ナカニシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナカニシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するナカニシは、歯科医療用機器、歯科チェア、一般産業用切削・研削器の製造・販売を主力事業としてグローバルに展開しています。直近の連結業績では、全事業セグメントで売上を伸ばし増収を達成した一方で、減損損失の計上などにより最終赤字となり、利益面では減益となっています。


※本記事は、株式会社ナカニシの有価証券報告書(第74期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナカニシってどんな会社?


革新的な「削るテクノロジー」を強みに、歯科医療用機器などを世界135ヵ国以上で展開する医療機器メーカーです。

(1) 会社概要


1981年に有限会社中西歯科器械製作所を改組して設立され、1996年に現在の社名に変更しました。2000年に店頭登録を果たし、その後も海外への展開を積極的に進めています。近年では、2023年に米国のDCI Internationalや中国の桂林市鋭鋒医療器械有限公司を子会社化しています。

同社グループは、連結で2,204名、単体で1,107名の従業員を擁しています。大株主については、筆頭株主が資産管理会社のナカニシE&Nで、第2位は個人株主の中西千代氏、第3位は公益財団法人NSKナカニシ財団となっており、創業者一族や関連法人による安定した保有状況がうかがえます。

氏名 持株比率
ナカニシE&N 5.45%
中西千代 5.25%
公益財団法人NSKナカニシ財団 4.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は中西英一氏が務めています。社外取締役の比率は50%となっています。

氏名 役職 主な経歴
中西英一 代表取締役社長執行役員 1990年同社入社。1993年取締役副社長を経て、2000年代表取締役社長に就任。2004年NSK EURO HOLDINGS S.A.代表取締役社長。2010年より現職。
中西賢介 代表取締役副社長執行役員 1989年コパル入社。1994年同社入社、同年専務取締役。2004年NSK EURO HOLDINGS S.A.取締役。2010年より現職。
鈴木正孝 取締役専務執行役員 1973年オリンパス入社、2005年取締役などを歴任。2012年同社グローバル経営戦略室長。メディカル本部長などを経て、2022年より現職。


社外取締役は、野長瀬裕二(摂南大学地域総合研究所所長)、荒木由季子(インテグリカルチャー社外取締役)、汐見千佳(富士フィルター工業代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「歯科事業」「DCI事業」「外科事業」「機工事業」を展開しています。

歯科事業


治療用ハンドピース、技工用マイクロモーター、外科用ハンドピース及び滅菌器などの製造・販売を行っています。長年の技術蓄積を活かした精密機器により、世界中の歯科医療現場における治療の効率化と高度化に貢献しています。

製品の販売代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にナカニシおよび米国や欧州、アジアなどに展開する多数の海外販売子会社が共同で行っており、グローバルな販売網とアフターサービス体制を構築しています。

DCI事業


歯科チェアや歯科医院用各種部品等の製造・販売を行っています。競争力のある製品ラインアップを拡充し、DSO(歯科医療支援組織)を含む販売チャネルの多様化を通じた市場プレゼンスの向上に取り組んでいます。

歯科チェアや各種部品の販売代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主に米国に拠点を置く子会社のDCI International, LLCが担っており、ナカニシの歯科用ハンドピースとのバンドル販売の相乗効果を追求しています。

外科事業


脳神経外科をはじめとする外科領域で必需品となっている骨切削機器等の製造・販売を行っています。コアテクノロジーである超高速回転技術を用いて、患者の負担を軽減する低侵襲手術への対応や幅広い診療科のニーズに応えています。

骨切削機器などの販売代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にナカニシおよび海外の販売子会社等が行っており、国内および北米市場を中心とした販売体制の強化を進めています。

機工事業


手作業用グラインダー及び機械装着用スピンドル等の製造・販売を行っています。小型、精密化が進む電子・医療機器等の部品加工において、最適な加工条件を提供できる高精度・高回転の製品を開発・展開しています。

