長府製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

長府製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

長府製作所は東京証券取引所プライム市場に上場し、給湯機器や空調機器、システム機器等の製造・販売を主力とする住宅関連機器メーカーです。直近の2025年12月期は売上高465億円で前期比増収を確保し、経常利益も46億円と増益でしたが、製品補償損失引当金の計上により当期純利益は21億円の減益となりました。


※本記事は、株式会社長府製作所の有価証券報告書(第72期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 長府製作所ってどんな会社?


給湯・空調機器からシステム機器までを幅広く手掛け、快適で環境にやさしい住まいづくりを支えています。

(1) 会社概要


1954年に設立され、1963年に全自動温水ボイラを開発してセントラルヒーティング部門へ進出しました。1979年に太陽熱温水器の製造を開始し、1998年に東証一部(現在はプライム市場)に指定されています。その後もエコキュートやエネファームなど環境配慮型製品を展開し、2022年にサンポットを吸収合併して体制を強化しました。

従業員数は連結で1,166名、単体で1,113名です。大株主については、筆頭株主が長府物産で、第2位は長府精機、第3位は長府共済会となっており、いずれも同社の事業に関連する周辺企業や関連団体が上位を占めています。

氏名 持株比率
長府物産 12.68%
長府精機 12.05%
長府共済会 9.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山下学が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
山下 学 取締役社長(代表取締役) 1998年同社入社。総務部長、取締役総務部長を経て、2025年3月より現職。
川上 康男 取締役会長(代表取締役) 1971年同社入社。取締役東京営業所長、取締役宇都宮工場長、取締役社長を経て、2012年3月より現職。
川上 康弘 常務取締役 2004年同社入社。総務部長、取締役総務部長、取締役滋賀工場長等を経て、2023年3月より現職。
和田 健 取締役花巻工場工場長 1982年同社入社。取締役営業部長、サンポット常務取締役を経て、2022年4月より現職。
林 徹郎 取締役海外営業部長 1985年同社入社。開発部長、東京支店長、取締役東京支店長を経て、2023年5月より現職。
三久保 忠俊 取締役宇都宮工場長兼 東京支店長 1995年同社入社。宇都宮工場営業部長等を経て、2024年1月より現職。
西島 一幸 取締役 1994年同社入社。大阪テクノクラート常務取締役を経て、2021年3月より現職。2022年3月より大阪テクノクラート代表取締役社長。
斎藤 哲哉 取締役製造部長 2005年同社入社。技術部開発部長、製造部長を経て、2024年3月より現職。
伊牟田 茂 取締役(監査等委員) 1984年同社入社。技術部長を経て、2022年3月より現職。


社外取締役は、山元浩(弁護士)、椋梨敬介(山口フィナンシャルグループ代表取締役社長CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、住宅関連機器の製造・販売に関する単一セグメントですが、主に以下のような事業分野を展開しています。

(1) 給湯機器および空調機器


石油給湯機器、ガス給湯器、電気温水器、エコキュートなどの給湯機器と、石油ストーブ、温水暖房システム、エアコンなどの空調機器を一般家庭やハウスメーカー向けに製造・販売しています。環境に配慮した高効率製品やヒートポンプ製品の開発に注力しています。

収益源はこれらの製品の販売代金です。主に長府製作所が開発・製造から販売までを一貫して行い、全国の営業所や支店を通じて製品を広く提供しています。

(2) システム機器およびソーラー機器等


システムバスや人工大理石浴槽、システムキッチンなどのシステム機器に加え、太陽熱温水器や太陽熱利用給湯システムなどのソーラー機器を提供しています。自然エネルギーを活用した環境配慮型製品を展開しています。

