サカタインクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サカタインクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サカタインクスは東京証券取引所プライム市場に上場し、各種印刷インキや機能性材料の製造・販売をグローバルに展開する化学メーカーです。主力のパッケージ関連インキやインクジェットインキなどが堅調に推移し、直近の業績は増収増益を達成しました。環境配慮型製品の開発や新規領域への挑戦にも注力しています。


※本記事は、サカタインクス株式会社 の有価証券報告書(第148期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サカタインクスってどんな会社?


同社は各種印刷インキや機能性材料の製造・販売を国内外で展開する、グローバルな化学メーカーです。

(1) 会社概要


1896年に個人商店の阪田インキ製造所として創業し、新聞インキの製造販売を開始しました。1961年に大阪証券取引所第二部へ上場し、1987年に現在のサカタインクスへ商号を変更しています。1988年の東京証券取引所第一部上場を経て、直近では海外企業の買収などグローバル展開を加速させています。

従業員数は連結で5323名、単体で902名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は住友生命保険、第3位は日本カストディ銀行となっており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.24%
住友生命保険 7.13%
日本カストディ銀行(信託口) 4.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は上野吉昭氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
上野吉昭 代表取締役社長執行役員 1985年同社入社。研究開発本部第二研究部長等を経て2014年取締役就任。2021年より現職。
森田博 取締役専務執行役員 1984年同社入社。四国支店長、機能性材料事業部長等を経て、2026年より現職。
建入実 取締役上席執行役員 1989年同社入社。海外子会社総経理や生産技術本部長等を経て、2023年より現職。
白藤貴幸 取締役執行役員 1994年同社入社。グループ経営企画本部企画部長等を経て、2025年より現職。
福永俊彦 取締役 1983年同社入社。国際部長、経理部長等を経て、2016年に取締役に就任し現在に至る。


社外取締役は、佐藤義雄(元住友生命保険社長)、辻本由起子(shapes代表取締役)、大槻和子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「印刷インキ・機材(日本)」「印刷インキ(アジア)」「印刷インキ(米州)」「印刷インキ(欧州)」「機能性材料」および「その他」事業を展開しています。

印刷インキ・機材(日本)


主に日本市場向けに、フレキソインキ、グラビアインキ、新聞インキ、オフセットインキ等の生産・販売を行うほか、印刷製版用材料や関連機器の仕入・販売を行っています。

顧客への製品・商品の販売によって収益を得るモデルです。運営は同社が主体となって、印刷工程全般を対象としたトータルソリューションを提供しています。

印刷インキ(アジア)


主にアジア市場向けに、フレキソインキ、グラビアインキ、メタルインキ、新聞インキ、オフセットインキなどの生産・販売を行っています。

各国の現地顧客への製品販売により収益を得ています。中国、インドネシア、ベトナムなどの海外子会社が主体となって運営しています。

印刷インキ(米州)


主に米州市場向けに、フレキソインキ、グラビアインキ、メタルインキ、オフセットインキなどの生産・販売を行っています。

米国の印刷会社を中心とした顧客への製品販売により収益を獲得しています。INX International Ink等の海外子会社が運営を担っています。

印刷インキ(欧州)


