※本記事は、スミダコーポレーション株式会社の有価証券報告書(第71期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. スミダコーポレーションってどんな会社?
同社は車載や家電など多岐にわたる電子機器に不可欠なコイル関連部品およびモジュール製品を展開しています。
■(1) 会社概要
1956年にコイルの製造・販売を目的として墨田電機工業を設立しました。1998年に東京証券取引所市場第2部へ上場し、2000年に純粋持株会社へ移行して現在の社名に変更するとともに同市場第1部へ指定されました。その後もドイツの企業買収などグローバル展開を進め、2022年にプライム市場へ移行しています。
筆頭株主ならびに第2位株主は、資産管理業務等を行う信託銀行となっています。また、同グループは連結で14,964名の従業員を擁していますが、同社単体は純粋持株会社であるため従業員は在籍していません。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.97% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.26% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223 | 3.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表執行役CEOは堀寬二が務めており、取締役8名のうち6名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 堀寬二 | 代表執行役CEO | 1988年三井銀行入行。2003年スミダ電機入社。北米子会社プレジデントなどを経て、2021年同社代表執行役社長に就任し、2022年より現職。 |
| 八幡滋行 | 取締役 | 1977年同社入社。1992年代表取締役社長、2003年代表執行役CEOなどを歴任し、2003年より現職。 |
| 本多慶行 | 取締役 | プライスウォーターハウスクーパース等を経て、2011年同グループ入社。2012年同社代表執行役CFOに就任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、梅本龍夫(アイグラム代表取締役)、范仁鶴(チャイナ・エバーブライト・エンバイロメント・グループ非業務執行独立取締役)、早川亮(アクサス・アドバイザーズ代表取締役)、アルバートキルヒマン(トレイトン SE社外取締役)、上野佐和子(ジャパン・インテグリティ代表取締役)、土地順子(DOCHI法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アジア・パシフィック事業」および「EU事業」を展開しています。
■(1) アジア・パシフィック事業
車載関連、インダストリー関連、家電関連向けのコイル製品を製造・販売しており、主にこれらの分野を手掛ける製造業を営む企業を顧客としています。
顧客である製造業各社から製品の販売代金を受け取る収益モデルです。運営は同社の事業活動の支配・管理の下、スミダ電機やアジア各地域の子会社などが事業を展開しています。
■(2) EU事業
欧州地域を中心に、車載関連、インダストリー関連、家電関連のコイル製品を製造・販売するほか、顧客の要請に基づく仕様設計や製造用工具などの開発サービスも提供しています。
製品の販売代金に加え、開発サービスに伴う収益を得るビジネスモデルです。運営はドイツなどの各地域の子会社が行っており、Schmidbauer社などの買収により事業領域を拡大しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な落ち込みがあったものの、概ね成長基調で推移しています。特に当期はインダストリー関連の需要増などに支えられて売上収益が増加し、欧州での事業構造改革や製造間接費の適正化が寄与したことで、税引前利益および当期利益も前期から大幅に回復して増益となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1049億円 | 1386億円 | 1477億円 | 1440億円 | 1472億円 |
| 税引前利益 | 39億円 | 65億円 | 59億円 | 13億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 3.7% | 4.7% | 4.0% | 0.9% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 26億円 | 51億円 | 51億円 | 6億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の増加に伴い、売上総利益および営業利益も大きく改善しています。特に営業利益率は前期の3.1%から5.1%へと上昇しており、操業度の上昇による固定費負担の減少や事業構造改革によるコスト削減が収益性の向上に大きく寄与していることがわかります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1440億円 | 1472億円 |
| 売上総利益 | 180億円 | 209億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.5% | 14.2% |
| 営業利益 | 45億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 5.1% |
■(3) セグメント収益
アジア・パシフィック事業は、北米およびアジアでのインダストリー関連需要の伸長や一過性の増収要因により増収増益となりました。EU事業は需要が減少したものの、事業構造改革が完了してコスト削減効果が発現したことで、利益面での成長に大きく貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アジア・パシフィック事業 | 947億円 | 990億円 | 31億円 | 47億円 | 4.8% |
