サンデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンデン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンデンは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車用空調システムやコンプレッサーを主力とする自動車機器事業を展開する企業です。直近の業績トレンドとして、グローバルでの販売増加などにより売上高は前年を上回り増収となり、各種施策の成果もあって経常利益は黒字に転換しました。


※本記事は、サンデン株式会社の有価証券報告書(第100期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンデンってどんな会社?


自動車機器事業を主力とし、自動車用空調システムやコンプレッサーの製造販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1943年に無線通信機用部品等の製造を目的に三共電器として設立されました。1971年にカーエアコン用コンプレッサーの生産を開始し、1973年に東京証券取引所市場第一部に指定され、サンデンに商号を変更しました。近年では2021年に海信日本オートモーティブエアコンシステムズを引受先とする第三者割当増資を実施しています。

現在、同社グループは連結従業員数4,791名、単体従業員数963名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社である海信日本オートモーティブエアコンシステムズで、第2位および第3位は金融機関や個人株主となっています。

氏名 持株比率
海信日本オートモーティブエアコンシステムズ 73.16%
BBH(LUX) FOR FIDELITY FUNDS - PACIFIC POOL(常任代理人三菱UFJ銀行) 2.34%
方 永義 1.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長を高玉玲氏、代表取締役社長執行役員を徐湛氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高玉玲 代表取締役会長 海信集団等の経理・財務要職を歴任し、2024年に海信家電集団董事長に就任。2025年より現職。
徐湛 代表取締役社長執行役員 ハイセンスグループの製造や購買の要職を経て、同社副社長執行役員などを歴任。2025年より現職。
王志剛 取締役副社長執行役員開発管掌 兼 中国事業統括 ハイセンスグループの開発や戦略経営の要職を経て、2021年に同社副社長に就任。2025年より現職。
小林英幸 取締役副社長執行役員総務・法務・安全衛生・環境・社内広報管掌兼 豪・アジア事業統括 同社入社後、事業工場長や経営企画室長を経て2021年に取締役副社長に就任。2025年より現職。
于芝涛 取締役 青島海信通信などの要職を経て、2024年に海信集団控股の最高経営責任者に就任。2023年より現職。


社外取締役は、趙福全(清華大学車両・モビリティ学院教授・指名・報酬委員長)、巨東英(日中科学技術文化センター理事長・特別委員長)、王震坡(北京理工新源技術代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車機器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車機器事業


同事業は、自動車用空調システムおよびコンプレッサー、自動車用熱交換器、空調室内ユニットなどの製造販売を行っており、世界の自動車メーカーなどを主な顧客としています。
収益は、これらの製品の販売代金から得ています。運営は同社のほか、米国、欧州、アジア、中国の各地域に展開するSANDEN INTERNATIONAL (U.S.A.), INC.や天津三電汽車空調などの連結子会社が担っています。

(2) その他


同事業は、エコキュートなどの住宅用給湯・環境機器の製造販売を行っており、一般消費者や住宅関連企業を顧客としています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は同社や、フランスのSANDEN MANUFACTURING EUROPE S.A.S.、オーストラリアのSANDEN INTERNATIONAL (AUSTRALIA) PTY, LTD.などの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり増収基調で推移しています。経常利益は赤字から直近で黒字に転換していますが、当期利益は赤字となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,196億円 1,757億円 1,793億円 1,838億円 1,909億円
経常利益 -117億円 -41億円 -84億円 -2億円 18億円
利益率(%) -9.8% -2.4% -4.7% -0.1% 0.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 190億円 -53億円 -67億円 -21億円 -10億円

(2) 損益計算書


売上高は前期と比較して増加しており、売上総利益も拡大しています。営業利益は依然として赤字ではあるものの、各種コスト削減や収益性改善の取り組みにより、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,838億円 1,909億円
売上総利益 267億円 282億円
売上総利益率(%) 14.5% 14.8%
営業利益 -64億円 -15億円
営業利益率(%) -3.5% -0.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与が110億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が18億円(同6%)、減価償却費が18億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社の売上の大部分は自動車機器事業が占めており、各地域での販売動向が全体の収益に影響を与えます。当期はアジア地域や米州などでの堅調な需要や為替の影響もあり、自動車機器事業の売上が増加し、全体の成長を牽引しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
自動車機器事業 1,825億円 1,898億円
その他 13億円 11億円
連結(合計) 1,838億円 1,909億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -45億円 27億円
投資CF -128億円 -65億円
財務CF 95億円 50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も14.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


