※本記事は、メック株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メックってどんな会社?
電子基板・電子部品製造用薬品の研究開発と製造販売をグローバルに展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1969年に設立され、化学技術コンサルティング業務を開始しました。翌年より銅表面処理剤などの販売を始め、1995年には現在の主力製品である密着向上剤を発売しました。2001年に株式を上場し、現在は台湾、中国、欧州、タイなどに拠点を構え、世界の電子基板市場を包括する体制で事業を拡大しています。
従業員数は連結で508名、単体で292名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行、第3位はマエダホールディングスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.77% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 9.56% |
| マエダホールディングス | 6.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は前田和夫が務めており、社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前田和夫 | 代表取締役社長 | 三菱重工業を経て2000年に同社へ入社。社長室長、常務取締役、海外子会社代表などを歴任し、2002年に代表取締役社長に就任。2015年より現職。 |
| 住友貞光 | 取締役常務執行役員 | 大王製紙を経て1988年に同社へ入社。国際事業センター事業推進グループ長、海外子会社代表、執行役員事業本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
| 谷口哲也 | 取締役常務執行役員 | 松下電工(現パナソニックホールディングス)を経て2021年に同社へ入社。戦略企画室長、社長室長、経営企画本部長などを歴任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、ルシンダ ローマン 太田(弁護士法人中央総合法律事務所外国弁護士)、髙尾光俊(元川崎重工業代表取締役副社長)、橋本薫(類法律会計事務所代表弁護士・公認会計士)、宮下英二(元パナソニックデバイスSUNX専務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「台湾」「珠海(中国)」「蘇州(中国)」「欧州」「タイ」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■日本
電子基板や電子部品の製造に用いられる薬品の開発、製造、販売を行っています。主に半導体パッケージ基板向けの密着向上剤や、ディスプレイ向けの各種エッチング剤などを提供しており、次世代通信やAI、IoTの進展に伴う高密度化のニーズに対応しています。
顧客である電子基板・電子部品メーカーなどに対して製品を販売し、その対価として収益を得ています。当セグメントの事業運営は、親会社である同社が主体となって行っています。
■台湾
台湾市場における電子基板・電子部品製造用の薬品の製造および販売を行っています。現地の顧客ニーズに合わせた高付加価値な製品を提供し、先端半導体パッケージ基板や汎用半導体パッケージ基板向けの需要に対応しています。
現地の電子基板メーカーなどに製品を販売することで収益を得ています。当セグメントの事業運営は、子会社であるMEC TAIWAN COMPANY LTD.が行っています。
■珠海(中国)
中国の珠海地域を中心に、電子基板や電子部品製造用の薬品の製造および販売を展開しています。スマートフォンやパソコンに関連する製品需要に応え、主に密着向上剤や各種表面処理剤を提供しています。
現地の電子基板・電子部品メーカーに対して製品を販売し、収益を得ています。当セグメントの事業運営は、子会社であるMEC FINE CHEMICAL(ZHUHAI)LTD.が行っています。
■蘇州(中国)
中国の蘇州地域を拠点として、電子基板や電子部品製造用の薬品の製造および販売を行っています。スマートフォンやパソコン、ディスプレイ向けの製品需要を中心に、多様な市場ニーズに対応した製品を供給しています。
現地の顧客である電子基板メーカーなどに製品を販売することで収益を得ています。当セグメントの事業運営は、子会社であるMEC CHINA SPECIALTY PRODUCTS(SUZHOU)CO.,LTD.が行っています。
■欧州
欧州市場向けに、電子基板や電子部品製造用の薬品の製造および販売を行っています。現地の顧客に対して各種処理薬品や関連資材を提供し、欧州地域の需要変動に合わせた営業活動を展開しています。
現地の電子基板メーカーなどに対して製品および関連資材を販売し、収益を得ています。当セグメントの事業運営は、子会社であるMEC EUROPE NV.が主に行っています。
■タイ
タイをはじめとする東南アジア市場向けに、電子基板や電子部品製造用の薬品の製造および販売を行っています。車載向けや衛星通信関連、半導体パッケージ基板用途などの需要に対応する製品を提供しています。
現地の電子基板メーカーなどに対して製品を販売することで収益を得ています。当セグメントの事業運営は、子会社であるMEC SPECIALTY CHEMICAL(THAILAND) CO.,LTD.が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、電子基板用機械の販売や関連する機械装置の修理などを展開しています。
顧客に対する機械装置の修理やサービスの提供を通じて収益を得ています。事業の運営は、主に同社および一部の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、全体として拡大傾向にあります。特に直近の事業年度では、先端半導体パッケージ基板向けの需要増加などが寄与し、売上高は200億円を突破しました。利益面でも収益性の高い製品の出荷増が貢献し、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成しており、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 150億円 | 163億円 | 140億円 | 182億円 | 209億円 |
| 経常利益 | 41億円 | 42億円 | 27億円 | 47億円 | 61億円 |
