※本記事は、鳥居薬品株式会社 の有価証券報告書(2024年12月期、2024年1月1日 ~ 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
鳥居薬品は医薬品の製造販売を主たる事業としています。腎・透析領域、皮膚疾患領域、アレルゲン領域など多岐にわたる分野で医薬品を提供しています。
単体従業員数は592名です。事業セグメントは医薬品事業の1つとなっています。
鳥居薬品の企業集団は、同社と親会社である日本たばこ産業で構成されています。同社は医薬品の製造販売を主たる事業としています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
鳥居薬品は、医薬品事業を主軸とする企業として、専門性を重視した人材育成と働きやすい環境づくりに注力しています。社員一人ひとりが能力を発揮し、長期的なキャリアを築けるような制度や施策が整えられています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、比較的長い勤続年数と安定した年齢構成が見られます。これは、社員が長期にわたってキャリアを形成しやすい環境が提供されていることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,401,000円 |
| 平均勤続年数 | 14.6年 |
| 平均年齢 | 41.2歳 |
| 単体従業員数 | 592人 |
同社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の制度を設けています。これらの制度は同社単体の従業員を対象としています。
また、退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、退職給付債務は52.0億円、年金資産は65.9億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
鳥居薬品は、「VISION2030」の実現と事業戦略の遂行に向けて、「専門性」「機動力」「共創」を組織と人財に求めています。この考え方に基づき、人財育成と組織・環境整備を進めています。
同社は、社員の専門性伸長を促進し、役割や成果に応じた処遇を実現する人事制度の改定を検討中です。期待する役割やレベルを明確にし、評価や処遇にメリハリをつけることで、社員の成長を促す仕組みを目指しています。
具体的な施策としては、事業戦略に必要な人財の確保、医薬情報担当者(MR)の中長期的・体系的な育成体制整備、多様な人財が活躍できる環境整備に取り組んでいます。企業理念である「鳥居薬品の志」を実現するため、「TORII's POLICY」を策定し、企業風土改革も推進しています。
さらに、社員が自律的にキャリア形成できるよう、自己理解や組織・職務への理解を促進する研修、通信教育、eラーニングの提供を通じて支援しています。社員一人ひとりが心身ともに健康に働けるよう、「健康宣言」のもと健康経営も実践しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女の賃金差異は、管理職に占める男性労働者の割合が女性労働者より高いことが主な理由とされています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 10.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 56.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 78.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 82.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち非正規雇用労働者) | 45.9% |
多様な人財が活躍できる環境整備
管理職に占める女性労働者の割合の目標値は、2025年3月まで11%以上、2028年3月まで12%以上です。男性労働者の育児休業取得率の目標値は、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年で50%以上と設定されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 10.5% |
| 労働者に占める女性労働者の割合 | 24.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 56.5% |
健康経営の実践
年次有給休暇の取得率および平均取得日数は2023年4月から2024年3月までの実績です。年次有給休暇の平均取得日数の目標値は、2025年3月まで年間14日以上、2028年3月まで年間16日以上とされています。フルタイムで働く労働者の時間外労働及び休日労働の合計時間(一月当たりの平均)の目標値は、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年で17時間以下と設定されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 年次有給休暇の取得率 | 79.6% |
| 年次有給休暇の平均取得日数 | 16.4日 |
| フルタイムで働く労働者の時間外労働及び休日労働の合計時間(一月当たりの平均) | 15.2時間 |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
鳥居薬品は、医薬品の製造販売を主たる事業としています。同社は、特定の疾患領域に特化した製品を提供することで、収益を上げています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社は医薬品事業を主軸としており、医薬品の製造販売を通じて収益を得ています。腎・透析領域、皮膚疾患領域、アレルゲン領域といった特定のフランチャイズ領域に注力し、それぞれの領域で主要な製品を展開しています。
