※本記事は、株式会社正興電機製作所の有価証券報告書(第122期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 正興電機製作所ってどんな会社?
電力インフラや環境エネルギー向け監視制御システムなどの開発・製造を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1921年に電気機械器具類の販売を創業しました。1960年に現在の正興電機製作所へ商号変更し、1990年に福岡証券取引所に上場しました。その後、1995年の中国大連への進出など海外展開も進め、2005年に正興ITソリューションを設立。2018年には東京証券取引所市場第一部への上場を果たしています。
従業員数は連結で971名、単体で629名です。大株主については、筆頭株主が退職給付信託の九州電力口および九州電力送配電口(再信託受託者 日本カストディ銀行)であり、第2位は退職給付信託の西日本鉄道口、第3位は事業会社であるクラフティアとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ信託銀行 退職給付信託 九州電力口及び九州電力送配電口 再信託受託者 日本カストディ銀行 | 8.77% |
| みずほ信託銀行 退職給付信託 西日本鉄道口 再信託受託者 日本カストディ銀行 | 6.89% |
| クラフティア | 6.25% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は添田英俊氏が務めており、役員のうち過半数となる7名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 土屋 直知 | 代表取締役会長 | 1969年4月日立製作所入社。1981年8月同社入社。1997年6月代表取締役社長を経て、2013年3月より現職。 |
| 添田 英俊 | 代表取締役社長 | 1978年4月同社入社。2013年3月取締役上級執行役員営業統括本部長兼東京支社長を経て、2019年3月より現職。 |
| 田中 勉 | 取締役専務執行役員経営統括本部長 兼CSR・内部統制・コンプライアンス担当 | 1985年4月同社入社。2019年3月取締役常務執行役員経営統括本部長を経て、2025年3月より現職。 |
| 有江 勝利 | 取締役専務執行役員営業統括本部長 兼東京支社長 | 1985年4月同社入社。正興ITソリューション代表取締役社長等を経て、2025年3月より現職。 |
社外取締役は、石田耕三(元堀場製作所取締役副社長)、高崎繁行(元西日本鉄道代表取締役専務執行役員)、青木麗子(DLC・GBコンサルティング代表取締役)、稲月勝巳(九州電力送配電代表取締役副社長執行役員)、加藤暁子(日本の次世代リーダー養成塾専務理事兼事務局長)、高田勝則(元九電工執行役員)、近藤真(福岡国際法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電力部門」、「環境エネルギー部門」、「情報部門」、「サービス部門」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 電力部門
発電所や変電所向けの集中監視制御システム、配電線自動制御システムなどの開発・製造・販売および関連工事を行っています。主力製品として現地操作支援システムや遠隔設備監視システムなどを提供しています。
収益源はこれらのシステムや機器の販売および工事請負代金です。運営は主に同社、大連正興電気制御有限公司、北京正興聯合電機有限公司が行っています。
■(2) 環境エネルギー部門
上下水道設備向けや高速道路向け、一般産業・再生可能エネルギー・AIデータセンター向けの受変電システムや蓄電システムの開発・製造・販売および関連工事を行っています。
収益源はシステムや製品の販売および工事請負代金です。運営は主に同社、正興サービス&エンジニアリング、トライテックなどが担っています。
■(3) 情報部門
港湾、ヘルスケア、eラーニング等に関するクラウドサービス(SaaS)や、AI・IoT等を活用した各種業務支援システムの開発事業を行っています。
収益源はソフトウェア開発の受託代金やクラウドサービスの継続的な利用料です。運営は主に同社、正興ITソリューション、正興ITソリューションフィリピンが担当しています。
■(4) サービス部門
電気機械設備や省エネ機器、ロボット等のデジタル化や脱炭素に関連する製品の販売、およびそれに伴うエンジニアリングや保守メンテナンス等のサービスを行っています。
収益源は製品販売代金やメンテナンス等のサービス提供料です。運営は同社、正興サービス&エンジニアリングなどが担っています。
■(5) その他
制御機器、電子装置、調光フィルムの開発・製造・販売のほか、電気工事や機械器具設置工事等を行っています。
収益源は製品販売代金および工事請負代金です。運営は主に同社、正興電気建設、正興エレクトリックアジアなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が継続して増加しており、特に直近2年間で成長が加速しています。利益面でも増益基調が続いており、経常利益率は6%台から10%台へと改善し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 246億円 | 250億円 | 271億円 | 291億円 | 314億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 16億円 | 18億円 | 24億円 | 31億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 6.4% | 6.7% | 8.1% | 10.0% |
