※本記事は、リョービ株式会社の有価証券報告書(第114期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リョービってどんな会社?
ダイカスト製品、住建機器、印刷機器の製造・販売を主力とし、グローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1943年にダイカスト製品の製造を目的に菱備製作所として設立され、1961年に東京・大阪両証券取引所に上場しました。1973年に現在のリョービへ社名を変更しています。2018年にはパワーツール事業を京セラへ譲渡して事業構造を転換し、2025年には大型部品(ギガキャスト)の試作工場を新設しました。
現在の同社グループは、連結で7,511名、単体で1,684名の従業員を擁しています。筆頭株主は同社と取引のある会社の持株会である菱工会持株会で、第2位は金融機関の明治安田生命保険相互会社、第3位は外国法人のUBS AG HONG KONGとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菱工会持株会 | 6.74% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 5.84% |
| UBS AG HONG KONG | 5.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は浦上彰氏が務め、取締役7名のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦上彰 | 代表取締役社長 | 1989年同社入社。建築用品部長、ダイカスト本部副本部長兼企画管理部長などを経て、2005年取締役就任。2011年より現職。 |
| 藤井和彦 | 取締役執行役員経営企画本部本部長 | 1988年同社入社。ダイカスト企画開発本部本部長などを経て、2021年執行役員経営企画本部本部長就任。2024年より現職。 |
| 谷藤英樹 | 取締役執行役員ダイカスト企画開発本部本部長 | 1985年同社入社。リョービダイキャスティング(USA)上級副社長などを経て、2022年同本部長就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、大岡哲(元日本開発銀行審議役)、伊香賀正彦(伊香賀正彦公認会計士事務所代表)、伊藤麻美(日本電鍍工業代表取締役)、荒井洋一(荒井総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ダイカスト事業」「住建機器事業」「印刷機器事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ダイカスト事業
自動車産業向けを中心に、ダイカスト製品やアルミニウム鋳物を提供しています。世界中の取引先のニーズに対応できる開発・供給体制のもと、グローバルな自動車部品サプライヤーを目指し、次世代車のパワートレイン部品や電装部品、車体部品などのダイカスト化に取り組んでいます。
自動車メーカーなどからのダイカスト製品の受注・販売により収益を得ています。運営は同社およびリョービミラサカ、東京軽合金製作所などの国内子会社、リョービダイキャスティング(USA)や利優比圧鋳(大連)などの海外子会社がグローバルに拠点を構えて行っています。
■(2) 住建機器事業
住宅市場およびビル市場向けに、ドアクローザ、ヒンジ、建築金物などの住建機器製品を提供しています。国内ドアクローザ市場のマーケットリーダーとして、電動開閉装置などの高機能な新商品開発や、施工現場の要求に対応した意匠性・機能性の高い製品展開を行っています。
建築現場や代理店に対するドアクローザなどの建築用品の販売により収益を得ています。運営は主に同社が担うほか、海外では中国の利優比建筑科技(大連)などの子会社が各地域のニーズに応じた商品の製造・販売を行っています。
■(3) 印刷機器事業
小型から大型まで豊富なバリエーションを取り揃えるオフセット印刷機や、印刷周辺機器などをグローバルに提供しています。パッケージ印刷を中心とした高付加価値印刷の需要に対応し、環境に配慮した商品の開発・製造や、印刷業界への自動化・省人化提案を行っています。
国内外の印刷業者などに対する印刷機本体および周辺機器の販売、サービスの提供により収益を得ています。同事業の運営は、子会社であるリョービMHIグラフィックテクノロジーが主体となって行っています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ内外に向けた保険代理業やゴルフ場の経営などを行っています。
保険商品の仲介手数料やゴルフ場施設の利用料などから収益を得ています。これらの事業運営は、子会社である旭産業およびリョービ開発が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、2021年12月期の1,981億円から2025年12月期には3,091億円へと大幅に拡大しています。経常利益も2023年12月期以降は100億円を超える水準で安定して推移しており、当期は146億円を計上するなど、着実な成長と収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,981億円 | 2,495億円 | 2,827億円 | 2,933億円 | 3,091億円 |
| 経常利益 | 0億円 | 78億円 | 139億円 | 116億円 | 146億円 |
| 利益率(%) | 0.0% | 3.1% | 4.9% | 3.9% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -34億円 | 51億円 | 21億円 | 40億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益動向を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は11.7%から12.6%へと改善しています。営業利益も前期の95億円から当期は127億円へと増加し、営業利益率も3.2%から4.1%に上昇するなど、収益性の高まりがうかがえます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,933億円 | 3,091億円 |
