日本アイ・エス・ケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アイ・エス・ケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アイ・エス・ケイは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、耐火金庫や歯科医療機器、書庫ロッカーなどの製造販売を主力とする企業です。当期の業績は、高付加価値製品の販売促進などが奏功して売上高が61億円(前期比増収)、経常利益が6億円(増益)と、堅調な成長トレンドを描いています。


※本記事は、日本アイ・エス・ケイ株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本アイ・エス・ケイってどんな会社?


耐火金庫から歯科医療機器、書庫ロッカーまで、独自のモノづくり技術で多様な製品を製造販売する老舗メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1916年に日進社として創立し、手提金庫や消火器などの製造販売を開始したのが始まりです。1948年にキング工業を設立し、2014年に現在の日本アイ・エス・ケイに商号変更しました。1989年に帝国デンタル製作所を吸収合併して歯科医療機器分野へ参入し、2004年のジャスダック上場を経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

現在の従業員数は連結で283名、単体で272名です。筆頭株主は不動産賃貸管理業を展開する廣澤興産となっており、第2位および第3位には創業家等の個人株主が名を連ねています。

氏名 持株比率
廣澤興産 23.17%
廣澤清 14.16%
広沢かほる 9.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は曽根栄二氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
廣澤清 代表取締役会長 1987年代表取締役就任。1988年代表取締役社長などを経て、2014年より現職。
曽根栄二 代表取締役社長 2008年に取締役および専務取締役に就任。2014年より現職。
土井洋 取締役鋼製品事業部長 1994年入社。2021年鋼製品事業部長に就任。2023年より現職。
大久保高広 取締役デンタル事業部長兼営業部長 2008年入社。2016年デンタル事業部営業部長などに就任。2023年より現職。
中沢浩 取締役中之条工場長 1983年入社。2004年中之条工場長に就任。2008年より現職。
宮城則之 取締役 2003年広沢商事代表取締役就任などを経て、2010年より現職。


社外取締役は、大場明男(廣澤精機製作所常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鋼製品関連事業」「デンタル関連事業」「書庫ロッカー関連事業」「不動産賃貸関連事業」および「その他」事業を展開しています。

鋼製品関連事業


企業から一般家庭まで幅広い分野のニーズに対応した耐火金庫の製造販売や、手提金庫の仕入販売を行っています。近年は、指紋・静脈認証機能に加え、よりセキュリティを強化した虹彩・顔認証耐火金庫など高付加価値製品の拡販に注力しています。

耐火金庫等の製品販売による代金が主な収益源です。運営は日本アイ・エス・ケイが主体となって行っています。

デンタル関連事業


歯科用ユニットなどの各種歯科医療機器の製造および仕入販売を行っています。新規開拓と既存設備の買替需要の双方に対し、積極的な営業活動を展開して製品を提供しています。

