※本記事は、THK株式会社の有価証券報告書(第56期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. THKってどんな会社?
直線運動を「ころがり運動」化するLMガイドなど、機械要素部品の開発・製造・販売をグローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1971年に東邦精工として設立され、1972年に主力製品であるLMガイドの販売を開始しました。1984年に商号を現在のTHKへ変更し、1989年に株式店頭公開、2001年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。近年は米州、欧州、中国などグローバルに販売・生産拠点を拡充し、事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で13,036名、単体で4,016名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行です。第3位にはTERAMACHIが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.12% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 13.08% |
| TERAMACHI | 5.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役会長の寺町彰博氏と、代表取締役社長CEOの寺町崇史氏が経営を牽引しています。全11名中5名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺町 彰博 | 代表取締役会長 | 大隈鐵工所を経て同社入社。取締役副社長、代表取締役社長CEOなどを歴任し、2025年3月より現職。 |
| 寺町 崇史 | 代表取締役社長CEO産業機器統括本部長 | 住友商事を経て同社入社。取締役専務執行役員産業機器統括本部長等を経て、2025年3月より現職。 |
| 今野 宏 | 取締役副社長 | 日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て同社入社。常務取締役、取締役副社長CFOなどを経て、2012年6月より現職。 |
| 槇 信之 | 取締役専務執行役員輸送機器統括本部長 | 同社入社後、米州現地法人の代表取締役社長や山口工場長を歴任。取締役生産本部長等を経て、2016年6月より現職。 |
| 木下 直樹 | 取締役専務執行役員産業機器統括本部副本部長兼THK(中国)投資副董事長総経理 | 同社入社後、西日本第一営業統括部長や常務執行役員などを歴任し、2025年3月より現職。 |
| 中根 建治 | 取締役CFO執行役員経営戦略統括本部財務経理統括部長兼経営戦略統括本部間接材購買統括部長 | 同社入社後、経営戦略室財務経理部長などを歴任。2023年3月より現職。 |
社外取締役は、甲斐順子(浜二・高橋・甲斐法律事務所パートナー)、川﨑博子(ENEOSホールディングス社外取締役取締役会議長)、日置政克(すき家社外取締役)、大村富俊(大村公認会計士事務所所長)、上田良樹(新東工業社外取締役取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「中国」「その他」の各報告セグメントにおいて事業を展開しています。
■日本
工作機械や半導体製造装置などの産業機械メーカー等に向けて、直動システムを中心とした機械要素部品等を製造・販売しています。直線運動をころがり化し、省エネ・高精度化に貢献する製品を提供しています。
製品の販売代金を主な収益源としています。同社が直接販売するほか、トークシステムが一部の販売を担当します。製造は同社のほか、THKインテックス、THK新潟、日本スライド工業などが担っています。
■米州
米州地域において、産業機械メーカー向けに直動システムなどの機械要素部品を製造・販売しています。需要地における販製一体体制を構築しています。
製品の販売代金を収益源としています。販売はTHK Americaが担当し、製造はTHK Manufacturing of Americaが担当しています。
■欧州
欧州地域において、機械装置の直線運動部分に用いられる機械要素部品を製造・販売しています。
製品の販売代金を収益源としています。販売はTHK GmbHおよびTHK Franceが担当し、製造はTHK Manufacturing of Europeなどが担っています。
■中国
中国地域において、直動システムを中心とした機械要素部品を製造・販売しています。中長期的に需要拡大が見込まれる市場で販売網と生産体制を強化しています。
製品の販売による収益を柱としています。販売はTHK(中国)投資やTHK(上海)国際貿易が担い、製造は大連THK瓦軸工業などが担当しています。
■その他
台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、インドなどの地域において、機械要素部品の製造および販売を展開しています。
製品の販売により収益を獲得しています。販売はTHK TAIWANやTHK LM SYSTEMなどが担当し、製造はベトナムの製造子会社やインドの現地法人が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は需要の変動等により増減を繰り返していますが、直近では産業機器事業の需要回復により増収に転じています。一方、利益面は継続事業の費用増や非継続事業である輸送機器事業の譲渡に伴う事業整理損失を計上したことで、直近では最終赤字となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3182億円 | 3937億円 | 3519億円 | 2227億円 | 2404億円 |
| 税引前利益 | 300億円 | 356億円 | 253億円 | 179億円 | 157億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 9.0% | 7.2% | 8.0% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 230億円 | 212億円 | 184億円 | 104億円 | -699億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上収益は増加しているものの、構造改革に伴う費用増や関税の影響などにより売上総利益は微減となり、売上総利益率は低下しています。販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益および営業利益率ともに低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2227億円 | 2404億円 |
