※本記事は、株式会社遠藤製作所の有価証券報告書(第76期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 遠藤製作所ってどんな会社?
ゴルフクラブヘッドや鍛造部品などの金属製品のOEM生産を主力とし、医療や航空機分野にも展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1950年にミシン部品の製造販売を目的として設立されました。1968年にゴルフクラブヘッドの製造販売を開始し、1989年にはタイに生産子会社を設立してグローバル展開を推進しています。2003年に株式を店頭登録(現上場)しました。近年は医療機器や航空機部品への参入に加え、2025年には日亜鍛工を子会社化しています。
同社グループは、連結従業員数1,290名、単体従業員数121名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は同社の資産管理とみられる遠藤栄松ファンデーションで、第2位および第3位には個人投資家や創業家出身とみられる役員などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 遠藤栄松ファンデーション | 21.70% |
| 清原達郎 | 7.60% |
| 遠藤新太郎 | 5.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は渡部大史氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡部大史 | 取締役社長(代表取締役)ファインプロセス事業兼経理財務部担当 | 2017年遠藤製作所入社。2018年代表取締役社長等を経て、2026年3月より現職。 |
| 遠藤新太郎 | 専務取締役メタル事業兼タイ駐在室兼経営戦略本部担当 | 2014年東レ入社。2020年遠藤栄松ファンデーション取締役等を経て、2026年3月より現職。 |
社外取締役は、根本修一郎(元富士銀行本店グローバル企画部次長)、石塚かおり(元新潟放送情報センター局次長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインプロセス事業」および「メタル事業」を展開しています。
■(1) ファインプロセス事業
ゴルフクラブヘッド、人工関節等の医療機器部品、航空機部品の製造・販売を行っています。製品のほとんどは相手先ブランドによる生産(OEM生産)であり、主な供給先は国内企業です。鍛造技術や機械加工技術、研磨技術を活用し、付加価値の高い高品質な製品を提供しています。
収益源は、相手先ブランドへ製品を供給することによる販売代金です。同事業の運営は、製品企画や開発、医療機器・航空機部品の製造を遠藤製作所が担い、ゴルフクラブヘッドの製造をタイの子会社であるENDO THAI CO.,LTD.およびENDO FORGING(THAILAND)CO.,LTD.が担当しています。
■(2) メタル事業
主にOA機器などに使用されるメタルスリーブ(金属製極薄管)や、自動車用部品、自動二輪車用部品、農機具部品、建設機械関連部品、発電用タービンブレード等の鍛造部品の製造・販売を行っています。極薄加工技術を含む金属塑性加工技術を活かした独自の製品展開が特徴です。
収益源は、国内外の顧客に対する各種部品の販売代金です。同事業の運営は、メタルスリーブの製造販売をENDO METAL SLEEVE(THAILAND)CO.,LTD.が、鍛造部品の製造販売をENDO FORGING(THAILAND)CO.,LTD.がタイで行うほか、精密型打鍛造全般部品を日亜鍛工が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で継続的に増加し、順調な拡大傾向を示しています。一方で経常利益は、仕入価格の高騰や最低賃金の上昇といったコスト増加要因により変動が見られ、直近では減益となっています。利益率は低下傾向にあり、生産性の向上などによるコストコントロールが課題となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 125.9億円 | 145.8億円 | 157.1億円 | 174.2億円 | 182.4億円 |
| 経常利益 | 18.1億円 | 18.3億円 | 11.5億円 | 16.1億円 | 11.5億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 12.5% | 7.3% | 9.3% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16.4億円 | 13.9億円 | 43.9億円 | 17.7億円 | 9.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加したものの、売上総利益および営業利益は減少しました。円安の影響による仕入価格の高騰や、海外拠点における人件費の上昇が利益を圧迫しており、売上総利益率および営業利益率ともに前期から低下する結果となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 174.2億円 | 182.4億円 |
| 売上総利益 | 34.8億円 | 30.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 16.4% |
| 営業利益 | 15.5億円 | 10.3億円 |
| 営業利益率(%) | 8.9% | 5.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が4.2億円(構成比21%)、支払手数料が3.9億円(同20%)を占めています。売上原価は152.4億円を計上しています。
