※本記事は、三井海洋開発株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
同社グループは、海洋石油・ガス生産の中流領域で、浮体式生産・貯蔵・積出設備(FPSO、FSO、TLP)のEPCIサービスとチャーターサービスを提供しています。海外の政府系または民間石油・ガス開発会社を主要顧客とし、グローバルにトータルソリューションを展開しています。
単体従業員数は222名、連結従業員数は6,460名です。
三井海洋開発は、自社工場や造船所を持たないファブレス企業として、EPCI事業におけるプロジェクトマネジメント業務に特化しています。設計から調達、建造、据付、試運転までを一貫して管理し、グローバルな事業展開を推進しています。
2025年11月3日にはMODEC INTERNATIONAL, INC.がMODEC AMERICA, INC.へ社名変更し、同年12月31日にはSOFEC, INC.を吸収合併するなど、グループ内で事業再編が行われました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
三井海洋開発は、海洋開発事業をグローバルに展開する企業です。その事業特性から、専門性の高い人材が国内外で活躍しており、働き方も多様な環境が想定されます。
同社グループでは、持続可能なエネルギー供給と気候変動対応というグローバルな社会課題の解決に貢献するため、人材を競争力の源泉と位置づけています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均年齢が40代前半であり、平均勤続年数は10年未満となっています。これは、特定の専門分野における経験を積んだ人材が活躍しつつも、事業の特性上、人材の流動性も一定程度あることを示唆していると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 11,957,000円 |
| 平均勤続年数 | 7.5年 |
| 平均年齢 | 41.7歳 |
| 単体従業員数 | 222人 |
| 連結従業員数 | 6,460人 |
| 単体のグループ内比率 | 3.4% |
同社には確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度があります。これらの制度は国内グループ会社に適用されます。
なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
三井海洋開発は、「人材が競争力の源泉である」という考えに基づき、グループ全体の従業員の力を結集し、持続可能な社会の実現を目指しています。中期経営計画では、FPSOの脱炭素化や新事業具現化とともに、人的資本への積極的な投資を掲げ、人材の確保と活躍促進を推進しています。
具体的には、FPSO事業の拡大、新事業の創出、グループ経営基盤の構築という3つの領域で人材の確保・育成に注力しています。安定的な人材確保と付加価値向上に向けた育成、新事業拡大のための人材育成、そしてグループ経営を牽引するリーダーの育成強化に取り組んでいます。
また、グループ一体となった事業推進のため、共通のバリュー「OCEAN」の浸透を強化し、多様で働きやすい職場環境づくりにも力を入れています。社内コミュニケーションの強化、ハイブリッド型就業制度やフレックスタイム制の拡充といった柔軟な働き方の整備、女性・外国籍・中途採用の強化を進めています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。管理職に占める女性労働者の割合が低い主要因は、全労働者に占める女性労働者の割合および職種・等級の男女構成比の差によるものです。また、労働者の男女の賃金の差異は、等級別人数構成の差が主な要因であり、賃金の基準は性別に関係なく同一です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 14.5% |
| 男性労働者の育児休業及び育児目的休暇取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 69.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち正規雇用労働者) | 71.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(うち非正規雇用) | 43.4% |
多様性・登用
提出会社を対象。オフショア等に赴くエンジニアを除く。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性従業員比率(2025年度) | 34% |
| 女性管理職比率(2025年度) | 15% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
三井海洋開発は、海洋石油・ガス生産の中流領域で利用される浮体式生産・貯蔵・積出設備の提供を主な事業としています。設計・調達・建造・据付(EPCI)サービスと、チャーターサービス(リース及びオペレーションサービス)をグローバルに展開し、海外の政府系または民間石油・ガス開発会社を主要な顧客としています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスの提供を中心とした単一の事業を展開しています。石油開発事業における探鉱後の開発・生産フェーズを対象とし、比較的安定した事業領域で収益を上げています。
同社グループは、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、FSO(浮体式海洋石油・ガス貯蔵積出設備)、TLP(緊張係留式プラットフォーム)といった浮体式海洋石油・ガス生産設備を提供しています。これらの設備は、洋上での石油・ガス生産、貯蔵、積出の機能を有し、大水深海域での石油生産にも対応できる経済的な利点があります。
