※本記事は、新報国マテリアル株式会社の有価証券報告書(第93期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年4月3日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新報国マテリアルってどんな会社?
同社は特殊合金素形材およびその精密加工品の製造販売を主力とし、不動産賃貸も展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1949年10月に川越市で新報国製鉄として設立されました。1963年5月に店頭登録銘柄となり、2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場しています。その後、市場再編を経て2022年4月に東京証券取引所スタンダード市場へ移行し、2021年10月に現在の新報国マテリアルへと社名変更しました。
単体での従業員数は99名です。筆頭株主は事業会社である日本製鉄で、第2位は村岡克彦氏、第3位は湊組となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 15.30% |
| 村岡克彦 | 10.80% |
| 湊組 | 8.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は成瀬正氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 成瀬正 | 代表取締役社長 | 1970年4月住友金属工業(現日本製鉄)入社。2002年1月住友特殊金属入社、同年7月同社取締役。日立金属事業役員等を経て、2008年3月同社取締役副社長。2009年8月より現職。 |
| 鎌田貴幸 | 取締役営業部長 | 1997年4月同社入社。2000年6月製造部鋳鋼課主任、2010年1月営業部営業課長、2012年1月営業部長を経て、2016年3月執行役員営業部長。2023年3月より現職。 |
| 横井裕二 | 取締役三重工場長 | 1997年1月山本重工業(現三重工場)入社。2000年11月同社製造部鋳鋼課長兼技術課長、2005年4月鋳鋼部部長を経て、2016年3月同社執行役員三重工場長。2023年3月より現職。 |
社外取締役は、八尾量也(元住金日鉄ステンレス鋼管代表取締役)、丸茂隆(税理士丸茂隆税務事務所所長)、井上裕子(井上鉄工所代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社は「特殊合金事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■特殊合金事業
半導体およびFPD製造装置業界向けの低熱膨張合金鋳物や、鉄鋼業界向けの高温高強度合金鋳物などの付加価値の高い製品を製造し顧客へ提供しています。また、これらの素形材に機械加工や熱処理などを施した精密加工製品や鍛圧製品も扱っています。
収益源は、各業界の顧客へ特殊合金製品や精密加工部品を販売することによる対価です。製品の製造および販売の運営は同社が行っており、自社の鋳造工場やネットワーク化した外注メーカーを活用して製品の供給体制を構築しています。
■不動産賃貸事業
同社の所有する本社工場跡地などの不動産を外部の顧客に賃貸しています。
収益源は、商業用地や学校用地として不動産を貸与することによる賃貸料収入です。本事業の運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は前々期にかけて65億円台まで増加しましたが、その後は減少傾向にあり当期は55億円となっています。経常利益も前々期まで6億円台を維持したのち当期は5億円台に減少し、当期純利益についても同様に減少基調がみられます。利益率はおおむね9〜11%台で推移しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 47億円 | 64億円 | 65億円 | 62億円 | 55億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 7億円 | 6億円 | 7億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 9.3% | 10.3% | 9.9% | 10.6% | 9.7% |
| 当期利益 | 3億円 | 5億円 | 5億円 | 6億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の62億円から当期は55億円に減少しました。売上総利益も前期の15億円から当期は14億円へと減少していますが、売上総利益率自体は前期の23.5%から当期は24.8%へとわずかに上昇しています。営業利益は前期の6億円から当期は5億円に減少しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 62億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 15億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.5% | 24.8% |
| 営業利益 | 6億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 8.4% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3億円(構成比33%)、従業員給与が2億円(同20%)を占めています。売上原価においては、材料費が20億円(当期総製造費用に対する構成比46%)、経費が17億円(同40%)を占めています。
■(3) セグメント収益
特殊合金事業は、半導体設備投資の慎重姿勢による一時的な減速やFPD製造装置関連の設備投資回復遅れにより減収減益となりました。一方、不動産賃貸事業は売上高は横ばいでしたが、減価償却費等の費用発生により微減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特殊合金事業 | 61億円 | 54億円 | 5億円 | 3億円 | 6.5% |
| 不動産賃貸事業 | 2億円 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 77.9% |
| 合計 | 62億円 | 55億円 | 6億円 | 5億円 | 8.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
新報国マテリアルは、安定した財務基盤の維持に努めています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、利益や売上債権の減少等により、前年同期と比較して減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や有形固定資産の取得等により、大幅な支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、前年同期と比較して支出額が縮小しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 5億円 |
| 投資CF | 500万円 | -19億円 |
| 財務CF | -6億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創造性に富む金属材料技術、生産技術、加工技術を培い、独創的な金属材料を創製して先端技術の基盤を支えることを使命としています。顧客や株主の期待に応えるとともに、人々の生活や文化に貢献しつつ、会社の持続的成長を目指すことを基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「少数精鋭の社員を魅力ある職場で幸せの実現」を目指して、社員の働きがいを高める様々な取り組みを行う企業文化を有しています。設備投資等による業務効率化の推進や多様な働き方ができる体制づくり、社内教育研修体制の整備により、会社全体の生産性を向上させることに重きを置いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、社会に不可欠な会社として顧客や社会から信頼され、株主から支持される企業となることで「売上100億円企業への成長」を目指しています。また、世界の最先端半導体製造装置メーカー各社への販売などを通じて、インバー合金分野でのグローバルニッチトップとなることを中長期の目標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
インバー特性の原理機構の解明や特殊環境対応インバー合金の開発など創造的な研究開発に取り組むとともに、鋳造・3D・鍛造の3本柱の確立や金属3D積層造型への大型投資といった革新的な製造技術の推進を戦略としています。また、急拡大する半導体およびFPD産業への対応や、航空・宇宙・環境分野への新規参入といった積極的な販売戦略も展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「少数精鋭の社員を魅力ある職場で幸せの実現」を目指し、多様性の確保を含む人材の育成および社内環境整備に取り組んでいます。設備投資などによる業務効率化を推進するとともに、育休制度を整備して多様な働き方が可能な環境を構築し、社内教育研修体制の充実により会社全体の生産性を向上させる方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社の従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.4歳 | 17.0年 | 7,617,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象として選択していないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界への依存
同社は、半導体業界およびFPD業界への依存度が高く、両業界への売上高は全売上高の7割程度を占めています。そのため、これらの業界における設備投資動向の変化などによって製品に対する受注量が急激に減少した場合には、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の仕入価格の変動
同社の製品である半導体およびFPD製造装置用部品には、ニッケルなどの希少原材料が使用されています。これらの原材料は市況の変動による影響を受けやすく、将来的に仕入価格が高騰した場合には、製造コストの増加を通じて同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。