日本フェンオール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本フェンオール 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本フェンオールは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、熱のコントロールを基礎技術として火災警報システムや消火システム、半導体製造装置用熱板、人工腎臓透析装置などの開発・製造・販売を展開するメーカーです。直近の業績は、主力製品の販売が堅調に推移して増収となったものの、コスト増等により減益となっています。


※本記事は、日本フェンオールの有価証券報告書(第65期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本フェンオールってどんな会社?


日本フェンオールは、熱のコントロール技術を強みに、防災機器や温度制御機器などの開発・製造を行う企業です。

(1) 会社概要


1961年に米国企業等の出資により日本フェンオールとして設立されました。1996年に株式を店頭登録し、2018年には子会社のフェンオール設備を吸収合併して防災部門の体制を強化しました。2021年にはシバウラ防災製作所を連結子会社化し、2024年に西華産業と資本業務提携を締結して事業を拡大しています。

現在の従業員数は連結で271名、単体で219名です。筆頭株主は香港上海銀行関連の口座で、第2位は資本業務提携先である西華産業、第3位は吉田ディベロプメントとなっています。

氏名 持株比率
THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD – SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793 27.22%
西華産業 23.32%
吉田ディベロプメント 3.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中野誉将氏が務めています。社外取締役比率は2名/4名で50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中野誉将 代表取締役社長 1992年三信電気入社、2000年同社入社。管理統括部長、サーマル営業統括部長、PWBA統括部長等を経て、2022年より現職。
荻原紀晃 取締役 1990年太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)入行。本店法人営業部長等を経て2023年同社へ出向。2025年より現職。


社外取締役は、上村真一郎(桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー)、蔭山潔(元三井住友カード代表取締役兼副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「防消火事業」「温度制御事業」「医療事業」「プリント基板事業」「消防ポンプ事業」を展開しています。

防消火事業(SSP部門)


火災警報システム、消火システム、爆発抑制システムなどの開発、製造、販売、および同システムの設計、施工、保守などを提供しています。主な顧客はプラントや再開発案件などの基幹産業です。

製品の販売代金や設備の施工・保守点検に伴う対価を収益源としています。運営は主に日本フェンオールが行っています。

温度制御事業(サーマル部門)


半導体製造装置用熱板や温度調節器、高温炉用熱電対などの温度制御機器の開発、製造、販売を提供しています。回復基調にある半導体市場の製造装置メーカーなどが主な顧客となります。

製品の販売代金や関連システムの設計・サービスに伴う対価を収益源としています。運営は主に日本フェンオールが行っています。

医療事業(メディカル部門)


人工腎臓透析装置および医療機器の開発、設計、製造、サービスなどを提供しています。限定された取引先との結びつきが強く、主に東レ・メディカルなどが顧客となります。

透析装置などの製品販売代金や製造受託に伴う対価を主な収益源としています。運営は主に日本フェンオールが行っています。

プリント基板事業(PWBA部門)


プリント基板の実装組立、アートワーク設計、ノイズ対策などのサービスを提供しています。事務機器や産業機器向け製品を展開する企業などが主な顧客となります。

基板の実装組立や各種設計などの各種サービスの提供に伴う対価を主な収益源としています。運営は主に日本フェンオールが行っています。

消防ポンプ事業(消防ポンプ部門)


消防ポンプ、消防ポンプ積載車、保安ポンプ、全自動消火システムなどの消防・防災機器の開発、製造、販売を提供しています。国や地方自治体などが主な顧客となります。

可搬式消防ポンプや消防ポンプ積載車などの製品販売代金を主な収益源としています。運営はシバウラ防災製作所が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は123億円から129億円のレンジで安定して推移し、緩やかな拡大傾向にあります。一方、経常利益は11億円から14億円の範囲で推移しており、直近ではコスト増加の影響を受けて減益となっています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 123.7億円 124.0億円 126.0億円 125.2億円 129.1億円
経常利益 13.4億円 14.8億円 11.6億円 13.6億円 11.4億円
利益率(%) 10.8% 11.9% 9.2% 10.9% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.9億円 13.4億円 14.0億円 10.4億円 7.5億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、製品の不具合対策費用や試験研究費などの増加が影響し、営業利益率は低下しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 125.2億円 129.1億円
売上総利益 41.4億円 41.6億円
売上総利益率(%) 33.0% 32.2%
営業利益 11.8億円 10.6億円
営業利益率(%) 9.4% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比39%)、製品保証引当金繰入額が2億円(同7%)を占めています。売上原価においては、材料費が30億円(構成比69%)、労務費が6億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


