーが中心となり、山田製薬、イーラルなどの国内子会社や、韓国の海外子会社などが製品の生産および販売を行っています。

(3) その他事業


報告セグメントに含まれない事業として、設備請負工事などの工事請負事業を展開しています。グループ内外の生産設備に関する設計や施工などを手がけています。

収益源は設備工事の請負代金です。運営は同社の子会社である江守エンジニアリングが行っており、同社の設備設計および施工などの業務も担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が485億円から557億円へと順調な拡大傾向を示しています。経常利益は外部環境の変動により増減を繰り返していますが、直近2期は高水準を維持しており、収益基盤の強化が進んでいることが伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 485億円 506億円 502億円 541億円 557億円
経常利益 27億円 31億円 25億円 40億円 38億円
利益率(%) 5.6% 6.2% 5.0% 7.3% 6.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 25億円 12億円 19億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益構成を見ると、増収に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。販管費は増加したものの、増収効果により営業利益も過去最高を更新して増益となり、本業の稼ぐ力が向上していることが分かります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 541億円 557億円
売上総利益 193億円 202億円
売上総利益率(%) 35.7% 36.3%
営業利益 35億円 38億円
営業利益率(%) 6.5% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料が47億円(構成比28.6%)、研究開発費が26億円(同15.7%)、運賃及び荷造費が20億円(同12.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力の化学品事業は国内外での高付加価値製品の伸長により増収となっています。また、化粧品事業も注力商品の拡販や受託事業の好調により売上を伸ばし、全セグメントで堅調な成長を遂げています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
化学品 394億円 399億円
化粧品 143億円 153億円
その他 4億円 6億円
連結(合計) 541億円 557億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 60億円 55億円
投資CF -51億円 -115億円
財務CF -0.3億円 74億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.5%となっており、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業パーパスとして「Activate Your Life」を掲げています。これには、界面活性剤の技術で人々の暮らしや社会を豊かにし輝く未来を作るという想いと、お客様や社員一人ひとりの人生が活き活きと輝くものにしていける存在でありたいという想いが込められています。これに基づき、「世界中のお客様から最も信頼されるイノベーションカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは重要な経営フィロソフィーとして「大家族主義」を掲げています。多様な人材が世界中から集い、高いモチベーションで持てる能力を最大限に発揮しグローバルに活躍できる企業集団を目指すとともに、「人材」と「働き方」の多様性を高め、社員のやりがいと満足度を向上させていくことで、この大家族主義を進化させる組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


同社は2035年までに目指したい姿として「ROE10%以上」を重点目標とし、新たな指標としてPBRとDOEを導入しています。その前半フェーズとして2030年度を最終年度とする中期経営計画「INNOVATION30」を策定し、以下の目標を掲げています。

* 売上高:700億円
* 営業利益:56億円
* ROE:10%以上(2035年目標)、8.0%(2030年目標)

(4) 成長戦略と重点施策


社会課題解決の機会が増加する中、「EHD(環境・健康/衛生・デジタル/先端材料)集中戦略」により新たな付加価値を提供していく方針です。中期経営計画の基本戦略として、化粧品事業の拡大や化学品EHD領域への傾注による「事業拡大と成長投資」、バランスのよい資金配分を行う「財務・資本戦略の強化」、経営基盤強化やCO2削減を進める「サステナビリティ経営」に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「女性、障害者、高齢者や外国人等多様な社員一人ひとりの活躍が、会社の成長に結びつく」という経営ポリシーのもと、ダイバーシティ経営を推進しています。次世代リーダー育成や語学力向上、若手の海外派遣などの研修制度を充実させるとともに、時間や場所にとらわれない多様な働き方を可能にする制度や就労支援を整備し、挑戦し続けられる職場環境の提供に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.3歳 16.6年 6,084,433円

※平均年間給与は税込総額(基準外賃金及び賞与を含む)の1人当たり平均額です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.7%
男性育児休業取得率 78.5%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 40.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職を希望する女性社員の比率(34.0%)、出産休業・育児休業取得者に対する復職時の就労支援制度実施率(100%)、法定検診受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外展開とカントリーリスク


同社グループは多数の海外拠点を持ち、連結売上高に占める海外売上高比率が約50%と高水準であるため、急激な為替相場の変動が業績に影響を及ぼすリスクがあります。また、複数の新興国で事業を展開しており、政治経済の変動や紛争などのカントリーリスクが存在します。

(2) 原材料の市場変動リスク


生産に使用する原材料は石油関連および天然由来の割合が高く、需給バランスや天候不順、為替変動等により価格が変動するリスクがあります。また、地政学的リスクによるサプライチェーンの制約が生じた場合、原材料の調達やコスト高騰により収益に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 新技術・新製品の開発・事業化


持続的成長の原動力として研究開発に注力していますが、開発や新規事業の進捗が計画と乖離した場合、投下資金の回収が困難となるリスクがあります。また、デジタル技術分野での急速な産業構造の変化に適切に対応できない場合、競争力低下を招く恐れがあります。

(4) 情報セキュリティリスク


事業効率化やデータ活用を進める中で、機密情報や個人情報を保有しています。ランサムウェアなど高度化するサイバー攻撃や過失により情報流出やシステム障害が発生した場合、事業活動の停滞や損害賠償、信用の低下などを招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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