1943年の創立以来、創業の精神である「知を以て開き 和を以て豊に」が脈々と受け継がれています。2003年に制定した「国際社会の中で共感する普遍の価値観」と「ステークホルダーに対する基本姿勢」からなる企業理念のもと、経営品質の向上に取り組んでいます。また、ビジョンとして「安心と快適をドライブする熱マネジメント技術のリーディングカンパニーへ」を掲げています。

(2) 企業文化


創業の精神「知を以て開き 和を以て豊に」が企業文化として脈々と受け継がれています。また、多様な価値観を尊重して受け入れ、違いを積極的に活かすというダイバーシティを推進しています。社員の視点から安心して活躍できる環境づくりを目指し、社員満足度を重視したエンゲージメントアンケートを毎年実施して職場活性化に活かしています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(SHIFT2028:2024年1月〜2028年12月)において、コンポーネントサプライヤーから「フルソリューション・システム・サプライヤー」への転換を目指しています。統合熱マネジメントシステム(ITMS)のリーディングカンパニーとして持続的成長を実現すべく、連結ベースでの数値目標を設定しています。

* 売上高 3,000億円
* 経常利益 90億円

(4) 成長戦略と重点施策


NEV(新エネルギー車)市場に焦点を当て、電動コンプレッサーの製品力を軸に統合熱マネジメントシステムソリューションを提供することを基本方針としています。目標達成のため、欧州市場でのシェア拡大、中国市場の成長取り込み、北米への投資強化、製品プラットフォーム化の推進、グローバルサプライチェーンの最適化および人材開発の強化などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人づくり」こそ最大の経営課題と認識し、「人間力」と「技術力」を兼ね備えた人材の育成を基本精神としています。リーダーシップ教育を軸とした階層別・選抜研修を実施し、キャリア開発の機会を平等に提供しています。また、グローバル事業を推進するため、多国籍人材の積極的な登用やエンジニアの育成に取り組み、全員が生産性高く活躍できる職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.4歳 17.1年 6,916,354円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.4%
男女賃金差異(正規雇用) 78.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、日本における外国籍人材の雇用総人数(74名)、新任管理職セクションリーダー研修受講率(95%)、エンゲージメント調査の満足度平均スコア(3.40)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候(変動)関連リスク


脱炭素社会への移行が進む中、燃費・排ガス規制や車両電動化への対応の遅れは、販売機会の損失や商権失注につながる可能性があります。同社グループは、次世代環境車対応の製品開発を加速するとともに、物理的リスクとしての気象災害対策に向けたサプライチェーンの強化や、再生可能エネルギーの活用によるCO2排出量削減を進めています。

(2) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク


グローバルに事業を展開しているため、各国の法規制の変更、政治・経済情勢の変化、社会的混乱や物流の乱れなど多様なカントリーリスクが内在しています。これらが顕在化した場合には、同社グループの事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。リスク管理規定の制定やモニタリングを通じて対応を図っています。

(3) 品質に係るリスク


自動車産業の厳格な品質マネジメントシステムに従い製品を製造していますが、予期せぬ製品の欠陥による製造物責任賠償の発生や大規模なリコールが生じた場合、多額の費用負担やブランドの信頼低下を招く恐れがあります。保険加入などの対策を講じていますが、これらにより経営成績や財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 人材確保に関するリスク


グローバルでの事業推進や技術開発を担う専門人材、エンジニア、リーダー層の確保・育成が計画通りに進まない場合、事業活動の停滞を招く恐れがあります。多様な働き方の価値観や雇用情勢が変化する中で、人材の流出防止や積極的な採用活動を通じた優秀な人材の確保が経営課題となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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