EPCI事業では、自社の工場や造船所を持たないファブレス企業として、プロジェクトマネジメント業務に特化しています。世界中から最適な業者や造船所を選定し、船体の建造や搭載設備の製造、設備の据付を外部に委託しています。
FPSO等のリース、チャーター及びオペレーション事業においては、プロジェクトごとに合弁で関係会社を設立し運営しています。これにより、各プロジェクトの採算管理を明確化し、長期の資金負担を軽減する方針です。
同社グループの事業は、海外各国の政府系または民間の石油開発事業者を販売先としており、取引及び資金収支の大半は米ドルを主とした外貨で行われています。そのため、為替変動が業績に影響を与える可能性があります。当連結会計年度においては、ExxonMobil Guyana Limited、Equinor Energy do Brasil Ltda.、Shell Brasil Petróleo Ltda.が主要な顧客となっています。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの連結業績は、過去5年間で売上収益が変動しつつも、当期は増加傾向を示しています。税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益も、当期にかけて大きく改善しました。特に当期は、FPSO建造プロジェクトの順調な進捗と金融収益の増加により、利益が大幅に伸びています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 39.0億円 | 27.4億円 | 35.7億円 | 41.9億円 | 45.8億円 |
| 税引前利益 | △3.4億円 | 55百万円 | 2.1億円 | 3.1億円 | 5.1億円 |
| 税引前利益率 | △8.8% | 2.0% | 6.0% | 7.4% | 11.1% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | △3.6億円 | 37百万円 | 97百万円 | 2.2億円 | 3.6億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △6.46 | 0.66 | 1.55 | 3.23 | 5.28 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上収益(連結)は、前期から横ばいの傾向を示しています。一方、従業員1人あたり営業利益(連結)は、前期から変化がない状況です。これらの数値は、同社グループの事業規模拡大と従業員数の増加がバランスしていることを示唆しています。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 0.7百万円 | 0.7百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.1百万円 | 0.1百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、本業で安定的に資金を生み出し、投資活動も行いながら、堅実な財務運営を行っている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が前期から改善傾向にあり、プライム市場の非製造業平均(24.2%)を上回る水準となっています。また、ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均(9.4%)を大きく上回る水準を示しており、効率的な資本活用が行われていることがうかがえます。手元資金である現金及び現金同等物も増加しており、事業運営における安定性が見られます。これらの財務状況は、入社後の雇用や給与の安定性にもつながる要素です。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 11.8億円 | 14.5億円 |
| 自己資本比率 | 26.3% | 30.5% |
| ROE(自己資本利益率) | 20.3% | 27.4% |
| 現金及び現金同等物 | 12.5億円 | 13.3億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローは、本業の活動を示す営業活動によるキャッシュ・フローがプラスとなっています。これは、FPSO等の建造工事に関わる売上債権の回収時期と買掛金の支払時期のバランスによる変動が主な要因です。投資活動によるキャッシュ・フローもプラスとなっており、主に持分法で会計処理されている投資の清算による収入がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払によりマイナスとなっています。これらの結果、自由に使える資金であるフリーキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で稼いだ資金を元手に、投資活動も行いながら、健全な資金繰りを行っている状況が示されています。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.6億円 | 2.4億円 |
| 投資CF | △1.2億円 | 5百万円 |
| 財務CF | △1.9億円 | △1.9億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 4.4億円 | 2.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、海外のプロジェクトを中心に事業を展開しており、不透明な世界情勢による地政学リスクや経済情勢の急変がプロジェクトの採算に影響を及ぼす可能性があります。また、原油価格の低迷が長期化すると、オイルメジャーによる新規プロジェクト開発が遅延し、プロジェクトの受注が一時的に減少する影響を受ける可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