| EU事業 | 562億円 | 568億円 | 27億円 | 34億円 | 6.0% |
| 調整額 | -69億円 | -86億円 | -2億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 1440億円 | 1472億円 | 56億円 | 81億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持及び健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保を進めています。
営業活動では、税引前利益や減価償却費等の計上により、前連結会計年度を上回る資金収入を得ています。投資活動では、顧客からの受注に基づき、車載関連及びインダストリー関連の設備投資や子会社の取得等により、前連結会計年度よりも多くの資金を支出しました。財務活動では、借入による資金調達があったものの、配当金の支払い等により、前連結会計年度よりも支出額は減少しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 149億円 | 165億円 |
| 投資CF | -88億円 | -129億円 |
| 財務CF | -53億円 | -20億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「技術と人の架け橋」をビジョンに掲げ、想像力に富んだアイディアを実現し、世の中にパワーと勇気を与えるためのソリューションを提供する業界のリーダーとなることを目指しています。また、人々の生活の質を向上し、環境にやさしい製品や技術の開発を可能にするソリューションの提供を使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「グローバル」「スピード」「フォーカス」を経営における重要な価値観として定義しています。世界中の市場に対応し、迅速な意思決定と実行力をもってビジネスを展開する姿勢を重視しており、国籍や性別に関わらず多様性を尊重する実力主義の考え方を根底に置いて、社員の成長と高いエンゲージメントを促進しています。
■(3) 経営計画・目標
2035年にありたい姿として、複数のニッチ市場でシェア50%以上の主導的な地位を確立する「Top Position in Multiple Niches」を掲げています。その実現に向けた中期経営計画2026-2028において、以下の目標を設定しています。
* 2028年度の売上収益1,650億円
* 2028年度の営業利益100億円
* 2028年度の基本的1株当たり当期利益(EPS)174.0円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業領域におけるキャッシュ創出力の向上とプロセス高速化による高資本効率を追求するとともに、従来のグリーンエネルギー関連に加え、データセンターや医療、ロボットなどのメガトレンドに即した市場での案件獲得を目指します。また、自社開発の独自技術の製品化や買収先とのシナジー創出によって新たな市場を開拓します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人こそが会社の最も重要な経営資源である」と考え、社員一人ひとりを大切にする企業を目指しています。働く場所を問わず公正な処遇を保証し、本人の能力や志望に応じたチャレンジングな職務を提供して実績を正しく評価します。また、多様性を尊重し、継続的な人材育成と安全で快適な職場環境の整備に力を注いでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社単体は純粋持株会社であるため、従業員は在籍していません。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 46.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 52.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 45.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、マネジメント職に占める女性の比率(23%)、上位マネジメント職に占める中途入社者(8割強)、外国人比率(5割強)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 地政学上のリスク
同社グループは、アジア、欧州、北米などに多くの生産拠点や販売網を持ち、グローバルに製品を供給しています。米中貿易摩擦や政権交代、紛争などの動向により生産や物流、営業活動が制限されるリスクがあります。これに対し、関税等の政策を分析し、サプライチェーンの見直しや分散生産による地産地消体制を整えてリスク低減を図っています。
■(2) M&Aにより認識したのれんの減損リスク
技術力の強化や販売網の拡充を目的に、他社との事業提携や企業買収(M&A)を積極的に検討・実行しています。しかし、対象会社との経営方針のすり合わせやシステム統合に想定以上の負担がかかり、期待した相乗効果が得られない可能性があります。収益計画の未達などにより、のれんや無形資産の減損損失が発生し業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 車載事業や大口顧客への高依存度
同社グループの売上収益の約6割は車載関連の顧客群向けであり、同分野の動向に売上が大きく左右される可能性があります。各国の政策や補助金の動向、xEV化の進展などの事業環境の変化が業績に影響を与える懸念があります。これに対し、大口顧客との緊密な関係を通じて事業戦略を共有し、市場の変化に対応する取り組みを進めています。



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