※本記事は、ユニオンツール株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユニオンツールってどんな会社?
プリント配線板用超硬ドリル分野で世界トップクラスのシェアを誇る切削工具メーカーです。
■(1) 会社概要
1960年に東京都大田区でユニオン化学研究所として設立され、1970年にPCBドリルの生産を開始しました。1981年の米国子会社設立を皮切りに台湾、スイス、中国等へグローバルに拠点を拡大し、1996年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1998年に同市場第一部へ指定替えを果たしました。
現在の従業員数は連結で1,530名、単体で905名です。筆頭株主は事業会社の晃永で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は公益財団法人のユニオンツール育英奨学会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 晃永 | 35.25% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.05% |
| ユニオンツール育英奨学会 | 5.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長の片山貴雄氏、代表取締役社長技術本部長の渡邉裕二氏らが経営を牽引しています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 片山貴雄 | 代表取締役会長 | 1979年に同社へ入社し、海外子会社の代表取締役社長や同社海外業務部長等を歴任。1996年に同社代表取締役社長に就任し、2014年より現職。 |
| 渡邉裕二 | 代表取締役社長技術本部長 | 1992年に同社へ入社し、技術開発部長や工具技術部長などの技術部門の要職を歴任。2021年に取締役技術本部長に就任し、2025年より現職。 |
| 中島有一 | 専務取締役 | 1985年に同社へ入社し、品質保証部長や中国子会社の総経理等を経験。2021年に取締役監査本部長に就任し、2025年より現職。 |
| 槇浩行 | 取締役 | 1986年に同社へ入社し、長岡工場管理部長や中国子会社の董事長、品質保証部長等を歴任。2024年に執行役員製造本部長に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、山本博毅(弁護士法人原合同法律事務所社員弁護士)、若林勝三(元日本地震再保険会長)、三瀬隆(イメージワーキングサービス代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アジア」「北米」「欧州」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
産業用切削工具であるプリント配線板用超硬ドリル(PCB工具)や超硬エンドミル、および転造ダイス等の製造・販売を行っています。生成AI関連市場の需要を取り込み、高付加価値工具の生産拠点である長岡工場を中心に増産体制を構築しています。
顧客に対する製品の直接販売を通じて収益を得ています。日本国内における製造および販売の運営は、主に同社が主体となって行っています。作業工程の一部や機械部品の加工については、関連会社の大善等に委託しています。
■(2) アジア
中国、台湾、香港、シンガポール、タイなどのアジア地域において、産業用切削工具および転造ダイス等の製造と販売を展開しています。AIサーバーやデータセンター向けのパッケージ基板や高多層基板用工具の需要に幅広く対応しています。
顧客からの製品購入代金が主な収益源となります。事業の運営は、製造と販売を担う台湾佑能工具、佑能工具(上海)、東莞佑能工具のほか、販売専門の子会社であるUNION TOOL HONG KONG等が各地域で展開しています。
■(3) 北米
北米市場の顧客に向けて、同社グループが製造したプリント配線板用超硬ドリルや超硬エンドミルを中心とした産業用切削工具、およびその他の製品の販売活動を行っています。
顧客に対する製品の直接販売を通じて収益を獲得しています。北米地域における事業運営は、カリフォルニア州に拠点を置く連結子会社のU.S. UNION TOOLが主体となって担っています。
■(4) 欧州
ヨーロッパ地域の顧客を対象に、同社グループが製造したプリント配線板用超硬ドリルや超硬エンドミルなどの産業用切削工具、および転造ダイス等のその他製品の販売事業を展開しています。
欧州市場における顧客からの製品購入代金が主な収益源となります。同地域での事業運営は、スイスのニューシャテルに拠点を置く連結子会社のUNION TOOL EUROPEが主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、一時的な増減はあったものの全体として堅調な成長を遂げています。特に直近2期では生成AI関連の需要増加を背景に売上高が大幅に拡大し、経常利益も高い水準で推移しており、収益性の高さが伺えます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 282億円 | 291億円 | 253億円 | 326億円 | 402億円 |
| 経常利益 | 54億円 | 67億円 | 41億円 | 71億円 | 81億円 |
| 利益率(%) | 19.2% | 23.2% | 16.1% | 21.9% | 20.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 55億円 | 37億円 | 52億円 | 44億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴って売上総利益および営業利益ともに順調に増加しています。売上総利益率は約40%と安定しており、増産体制の構築に伴う費用負担を吸収しつつ、高付加価値製品の販売伸長により優れた営業利益率を維持・向上させています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 326億円 | 402億円 |
