※本記事は、株式会社ダイフクの有価証券報告書(第110期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダイフクってどんな会社?
マテリアルハンドリングシステムを核としたモノを動かす技術で、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1937年に坂口機械製作所として設立され、1947年に大福機工へ商号変更、1984年にダイフクへ商号変更しました。1961年に大阪証券取引所第二部に上場し、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。また、北米、アジア、欧州などでのM&Aや現地法人の設立を通じてグローバル展開を加速しています。
同社の従業員数は連結で11,417名、単体で3,858名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位も同様に資産管理等を行う日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.22% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.63% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 2.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は寺井友章氏が務めており、社外取締役比率は35.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺井 友章 | 代表取締役社長(CEO兼COO)社長執行役員 | 1994年入社。米国子会社のDirectorや台湾子会社の董事長を歴任。クリーンルーム事業部長等を経て2025年に代表取締役副社長。2026年より現職。 |
| 下代 博 | 代表取締役会長 | 1983年入社。FA&DA事業部の要職を歴任し、2015年に取締役常務執行役員。FA&DA事業部グローバル本部長を経て、2018年より代表取締役社長、2026年より現職。 |
| 田久保 秀明 | 取締役専務執行役員CHROコーポレート部門長 | 1984年入社。秘書室長や中国子会社総経理、人事総務本部長などを歴任。2019年に執行役員、2023年に取締役常務執行役員およびCHROに就任し2025年より現職。 |
| 日比 徹也 | 取締役常務執行役員CFOコーポレート部門副部門長財経本部長 | 1987年入社。財務部長や米国子会社CFOを歴任。経営企画本部長等を経て、2020年に執行役員、2023年に常務執行役員およびCFOに就任し2025年より現職。 |
| 佐藤 誠治 | 取締役顧問 | 1983年入社。eFA事業部長等を経て、2010年に取締役に就任。2023年に取締役専務執行役員および北米子会社のPresident and CEOを歴任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、小澤義昭(元あらた監査法人代表社員)、金子圭子(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、ギディオン・フランクリン(Gideon Franklin Limited CEO)、吉田晴行(元クボタ専務執行役員)、神崎夕紀(元協和発酵バイオ代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ダイフク」、「コンテックグループ」、「Daifuku North America, Inc.グループ」、「Clean Factomation, Inc.」、「大福自動搬送設備(蘇州)有限公司」および「その他」事業を展開しています。
■ダイフク
マテリアルハンドリングシステム・機器、洗車機などの製造販売およびアフターサービスを提供しています。自動車、半導体、一般製造業など幅広い産業の顧客を対象に、生産現場や物流現場の自動化・効率化を支援するソリューションを展開しています。
収益は、顧客に対して個別の仕様指定を受けたシステムや機器を納入・据付することによる製品販売収入や、定期的な点検・修理等のメンテナンスサービス提供によるサービス収入から得ています。運営はダイフクが行っています。
■コンテックグループ
産業用コンピュータ、パソコン周辺機器、ネットワーク機器などの開発、製造販売およびアフターサービスを提供しています。主に医療や社会インフラ、FA(ファクトリーオートメーション)分野の顧客に向けた電子機器の提供を行っています。
収益は、顧客への電子機器製品の販売代金や、製品に組み込まれる保守サービスなどの対価として受け取っています。また、ダイフクのシステムに組み込まれる製品の提供も行っています。運営はコンテックおよびその連結子会社が行っています。
■Daifuku North America, Inc.グループ
北米市場を中心とした顧客に対し、マテリアルハンドリングシステムや機器の製造販売およびアフターサービスを提供しています。主な顧客は、一般製造業、流通業、自動車産業、空港などであり、大規模な自動化設備に対するニーズに応えています。
収益は、顧客に合わせたシステムの設計・製造・据付によるプロジェクト収入や、納入後の保守メンテナンスによるサービス収入から得ています。運営はDaifuku North America, Inc.およびその連結子会社が行っています。
■Clean Factomation, Inc.
