※本記事は、日機装株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
日機装グループは、工業部門と医療部門の2つのセグメントで事業を展開しています。国内外で製品の製造、販売、メンテナンスを手がける総合メーカーです。
単体従業員数は2,104名、連結従業員数は8,120名です。セグメントは工業部門、医療部門の2つです。
日機装グループは、中期経営計画に基づき、2025年をもって深紫外線LED事業およびCRRT(急性血液浄化療法)事業からの撤退を完了しました。また、ヘルスケア事業からの撤退も決定しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
日機装は、多様な事業領域で技術力を活かし、社会課題の解決に貢献する企業グループです。従業員の平均年齢や勤続年数からは、安定した環境でキャリアを築くことができる傾向が見られます。同社グループは人的資本の強化を重要な経営課題と位置づけ、人材育成や働きやすい環境づくりに力を入れています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、平均年齢が40代前半であり、平均勤続年数も10年を超えています。このことから、従業員が長期的に在籍し、キャリアを形成している傾向がうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,788,035円 |
| 平均勤続年数 | 12.7年 |
| 平均年齢 | 43.2歳 |
| 単体従業員数 | 2,104人 |
| 連結従業員数 | 8,120人 |
| 単体のグループ内比率 | 25.9% |
当社および連結子会社は、従業員の退職給付に充てるため、給与や勤続年数に応じて給付額が決まる確定給付制度と、会社が拠出した資金を従業員が運用する確定拠出制度を採用しています。退職一時金制度はありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、退職給付債務は117億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、人的資本の強化を企業の成長を左右する極めて重要な課題と認識し、「人材活躍の最大化」を人材戦略としています。同一の職務・等級であれば同一の賃金を支払う賃金制度を基本とし、従業員の自発的なチャレンジと成長を促すために、評価段階数の細分化による評価手法を高度化しています。
具体的には、組織やプロジェクトを牽引する『中核人材』の育成として、次世代リーダー育成プログラムや中途入社者向けOJT指導員研修を実施しています。また、「技術の日機装」を支える『専門人材』の育成では、技術・技能の伝承を計画的に行い、マネジメントコースに加え「専門性」を評価するプロフェッショナルコースを新設しています。女性の活躍推進にも力を入れ、育児や介護と両立できる環境整備や次世代リーダー育成プログラムへの女性従業員の選抜、女性総合職の採用活動におけるリクルーターとしての活躍を推進しています。
従業員の希望を尊重する配置転換として、社内公募制度や自己申告制度の拡充を検討しています。労働環境面では、在宅勤務やスーパーフレックス・タイム勤務制、時間単位の年次有給休暇制度を導入し、柔軟な働き方を促進しています。労働安全衛生ではISO45001と同水準のシステム構築を進め、安全衛生委員会を毎月開催しています。従業員の健康管理では、定期健康診断受診率100%と二次検診再受診率100%を目指し、産業保健師・カウンセラーによる健康管理促進やラインケア教育に取り組んでいます。すべての従業員が安心して働ける職場環境の実現のため、ハラスメント研修も実施しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データであり、男女賃金差異は、職務・等級による賃金制度や職種ごとの男女構成比の違いが要因となっています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 6.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 82.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 61.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 60.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 70.6% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。宮崎日機装の女性正規雇用労働者の年齢層が低いことから、女性管理職は存在しません。また、パート・有期労働者における賃金差異は、役割・責任に応じて処遇を決定する定年後再雇用者に占める男性の割合が高く、その役割・責任が大きい傾向があることが要因となっています。
▼ 宮崎日機装
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 72.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 79.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 78.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 40.1% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
日機装は、工業部門と医療部門の2つのセグメントで事業を展開しています。国内外で製品の製造、販売、メンテナンスを手がけ、幅広い分野で社会を支える技術を提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、製品の製造方法やサービスの提供方法に応じて「工業部門」と「医療部門」の2つの報告セグメントで事業活動を行っています。各部門はそれぞれ国内外で製造、販売、メンテナンスを実施しています。
工業部門
工業部門は、インダストリアル事業と航空宇宙事業に区分されます。インダストリアル事業では、液化ガスに使用される極低温用ポンプや工業用特殊ポンプ・システム、発電所向けの各種水質調整装置、電子部品製造装置の製造、販売、メンテナンスを行っています。航空宇宙事業では、民間航空機向けの炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形品や金属接着部品の製造・販売を手がけています。
収益は、産業ガス・LNG関連機器や航空機部品などの製品販売とメンテナンスから得ています。インダストリアル事業ではLNG分野の設備投資需要が拡大しており、宇宙産業向けビジネスの大型案件も受注しています。航空宇宙事業は航空機産業の需要回復を背景に増収となっています。