| 売上総利益 | 367億円 | 364億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.5% | 15.1% |
| 営業利益 | 159億円 | 144億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が92億円(構成比17.0%)、研究開発費が57億円(同10.4%)、荷造運搬費が29億円(同5.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
中国やその他地域を中心に産業機器事業の需要が回復に向かったことで、多くのアジア地域で増収となりました。一方、日本や米州、欧州では構造改革費用や事業整理損失の影響を強く受け、営業利益ベースで赤字を計上する結果となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1737億円 | 1742億円 | 78億円 | -36億円 | -2.1% |
| 米州 | 919億円 | 905億円 | 24億円 | -363億円 | -40.1% |
| 欧州 | 684億円 | 686億円 | -4億円 | -262億円 | -38.2% |
| 中国 | 662億円 | 782億円 | 72億円 | 19億円 | 2.4% |
| その他 | 226億円 | 265億円 | 7億円 | 1億円 | 0.4% |
| 調整額 | -700億円 | -718億円 | -4億円 | -9億円 | - |
| 非継続事業等 | -1300億円 | -1258億円 | -14億円 | 795億円 | - |
| 連結(合計) | 2227億円 | 2404億円 | 159億円 | 144億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)と言えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 284億円 | 427億円 |
| 投資CF | -342億円 | -198億円 |
| 財務CF | -227億円 | -421億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-21.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も44.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、創造開発型企業として機械要素部品を世界へ供給しています。機械装置の高精度化、省エネルギー化を実現し、産業の発展に貢献しながら企業価値の向上を図ることを使命としています。
■(2) 企業文化
顧客の心で考え、行動し、検証する「顧客志向」の立場で日々営業活動を行う文化が根付いています。また「人材」をかけがえのない「人財」と捉え、従業員一人ひとりが強みや個性を尊重し、安全かついきいきと働くことができる環境作りを重視しており、多様な価値観を受容する風土を築いています。
■(3) 経営計画・目標
新たな経営方針として「ROE 10%超の早期実現」を掲げています。基本的にはマーケット成長に伴う売上収益の増加には頼らず、各種改革を推し進め筋肉質な高収益構造へと変革することで、2027年度〜29年度の間に目標を達成することを目指しています。
* 当期の必要自己資本水準を3,000億円程度に設定
* 当期純利益300億円に必要な営業利益として400億円を設定
* 目標達成まで自己資本配当率(DOE)8%を継続
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略の柱として、需要地における販製一体体制を構築する「グローバル展開」、医療機器や再生可能エネルギー関連へ拡大する「新規分野への展開」、AIやIoTを徹底活用する「ビジネススタイルの変革」を掲げています。また、「ものづくりサービス業」への転換を図り、FAソリューションビジネスを強化しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な企業価値創造のため、多様な価値観を受容する「ダイバーシティの推進」を重視しています。また、海外比率が高いことから「グローバル人財の育成」を進めるほか、DX活動を推進する「デジタル人財の育成」にも注力し、創造開発型企業としての強みを生み出す人財のキャリア形成を継続的に支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.5歳 | 19.2年 | 6,481,721円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 68.5% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 77.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 66.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減率(38%)、新卒採用における女性比率(13.9%)、データ活用研修受講率(97.82%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 災害・地政学的問題等によるサプライチェーン寸断
グローバルに製造・販売拠点を有するため、自然災害やテロ、感染症の蔓延等により生産活動に重大な影響が及ぶ可能性があります。また、地政学リスクの高まりがエネルギーや原材料価格の高騰、調達遅延を引き起こし、業績に悪影響を与えるおそれがあります。
■(2) 海外事業展開と競争激化
新興国製品の台頭により、価格競争がグローバルに激化しています。顧客ニーズを捉えた新製品の開発遅延や、各国の安全保障貿易管理に基づく輸出規制・法規制の変更などが生じた場合、将来の成長や収益性が低下するリスクがあります。
■(3) 特定産業界の需要動向への依存
主要顧客が工作機械や半導体製造装置などの産業機械メーカーであるため、特定の産業界における急激な需要変動の影響を受けやすい構造となっています。特定の顧客に依存しないリスク分散に努めていますが、急激な市況変化は業績に影響を及ぼす可能性があります。



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