| 利益率(%) | 27.3% | 26.0% | 19.1% | 25.7% | 28.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 26億円 | 19億円 | 35億円 | 58億円 |
直近の業績では、売上高の拡大とともに売上総利益および営業利益が順調に増加しています。特に高付加価値な製品の需要増を背景に、売上総利益率は60%を超える高い水準を維持しており、営業利益率も27%台へと改善しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 182億円 | 209億円 |
| 売上総利益 | 111億円 | 130億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.9% | 62.0% |
| 営業利益 | 46億円 | 57億円 |
| 営業利益率(%) | 25.0% | 27.4% |
販売費及び一般管理費の内訳を見ると、給料及び賞与が20億円(構成比27.4%)で最も大きな割合を占めており、次いで研究開発費が14億円(同19.1%)、荷造運搬費が9億円(同12.1%)となっています。積極的な研究開発や人材への投資を行っていることがうかがえます。
各地域セグメントにおいて、先端半導体パッケージ基板向けや汎用半導体パッケージ基板向けの製品需要が堅調に推移し、全セグメントで前年を上回る売上を記録しました。特に台湾や欧州、タイでの成長が目立っており、グローバル市場での販売拡大が進んでいます。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 72億円 | 78億円 |
| 台湾 | 33億円 | 39億円 |
| 珠海(中国) | 23億円 | 28億円 |
| 蘇州(中国) | 36億円 | 40億円 |
| タイ | 8億円 | 11億円 |
| 欧州 | 10億円 | 14億円 |
| 連結(合計) | 182億円 | 209億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 40億円 |
| 投資CF | 1億円 | -34億円 |
| 財務CF | -9億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も83.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「わたしたちは『独創の技術』『信頼の品質』『万全のサービス』を信条に、自由に着想し、グローバルな事業活動を通して界面価値創造を実現することで豊かで潤いのある社会と環境づくりに貢献します。」を掲げています。金属と樹脂等の接合技術を活かし、社会課題の解決と価値提供を目指しています。
■(2) 企業文化
企業価値の源泉として、社是である「仕事を楽しむ」を重視しています。大切な時間をかける仕事に真剣に取り組み、自らの心豊かな人生と明るく楽しい社会への貢献を同時に追い求める文化が醸成されています。多様な個性が自律自走し、連帯しながら「創造と変革」に挑戦できる企業風土づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年ビジョン「界面の創出と接合で世界一になる」の実現に向け、中期経営計画を策定しています。持続的な成長に向けて、営業利益率や資本コストを意識した経営目標を設定し、株主への積極的な利益還元も方針としています。
* 連結売上高:250億円(2027年12月期)
* 営業利益率:26〜30%
* 連結ROE(自己資本利益率):13〜16%
■(4) 成長戦略と重点施策
高付加価値製品をグローバルに提供するため、革新的なテクノロジーの実用化に向けた研究開発力を強化しています。また、既存技術の応用展開や新規市場への進出に加え、グローバル生産ネットワークの拡充やESG推進を通じた事業基盤の強化に取り組んでいます。
* 研究開発に関する投資:毎年 連結売上高の約10%
* 設備投資:3年累計 約80億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員を持続可能な発展を支える最も重要な「人的資本」と捉え、「自律自走し、連帯できる」人材の育成に取り組んでいます。短期・中長期の視点で経営に資する人的価値を創出するため、キャリア形成や能力開発の支援、ダイバーシティの推進、ワークライフバランスの充実を通じたエンゲージメント向上を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.5歳 | 12.5年 | 7,832,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 24.5% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 90.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 133.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(30%以上:2030年目標)、男女賃金差異(90%以上:2030年目標)、男性育児休業取得率(85%以上:2030年目標)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外事業展開に関するカントリーリスク
同社グループは海外売上高比率が高く、台湾、中国、欧州、タイなどに拠点を展開しています。特に中国市場における事業の重要性が増しており、各地域での予期せぬ法規制の変更や経済状況の悪化など、カントリーリスクが顕在化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動の影響
同社グループは世界的に事業活動を展開しており、海外売上高が過半数を占めています。そのため、為替相場の変動による影響を受けやすく、一般的に円高が進行した場合には減収や減益の要因となり、業績に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 原油・素材の価格高騰および調達リスク
主要製品である電子基板製造用薬品の原料として、原油や銅をベースとする材料を使用しています。また、製品の運搬には原油価格に影響されるポリエチレン容器を用いています。原材料価格の高騰や世界的な需要増加に伴う調達難が発生した場合、コスト増加により収益を圧迫する可能性があります。



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