| 売上総利益 | 343億円 | 389億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.7% | 12.6% |
| 営業利益 | 95億円 | 127億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・諸手当が66億円(構成比25%)、荷造運搬費が58億円(同22%)を占めています。売上原価の具体的な内訳は記載されていませんが、売上原価全体としては売上高に対して87%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるダイカスト事業は、自動車生産の回復による生産量の増加や原料価格の影響により売上高が拡大し、増収効果で固定費の増加を吸収して増益となりました。住建機器事業と印刷機器事業は減収となったものの、生産性向上の取り組み等によりいずれも増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ダイカスト事業 | 2,579億円 | 2,743億円 | 90億円 | 113億円 | 4.1% |
| 住建機器事業 | 110億円 | 109億円 | -4億円 | 1億円 | 1.1% |
| 印刷機器事業 | 241億円 | 237億円 | 9億円 | 13億円 | 5.6% |
| その他 | 2億円 | 3億円 | -0億円 | -0億円 | -12.3% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 0億円 | -0億円 | -% |
| 連結(合計) | 2,933億円 | 3,091億円 | 95億円 | 127億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 292億円 | 139億円 |
| 投資CF | -137億円 | -225億円 |
| 財務CF | -149億円 | 77億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「技術と信頼と挑戦で、健全で活力にみちた企業を築く。」を企業理念として掲げています。お客様や社会のニーズに応え、独創的で高品質な製品やサービスを創造し提供することで、社会にとってかけがえのない存在になることを目指しています。さらに、持続的な価値創造とより良い社会の実現に向け、社会的責任を果たすことを経営の基本としています。
■(2) 企業文化
同社の企業理念における「信頼」は経営姿勢を表しており、お客様や株主、取引先、社員などすべてのステークホルダーに「関わってよかった」と思ってもらえる企業であることを目指しています。社員一人ひとりの行動や企業活動が信頼に値するよう、コンプライアンスの徹底や環境保全、安全で働きやすい職場づくりを重んじる文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年から2027年の3ヵ年を対象とする中期経営計画において、株主還元を経営の最重要課題の一つと位置付けています。累進配当を採用し、初年度は1株当たり100円を下限として維持または増配を行う方針です。また、機動的な自己株式取得も検討し、総還元性向は40%を目安に実施していくことを目標に掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では「市場におけるプレゼンスの向上」「安全で働きやすく健康で活力ある職場づくり」「環境・社会問題への対応」の3つを基本方針としています。ダイカスト事業では自動車の軽量化・電動化ニーズに対応し、超大型ダイカスト(ギガキャスト)の技術開発を推進します。また、デジタル技術の活用やカーボンニュートラルに向けた環境負荷低減活動にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「社員が心身ともに健康で、それぞれの個性や能力を最大限に発揮し、企業価値を高める」ことを人事戦略の基本方針としています。この実現に向けて、「人材育成の強化」と「ワークエンゲージメントの向上」に取り組んでおり、各種階層別研修やキャリア開発の支援、健康経営の推進を通じたいきいきと働ける職場環境の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.7歳 | 18.5年 | 7,200,138円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.9% |
| 男性育児休業取得率 | 89.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 67.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワークエンゲージメントスコア(50以上)、休業災害件数(0件)、休業災害度数率(1.2以下)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車市場の構造変化による影響
脱炭素社会の実現に向けた自動車の電動化の進展により、同社が主力とするエンジンやトランスミッションなどの動力系・駆動系部品の需要が変化しつつあります。電動化部品や車体部品などのダイカスト化に積極的に取り組んでいますが、想定外の市場構造の変化が生じた場合、受注減少により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業活動における障害
同社は日本、北米、メキシコ、欧州、中国、タイなどグローバルに事業拠点を構え事業を展開しています。進出先の国や地域において、政治・経済の不安定化や法律・規制・税制等の急激な変更、大規模な労働争議の発生、テロや戦争等による社会的混乱等が生じた場合、事業活動に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 自動車業界への依存と需要の変動
同社の売上高はダイカスト事業の自動車向け比率が非常に高く、同事業は受注生産を主体としています。そのため、自動車業界の生産や販売の状況によって売上高が大きく変動する性質を持っています。世界市場において景気後退やそれに伴う需要の縮小が発生した場合、同社の財政状態や経営成績に影響を与える恐れがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。