主に欧州市場を対象として、フレキソインキ、グラビアインキ、メタルインキ、オフセットインキなどの生産および販売を展開しています。

現地のパッケージ印刷会社などへの製品提供を通じて収益を得ています。主にINX EUROPEなどの欧州子会社が事業を運営しています。

機能性材料


日本、アジア、米州、欧州の各市場に向けて、インクジェットインキ、トナー、カラーフィルター用顔料分散液、機能性コーティング剤の生産・販売を行っています。

高付加価値製品の販売により収益を獲得するモデルです。同社および国内外のグループ会社が連携して事業を推進しています。

その他


主に日本市場向けに化成品の仕入・販売、ディスプレイサービスの生産・販売、ブランド保護ソリューションの仕入・販売を展開しています。

各製品やサービスの販売・提供によって収益を得ています。サカタケムテック等の国内子会社が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は年々順調な成長を続けており、特に直近では2500億円を突破しました。経常利益は一時的な落ち込みがあったものの回復基調にあり、足元では150億円を超える水準まで利益規模を拡大させています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1815億円 2155億円 2284億円 2456億円 2577億円
経常利益 85億円 50億円 136億円 129億円 154億円
利益率(%) 4.7% 2.3% 6.0% 5.3% 6.0%
当期利益 34億円 38億円 23億円 44億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。原価コントロールや製品構成の変化により売上総利益率も改善傾向にあり、それに伴って営業利益率も上昇し、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2456億円 2577億円
売上総利益 586億円 644億円
売上総利益率(%) 23.9% 25.0%
営業利益 132億円 152億円
営業利益率(%) 5.4% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が164億円(構成比33%)、運賃及び荷造費が78億円(同16%)、研究開発費が56億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力である印刷インキ(米州)が大きく成長して業績を牽引しています。また、機能性材料やその他事業も増収となっている一方で、日本やアジアの印刷インキ事業はやや伸び悩む結果となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
印刷インキ・機材(日本) 517億円 493億円
印刷インキ(アジア) 581億円 560億円
印刷インキ(米州) 870億円 1011億円
印刷インキ(欧州) 204億円 209億円
機能性材料 194億円 203億円
その他 90億円 100億円
連結(合計) 2456億円 2577億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 89億円 170億円
投資CF -148億円 -45億円
財務CF 42億円 -100億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.8%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造」をビジネステーマに、「人々の暮らしを快適にする情報文化の創造」を存在意義と定めています。技術力と情報力を駆使し、競争力と独自性を有したグローバルインキメーカーとして持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


多様な個性と能力を尊重し、チャレンジ精神ある人材が活躍できる組織風土の実現を掲げています。社員の自主性とチャレンジ精神を大切にし、実行者への評価を通じて、社員がやりがいと誇りを持って伸び伸びと挑戦できる環境づくりを重視する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


『中期経営計画2026(CCC-Ⅱ)』を策定し、事業拡大と収益力強化に取り組んでいます。2026年の連結目標数値として、以下の指標を掲げています。

* 売上高:2700億円
* 営業利益:180億円
* 経常利益:190億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:127億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「地球環境と地域社会を重視したESG・サステナビリティの取り組み強化」「印刷インキ事業・機能性材料事業の拡大」「新しい事業領域への挑戦」を戦略の方向性としています。環境配慮型製品の積極展開やデジタル化への対応を進めるとともに、新規市場の開拓に注力しています。

* 総投資額:400億円
* 将来成長に向けた戦略的投資:150億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


求める人材像として「グローバルな視点を持った上で、自ら変革を起こし、周囲とともに挑戦を楽しめる人財」を定義しています。人財育成および社内環境整備方針に基づき、多様な働き方の実現、公平な教育研修の提供、キャリア形成と能力開発の支援を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 44.6歳 18.9年 8,258,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.4%
男女賃金差異(正規雇用) 67.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用における女性の割合(31.8%)、サステナビリティ関連研修受講率(93.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料市況と調達コストの変動


印刷インキ等の原材料は石油化学製品への依存度が高く、原油価格や為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、ロシア情勢や物流の2024年問題などに伴う輸送コストの高騰も懸念されます。同社は調達先の拡大やグローバル調達の推進により、価格変動リスクの緩和と安定調達に努めています。

(2) グローバル事業展開における地政学リスク


売上の7割以上を海外が占めており、各国の政情不安や経済情勢の悪化、急激なインフレ、法的規制の変更などが事業に影響を与える可能性があります。同社は世界各国に拠点を展開してBCP体制を整えるとともに、政情が不安定な地域には輸出で対応することでリスクの回避を図っています。

(3) デジタル化・環境対応による事業環境の変化


情報メディアのデジタル化によるインキ需要の低迷や、脱プラスチック等の環境対応ニーズの高まりが事業環境を変化させるリスクがあります。これに対し同社は、生活必需品向けパッケージ分野の強化や、環境配慮型製品の積極展開、機能性材料事業の拡大を通じて、環境変化への対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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