ノーリツ鋼機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノーリツ鋼機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ノーリツ鋼機は東京証券取引所プライム市場に上場する企業です。ペン先部材や金属部材等を扱う部品・材料事業と、DJ機器やイヤホン等を展開する音響機器関連事業をグローバルに展開しています。直近の業績は音響機器関連事業の成長により売上収益が伸長した一方、前年の株式売却益の反動により増収減益となっています。


※本記事は、ノーリツ鋼機株式会社の有価証券報告書(第71期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ノーリツ鋼機ってどんな会社?


同社は部品・材料事業と音響機器関連事業の2つのものづくり事業をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


ノーリツ鋼機は1956年設立のノーリツ光機製作所を前身とし、長年写真処理機器事業を展開して1997年に東証一部へ上場しました。2011年の持株会社体制移行後は事業ポートフォリオの転換を進め、2015年のテイボー買収、2016年の祖業譲渡を経て、近年はAlphaThetaなどの買収で現在の事業基盤を確立しています。

同社グループは連結で1,344名、単体で18名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理等を行う西本興産で、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は創業者一族とみられる西本佳代氏となっています。

氏名 持株比率
西本興産 41.88%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.66%
西本佳代 5.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性2名の計6名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役CEOは岩切隆吉氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
岩切隆吉 代表取締役CEO 2001年エフアンドエム入社。オプト入社後、同社取締役等を経て2018年ノーリツ鋼機代表取締役社長CEOに就任。現在は複数グループ会社の取締役を兼務。
横張亮輔 取締役CFO 2010年公認会計士試験合格。2012年エスネットワークス入社。2020年ノーリツ鋼機執行役員CFO等を経て、2021年より取締役CFOに就任。


社外取締役は、村瀨和絵(元バンダイ執行役員)、太田晶久(太田晶久公認会計士・税理士事務所代表)、髙田剛(和田倉門法律事務所パートナー弁護士)、町野静(弁護士法人イノベンティアパートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ものづくり(部品・材料)」および「ものづくり(音響機器関連)」事業を展開しています。

ものづくり(部品・材料)


毛細管現象を利用したペン先部材やコスメ部材、金属射出成形による精密部品などの製造・販売を行っています。ペン先部材・コスメ部材では繊維芯や焼結芯などを扱い、金属部品分野では複雑形状や三次元形状の精密部品を幅広い顧客に提供しています。

顧客への製品の引渡時や検収時に製品代金として収益を得るモデルです。事業の運営は主にテイボー、浜松メタルワークス、soliton corporationなどのグループ子会社が担い、グローバル市場に向けた安定的な供給体制を構築しています。

ものづくり(音響機器関連)


DJやCLUB向け機器、業務用音響機器、音楽制作機器、パーソナルオーディオデバイス等の設計、販売および関連サービスの提供を行っています。プロ向けからエントリーモデルまで幅広い音響機器を展開し、主力の欧米市場を中心に強固なブランド基盤を有しています。

ハードウェアの販売では顧客への製品引渡時に代金を受け取り、定額制の楽曲提供などの関連サービス事業では役務提供月に利用料を得る収益モデルです。事業の運営は主にAlphaTheta、PEAG, LLC dba JLab、JLab Japanなどのグループ子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は事業ポートフォリオの転換と積極的な買収効果により毎期継続して拡大しており、545億円から1,192億円へと大きく成長しています。税引前利益も売上拡大に伴い増加基調にあり、利益率も18%台を維持するなど、安定した高い収益力を確保しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 545億円 735億円 901億円 1,065億円 1,192億円
税引前利益 53億円 39億円 137億円 204億円 220億円
利益率(%) 9.8% 5.4% 15.2% 19.2% 18.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 51億円 1,016億円 102億円 161億円 156億円

(2) 損益計算書


売上収益の拡大に伴って売上総利益や営業利益も順調に増加しています。売上総利益率は50%前後で高水準を維持しており、営業利益率も17%台で推移していることから、ものづくり事業を中心とした付加価値の高い製品展開とブランド戦略が奏功していることが窺えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 1,065億円 1,192億円
売上総利益 527億円 597億円
売上総利益率(%) 49.4% 50.1%
営業利益 200億円 208億円
営業利益率(%) 18.8% 17.5%


販売費及び一般管理費の主な内訳として、人件費が97億円(構成比30%)と最も大きく、次いで広告宣伝費が68億円(同21%)、減価償却費及び償却費が40億円(同12%)を占めています。研究開発やブランド認知拡大のためのマーケティング費用などが主要なコストとなっています。

