※本記事は、日東精工株式会社の有価証券報告書(第120期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日東精工ってどんな会社?
工業用ファスナーから産業用機械、計測機器まで幅広く手掛けるモノづくり企業です。
■(1) 会社概要
1938年に設立され、特殊時計等の製造を開始しました。1956年に工業用ファスナー、1965年に産業用機械の製造へと事業を拡大しました。1980年に東証一部へ上場し、近年は2020年に日東精工アナリテック、2025年にインドの圧造部品メーカーを子会社化するなど、国内外で事業基盤を強化しています。
現在の従業員数は連結で2,267名、単体で519名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は日本カストディ銀行、第3位には金融機関である京都銀行が名を連ねており、機関投資家や金融機関を中心とした安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.82% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.39% |
| 京都銀行 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長CEOは材木正己氏、代表取締役社長COOは荒賀誠氏が務めています。取締役9名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 材木正己 | 代表取締役会長CEO(最高経営責任者) | 1971年同社入社。ファスナー事業部長、常務取締役、代表取締役社長等を経て、2023年より代表取締役会長CEOに就任。現職。 |
| 荒賀誠 | 代表取締役社長COO(最高執行責任者) | 1991年同社入社。経営企画室長、監査部長、常務取締役、専務執行役員等を経て、2023年より代表取締役社長COOに就任。現職。 |
| 松本真一 | 取締役常務執行役員経営管理本部本部長国内事業本部本部長 | 1987年同社入社。財務部長等を経て、2018年取締役。2026年より常務執行役員経営管理本部本部長国内事業本部本部長に就任。現職。 |
| 浅井基樹 | 取締役常務執行役員ファスナー事業本部本部長 | 1985年同社入社。ファスナー事業部長等を経て、2022年取締役。2025年より常務執行役員ファスナー事業本部本部長に就任。現職。 |
| 石丸元国 | 取締役執行役員制御システム事業本部本部長 | 1985年三菱化成入社。三菱ケミカルアナリテック社長等を経て、2020年日東精工アナリテック社長。2025年同社取締役に就任。現職。 |
| 小雲康弘 | 取締役執行役員産機事業本部本部長 | 1989年同社入社。産機事業部海外販売部長、海外事業本部本部長等を経て、2025年取締役に就任。現職。 |
社外取締役は、塩見満(塩見法律事務所代表)、平尾一之(京都大学名誉教授)、勝見九重(勝見社会保険労務士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファスナー」「産機」「制御」「メディカル」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■ファスナー事業
精密ねじ部品を基軸に、大幅な合理化を推進する特殊冷間圧造部品などの設計、原材料の調達、加工から包装までを一貫して手掛け、国内およびアジアや北米を中心とする海外市場で製造・販売を行っています。
収益源は自動車、家電、IT関連などの幅広いメーカーからの製品販売代金です。運営は同社をはじめ、東洋圧造や協栄製作所、ケーエム精工などの国内子会社のほか、インドネシアや台湾、インドなどの海外関連会社が担っています。
■産機事業
組立工場の自動化、高品質化、高効率化を実現するための自動ねじ締め機、自動リベットかしめ機、各種ロボットや搬送コンベアなどの設計・製造から検査・梱包までを一貫して手掛け、国内外に展開しています。
収益源は自動車関連をはじめとする各種メーカーからの産業用機械の販売代金です。運営は同社および日東公進が中心となって国内生産を担うほか、タイやアメリカの現地法人を通じて海外市場での製造と販売活動を行っています。
■制御事業
長年培ってきた精密加工技術を活かし、各種流量計や流体計測機器、画像センサを用いた高性能検査選別装置、地盤調査用の自動貫入試験機、環境負荷を低減するマイクロバブル洗浄装置などの製造・販売を行っています。
収益源は船舶、食品、環境、分析関連などの幅広い業界の顧客からの計測・制御機器の販売代金です。運営は同社が主体となるほか、日東精工アナリテックが分析関連機器の開発・製造を担い、ドイツの現地法人が欧州での販売を行っています。
■メディカル事業
医療用ねじの製造で長年培った精密加工技術や経験を活かして、医療用生体内溶解性高純度マグネシウム材料の製品化など、医療用機器や医療用照明機器などの製造・販売を行っています。
収益源は医療機関や医療機器メーカーからの製品販売代金や受託製造にかかる対価です。運営は同社が主体となって取り組んでおり、ISO13485の認証を取得して医療機器の製造販売に関わる体制を強化しながら事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の過去5年間の業績推移を見ると、売上高は2021年12月期の405億円から2025年12月期には502億円へと順調に拡大を続けています。利益面では、原材料やエネルギー費高騰の影響を受けつつも、経常利益は概ね30億円前後の安定した水準を維持しており、着実な事業成長と底堅い収益力を確保しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 405億円 | 440億円 | 447億円 | 471億円 | 502億円 |
| 経常利益 | 35億円 | 32億円 | 28億円 | 36億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 7.3% | 6.3% | 7.6% | 6.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 13億円 | 11億円 | 15億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2年間の売上高は471億円から502億円へと増加し、売上総利益率も23.9%から24.0%へと堅調に推移しています。原材料費の高騰等の影響を受けつつも、工場の集約化や製造コストの低減といった利益率改善の取り組みが奏功し、営業利益率は7.1%から6.8%へと安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 471億円 | 502億円 |
| 売上総利益 | 112億円 | 120億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.9% | 24.0% |