| 売上総利益 | 131億円 | 161億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.3% | 40.0% |
| 営業利益 | 69億円 | 87億円 |
| 営業利益率(%) | 21.1% | 21.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与が23億円(構成比31%)、賞与引当金繰入額が4億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本市場では生成AI関連の需要を取り込み、高付加価値工具の生産拠点での増産体制が奏功して堅調に売上を伸ばしました。アジア市場でもAIサーバーやデータセンター向け基板の需要拡大により大きく成長し、北米および欧州市場も安定した推移を見せています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 110億円 | 126億円 |
| アジア | 173億円 | 230億円 |
| 北米 | 20億円 | 20億円 |
| 欧州 | 22億円 | 25億円 |
| 連結(合計) | 326億円 | 402億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 73億円 | 75億円 |
| 投資CF | -73億円 | -68億円 |
| 財務CF | -17億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.7%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「優れた製品を供給して社会に貢献する」ことを社是として掲げています。主に産業用切削工具の分野で地道な努力を続け、今日ではプリント配線板用超硬ドリル分野における世界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しており、グローバル市場の中で価値ある企業であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「会社と社員の永遠の繁栄をはかる」ことを行動の基本方針として定めています。「モノ造り」に専心し、高品質で高レベルな製品やサービスを柔軟に適時に提供する姿勢を大切にしています。また、60年以上のノウハウを自社設備に集約させる「技術に技術を上乗せ」していく技術探求の文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、売上高や営業利益などの絶対額とともに、売上高営業利益率を重要な経営指標として位置づけています。これら各項目の着実な向上を目標として掲げ、時代要請である技術向上の下支えに貢献しながら、企業を取り巻く社会からの要請事項に応えつつ業績の安定と拡大を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
高品質志向の次世代製品の投入強化と生産能力の拡大を重点施策としています。生成AI関連分野などの需要増に対して、生産設備の内製化という強みを活かして迅速な能力増強を図ります。また、グループの連携を強化し、各地域のニーズにきめ細かく対応するグローバルな視野に立った営業戦略の構築を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業倫理の安定的、継続的な実現のために専門性と創造性に富み、誠実さと挑戦心を兼ね備えた人財の育成と登用を図る」という人材育成方針を掲げています。また、健康で活気に満ちた職場づくりのために組織風土を醸成し、個々の人格と個性を尊重した人事制度や労働環境の維持向上を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.2歳 | 19.2年 | 7,144,882円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 89.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.4%)、社員一人あたりの教育訓練費(55,079円)、平均残業時間(月)(26時間3分)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造業の生産動向への影響
同社グループの主な製品は産業用切削工具などであり、製造業全般の生産動向や工場稼働率の影響を受けます。これに対し、消耗工具での事業展開に注力し、製販一体となった需要動向の精査と予測精度の向上、流通分を含めた在庫把握体制の強化やリードタイムの短縮に注力してリスク軽減を図っています。
■(2) 特定製品および地域への依存
売上高の約7割を占めるプリント配線板用超硬ドリル(PCBドリル)の市場動向に業績が左右されるほか、連結売上高の約9割が日本を含むアジア向けとなっています。これに対し、内製技術の蓄積による競争優位性の確保や、他製品の拡大、各国特性に応じた営業戦略による需要維持に努めています。
■(3) 原材料価格および為替レートの変動
主要な原材料であるタングステンカーバイドの価格急騰や、外貨建売上高に関する急激な為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対して、調達先との強固な関係構築や一括購入、リサイクル材の活用を進めるとともに、為替変動リスクのモニタリング体制を強化して影響の緩和を図っています。
■(4) 新技術・代替技術の台頭と競争激化
国内外の競合他社による技術革新や価格競争の激化、あるいはレーザー照射による穴あけ加工などの代替技術の進化により、同社製品の優位性が脅かされるリスクがあります。同社は長年培ったノウハウを活かした技術力強化や新製品の開発、寿命伸長や高アスペクト品開発などにより対応を進めています。



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