(3) セグメント収益


音響機器関連事業は、新製品の投入やブランド認知戦略が奏功し、欧米を中心にエントリー向け製品などの販売が拡大したため大幅な増収増益となりました。一方、部品・材料事業は、金属部品が順調に伸びたものの、ペン先部材やコスメ部材における顧客の生産調整や需要停滞の影響を受け、減収減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
ものづくり(部品・材料) 120億円 117億円 33億円 28億円 23.7%
ものづくり(音響機器関連) 946億円 1,075億円 220億円 242億円 22.5%
調整額 0億円 0億円 -10億円 -12億円 -
連結(合計) 1,065億円 1,192億円 243億円 257億円 21.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で十分なキャッシュを創出し、その資金で投資活動や借入金の返済・株主還元等を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。安定した本業の収益力と堅実な財務運営が両立している優良な状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 319億円 199億円
投資CF 11億円 -0.4億円
財務CF -122億円 -159億円


企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.0%で市場平均を上回る一方、収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様に信頼され支持される商品とサービスの提供」を企業理念に掲げています。また、存在意義であるミッションとして「社会と人々に豊かさを」を、将来の姿であるビジョンとして「No.1/Only1を創造し続ける事業グループ」を定めており、変化し続ける時代において世の中から広く求められ、社会の基盤となるような事業の創造を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、ミッションとビジョンの実現に向けた行動指針(バリュー)として、「時代のニーズを掴み、一歩先を考える」「生活を豊かにする商品/サービスを追求する」「成長性と革新性を尊重し、チャレンジを応援する」の3つを掲げています。社会や顧客のニーズを先取りし、新たな価値創造に向けた革新的なチャレンジを後押しする文化を大切にして経営を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画 FY30」において、既存事業のオーガニック成長の極大化とサプライチェーン強化を図りつつ、周辺事業や新領域へのM&Aにも注力することで中長期的な企業価値向上を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 既存事業の売上収益:CAGR(年平均成長率)10%以上
* ROE(自己資本利益率):10%以上
* 総還元性向:50%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「ものづくり」事業をコア事業と位置づけ、そのシェアと収益力の向上を基本戦略としています。既存事業においては、素材開発技術を用いた部品・材料の拡販や音響機器事業の収益拡大、研究開発による保有技術の新分野展開を進めます。同時に、デジタル技術の領域横断的な活用による非連続的成長や、新たな柱となる新領域のM&Aを実行し、成長投資と財務体質強化を両立させるリスクコントロールに注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「No.1/Only1を創造し続ける」ため、事業特性に応じた高度な専門性の向上を支援する人材育成方針を掲げています。祖業の微細加工技術の次世代への承継や、最新デジタル技術のリスキリングなど、個人の成長と組織の競争力強化を同時に推進しています。また、国籍や性別を問わない能力主義と柔軟な働き方を推奨し、多様な人材が最大限のパフォーマンスを発揮できるグローバルな職場環境の構築に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.2歳 3.4年 9,867,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 50.0%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 144.9%
男女賃金差異(正規雇用) 145.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 6.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(68.9%)、テレワーク実施率(84.9%)、1人当たり年間研修時間(21.6時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動の影響


同社グループは海外売上収益の割合が9割を超えており、世界各地に販路を拡大しています。そのため、為替相場の著しい変動が発生した場合、外貨建ての資産・負債の評価や売上・利益の円換算額に影響を及ぼし、同社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。同社は、本邦通貨建てを中心とした取引の実施や、債権債務の通貨の組み合わせによるナチュラルヘッジにより、当該リスクの低減を図っています。

(2) サプライチェーンの混乱


同社グループは、生産に使用する様々な原材料や部品等を国内外から調達しています。世界的な需給動向や輸送環境の混乱により、原材料価格の高騰や調達のリードタイムの長期化が発生した場合、生産活動に支障を来す可能性があります。同社は、代替部品の検討や製品設計の見直し、調達先の多角化を図るとともに、製品への適正な価格転嫁を進めることで、原材料調達にかかる変動リスクの低減に取り組んでいます。

(3) 企業買収に伴うリスク


同社は成長戦略の実現に向けて、積極的な企業買収(M&A)を推進しています。買収にあたっては詳細なデューディリジェンスを実施してリスクの把握に努めていますが、事業環境や競合状況の変化によって期待するシナジー効果や利益成長が実現できない場合や、多額ののれんに対する減損損失が発生した場合、同社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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