主に韓国の半導体メーカーを対象として、クリーンルーム内搬送システムの製造販売およびアフターサービスを提供しています。先端半導体の製造工程における高度な自動化や清浄度維持のニーズに対応した専門的なシステムを展開しています。
収益は、半導体メーカーに対するクリーンルーム内搬送システムの販売および据付によるプロジェクト収入、ならびに定期的なメンテナンスや保守サービスによる手数料から得ています。運営はClean Factomation, Inc.が行っています。
■大福自動搬送設備(蘇州)有限公司
主に中国の半導体メーカー向けに、クリーンルーム内搬送システムの製造販売およびアフターサービスを提供しています。中国国内での半導体国産化の推進に伴う設備投資ニーズに応え、最適な自動化ソリューションを展開しています。
収益は、顧客である半導体メーカーに対するシステムの販売・据付代金や、稼働後のシステムの安定維持を目的としたメンテナンスサービスによる対価として受け取っています。運営は大福自動搬送設備(蘇州)有限公司が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない国内外の連結子会社を通じて、マテリアルハンドリングシステムのコンポーネントと現地で生産・調達する部材を組み合わせたシステムの販売や据付工事、アフターサービス、洗車機の販売などを展開しています。
収益は、各地域の顧客からのシステム・製品販売収入や、納入後の保守サービスによる対価から得ています。ダイフクから供給されるコンポーネントを活用し、各現地のニーズに合わせた対応を行っています。運営はダイフクプラスモアなどの国内外の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は豊富な受注残を背景に順調に拡大しており、安定した成長基調にあります。利益面でも、生産効率化やコストダウンの定着、プロジェクト管理の高度化等により、経常利益および当期利益ともに大幅な伸長を見せており、収益性の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,123億円 | 6,019億円 | 6,115億円 | 5,632億円 | 6,607億円 |
| 経常利益 | 513億円 | 598億円 | 642億円 | 745億円 | 1,046億円 |
| 利益率(%) | 10.0% | 9.9% | 10.5% | 13.2% | 15.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 287億円 | 341億円 | 332億円 | 293億円 | 556億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に加え、受注時採算の向上やコスト削減の取り組みが寄与し、売上総利益率および営業利益率ともに改善が進んでいます。収益性を重視した事業運営が利益水準の大幅な引き上げに貢献しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,632億円 | 6,607億円 |
| 売上総利益 | 1,248億円 | 1,617億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 24.5% |
| 営業利益 | 715億円 | 1,008億円 |
| 営業利益率(%) | 12.7% | 15.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が277億円(構成比46%)、業務委託料が66億円(同11%)、研究開発費が54億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ダイフク事業は高い水準での成長を維持し、Daifuku North America事業も大規模な案件の寄与により売上規模を確保しています。また、Clean Factomation事業など半導体分野も堅調に推移しており、全体として収益性の向上が図られています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ダイフク | 1,881億円 | 2,466億円 |
| コンテックグループ | 170億円 | 202億円 |
| Daifuku North America, Inc.グループ | 1,725億円 | 1,659億円 |
| Clean Factomation, Inc. | 259億円 | 376億円 |
| 大福自動搬送設備(蘇州)有限公司 | 534億円 | 410億円 |
| その他 | 1,022億円 | 1,500億円 |
| 連結(合計) | 5,590億円 | 6,612億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,161億円 | 761億円 |
| 投資CF | -24億円 | -243億円 |
| 財務CF | -368億円 | -274億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「日新(ひにあらた)」のもと、経営理念として「モノを動かし、心を動かす。」を掲げています。マテリアルハンドリングを核とした「モノを動かす技術」によって、心豊かに生きられる社会の創造を目指しており、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を追求しています。
■(2) 企業文化
グループの役員・従業員が実践すべき行動のあり方を示した「グループ行動規範」を制定し、社会規範の遵守と誠実な行動を徹底しています。また、「安全専一」の精神をグローバルに浸透させ、すべての事業活動において安全を最優先とする文化が形成されています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「Driving Innovative Impact 2030」のもと、2030年のありたい姿と2027年の中期経営計画目標を掲げています。
* 2030年目標:連結売上高1兆円、営業利益率15.0%、ROE17.0%
* 2027年目標:連結売上高8,000億円、営業利益率15.0%、ROE17.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
次なる成長に向けて、「先端技術・新規事業開発の加速」「グローバル成長戦略の加速」「利益体質の強化」を重点施策としています。AIやロボティクスへの経営資源の積極投入による開発強化や、米国・インドなど重点市場における生産能力の増強を通じた競争力向上を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の確保・育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「エンゲージメントの向上」を人的資本拡充の軸としています。キーポジションにおける後継者の計画的育成や、女性管理職・外国籍人材の活躍支援、エンゲージメントサーベイを通じた組織文化の進化を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.6歳 | 14.7年 | 9,179,854円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.8% |
また、同社はサステナビリティのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キーポジションにおける後継候補充足率(72%)、エンゲージメントサーベイをもとにした事業部門別の説明会(計6回)、本部別のワークショップ(計29回)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境・事業環境の変化
世界的なインフレや金利上昇、地政学リスクの高まり等により、顧客の設備投資計画が見直された場合、受注や業績に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、経済情勢や市場動向を注視し、経営・事業計画へ機動的に反映させることで影響の最小化に努めています。
■(2) 調達・サプライチェーンの停滞
自然災害や地政学リスク、サプライヤーの操業停止により部品の調達が遅延した場合、生産や工事に支障をきたす可能性があります。調達先の分散や代替調達の検討を進めるとともに、サプライヤーとの継続的な取引関係強化を図り、サプライチェーンの安定化に取り組んでいます。
■(3) 新規領域創出・技術開発の遅れ
AIやロボティクス等の先端技術を取り入れた製品開発への対応が遅れた場合、競争力の低下につながる恐れがあります。これに対し、専門組織による新規事業の探索や、京都および東京のLab開設を通じた研究開発体制の強化により、技術革新に迅速に対応する方針です。
■(4) 人材の確保および育成の遅滞
専門的知識を有する人材や次世代の経営層・管理職の確保・育成が計画通りに進まない場合、事業の継続性や競争上の優位性が損なわれるリスクがあります。採用手法の多様化や教育プログラムの拡充、エンゲージメント向上の施策を推進し、人材確保と定着に取り組んでいます。



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