鳥居薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥居薬品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のJTグループ中核医薬品企業です。腎・透析、皮膚疾患、アレルゲン領域を重点に医薬品の製造販売を展開しています。2024年12月期は、主力製品の販売伸長により、売上高は前期比10.6%増、営業利益は同35.0%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、鳥居薬品株式会社 の有価証券報告書(第133期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鳥居薬品ってどんな会社?


日本たばこ産業(JT)グループの医薬品企業として、腎・透析や皮膚疾患、アレルゲン領域に強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1872年に洋薬輸入商として創業し、1921年に株式会社鳥居商店を設立しました。1983年に米国メルク社の傘下となり、1998年には日本たばこ産業が親会社となりました。その後、研究開発機能を親会社へ集中し、2019年以降は「コレクチム軟膏」などの新薬を相次いで発売し、事業基盤を強化しています。

2024年12月31日現在、単体の従業員数は592名です。筆頭株主は親会社の日本たばこ産業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。親会社との機能分担により、同社は製造・販売機能に特化しつつ、独自の導入活動も推進しています。

氏名 持株比率
日本たばこ産業 54.77%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.15%
立花証券 3.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は近藤紳雅氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤 紳 雅 代表取締役社長 1992年日本たばこ産業入社。同社CSR推進部長等を経て2016年鳥居薬品入社。経営企画部長、常務執行役員などを歴任し、2025年3月より現職。
藤原 勝 伸 取締役 1987年鳥居薬品入社。横浜支店長、営業企画部長などを経て、2020年常務執行役員。2025年3月より現職。


社外取締役は、松村卓治(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー)、真鍋美穂子(財務コンサルタント)、藤田研一(株式会社K-BRIC&Associates代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」および「不動産賃貸業」を展開しています。ここでは主力である医薬品事業を領域ごとに解説します。

(1) 腎・透析領域


高リン血症治療剤やそう痒症改善剤などを、医療機関を通じて患者へ提供しています。主力製品には「リオナ錠」や「レミッチ」があり、透析患者のQOL向上に貢献しています。

収益は、医療用医薬品の販売による対価として得ています。運営は主に鳥居薬品が行っており、親会社である日本たばこ産業や提携先企業から導入した製品の製造販売およびプロモーション活動を担っています。

(2) 皮膚疾患領域


アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患に対する治療薬を提供しています。外用JAK阻害剤「コレクチム軟膏」やステロイド外用剤「アンテベート」などが主力製品です。2024年には新薬「ブイタマークリーム」も発売しました。

収益は、卸売業者を通じた医療機関への医薬品販売によって得ています。運営は鳥居薬品が行っており、専門性の高いMR(医薬情報担当者)による情報提供活動を通じて、製品価値の最大化を図っています。

(3) アレルゲン領域


スギ花粉症やダニアレルギーに対するアレルゲン免疫療法薬を提供しています。「シダキュア スギ花粉舌下錠」や「ミティキュア ダニ舌下錠」が主力であり、アレルギー疾患の根本治療に寄与しています。

収益は、製品の販売代金として得ています。運営は鳥居薬品が行っており、市場拡大が続くアレルゲン免疫療法の普及啓発に注力しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに増加傾向にあります。特に2024年12月期は売上高が600億円を突破し、経常利益も大幅に伸長しました。利益率も11%台と高い水準を維持しており、主力製品の販売拡大が業績を牽引しています。

項目 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上高 417億円 470億円 489億円 546億円 604億円
経常利益 50億円 48億円 55億円 53億円 69億円
利益率(%) 11.9% 10.3% 11.3% 9.7% 11.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 35億円 34億円 39億円 41億円 50億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は40%台半ばで安定しており、営業利益率も上昇傾向にあります。増収効果が利益増に直結しており、収益性が向上しています。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上高 546億円 604億円
売上総利益 248億円 267億円
売上総利益率(%) 45.4% 44.2%
営業利益 50億円 68億円
営業利益率(%) 9.2% 11.2%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が54億円(構成比27%)、給料及び手当が45億円(同23%)を占めています。研究開発費は28億円(同14%)となっています。売上原価については、製品製造原価等の詳細は割愛しますが、原価率は約56%です。

