日本パワーファスニング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本パワーファスニング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本パワーファスニングは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、プレハブ住宅をはじめとする住宅用および一般建築・土木用の締結部材や締結工具を製造販売する建築用ファスナーおよびツール関連事業を展開しています。直近の業績では売上高が微増し営業黒字に転換したものの、経常赤字となっています。


※本記事は、日本パワーファスニング株式会社の有価証券報告書(第63期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本パワーファスニングってどんな会社?


同社は、住宅用および一般建築・土木用の締結部材や締結工具を製造販売する総合ファスニングメーカーです。

(1) 会社概要


1964年4月、業界最初の日米合弁会社である日本シェークプルーフとして設立されました。1979年にニスコへ商号変更後、1981年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。1992年に日本パワーファスニングを吸収合併し、現在の商号に変更しています。2022年に東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。

従業員数は連結で142名、単体で142名です。大株主については、筆頭株主は事業会社のマルエヌで、第2位は土肥雄治氏、第3位は土肥智雄氏です。

氏名 持株比率
マルエヌ 27.16%
土肥雄治 10.53%
土肥智雄 4.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長技術・生産担当は藤井宏二氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
藤井宏二 代表取締役社長技術・生産担当 1988年同社入社。品質保証部品質課長、生産本部技術・品証部長、下館工場長、滋賀事業所長、常務取締役技術・生産担当等を経て2025年5月より現職。
高木茂幸 取締役営業担当兼新製品・新事業担当兼営業部長兼大阪営業部長 1987年同社入社。マーケティング部長、研究開発部長、ソーラー営業部長、大阪営業部長、富山営業所長等を経て2025年12月より現職。
鈴木昭洋 取締役管理担当兼企画・総務部長兼システム部長 1994年同社入社。人事・総務課長、企画部次長、企画・総務部次長などを経て2024年3月に取締役管理担当兼企画・総務部長に就任し2026年1月より現職。
馬場朋次 取締役(常勤監査等委員) 1991年同社入社。サポートグループ人事・総務課長、管理本部総務部次長、人事・総務部長、企画・総務部長などを経て2022年3月より現職。


社外取締役は、加藤弘之(加藤公認会計士事務所開設)、横山美帆(清水謙法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築用ファスナー及びツール関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建築用ファスナー及びツール関連事業


プレハブ住宅をはじめとする住宅用および一般建築・土木用の締結部材や締結工具を製造販売しています。主要な顧客は、住宅メーカーや建材メーカー、販売店等であり、国内市場を中心に事業を展開しています。

製品の販売による収益を主な収益源としています。自社で企画した製品の一部を海外の協力工場に生産委託し、国内市場へ提供するモデルも構築しています。同事業の運営は、同社および子会社のJ.J.ツールが行っています。

(2) その他事業


不動産賃貸等の事業を展開しています。自社が保有する不動産資産を有効活用し、安定的な収益の確保を目指しています。

不動産の賃貸料を主な収益源としています。同事業の運営は、同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は50億円台で安定して推移していますが、経常損益および最終損益は赤字が続いています。外部環境の変化や建築資材価格の高止まりなどの影響を受け、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 53億円 54億円 51億円 50億円 51億円
経常利益 2億円 0.1億円 -0.4億円 4億円 -0.1億円
利益率(%) 3.1% 0.3% -0.9% 7.3% -0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 1億円 -2億円 -0.3億円 -0.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準を維持する中で、売上総利益率がわずかに改善しています。販売価格への転嫁や工場生産の集約化といった事業再編の効果が表れ、営業損益は赤字から黒字へと転換を果たしました。本業の立て直しにおいて一定の成果が確認できる推移となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 50億円 51億円
売上総利益 12億円 12億円
売上総利益率(%) 23.3% 23.9%
営業利益 -0.9億円 0.1億円
営業利益率(%) -1.9% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が4億円(構成比37.1%)、荷具・運賃が2億円(同15.7%)を占めています。また、売上原価は39億円となっており、売上高に対する原価率は76.1%となっています。

(3) セグメント収益


同社は建築用ファスナー及びツール関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の詳細な記載はありません。住宅需要の低迷などの影響を受けたものの、販売価格への転嫁や新規顧客開拓などの営業強化により、全体として前年と同水準の売上を確保しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
建築用ファスナー及びツール関連事業 50億円 51億円
連結(合計) 50億円 51億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、長期借入金の返済や配当金の支払いといった財務活動により、キャッシュ・フローは支出となりました。営業活動では、売上債権や仕入債務の変動等により、キャッシュ・フローは収入となりました。一方、投資活動では、有形固定資産の取得等により、キャッシュ・フローは支出となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2億円 0.2億円
投資CF 10億円 -1億円
財務CF -18億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「伸びやかで豊かな企業人を育む環境づくりを目指し、オリジナリティ溢れる技術をベースに製品を開発し、顧客の信頼を得るとともに、社会の発展に貢献する。」を企業理念としています。また、常にユーザーの最新のニーズをキャッチし、最適設計のファスナーとツールを提供することにより、日本で最大の総合ファスニングメーカーを目指すことを目標に掲げています。

(2) 企業文化


「既成概念にとらわれず、積極果敢に職務を遂行し、常に『挑戦と創造』を追求する」という社員行動規範を掲げています。自律型人材の育成を可能とする職場環境の構築に取り組むなど、従業員の主体性と成長を後押しする文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Next Challenge 2027」を策定し、事業環境の変化に柔軟に対応できる体制の構築を目指しています。実質的な最終年度となる2028年度において、以下の数値目標を掲げています。

・売上高:65億円
・営業利益:3億円
・営業利益率:4.6%

(4) 成長戦略と重点施策


一般建築市場向けも含めた建築・土木市場を成長分野と捉え、継続して製品開発や用途開発の強化、マーケティングチャネルの整備等により販売拡大に努めています。コンクリート下地市場やデッキ市場、建築改修・リフォーム市場での拡販を図るとともに、工場集約による生産再編を通じて生産性の向上や納期短縮、在庫削減を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「伸びやかで豊かな企業人を育む環境づくり」を掲げ、従業員の目標管理・育成・自己啓発支援および適切な人事評価運用により、会社と従業員を持続的に成長させることを目指しています。健康経営の推進や両立支援制度の整備を通じて、社員が心身ともに健全な状態で働きがいを感じられる環境の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.1歳 17.1年 4659000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用) 77.9%
男女賃金差異(パート・有期) 76.6%


※正規雇用労働者は、管理職の女性労働者の割合が低くかつ女性労働者の勤続年数が短いため、パート・有期労働者は定年後に管理職を継続する嘱託社員が相対的に男性労働者に多く差異が生じていますが、同等の職責において実質的に労働者の男女の賃金の差異はありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100.0%)、従業員離職率(9.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要販売市場の動向と競合状況


住宅業界および建設業界等の市場動向の影響を大きく受けます。また、工業用ファスナー分野は国内に多数の製造業者が存在し、輸入品も多く競争が激しいため、独自製品の開発と価格競争力の強化が求められます。

(2) 原材料の市況変動の影響


製品の原材料として主に鉄やステンレスの線材ならびに帯鋼を使用しています。生産の合理化や調達先の多様化、製品価格への転嫁等を行っていますが、鋼材価格の市況が大幅に変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 依存度の高い販売先への対応


主な販売先は住宅メーカー等であり、特定の販売先への売上依存度が比較的高くなっています。今後の取引動向によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や不正アクセス、コンピュータウイルスの感染等により、機密情報の滅失、社外漏洩および情報システムの停止等が発生した場合には、事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。