医療部門
医療部門はメディカル事業で構成されており、血液透析装置、ダイアライザー、血液回路、透析用剤などの血液透析関連製品、医薬品、空調設備向け除菌・消臭ユニット、マイクロ波外科手術用エネルギーデバイスの製造、販売、メンテナンスを行っています。
収益は、血液透析関連製品や医療機器の販売とメンテナンスから得ています。海外市場が成長を牽引しており、特に中国市場の需要回復や欧州での販売拡大が寄与しています。国内の血液透析市場は設備投資が抑制的に推移する傾向が見られます。
同社グループは、深紫外線LED事業やCRRT(急性血液浄化療法)事業、ヘルスケア事業からの撤退を進め、事業ポートフォリオの再構築に取り組んでいます。これにより、利益体質への転換を着実に進めている状況です。
| セグメント | 売上収益(2024年12月期) | 売上収益(2025年12月期) | セグメント利益(2024年12月期) | セグメント利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 工業部門 | 1,303億円 | 1,370億円 | 73.1億円 | 135億円 | 9.9% |
| 医療部門 | 833億円 | 789億円 | 40.1億円 | 60.5億円 | 7.7% |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績を見ると、売上収益は継続して増加傾向にあります。特に当期は、前連結会計年度から売上収益がさらに伸びています。税引前利益と親会社の所有者に帰属する当期利益も、前期から大きく増加し、2022年12月期を除けば創業以来の最高益を達成しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,678億円 | 1,771億円 | 1,926億円 | 2,134億円 | 2,156億円 |
| 税引前利益 | 39.5億円 | 327億円 | 116億円 | 100億円 | 173億円 |
| 税引前利益率 | 2.4% | 18.5% | 6.0% | 4.7% | 8.0% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 2.2億円 | 136億円 | 90.7億円 | 79.6億円 | 137億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 3.11 | 195.23 | 137.09 | 120.15 | 206.22 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上収益は、前期から増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から大きく向上しており、生産性の改善が見られます。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質が強化され、組織全体の効率化が進んでいることを示しています。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 25.6百万円 | 26.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.8百万円 | 1.9百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
日機装グループは、本業で安定した資金を創出し、将来に向けた投資も着実に進めている状況です。財務基盤の強化と事業ポートフォリオの再構築により、利益体質への転換が進んでいます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
日機装グループの自己資本比率はプライム市場の製造業平均と比較してやや低い水準ですが、ROEはプライム市場平均に近い水準にあります。手元資金は増加傾向にあり、事業運営に必要な流動性を確保している状況です。これらの財務状況は、同社グループが安定した事業運営を継続していく上での基盤を示しています。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 1,401億円 | 1,582億円 |
| 自己資本比率 | 43.0% | 44.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 6.0% | 9.2% |
| 現金及び現金同等物 | 347億円 | 446億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
日機装グループの当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の増加などによりプラスに転じ、大幅に増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなり、連結範囲の変更を伴う関係会社株式等の売却による収入が主な要因となっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済などにより減少しました。
これらの結果、フリーキャッシュ・フローは前期のマイナスから当期はプラスに転じており、本業で得た資金が投資を上回る状況を示しています。これは、同社グループが事業活動を通じて安定的に資金を創出し、財務的な健全性を維持しながら事業を推進している状況を表しています。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △65.7億円 | 176.2億円 |
| 投資CF | △49.9億円 | 1.3億円 |
| 財務CF | 133.6億円 | △97.9億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △115.5億円 | 177.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内透析装置市場で高いシェアを占めていますが、国内透析患者数は中長期的には減少に転ずると予想されています。また、世界の様々なマーケットで製品およびサービスを提供しており、米ドルとユーロの為替変動が業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
人材獲得競争の激化により、計画どおりに必要な人材を確保できない場合、事業戦略やグローバル展開の遂行に遅れが生じる可能性があります。優秀な人材や経験豊富な人材の流出が進んだ場合、技術・技能の伝承が滞り、技術力や事業推進力の低下につながる可能性も示されています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