防消火事業は基幹産業向け大型案件の一巡で減収減益となりましたが、消防ポンプ事業は自治体向けの販売が好調で大幅な増収増益を達成しました。温度制御事業も半導体市場の回復を受けて売上を伸ばしています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
防消火事業 51.6億円 48.4億円 12.6億円 8.5億円 17.6%
温度制御事業 20.3億円 21.1億円 3.8億円 3.5億円 16.6%
医療事業 14.5億円 14.0億円 0.6億円 0.6億円 4.3%
プリント基板事業 10.0億円 9.5億円 1.1億円 1.0億円 10.5%
消防ポンプ事業 28.8億円 36.1億円 0.4億円 3.2億円 8.9%
調整額 -億円 -億円 -6.7億円 -6.3億円 -%
連結(合計) 125.2億円 129.1億円 11.8億円 10.6億円 8.2%


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 9.5億円 3.4億円
投資CF -6.6億円 -12.9億円
財務CF -9.2億円 -10.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「基本の徹底」と「変化への挑戦」をスローガンに掲げています。ミッションとして「価値創造で未来の安全と安心をカタチに」、ビジョンとして「お客様の期待を超える『ものづくり』のベストパートナー」を目指しています。長期的な目線で未来価値を創造し、想定を超える結果を意識したものづくりにこだわっています。

(2) 企業文化


同社は、社員の意識改革と組織風土の改善に向け、社会人としての「基本の徹底」を重視しています。また、バリューとして「Fenwal WAY」を掲げ、「品質と信頼」「探求と挑戦」「挨拶と感謝」の3つの指針を制定しています。高い倫理観と真摯なものづくりを基本とし、積極的なチャレンジを推奨する文化です。

(3) 経営計画・目標


同社は、足元の経営課題と外部環境の変化を踏まえ、「中期経営計画2025」を策定しています。人的資本や資本コストを意識した経営基盤の強化と成長事業への投資を推進し、企業価値の向上を目指しています。

* 2028年度ROE目標:6.0%
* 2028年度EBITDAマージン目標:12.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、事業ポートフォリオの見直しを進め、中核である防災・制御機器分野に経営資源を集中させる事業構造の整備に取り組んでいます。また、西華産業との関係強化による販売領域の拡大や、AIの進化・脱炭素社会を見据えた製品開発を推進し、あらゆる工程の根本的な見直しによる生産改革にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業理念の定着による一体感の醸成、多様な研修と適材配置による能力の最大化、成長機会の提供によるチャレンジ精神の向上、ワークライフバランスの充実による健康促進を基本方針としています。採用強化や人財育成に加え、社員がやりがいを持てる職場環境の実現を目指し、人的資本経営を実践しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.6歳 13.4年 6,042,747円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(18.1%)、社員離職率(5.5%)、社員有給休暇取得率(77.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の品質


一部製品の不正行為に関する再発防止策を実施しているものの、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できず、法令等に抵触する事態が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 主要取引先の事業動向


メディカル事業は東レ・メディカルなど限定された取引先との結びつきが強く、取引先の経営戦略や事業動向の変化が、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 資材等の調達に伴うリスク


主要な原材料である電気・電子部品、金属、プラスチック等の需要急増や供給減少により、必要な資材が確保できなくなった場合、製品の生産に支障をきたし、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人財確保に関するリスク


同社グループの成長は、独自の専門的技術や熟練した施工管理技術を有する人財の確保・育成に依存しています。少子高齢化や働き方の多様化により、これらの人財の確保が想定通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。