| 営業利益 | 33億円 | 34億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が25億円(構成比30%)、運賃荷造費が10億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のファスナー事業は、自動車関連やデータセンター向けの需要が牽引し、増収ならびに大幅な増益を達成しました。一方、産機事業および制御事業は、設備投資の遅れや市況低迷の影響を受け減収となりました。メディカル事業は売上が大きく伸長したものの先行投資等により赤字が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ファスナー事業 | 337億円 | 371億円 |
| 産機事業 | 66億円 | 63億円 |
| 制御事業 | 67億円 | 67億円 |
| メディカル事業 | 0.2億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 471億円 | 502億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日東精工は、医療用生体内溶解性高純度マグネシウム材料の製品化準備を進め、ISO13485認証取得や新規医療機器製造受注により売上伸長を図りました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や売上債権の減少等により収入となりましたが、仕入債務の減少や法人税等の支払い等により、前期から減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社株式の取得等により、前期から大幅な支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の借入があったものの、配当金の支払い等により、前期から支出が減少しました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 29億円 |
| 投資CF | -9億円 | -27億円 |
| 財務CF | -14億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業時から大切にしてきた社是「我らの信条」を経営の根幹に据えています。この信条は企業の存在意義と価値観を明確に示すものであり、株主・顧客・従業員・社会といったすべてのステークホルダーの信頼を第一に尊重する価値観を組織文化の中心としています。モノづくりの力を最大限に活用して顧客の期待に応え、社会の課題解決に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「働きがい」と「働きやすさ」の両立を重視し、従業員一人ひとりの力が組織全体の活力となる文化を築いています。自ら学び教えあう風土の醸成に向け、継続的な学習機会の提供や、キャリアに応じた知識の習得を促進しています。また、透明性の高い意思決定と法令遵守を徹底し、柔軟性を尊重しながら現場と経営の距離を近づける連携体制を強化しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2028年度を最終目標とする中期経営計画「Mission G-final」を策定し、持続的な成長と安定したキャッシュ・フローの創出を目指しています。収益力と資本効率の改善を最優先課題とし、イノベーションを核とした稼ぐ力の加速を図ります。
・売上高 632億円
・営業利益 60億円
・ROIC 8%以上
・ROE 9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「Mission G-final」では、以下の4つの成長戦略を柱に、収益性の向上を最優先とした取り組みを推進します。
・事業および製品のポートフォリオ改革:高付加価値製品への注力と不採算領域の整理
・環境・社会のソリューション事業:脱炭素と資源循環の実現を軸とした新たな収益源の創出
・働きがいと働きやすさの両立による人財力最大化
・高効率、高収益の戦略投資:投資判断の基準厳格化とデジタル化・自動化の優先投資
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財力の最大化」を重要な戦略として位置づけ、従業員の能力を最大限に引き出すために「働きがい」「働きやすさ」「人財育成」の3つをバランスよく高める方針です。個人の目標と会社の方針を連動させた評価制度の整備や、柔軟な働き方の選択肢の提供、次世代リーダーやグローバル人財の育成を通じ、課題解決のプロ集団を育成する組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 42.3歳 | 19.8年 | 5,774,314円 |
※平均年間給与は基準外賃金および賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 78.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 101.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員割合(17.0%)、主任以上に占める女性従業員割合(11.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 部材調達価格の上昇
同社の生産活動には、原材料や部品の時宜を得た調達が不可欠です。部材の供給不足や調達価格の高騰が発生した場合、利益率や価格競争力が低下し、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、部品の共通化や複数購買化によるコストダウンを進めるとともに、市況価格の変動を適切な売価へ反映する取り組みを行っています。
■(2) 製品の品質と責任
同社は品質第一を基本とし、厳格な品質管理体制を構築していますが、万一製品やサービスに欠陥などの問題が生じた場合、損害賠償責任の発生や信頼性の低下により、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。これに対し、外部認証の取得や開発から生産に至る全段階での品質の造り込み、調達先の品質管理の徹底を図ることで安定供給体制を確立しています。
■(3) 海外事業活動と為替変動
同社のアジアを中心とする海外事業は、各国の文化や商慣習、政治情勢等の影響を受けやすく、治安悪化等が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、為替変動が外貨建取引の円貨換算額に重要な影響を与えるリスクがあります。対策として、子会社との定期的な情報共有による政情不安の早期把握に努めるとともに、為替予約等により為替変動リスクの軽減を図っています。



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