| 当期純利益 | 10億円 | 10億円 | 10億円 | 15億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益構成を見ると、売上高の成長に伴い売上総利益と営業利益が大きく増加しています。特に営業利益率は改善傾向にあり、本業の収益力が高まっていることが伺えます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 291億円 | 314億円 |
| 売上総利益 | 52億円 | 60億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.9% | 19.1% |
| 営業利益 | 20億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比22%)、賞与が3億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
環境エネルギー部門やサービス部門が大きく売上を伸ばしており、全体の成長を牽引しています。電力部門は売上横ばいながらも利益面では堅調に増益を達成し、各セグメントで安定した収益を生み出しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電力部門 | 83億円 | 82億円 | 10億円 | 12億円 | 15.0% |
| 環境エネルギー部門 | 119億円 | 130億円 | 3億円 | 7億円 | 5.7% |
| 情報部門 | 16億円 | 16億円 | 2億円 | 1億円 | 7.2% |
| サービス部門 | 50億円 | 61億円 | 1億円 | 1億円 | 2.2% |
| その他 | 24億円 | 24億円 | 3億円 | 4億円 | 16.0% |
| 連結(合計) | 291億円 | 314億円 | 20億円 | 26億円 | 8.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 38億円 |
| 投資CF | 2億円 | -13億円 |
| 財務CF | 4億円 | -24億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「情報と制御の独創技術をコアとし、環境に優しい安全で快適な社会の実現及びCS(顧客満足)経営に徹した事業活動を行い、また、人間尊重を基本とした人との出会いを大切にする企業グループを目指すこと」を基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「最良の製品・サービスを以て社会に貢献す」という社是のもと、事業活動を通じた社会課題の解決により持続可能な社会の実現に取り組んでいます。また、「One 正興」を掲げ、グループ総合力を発揮して新たな価値の共創と事業領域の拡大を図る文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2022年から2026年を最終年度とする中期経営計画「SEIKO IC2026」において、売上高、営業利益、営業利益率、ROE及びROICを目標とする経営指標に掲げています。
・2026年12月期の目標受注高:430億円
・目標売上高:360億円
・目標営業利益:30億円
・目標営業利益率:8.3%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は事業環境の変化を成長のチャンスと捉え、デジタル技術を活用したスマート保安やデータセンター向けソリューションの展開など「デジタルファースト」を推進しています。また、再生可能エネルギーや蓄電池を活用した「脱炭素社会の実現」に向けたエネルギーソリューションの提供にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「多様な人財の個の成長が企業価値創造の源泉である」と考え、人的資本経営を推進しています。年齢や性別等に関係なく多様な人財を積極的に採用し、それぞれの特性を最大限に活かせる職場環境の整備と、「与えられる教育」から「自ら学ぶ教育」へと自律性を尊重した教育体制の構築に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.3歳 | 16.5年 | 6,916,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 48.1% |
また、同社は「人的資本・多様性に関する戦略、指標・目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休職取得率(100%)、健康投資の効果を図るKPIとしてのウォーキングイベント参加率(80%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 設備投資動向の影響
同社の事業は電力システムや受配電システム等の設備投資の動向に影響を受けやすいため、市場の設備投資動向が予想を超えて変化した場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 取引先の信用不安
同社の事業は製品引渡後に代金が支払われる請負契約が多いため、代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。対策として、信用調査に基づく厳格な与信限度額の設定を行っています。
■(3) 入札制度と過当競争
官公庁等に電気設備や水処理設備等を販売する際に入札を行いますが、入札制度の変更や過当競争による入札価格の低下が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 予期せぬ事故や災害
予期せぬ事故や災害、感染症等の発生により、同社グループや販売先、仕入先の事業活動に支障をきたした場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。対策として非常時対応マニュアルの整備や災害想定訓練を実施しています。



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