■(3) セグメント収益
ファインプロセス事業は、モデル変更時期等の影響で減収となりましたが、鍛造ヘッドの需要が高まり出荷自体は堅調に推移しました。メタル事業は、日亜鍛工を連結子会社化したことで新たな鍛造分野での受注を獲得し、大幅な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ファインプロセス事業 | 92.3億円 | 85.5億円 |
| メタル事業 | 81.9億円 | 96.9億円 |
| 連結(合計) | 174.2億円 | 182.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
遠藤製作所は、事業活動を通じて安定的なキャッシュ・フローを生み出しています。営業活動では、税金等調整前当期純利益や減価償却費などを主な要因として、キャッシュ・フローがプラスとなりました。一方、投資活動では、有形固定資産や関係会社株式の取得により、キャッシュ・フローは支出となりました。財務活動では、配当金の支払い等により、キャッシュ・フローは支出となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17.6億円 | 14.6億円 |
| 投資CF | -13.1億円 | -23.0億円 |
| 財務CF | -2.9億円 | -9.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「限りない未来の創造」を経営理念に掲げています。1950年の創立以来、金属加工技術を軸に市場が求める製品を創出し、新市場を切り拓く金属製品加工メーカーとして事業を展開してきました。お客様のニーズにかなう高品質な製品を創造し続けることや、社会のニーズの変化への適応力を持つことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
技術が企業活動の源泉であるとし、時代が要求する製品を開発して社会に提供することが企業発展の基本であるという方針を定めています。成長を重ねる事業の継続を最も重要視し、それが株主をはじめとするあらゆるステークホルダーの満足に応えることを可能とする源であると考えています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な経営戦略を総合的に勘案し、経営に最も適した客観的な指標として自己資本利益率(ROE)の継続的な実現を目標に掲げています。
* 自己資本利益率(ROE)5.0%以上の継続的な実現
■(4) 成長戦略と重点施策
「鍛造技術と塑性加工技術を中核とした金属製品加工業」と位置付け、新技術導入やM&A、アライアンス活用による新たな価値の創造を目指しています。事業ポートフォリオの再構築、データドリブン経営の基礎づくりなどの経営基盤の強化、新たな成長機会の獲得に向けた積極投資を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
強固な基盤づくりに向けた人材育成と、主体性を発揮できる仕組みづくりを推進しています。また、戦略的健康経営を実施し、自律的な心身の健康づくりによるヘルスリテラシーの向上を目指すほか、働き方の選択肢を増やして負担を減らす体制構築や、人事データのDX化によるダイバーシティ推進に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 45.1歳 | 17.2年 | 6,674,518円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、関連法の規定による公表項目として選択していないため記載が省略されています。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、GHG排出量削減割合(2021年度比マイナス9.9%)、男性の育児休業取得率(100%)、健康診断・人間ドック受診率(96.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) OEM企業としての業績変動リスク
同社グループの事業は相手先ブランドで製造し販売するOEM生産形態をとっているため、相手先メーカーの営業施策や外注施策の影響を強く受けます。特定取引先への販売依存度が高くなると、その販売政策により業績が著しく変化する可能性があります。
■(2) 為替変動におけるリスク
タイに生産拠点を有しており、連結財務諸表作成時における現地通貨建て項目の円換算や、会社間取引でのタイバーツ・米ドル決済において為替変動の影響を受けます。為替予約取引等でリスク回避に努めていますが、大幅な変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外廉価製品との価格競争リスク
ゴルフクラブ市場において価格や品質の競争が激化しており、中国製製品などの拡大が進んでいます。同社は技術力と品質で高い評価を得ていますが、一層のコスト低減策が不十分な場合、市場シェアの低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料等の高騰リスク
同社グループが製品製造に使用しているチタン材をはじめとする原材料や資材等の価格が、予想を超えて高騰し、その状況が長期化した場合には、製造コストが上昇し、同社グループの業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。



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