※本記事は、日本カーボン株式会社の有価証券報告書(第167期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本カーボンってどんな会社?
炭素製品や炭化けい素製品の製造・販売を主力とし、日本の炭素工業のパイオニアとして事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1915年に設立され、1927年に日本初の人造黒鉛電極の製造に成功しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、1962年には炭素繊維の工業化にも成功しています。近年では、2012年に炭化けい素関連製品を扱う子会社を設立し、2022年に東京証券取引所のプライム市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で667名、単体で187名となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はみずほ銀行、第3位は資本業務提携の締結により関係を強化している事業会社のSECカーボンとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.78% |
| みずほ銀行 | 4.96% |
| SECカーボン | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は宮下尚史氏が務めており、取締役4名のうち2名が社外取締役で、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮下尚史 | 代表取締役社長 | 1992年入社。営業本部FC販売第1部長等を経て、2015年常務、2016年専務。2017年より現職。 |
| 浦野章 | 取締役 | 1990年入社。研究所長や事業改革推進ユニット長等を経て、2024年取締役。2026年より現職。 |
社外取締役は、片山有里子氏(高橋・片山法律事務所開設)、田中義和氏(元日本カーボン取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「炭素製品関連」「炭化けい素製品関連」および「その他」事業を展開しています。
■炭素製品関連
人造黒鉛電極、不浸透黒鉛製品、等方性高純度黒鉛製品、汎用炭素繊維、リチウムイオン電池負極材などの多種多様な炭素製品を製造し、半導体や自動車分野を含む幅広い顧客に提供しています。
顧客への製品販売によって収益を得るモデルです。運営は主に日本カーボンが中心となり、素材の製造から加工・販売までを手掛け、日本テクノカーボンや海外の販売子会社等とともに事業を展開しています。
■炭化けい素製品関連
航空機エンジンや産業用部材として利用される炭化けい素連続繊維などの素材を製造・加工し、国内外の航空宇宙産業や関連メーカーなどに販売しています。
製品の販売による収益を柱としています。本事業は主に連結子会社であるNGSアドバンストファイバーが素材の製造から加工、そして顧客への製品販売までを一貫して担い、事業を推進しています。
■その他
主力素材以外の領域として、産業機械の製造および修理サービスを展開するほか、保有する不動産や駐車場などを活用した賃貸事業を行っています。
機械の販売・修理代金や不動産等の賃貸料が主な収益源です。運営は主に日本カーボンエンジニアリングが産業機械の製造や修理を担い、日本カーボンが自社で不動産賃貸事業を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2021年12月期から2023年12月期にかけて増加傾向にありましたが、その後は微減で推移しています。経常利益は2023年12月期にピークを迎えましたが、以降はファインカーボン関連製品の低迷等により減少しました。一方で、当期利益は特別利益の計上により直近で増加しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 316億円 | 358億円 | 379億円 | 380億円 | 377億円 |
| 経常利益 | 44億円 | 50億円 | 71億円 | 67億円 | 51億円 |
| 利益率(%) | 14.0% | 14.1% | 18.8% | 17.6% | 13.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 25億円 | 33億円 | 31億円 | 39億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、原価率の上昇により売上総利益は減少しました。また、販売費及び一般管理費が増加した影響も加わり、営業利益と営業利益率はいずれも前期を下回る結果となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 380億円 | 377億円 |
| 売上総利益 | 115億円 | 103億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.3% | 27.2% |
| 営業利益 | 63億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 16.6% | 12.7% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運賃・包装費が13億円(構成比24%)、給料・賞与手当が10億円(同19%)、研究開発費が5億円(同10%)を占めています。売上原価は275億円で、売上高に対する構成比は73%となっています。
■(3) セグメント収益
炭素製品関連は、米国関税の影響を受けつつも北米向けが好調でしたが、パワー半導体向け製品の低迷により減収減益となりました。一方、炭化けい素製品関連は航空産業向けの堅調な需要を取り込み大幅な増収増益を達成し、その他セグメントも製造コスト削減等が奏功し増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 炭素製品関連 | 344億円 | 324億円 | 52億円 | 30億円 | 9.2% |
| 炭化けい素製品関連 | 27億円 | 41億円 | 9億円 | 15億円 | 35.8% |
| その他 | 9億円 | 12億円 | 2億円 | 3億円 | 27.3% |
| 連結(合計) | 380億円 | 377億円 | 63億円 | 48億円 | 12.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本カーボンは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業基盤を強化しています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を進めつつ、一部資産の売却益も計上しました。財務活動では、借入金の増加と株主への配当支払いを行いました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加し、期末にはまとまった資金を確保しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 63億円 |
| 投資CF | -55億円 | -22億円 |
| 財務CF | -20億円 | -13億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
日本の炭素工業の草分け的存在として、「わが国炭素工業分野のパイオニアとして、人と社会に貢献する企業であり続ける」ことを企業理念に掲げています。また、「愛と科学の社会を目指す、夢と技術のある会社」を合言葉に、技術を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
常に時代のニーズに合った新製品の開発に挑み、厳しい品質へのこだわりと環境への配慮に重点を置いた製品供給を重視しています。また、国際競争力のあるコストの実現と、それを可能にする優れた人材の育成を推進し、組織や世代を超えて自由に発言できる風通しの良い企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営方針「GO BEYOND 2030」において、社会課題の顕在化が想定される2030年を最終年度と定め、企業の持続的成長とサステナブルな社会の実現を目指しています。また、環境目標として、生産工程の改善や設備導入を進め、エネルギー原単位の削減目標を年率1%と設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益性の向上」「サステナビリティ経営の推進」「株主還元の強化」を重点課題に掲げています。具体的には、ファインカーボン関連のシェア拡大や製造コスト削減、パワー半導体関連やカーボンニュートラルに係る新規事業の創出に注力するほか、人材確保とエンゲージメント向上を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
性別や国籍などを問わず多様な人材を採用し、自ら高い目標を掲げて意欲的に取り組み、最後までやり通す人材の育成を目指しています。また、社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みを推進し、育児や介護と就業の両立支援に力を入れることで、多様な人材が活躍できる働きやすい環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.6歳 | 16.4年 | 7,923,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 38.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替相場の変動リスク
海外売上高比率が4割を超えており、大部分が外貨建取引となっています。為替予約や通貨スワップ取引等によりリスク軽減に努めているものの、急速な為替相場の変動が発生した場合は、同社グループの経営成績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定原材料の調達リスク
製品製造において、安定的な原材料確保と最適な価格維持に努めていますが、原油価格の高騰や原材料メーカーの生産体制等により需給が逼迫した場合、顧客への安定的な製品提供が困難となり、事業活動に支障をきたす恐れがあります。
■(3) 人材の確保・育成リスク
同社グループの生産体制は国内に集中しており、国内における人材不足が深刻化する中で、中長期的な採用難の継続や離職による人員不足が発生するリスクがあります。これに伴う人材育成の遅れが生じた場合、将来の事業成長や生産活動に悪影響を及ぼす可能性があります。



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