※本記事は、スター精密株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スター精密ってどんな会社?
精密加工技術を核に、工作機械と特機(小型プリンター)の2事業をグローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1950年に静岡市でスター製作所として設立され、腕時計やカメラ部品の製造を開始しました。1965年に現在のスター精密へ社名変更し、1976年にCNC自動旋盤、1979年に小型プリンターの製造販売を開始して事業基盤を確立しました。1990年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たし、近年では2024年にインド現地法人を設立するなど、グローバル展開を加速させています。
同社の連結従業員数は1,642名、単体では507名です。株主構成については、筆頭株主は信託銀行であり、第2位、第3位も信託銀行等の金融機関が占めています。特定の親会社はなく、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 18.54% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.89% |
| ザ バンク オブ ニューヨーク メロン 140042 | 5.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長執行役員は佐藤衛氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 衛 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年入社。特機事業部長、管理本部長等を経て2017年より代表取締役 取締役社長。2025年3月より現職。 |
| 笹井 康直 | 取締役 常務執行役員開発本部長 | 1983年入社。機械事業部長、事業企画部長等を経て2025年3月より現職。 |
| 佐藤 誠悟 | 取締役 常務執行役員コーポレート本部長 | 2003年入社。特機事業部副事業部長、管理本部長等を経て2025年3月より現職。 |
社外取締役は、片山幹雄(元シャープ社長)、西川勢一(元クラリオン部長)、杉本基(公認会計士)、宮田逸江(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特機事業」「工作機械事業」を展開しています。
■(1) 特機事業
mPOS(タブレット端末等を利用したPOSシステム)市場向けの小型プリンターやキャッシュドロワなどを提供しています。飲食店や小売店などが主な顧客となります。
収益は、顧客からの製品購入代金となります。運営は主にスター精密が行うほか、販売はスターマーケティングジャパンなどの子会社が担っています。
■(2) 工作機械事業
自動車、医療機器、通信機器などの部品加工に使用されるCNC自動旋盤等の工作機械を提供しています。精密部品加工を行う製造業者が主な顧客となります。
収益は、顧客からの製品購入代金となります。運営は主にスター精密が行うほか、製造の一部をスターメタルなどの子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2022年12月期に過去最高水準に達しましたが、直近2期は減少傾向にあります。利益面でも、2022年12月期をピークに減少しており、当期は減益となりました。利益率は変動が見られるものの、黒字基調を維持しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 457億円 | 644億円 | 874億円 | 782億円 | 650億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 78億円 | 142億円 | 110億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 12.1% | 16.3% | 14.0% | 6.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 57億円 | 103億円 | 82億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
減収に伴い売上総利益が減少し、営業利益率も低下しました。販売費及び一般管理費は抑制されていますが、売上減少の影響を吸収しきれず、営業利益は前期比で大幅に減少しています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 782億円 | 650億円 |
| 売上総利益 | 307億円 | 234億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.3% | 36.1% |
| 営業利益 | 104億円 | 40億円 |
| 営業利益率(%) | 13.2% | 6.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が79億円(構成比41%)を占めています。また、研究開発費は20億円(同10%)となっています。
■(3) セグメント収益
特機事業は米国市場の低迷などにより減収減益となりました。工作機械事業も欧米市場や国内市場の低迷が響き、大幅な減収減益となりました。両事業ともに厳しい事業環境の影響を受けています。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特機事業 | 161億円 | 136億円 | 20億円 | 9億円 | 6.5% |
| 工作機械事業 | 621億円 | 514億円 | 103億円 | 50億円 | 9.8% |
| 調整額 | - | - | -20億円 | -19億円 | - |
| 連結(合計) | 782億円 | 650億円 | 104億円 | 40億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動はマイナス、財務活動もマイナスとなっています。本業で得た現金を投資や株主還元、借入返済に充てる健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 71億円 | 62億円 |
| 投資CF | -20億円 | -55億円 |
| 財務CF | -51億円 | -103億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「企業は永遠に発展させるもの、従業員の生活はたゆまず向上するもの」を企業理念として掲げています。また、パーパス(存在意義)として「世界に挑戦する『偉大な中小企業』として社会の持続的発展に貢献する」ことを目指し、資本効率と労働生産性を最重要評価指標とする経営方針を定めています。
■(2) 企業文化
同社は、社員が自律的に判断し行動するための指針として、「みずから行動する」「学び続ける」「技術にこだわる」「集団としての価値を重視する」という4つの行動指針を定めています。自身の仕事に責任と誇りを持ち、技術を追求しながら、仲間と協力して高い生産性を実現する風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年12月期から2027年12月期までを対象とする第2次中期経営計画を策定しています。この計画では、以下の数値を目標として掲げています。
- 期間累計営業キャッシュ・フロー:240億円
- 2027年12月期のROE:13.0%
- 1人あたり営業利益/年(連結):730万円
■(4) 成長戦略と重点施策
工作機械事業では医療関連分野での販売を強化し、特機事業ではサプライチェーン最適化や固定費削減による高収益性への回復を目指しています。また、新規事業として医療機器市場への参入を掲げ、自社の精密加工技術や海外展開ノウハウを活用するとともに、オープンイノベーションも推進する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「世界に挑戦する偉大な中小企業」を目指し、社員一人ひとりが行動指針を実践できる環境づくりを重視しています。性別や年齢に関わらず能力を発揮できるよう、新人事制度の導入や積極的な教育投資を行うとともに、柔軟な働き方の実現を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 42.2歳 | 18.1年 | 7,933,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.6% |
| 男性育児休業取得率 | 91.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 72.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職層に占める女性労働者の割合の2030年目標(10%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動の影響
同社グループの事業は世界各地で展開されていますが、特に主力の工作機械事業は企業の設備投資需要の影響を受けやすい特性があります。景気動向が悪化した場合には、製品需要が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動リスク
同社グループは生産および販売の海外比率が高いため、為替リスクを負っています。為替予約などでリスク低減に努めていますが、予想を超えて為替相場が大きく変動した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 価格競争の激化
取り扱う多くの製品において競合他社との価格競争に直面しています。高付加価値製品の開発やコストダウンを進めていますが、価格競争がさらに激化した場合、収益性が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。



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