コーセー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーセー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する大手化粧品メーカーです。化粧品事業とコスメタリー事業を柱とし、「コスメデコルテ」や「雪肌精」等のブランドを展開しています。2024年12月期は日本や米国の好調により増収および経常増益となりましたが、中国事業の構造改革に伴う特別損失の計上により、当期純利益は赤字となりました。


※本記事は、株式会社コーセー の有価証券報告書(第83期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コーセーってどんな会社?


1946年の創業以来、化粧品ひとすじに事業を展開し、独自性の高いブランドを多数保有する有力企業です。

(1) 会社概要


同社は1946年に小林合名会社として創業し、1948年に株式会社小林コーセーを設立しました。1991年に現在の株式会社コーセーへ商号変更し、2000年に東京証券取引所市場第一部へ上場しています。2014年には米国Tarte, Inc.を子会社化するなどグローバル展開を加速させ、2024年にはタイのPURI CO.,LTD.を子会社化しました。

連結従業員数は8,130名、単体従業員数は945名です。大株主構成については、筆頭株主は一般社団法人コーセーマネジメントで、第2位は一般社団法人ウッドです。上位には創業家に関連するとみられる一般社団法人や、資産管理業務を行う信託銀行などが名を連ねています。

氏名 持株比率
一般社団法人コーセーマネジメント 9.95%
一般社団法人ウッド 9.80%
一般社団法人MYMラボラトリーズ 9.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性6名(取締役及び監査役)の計16名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は小林 一俊氏です。取締役12名のうち社外取締役は4名で、比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
小林 一俊 取締役社長(代表取締役) 1986年入社。取締役、常務取締役、代表取締役副社長を経て、2007年6月より現職。
小林 孝雄 専務取締役 1993年入社。取締役、国際副本部長、コーセーコスメポート代表取締役社長を経て、2014年6月より現職。
小林 正典 常務取締役 2004年入社。執行役員、取締役を経て2017年6月より現職。2024年1月よりコーセーインダストリーズ取締役社長を兼務。
澁澤 宏一 常務取締役 1984年入社。執行役員、取締役を経て2018年6月より現職。コーセー化粧品販売およびコーセーコスメポートの監査役を兼務。
小林 勇介 取締役 2000年アルビオン入社。同社執行役員、取締役を経て2014年6月より現職。アルビオン専務取締役を兼務。
小椋 敦子 取締役 1988年入社。執行役員情報統括部長、研究所長兼先端技術研究室長を経て、2025年1月より商品本部副本部長兼研究所長。
原谷 美典 取締役 1989年入社。広報部長、経営企画部長、執行役員を経て、2024年10月より経営企画部長兼情報統括部長。
田中 慎二 取締役 1989年入社。執行役員戦略ブランド事業部長を経て、2024年3月よりマーケティング本部長兼DECORTÉ事業部長。


社外取締役は、菊間 千乃(弁護士)、湯浅 紀佳(弁護士)、須藤 実和(プラネットプラン代表取締役)、小林 久美(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化粧品事業」「コスメタリー事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 化粧品事業


百貨店や化粧品専門店などを中心に対面販売を行うハイプレステージブランドや、ドラッグストアや量販店などで販売されるプレステージブランドを展開しています。主要製品には「コーセー」「雪肌精」「コスメデコルテ」「ジルスチュアート」「アディクション」などがあり、子会社である株式会社アルビオンが展開する「アルビオン」なども含まれます。

収益は、主に小売店や卸売業者への製品販売によって得ています。運営は、製造を同社および国内外の生産子会社が行い、販売は国内ではコーセー化粧品販売株式会社や株式会社アルビオン、海外では高絲化粧品銷售(中国)有限公司やTarte, Inc.などの現地法人が担っています。

(2) コスメタリー事業


ドラッグストアや量販店などの一般流通ルートを通じて、セルフ販売を中心とする低価格帯から中価格帯の製品を展開しています。主要製品には、メイクアップブランドの「ヴィセ」「ファシオ」、ヘアケアやスキンケアの「ソフティモ」「ジュレーム」「サンカット」などがあります。

収益は、ドラッグストアや量販店、卸売業者への製品販売から得ています。運営においては、製品の製造を同社が行い、販売は主にコーセーコスメポート株式会社およびコーセー化粧品販売株式会社が担っています。

(3) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、ホテルやゴルフ場などに向けたアメニティ製品の販売、不動産賃貸、輸出原材料の販売、OEM製品の受託製造などを行っています。

収益は、アメニティ製品の販売代金や不動産の賃貸料、OEM受託料などから得ています。アメニティ製品の販売はコーセートラベルリテール株式会社への業務委託を通じて行われ、不動産賃貸やOEM製品の製造は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は回復傾向にあり、当期は3,228億円と過去最高水準に近づいています。一方で利益面では、経常利益は200億円前後で推移しているものの、当期は中国事業の構造改革に伴う特別損失を計上した影響で、親会社株主に帰属する当期純利益が赤字に転落しました。