製品の販売やシステムの提供により顧客から代金を受け取ります。長府製作所が主体となって事業を展開し、住宅リフォーム市場などに向けて各種製品を販売しています。

(3) エンジニアリング部門


住宅関連機器の製造・販売にとどまらず、施設の各種設備工事などを請け負うエンジニアリング事業を展開しています。

工事の請負代金などが主な収益源です。運営は主に子会社のサンポットエンジニアリング、大阪テクノクラート、インサイトエナジーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は440億円から490億円台で堅調に推移しています。経常利益率はおおむね9〜11%台を維持しており、安定した収益基盤を確保していることが読み取れます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 449億円 498億円 485億円 461億円 465億円
経常利益 41億円 54億円 57億円 45億円 46億円
利益率(%) 9.2% 10.8% 11.7% 9.7% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 58億円 39億円 30億円 21億円

(2) 損益計算書


売上総利益率は22%台で安定して推移しており、原材料価格の変動等がある中でも一定の付加価値率を維持しています。営業利益率も前期とほぼ同水準の約3.7%を確保しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 461億円 465億円
売上総利益 104億円 104億円
売上総利益率(%) 22.5% 22.3%
営業利益 17億円 17億円
営業利益率(%) 3.8% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が33億円(構成比38%)、輸送費が15億円(同17%)を占めています。一方、売上原価においては、材料費が235億円(構成比72%)と大部分を占め、次いで労務費が51億円(同16%)、経費が25億円(同8%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は住宅関連機器の製造・販売の単一セグメントであるため、製品分類別の売上高を示しています。主力となる給湯機器および空調機器が売上高の大半を占めており、安定した需要に支えられています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
給湯機器 - 215億円
空調機器 - 187億円
システム機器 - 10億円
ソーラー機器・その他 - 26億円
エンジニアリング部門 - 26億円
連結(合計) 461億円 465億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)の状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 26億円 48億円
投資CF -6億円 -35億円
財務CF -16億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は93.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「会社は絶えずより良い製品を作り、これを広く普及することに努力し、以って社会文化の向上に寄与する」を経営理念に掲げ、事業活動を進めています。人々の生活に密着した住宅設備を通じて、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「顧客満足第一」をモットーに、社員全員が一丸となってより良い製品を提供することを重視しています。環境配慮型企業として、便利さを保ちつつ無駄を減らす省エネ製品の開発に継続的に取り組む姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


グループ全体としての企業価値の上昇と財務基盤の強化を目指しています。顧客満足度の向上と安定配当の継続を経営目標とし、中長期的に企業体質の強化に取り組んでいます。

* 営業利益
* 経常利益
* 自己資本比率

(4) 成長戦略と重点施策


カーボンニュートラルの実現に向けて、環境にやさしく高効率な製品のラインアップ強化とシェアアップに取り組んでいます。また、ヒートポンプ製品のシェア拡大や海外での新規顧客開拓に積極的に注力し、高付加価値商品の開発と生産性の向上を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


グループの継続的な発展のためには人材の確保・育成が必要不可欠であると位置づけ、多様な人材が能力を発揮できる労働環境の整備を重要な課題としています。育児休業の取得推進や時間外労働の削減など、働きやすい環境づくりに向けた行動計画を策定しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 40.9歳 16.3年 6,160,290円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 47.6%
男女賃金差異(全労働者) 64.6%
男女賃金差異(正規労働者) 62.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 86.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(70.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 天候の状況による影響


冷暖房機器のように天候の状況によって売上が左右される製品が含まれており、冷夏や暖冬などの異常気象が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、多彩な製品ラインアップの展開によりリスクの分散を図っています。

(2) 原材料価格の変動


製品の製造原価は原材料費が過半を占めており、ステンレス、銅、アルミニウムなどの価格動向が業績に影響を与える可能性があります。作業工程の見直しや部材調達の効率化によるコストダウンに努めています。

(3) 新設住宅着工戸数の動向


一般家庭用住宅機器が製品の主要部分を占めるため、新設住宅着工戸数の動向に業績が左右されやすい状況にあります。集合住宅市場や寒冷地市場、海外市場など新たな販路の開拓に注力し、リスクの低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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