具体的には、腎・透析領域では高リン血症治療剤や鉄欠乏性貧血治療剤、皮膚疾患領域では外用JAK阻害剤や外用副腎皮質ホルモン剤、アレルゲン領域ではアレルゲン免疫療法薬などを提供しています。これらの製品の販売数量の伸長が、同社の収益に貢献しています。同社の売上高は、本邦の顧客への売上高が90%を超えており、国内市場に強く根ざした事業構造となっています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社の直近の業績は、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも前事業年度に比べて増加しています。特に営業利益と経常利益は、売上高の増加を上回る高い伸びを示しました。
売上高は、皮膚疾患領域およびアレルゲン領域における販売数量の伸長が主な要因となり、増加傾向にあります。費用面では、売上原価が増加したものの、営業利益は大きく増加しました。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
鳥居薬品は、財務の安定性を維持しつつ、事業活動を通じて資金を創出しています。将来に向けた投資も行いながら、健全な資金の流れを保っている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
鳥居薬品の財務基盤は、高い自己資本比率と潤沢な手元資金によって特徴づけられます。同社の自己資本比率は、プライム市場の製造業平均と比較しても非常に高い水準にあります。これは、外部からの借入に過度に依存せず、安定した経営を維持していることを示しています。
手元資金も十分に確保されており、不測の事態や将来の事業機会にも対応できる体制が整っています。このような強固な財務体質は、従業員の雇用や給与の安定性にもつながる要素と言えます。
| 指標 | 2023年12月期(前期) | 2024年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,201億円 | 1,215億円 |
| 自己資本比率 | 90.0% | 86.4% |
| ROE(自己資本利益率) | - | - |
| 現金及び現金同等物 | 347億円 | 308億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
鳥居薬品のキャッシュフローは、本業で安定的に資金を創出し、それを将来への投資に充てている状況を示しています。当事業年度の営業活動によるキャッシュフローは収入となり、税引前当期純利益の増加や仕入債務の増加などが主な要因です。これは、同社が事業を通じて着実に資金を生み出していることを意味します。
一方、投資活動によるキャッシュフローは支出となっており、投資有価証券の取得などが主な要因です。これは、将来の成長に向けた戦略的な投資を行っていることを示しています。財務活動によるキャッシュフローも支出となっており、主に配当金の支払いが影響しています。
これらの資金の流れから、同社は本業で得た資金を投資に回しつつ、余剰資金も生み出していることがわかります。このような健全なキャッシュフローは、安定した事業運営と将来の成長への期待につながり、従業員の雇用や給与の安定性にも寄与すると考えられます。
| 項目 | 2023年12月期(前期) | 2024年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △31.2億円 | 36.4億円 |
| 投資CF | △37.8億円 | △35.7億円 |
| 財務CF | △38.4億円 | △39.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △69.0億円 | 0.7億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社は、医療用医薬品に関する法規制や薬事行政の動向が業績に影響を及ぼすリスクを認識しています。規制強化や医療制度改正、薬価改定などが業績に影響を与える可能性があります。
また、競合品や後発品の上市、新規治療法や新技術の登場など、製商品を取り巻く環境の変化による売上減少のリスクも挙げています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は、親会社であるJTとの業務提携関係に関するリスクを認識しています。新薬の研究開発機能がJTへ集中しているため、提携関係の変更や解消が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
鳥居薬品は、患者さんの健康回復と豊かな人生への貢献を企業理念「鳥居薬品の志」として掲げています。この理念の実現のため、「TORII's POLICY」を大切にする価値観とし、お客様、株主、社会、社員の満足の総和を高める「4Sモデル」を経営の基本的考え方としています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社は、企業理念「鳥居薬品の志」として、患者さんとそのご家族、医療に携わる方々に誠実に向き合い、健康回復と病に縛られない豊かな人生に貢献することを目指しています。また、長い歴史で培った信頼を受け継ぎながら、時代や環境に合わせて柔軟に変革・進化し、医療への貢献に挑戦し続けることを掲げています。
中長期事業ビジョン「VISION2030」では、医療ニーズを深く理解し、その充足のために高い専門性と機動力を持って関係する皆様との共創を最適な形で進め、価値ある新薬を見いだし届ける存在感のある製薬企業を目指すとしています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社は、企業理念の実現のために「TORII's POLICY」という大切にする価値観を定めています。具体的には、「つながる“ひと”すべてを大切に」「誠実・まじめがトリイのトリエ」「全員当事者 脱・評論家」「新しいことでもおそれずにやってみよう」「すべての経験を糧に、私たちは成長し続ける」という五つの指針があります。