(3) セグメント収益


領域別の売上高を見ると、アレルゲン領域と皮膚疾患領域が大きく伸長しています。特に皮膚疾患領域は新薬の貢献もあり大幅増収となりました。腎・透析領域は主力品が伸長したものの、一部製品の薬価改定等の影響を受けています。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期)
腎・透析領域 119億円 111億円
皮膚疾患領域 143億円 174億円
アレルゲン領域 217億円 242億円
その他 65億円 74億円
連結(合計) 546億円 604億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ現金を投資や借入返済・配当に回している「健全型」と言えます。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF -31億円 36億円
投資CF -38億円 -36億円
財務CF -38億円 -39億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「鳥居薬品の志」を企業理念として掲げています。患者とその家族、医療従事者に誠実に向き合い、健康回復と豊かな人生に貢献することを目指しています。また、経営の基本的考え方として「4Sモデル」を位置づけ、顧客、株主、社会、社員に対する責任をバランスよく果たし、満足の総和を高めていくことを重視しています。

(2) 企業文化


大切にする価値観として「TORII's POLICY」を定めています。「つながる“ひと”すべてを大切に」「誠実・まじめがトリイのトリエ」「全員当事者 脱・評論家」などを掲げ、これらを実践することで企業理念の実現を目指しています。長い歴史の中で培った信頼を受け継ぎつつ、柔軟に変革・進化する姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けて目指す姿として中長期事業ビジョン「VISION2030」を策定しています。高い専門性と機動力を持ち、価値ある新薬を届ける存在感のある製薬企業を目指しています。

* 売上高:800億円超
* 営業利益:2032年の過去最高益(133億円)更新を射程に入れる

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2025-2027」において、成長戦略として「成長期新薬の普及・育成・価値最大化」「新薬開発の推進」「新規導入品の獲得」などを掲げています。また、ステークホルダーからの信頼維持策として、安定供給体制の整備やサステナビリティへの取り組みを推進しています。これらにより、VISION2030の実現と持続的成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「VISION2030」実現のため、「専門性」「機動力」「共創」をキーワードに人材育成と環境整備を進めています。高度な専門性を持つ人材の確保・育成、多様な人材が活躍できる環境整備、自律的なキャリア形成支援、健康経営の実践などを通じ、社員一人ひとりがいきいきと働ける環境の実現を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 41.2歳 14.6年 8,401,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.5%
男性育児休業取得率 56.5%
男女賃金差異(全労働者) 78.7%
男女賃金差異(正規雇用) 82.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 45.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇の取得率(79.6%)、年次有給休暇の平均取得日数(16.4日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療用医薬品の法規制リスク


医療用医薬品事業は、薬機法等の規制や薬価基準改定などの行政施策の影響を強く受けます。規制強化や薬価引き下げ等は、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は最新情報の収集と適切な対応に努めています。

(2) 研究開発の不確実性


新薬開発には多額の費用と長期間を要しますが、開発の遅延や中止、承認が得られないリスクがあります。これらは将来の成長性や収益性に影響を与える可能性があります。同社はポートフォリオ管理等により対応しています。

(3) 親会社との提携関係


同社は親会社である日本たばこ産業に研究開発機能を集中し、製造・販売機能を担っています。提携関係の変更や解消は業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は共同開発等を通じて提携関係の維持・発展に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

【面接対策】鳥居薬品の中途採用面接では何を聞かれるのか

1921年(大正10年)創業、100年以上にわたり人々の健康に貢献してきた鳥居薬品への転職。採用面接は新卒の場合と違い、仕事への取り組み方やこれまでの成果を具体的に問われる他、キャリアシートだけでは見えてこない「人間性」も評価されます。即戦力として、共に働く仲間として多角的に評価されるので事前にしっかり対策しましょう