グラインダーなどの製品販売代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にナカニシおよびドイツに拠点を置くNakanishi Jaeger GmbH等が行っており、精密・微細加工分野に特化した高付加価値製品を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近では812億円に達しています。一方で経常利益は170億円前後で横ばいに推移しており、投資や各種費用の増加等の影響から利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 449億円 487億円 597億円 770億円 812億円
経常利益 140億円 176億円 172億円 173億円 169億円
利益率(%) 31.1% 36.3% 28.8% 22.4% 20.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 72億円 118億円 121億円 62億円 110億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、営業利益はわずかに減少しており、売上総利益率および営業利益率ともに前年を下回る結果となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 770億円 812億円
売上総利益 444億円 461億円
売上総利益率(%) 57.7% 56.7%
営業利益 146億円 141億円
営業利益率(%) 18.9% 17.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が89億円(構成比28%)、広告宣伝費が58億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となっており、特に外科事業が前年比で大きく伸びています。主力である歯科事業とDCI事業も堅調に推移し、全体の売上増を力強く牽引しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
歯科事業 465億円 482億円
DCI事業 195億円 205億円
外科事業 43億円 55億円
機工事業 67億円 69億円
連結(合計) 770億円 812億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローはプラス、投資キャッシュ・フローはマイナス、財務キャッシュ・フローはプラスの「積極型」です。営業活動で生み出した資金に加えて外部からの調達も行い、成長に向けた積極的な投資を継続している状況がうかがえます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 153億円 166億円
投資CF -79億円 -87億円
財務CF 6億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「顧客のニーズにより新製品を開発し、堅牢、優美にして廉価な製品づくりで社会の信頼に応える」を経営の基本方針に据えています。長期ビジョンでは、革新的「削るテクノロジー」による新製品を次々と生み出し、全世界の人々の健康寿命の延伸に大きく貢献できるONLY ONEの医療機器メーカーになることを目指しています。

(2) 企業文化


価値観「Our Core」において、「革新的『削るテクノロジー』による『美しい進歩』の創造」をミッションに掲げています。また、流儀である「エキサイティング・クオリティ・オープン・オネスト」を貫き、ワクワク感や充実感を分かち合えるダイナミックなチーム形成を重視し、「自分の価値を高めよう」を人財育成の基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年を見据えた中期経営計画「NV2030」において、持続的な成長を実現するための数値目標を掲げています。資本効率の観点からROE12%を目標水準とし、株主還元については総還元性向70%を基本方針としています。

・2027年目標:売上高880億円、EBITDA220億円~250億円
・2030年目標:売上高1,000億円~1,200億円、EBITDA250億円~330億円

(4) 成長戦略と重点施策


事業展開のキーワードを「超高齢化」とし、「健康寿命の延伸」や労働人口減少を補う「工場の自動化」に対するソリューションの提供に注力しています。具体的には、歯科事業での主力製品のブランド力強化やDSOビジネスの拡大、DCI事業における製品ラインアップ拡充、外科事業でのM&A等を視野に入れた事業拡大などを重点施策として推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「思いと努力の共有」と「個性の結集」でブレイクスルーするダイナミックなチームを通じて、誰もが活躍できる環境づくりを推進しています。多様性を尊重し、性別や年齢に関わらない公平な人財の登用や活用を行うとともに、働きやすい職場環境の改善や「歯・体・心」の健康に着目した健康経営にも積極的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 41.0歳 11.8年 5682289円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.7%
男性育児休業取得率 87.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 91.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.8%)、歯科検診受診率(98.6%)、高ストレス者割合(14.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外売上高比率の高さに伴う為替変動


同社グループはグローバルに事業を展開しており、海外売上高の比率が高い傾向にあります。そのため、外貨建取引や外貨建資産等を連結財務諸表作成時に円換算する際の為替レートの変動が、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) M&A・企業買収に伴う事業リスク


持続的な成長を実現するため、既存事業とのシナジー効果が期待できる企業へのM&Aを実施しています。事前の詳細な調査やリスク検討を十分に行った上で決定していますが、事業環境の悪化等により想定通りの収益が得られない場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 知的財産および医療事故関連の訴訟


自社の知的財産権が侵害されるリスクや、第三者から特許侵害等で訴訟を提起されるリスクが存在します。また、医療機器の不具合などにより製造物責任等の賠償請求を受ける可能性があり、将来的な法令・規制や訴訟の動向次第では業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。

(4) サイバー攻撃等による情報セキュリティ


情報セキュリティ基本方針を策定し、組織体制の構築や継続的な従業員教育などを通じてリスク対策に努めています。しかし、これらの取り組みにもかかわらず、サイバー攻撃やウイルス感染等により業務システムの停止や情報漏洩が発生した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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