歯科医療機器の販売による代金が収益源です。運営は日本アイ・エス・ケイが行っており、一部の歯科部品については子会社のビアンエアージャパンから仕入れています。

書庫ロッカー関連事業


コインロッカーをはじめとする金属製多目的収納庫や、各種書庫の製造販売を行っています。生産拠点の生産性向上を図りつつ、新規顧客の開拓を推進しています。

書庫ロッカー等製品の販売による代金が主な収益源です。運営は日本アイ・エス・ケイが行っています。

不動産賃貸関連事業およびその他


建物などの不動産を賃貸する不動産賃貸関連事業と、工具の販売などを手掛けるその他事業を展開しています。

不動産の賃貸収入や、工具等の仕入販売代金が収益源となっています。運営は日本アイ・エス・ケイが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間を通じて、売上高は50億円台から60億円台へと着実な成長を遂げています。経常利益率も一時的な低下から回復し、直近では10.0%と高い水準を維持しています。親会社に帰属する当期利益も安定して推移しており、堅実な業績拡大が伺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 55億円 53億円 57億円 59億円 61億円
経常利益 5億円 2億円 6億円 6億円 6億円
利益率(%) 8.7% 3.3% 9.7% 9.7% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 2億円 4億円 4億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴って売上総利益が増加しており、利益率も30%台に乗せるなど改善傾向にあります。本業の稼ぐ力を示す営業利益も順調に伸びており、収益性の向上が確認できます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 59億円 61億円
売上総利益 17億円 19億円
売上総利益率(%) 29.3% 30.6%
営業利益 5億円 6億円
営業利益率(%) 8.8% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が6億円(構成比49%)、賃借料が1億円(同10%)を占めています。また、売上原価は42億円で売上高に対する構成比は69%となっています。

(3) セグメント収益


鋼製品関連事業とデンタル関連事業が増収増益となり、全体の業績拡大を牽引しています。不動産賃貸関連事業は売上規模は小さいものの、極めて高い利益率を誇り安定収益に寄与しています。書庫ロッカー関連事業はやや減収減益となりましたが、全体としてバランスの取れた事業ポートフォリオとなっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
鋼製品関連事業 16億円 17億円 3億円 3億円 16.0%
デンタル関連事業 20億円 21億円 2億円 3億円 13.5%
書庫ロッカー関連事業 20億円 20億円 2億円 2億円 8.4%
不動産賃貸関連事業 2億円 2億円 1億円 2億円 87.4%
その他 1億円 1億円 0.2億円 0.3億円 21.6%
連結(合計) 59億円 61億円 5億円 6億円 9.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 3億円 4億円
投資CF -0.2億円 -0.5億円
財務CF -1億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も70.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「鋼製品事業、デンタル事業、書庫ロッカー事業を核として多様化する顧客ニーズに対応し、満足いただける質の高い製品・サービス提供を通じて、より快適なくらしの創造をめざし、社会の発展に貢献すること」を基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


「高品質で顧客満足度の高い製品とサービスを提供すること」を企業理念としており、技術開発や品質管理といったモノづくりのさらなる向上を追求しています。真摯に商品提供に取り組む、実直なメーカーとしての文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長を目指し、収益性と資本効率を重視した経営を行っています。これらを測る重要な経営指標として以下の目標数値を定めており、当期はいずれも達成しています。

* 売上高経常利益率3%以上
* 自己資本比率60%以上

(4) 成長戦略と重点施策


物価上昇や金融資本市場の変動が見込まれる環境下において、収益力を確保し長期安定成長を図るため、多様化する顧客ニーズに応える高品質商品の提供や新製品の開発に注力しています。併せて、低コスト生産体制の確立や営業活動の強化、管理部門の効率化を推進し、経営基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サステナビリティに係る基本方針は定めていませんが、人材の多様性の確保を含めた人材育成を推進しています。他業種からの中途採用も含めた幅広い人材を対象とした採用活動に取り組み、多様な価値観を受け入れて新たな価値を生み出す組織風土の醸成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 38.1歳 13.5年 5,157,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全従業員) 67.7%
男女賃金差異(正規雇用) 70.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 鋼材などの原材料価格変動リスク


主力の鋼製品関連事業および書庫ロッカー関連事業においては、いずれも鋼材を主要な原材料としています。そのため、鋼材などの仕入価格が上昇した場合には、同社グループの収益を圧迫する要因となる可能性があります。

(2) 医療保険制度の変更による影響


デンタル関連事業で取り扱う製品や商品は、歯科医療に直接的または間接的に使用されています。国内の歯科医療は大半が健康保険による診療であるため、医療保険制度の動向や制度変更があった場合、歯科材料の需要や同社の経営成績に影響を与える可能性があります。

(3) 減損会計適用による業績への影響


同社グループは、不動産をはじめとする各種資産を保有しています。事業環境の変化などによりそれらの資産の時価が著しく下落し、将来キャッシュ・フローが簿価を下回る状態になった場合には、減損会計の適用により減損損失を計上することになり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。