人材・組織に関するリスクの記載はありません。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
三井海洋開発は、持続可能なエネルギー供給と気候変動対応というグローバルな社会課題の解決に貢献することを目指しています。革新的な技術と事業を通じて、海洋と人が調和しながら共生共栄できる社会の実現を追求しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
三井海洋開発は、脱炭素の世界的潮流とエネルギー需要の増加に対応し、石油・ガスを必要不可欠なエネルギーと捉え、FPSO事業開発に注力する方針です。同時に、気候変動に対応するエネルギー・トランジションの現実解を提案し、事業展開を進めています。
中期経営計画2024-2026では『イノベーションで持続可能な未来を拓く』を掲げています。FPSO事業の脱炭素化や新事業の開拓・育成、事業基盤の強化を通じて、「海洋と人が調和しながら共生共栄できる社会」の実現を目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
三井海洋開発は「人材が競争力の源泉である」と考え、グループ全体の力を結集し、ビジョン実現を目指しています。中期経営計画では人的資本への投資を積極的に行い、Core Values「OCEAN」(Care、Empowered、Agile、One Team、iNtegrity)に基づく文化醸成を推進しています。
多様な視点から生まれる新たな発想を重視し、属性にとらわれず優秀な人材を獲得し、多様な人材が安心して働ける職場風土の醸成を目指しています。風通しの良いインクルーシブ・カルチャーの定着にも取り組んでいます。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、安定したエネルギー供給の維持と気候変動への対応を重要な課題と認識しています。中期経営計画では、FPSO事業の脱炭素化、新規事業の開拓・育成、ガバナンス・内部統制の体制強化を含む事業基盤の強化を重点テーマとしています。
具体的には、CCS技術や燃料電池搭載によるFPSOの脱炭素化、ブルーアンモニアFPSOや浮体式洋上風力発電システム、FSIUといった新技術の開発を進めています。また、グループコラボレーションの深化、人的資本経営の推進、サステナビリティ・グループガバナンスの向上にも取り組んでいます。
「気候変動」「人権」「人的資本・ダイバーシティ」を重要テーマとして、サステナビリティ委員会を中心に具体的な施策を推進しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
三井海洋開発は、監査等委員会設置会社として、迅速な意思決定と職務執行、そして適切な監督・監視体制の構築に努めています。取締役会は経営戦略の審議に重点を置き、業務執行への権限委任を進めています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
三井海洋開発の株主構成を見ると、商船三井と三井物産が上位を占めています。複数の事業会社が主要株主として名を連ねており、同社グループの事業基盤を支える体制がうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 商船三井 | 15.00% |
| 三井物産 | 14.86% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.92% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員は宮田裕彦氏が務めています。社外取締役比率は70.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮田 裕彦 | 代表取締役社長執行役員 | 1987年4月三井物産㈱入社。2017年4月同社執行役員事業統括部長。2022年4月同社専務執行役員欧州総代表兼欧州ブロックCSO兼中東・アフリカブロックCSO兼欧州三井物産㈱社長&CSO。2024年3月同社代表取締役社長執行役員より現職。 |
| 鈴木 亮 | 取締役 | 1987年7月㈱三井銀行(現㈱三井住友銀行)入行。2015年4月同行執行役員米州本部副本部長。2020年5月同社執行役員財務部長。2025年4月同社取締役常務執行役員CFO、経理部、財務部、財務企画部及びSPC経理グループ担当より現職。 |
社外取締役は、清水一樹氏(三井物産執行役員)、杉山正幸氏(商船三井執行役員)、小林雅人氏(シティユーワ法律事務所パートナー)、前田裕子氏(㈱セルバンク取締役)、野田弘子氏(プロビティコンサルティング㈱代表取締役)、藤田利彦氏(元日本銀行監事)、安間匡明氏(国立大学法人一橋大学客員教授)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、社外取締役が経営判断に対するチェック機能や監査・監督の役割を担い、経営の公正性・透明性確保に貢献しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
三井海洋開発の役員報酬は、固定報酬である基本報酬、短期業績連動報酬である賞与、そして中長期業績連動報酬である株価連動報酬(パフォーマンスキャッシュ)で構成されています。これは、中長期的な企業価値向上と経営計画の実現を促すインセンティブとして機能するよう設計されています。社外取締役および監査等委員である取締役の報酬は、独立性確保のため固定報酬のみとなっています。
個人別報酬が開示されている役員は、宮田裕彦氏(2.43億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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