日機装は、人々の良質な暮らしの実現を目指し、独自の技術を通じて社会に貢献することを経営の理念としています。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を追求する企業です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
日機装グループは、「人々の良質な暮らしの実現のために、他にない技術の提供を通じて、流体を扱う多様な産業、航空宇宙、透析医療等の暮らしの根幹分野で創造的な貢献を果たすこと」を経営の理念としています。この理念のもと、独創的な技術を活かした特長ある製品やサービスを提供することで社会に貢献することを経営の基本方針としています。同社グループは「10年後(2035年)にありたい姿」を掲げ、新中期経営計画「NIKKISO 2028 – Toward a Healthier World」を通じて、企業価値の最大化と持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
日機装グループは、社会の一員として健全な倫理・価値観を共有し、法令や社会規範を遵守することを重視しています。中期経営計画「NIKKISO 2028」では、「品質」を原点とした価値創出、技術革新の追求と社会実装の加速、事業ポートフォリオの拡大・再構築、資本効率の最大化と収益力強化、グローバル事業インフラ・ガバナンスの強化を基本方針としています。また、サステナビリティの取り組みとして、人々の良質な暮らしの実現への貢献を大切にし、社会の発展に貢献する新しい価値創造や人的資本の最大化などをマテリアリティ(重要なサステナビリティ課題)として掲げています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、品質保証体制の見直しを重要な課題としています。製造部門と検査部門の分離、品質保証部門と品質管理部門の役割再定義、業務プロセスの改善、再発防止策の策定と実行、全社的な品質保証意識の醸成に取り組んでいます。また、脱炭素化を成長機会と捉え、社会実装を見据えた技術開発を進めています。人的資本の強化では、新たな事業や技術創出に挑戦する組織基盤への変革を目指し、人材育成方針や環境整備方針を策定しています。さらに、サプライチェーンにおける人権侵害リスクの防止・軽減、情報セキュリティ強化も重点テーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
日機装は監査役会設置会社として、取締役会が業務執行の決定と監督を担い、監査役および監査役会が取締役の職務執行を監査する体制を構築しています。経営の意思決定と業務執行を分離するため、執行役員制度を採用しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
日機装の筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、機関投資家が上位を占める構成となっています。また、日機装持株会も上位株主として名を連ねており、従業員による株式保有も一定程度見られます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.53% |
| 日機装持株会 | 5.17% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.90% |
| みずほ銀行 | 3.83% |
| 日機装従業員持株会 | 3.34% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は13名(男性11名・女性2名)で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員は加藤孝一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加 藤 孝 一 | 代表取締役 社長執行役員 | 1995年4月同社入社、2023年3月同社取締役、2025年4月同社代表取締役社長執行役員より現職。 |
| 山 村 優 | 取締役 常務執行役員 医療部門長 メディカル事業本部長 静岡事業所長 | 1990年11月同社入社、2019年3月同社取締役、2025年1月同社常務執行役員医療部門長より現職。 |
| 齋 藤 賢 治 | 取締役 常務執行役員 工業部門長 インダストリアル事業本部長 | 2013年4月みずほ銀行パリ支店支店長、2022年3月同社取締役、2025年1月同社常務執行役員工業部門長より現職。 |
| 甲 斐 敏 彦 | 取締役 会長 | 2000年3月同社入社、2004年12月同社代表取締役社長、2025年4月同社取締役会長より現職。 |
| 木 下 良 彦 | 取締役 執行役員 日機装技術研究所長 品質保証担当 | 1989年4月同社入社、2017年3月同社取締役、2023年1月同社日機装技術研究所長より現職。 |
| ピーター・ワグナー | 取締役 | 2018年6月Cryogenic Industries, Inc. CEO, ディレクター、2022年3月同社取締役より現職。 |
社外取締役は、中久保満昭氏(あさひ法律事務所パートナー)、菊地敦子氏(元公務人材開発協会代表理事)、山口純子氏(DOWAホールディングス社外取締役)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会による経営の監督と監査役会による業務監査の体制を採用しています。社外取締役は、業務執行から独立した客観的な立場から経営を監督し、中長期的な企業価値向上への助言を行う役割を担っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
日機装の役員報酬は、基本報酬、業績連動型金銭報酬(期末賞与)、および譲渡制限付株式報酬の3つの要素で構成されています。社外取締役の報酬は、経営の監督機能を担う立場から基本報酬のみとなっています。業績連動型金銭報酬は同社業績の持続的な向上を目的とし、譲渡制限付株式報酬は中長期的な企業価値向上へのインセンティブ強化を目的としています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 1.4億円 | 23.8百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 30百万円 | 15.0百万円 |
| 社外役員 | 7名 | 42百万円 | 6.0百万円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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