これらの価値観を尊重し、実践度合いを測るアンケートを毎年実施し、企業風土改革に取り組んでいます。経営の基本的考え方である「4Sモデル」では、お客様、株主、社会、社員の四者に対する責任をバランス良く果たし、満足の総和を高めていくことを重視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社は、中長期事業ビジョン「VISION2030」の実現に向け、「中期経営計画2025-2027」を策定し、成長戦略とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでいます。成長戦略では、成長期新薬の普及・育成・価値最大化、新薬開発の推進、新規導入品の獲得、経営戦略に沿った人事制度等の整備と働き方改革、企業風土改革を重点施策としています。
信頼維持策としては、安定供給体制の整備・強化、薬事規制の遵守と品質保証、コンプライアンスの強化、コーポレートガバナンスの充実、サステナビリティへの取り組みを進めています。これらの施策を通じて、企業価値の向上を目指しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
鳥居薬品は監査等委員会設置会社であり、独立社外取締役が取締役会の過半数を占める構成となっています。これにより、客観的な視点からの経営監督が強化された体制です。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
鳥居薬品は、日本たばこ産業株式会社が筆頭株主であり、同社が発行済株式の過半数を保有している資本構成となっています。このため、日本たばこ産業株式会社が同社の経営に強い影響力を持つ傾向が見られます。その他、信託銀行や証券会社が上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本たばこ産業 | 54.77% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.15% |
| 立花証券 | 3.20% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 2.50% |
| CEPLUX- THE INDEPENDENT UCITS PLATFORM 2 | 1.60% |
なお、エフィッシモ キャピタル マネージメント ピーティーイー エルティーディーが2024年3月8日現在で1,677.0千株(5.82%)を所有している旨が記載されていますが、同社としては2024年12月31日現在の実質所有状況の確認ができないため、上記大株主の状況には含めていません。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は5名(男性4名・女性1名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は近藤紳雅氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 近藤 紳雅 | 代表取締役社長 | 1992年日本たばこ産業株式会社入社。CSR推進部長、医薬事業部調査役を経て、2016年同社経営企画部長。2019年執行役員、2020年常務執行役員。2024年代表取締役副社長、2025年3月より現職。 |
| 藤原 勝伸 | 取締役 | 1987年同社入社。横浜支店長、プロダクトマネジメント部長、大阪支店長、営業企画部長を歴任。2017年取締役、2020年常務執行役員。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、松村卓治氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー・監査等委員)、真鍋美穂子氏(財務コンサルタント・監査等委員)、藤田研一氏(株式会社K-BRIC&Associates代表取締役社長・監査等委員)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、2024年3月27日に移行しました。取締役会は5名で構成され、その過半数である3名が独立社外取締役であり、客観的な立場から経営を監督する体制となっています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社は、役員の報酬について、役位別に月額報酬、賞与、譲渡制限付株式報酬を組み合わせています。業務執行取締役の賞与は、個人評価と売上高および研究開発費控除前の営業利益を指標とした業績連動部分で構成されています。非業務執行取締役および監査等委員である取締役の報酬は、業務執行からの独立性を確保する観点から月額報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 2名 | 1.0億円 | 50.0百万円 |
| うち社外取締役 | 5名 | 33百万円 | 6.6百万円 |
| 取締役 | 7名 | 1.3億円 | 19.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 5百万円 | 5.0百万円 |
| うち社外監査役 | 2名 | 5百万円 | 2.5百万円 |
| 監査役 | 3名 | 11百万円 | 3.7百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。また、監査等委員会設置会社への移行に伴い、監査役に対する報酬等は移行前の期間、監査等委員である取締役に対する報酬等は移行後の期間に係るものです。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。