項目 2021年3月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上高 2,794億円 2,250億円 2,891億円 3,004億円 3,228億円
経常利益 187億円 224億円 284億円 203億円 216億円
利益率(%) 6.7% 9.9% 9.8% 6.7% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 120億円 147億円 173億円 67億円 -7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は7.4%増加しました。売上総利益率は原価率の上昇により若干低下しましたが、増収効果により売上総利益の額は増加しています。営業利益は増収および販売費のコントロールにより前期比で増加し、営業利益率も改善しました。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上高 3,004億円 3,228億円
売上総利益 2,112億円 2,226億円
売上総利益率(%) 70.3% 69.0%
営業利益 160億円 174億円
営業利益率(%) 5.3% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が542億円(構成比26%)、販売促進費が491億円(同24%)を占めています。売上原価については、商品及び製品売上原価が売上原価合計の大部分を占める構造です。

(3) セグメント収益


化粧品事業は「コスメデコルテ」の国内販売増や「タルト」の好調により増収となりましたが、原価率上昇等の影響で減益となりました。コスメタリー事業は主力ブランドの伸長により大幅な増収増益を達成しました。その他事業もアメニティ事業の回復により増収増益となっています。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期) 利益(2023年12月期) 利益(2024年12月期) 利益率
化粧品事業 2,405億円 2,553億円 179億円 151億円 5.9%
コスメタリー事業 577億円 647億円 29億円 70億円 10.8%
その他 23億円 27億円 10億円 14億円 53.1%
調整額 301億円 323億円 -58億円 -61億円 -
連結(合計) 3,004億円 3,228億円 160億円 174億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を元手に、将来のための投資を行いつつ、借入金の返済や配当支払いも実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF 304億円 184億円
投資CF -112億円 -89億円
財務CF -97億円 -87億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%でプライム市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.1%でプライム市場平均(非製造業平均24.2%、製造業平均46.8%)を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「化粧品で人々に夢と希望を与え、明るい世の中をつくりたい」という使命を掲げています。その上で、「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する。」という存在理念(パーパス)のもと、人と地球に寄り添い、かけがえのない生涯をともに美しく彩る企業への進化を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「正しきことに従う心」を行動の基盤とし、誠実な姿勢を重視しています。また、コーポレートメッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」を掲げ、従業員一人ひとりの向上心と主体性を尊重し、「自ら磨く」姿勢を基本とする人材育成方針を持っています。多様な個性を理解し高め合うことで、独自の価値創造を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


2024年11月に策定した中長期ビジョン「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」において、2030年をマイルストーンとした定量目標を設定しています。財務目標として、売上高成長率CAGR+5%以上、営業利益率12%以上、ROIC10%以上などを掲げています。

* 売上高成長率:CAGR+5%以上
* 営業利益率:12%以上
* EBITDAマージン:18%以上
* ROIC:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


日本での盤石な事業基盤構築による収益性向上と、グローバルでの事業成長を両輪としています。グローバルでは「脱・自前」による地域最適化を進め、現地起点のマーケティングやモノづくりへの転換、M&Aや提携によるブランド獲得を推進します。また、ジェンダーや世代を超えた価値提供を強化し、多様な美の価値を提供することを目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら磨く」を人材育成方針の基本とし、従業員の主体性と多様性を尊重しています。キャリア採用の強化や早期登用・抜擢が可能な評価制度への改定を進めるとともに、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進しています。また、グローバルキーポストの人材充足率向上や、性別に関わらず活躍できる環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 40.5歳 13.0年 7,164,267円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.3%
男女賃金差異(正規雇用) 62.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 60.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(32.8%)、指導的地位にある社員の女性比率(34.4%)、有給休暇取得率(74.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 戦略リスク(価格競争・ブランド価値)


マーケットニーズや顧客志向の変化、競合他社の参入などにより、価格競争やブランド価値の毀損、市場シェアの低下が生じるリスクがあります。これに対し、機能的・情緒的な付加価値での差別化や、独自の価値追求、オープンイノベーションによる競争優位性の維持・向上に取り組んでいます。

(2) 海外進出国エリアの政治情勢


海外進出国やエリアにおける政治情勢の急変により、需要変動による売上への影響や従業員の安全に関わるリスクがあります。海外現地法人や取引先との連携を強化し、各国の経済・政治・社会的状況についてタイムリーな情報収集を行い、必要な対策を講じる体制をとっています。

(3) 気候変動対応への遅れ


低炭素社会への移行や気候変動対応が遅れることで、事業収益性の低下やレピュテーションの悪化を招くリスクがあります。SBT目標に準じた温室効果ガス排出量削減目標の設定や、TCFD提言に基づく情報開示、環境配慮型商品の開発など、気候変動緩和に向けた取り組みを積極的に進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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