※本記事は、三菱鉛筆株式会社の有価証券報告書(第151期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 三菱鉛筆ってどんな会社?
同社は1887年に創業し、筆記具及び筆記具周辺商品の製造・販売をグローバルに展開する老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1887年に眞崎鉛筆製造所として創業し、1952年に三菱鉛筆へ商号変更しました。1962年に東京証券取引所へ上場しています。近年はグローバル展開を加速させており、2024年にドイツの筆記具メーカーを買収したほか、2025年にはインドに子会社を設立し、生産体制の強化を図っています。
同社グループは連結で2,871名、単体で570名の従業員を擁しています。大株主の状況として、筆頭株主は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は取引金融機関である横浜銀行、第3位は三菱鉛筆取引先持株会となっており、安定的な資本関係を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.40% |
| 横浜銀行 | 4.99% |
| 三菱鉛筆取引先持株会 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は数原滋彦氏が務めており、取締役9名のうち4名が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 数原英一郎 | 代表取締役会長 | 1974年同社入社。取締役、常務取締役、取締役副社長を経て1987年に代表取締役社長へ就任。2019年代表取締役会長兼社長を務め、2020年より現職。 |
| 数原滋彦 | 代表取締役社長新規事業担当兼内部監査担当兼経営企画担当 | 2005年同社入社。群馬工場長、営業企画部長、常務取締役等を経て2018年に取締役副社長へ就任。2020年に代表取締役社長へ就任し、2025年より現職。 |
| 切田和久 | 取締役専務執行役員技術統括兼全社品質担当兼サステナビリティ担当 | 1981年同社入社。商品開発部長、常務取締役等を経て2020年に技術統括兼全社品質担当へ就任。2024年より現職。 |
| 鈴木孝雄 | 取締役常務執行役員人事担当兼システム担当兼法務担当 | 1985年同社入社。社長室長、営業企画部長、経営企画室長等を経て2021年に人事担当兼システム担当へ就任。2024年より現職。 |
| 山村伸夫 | 取締役常務執行役員国内営業担当兼商品開発担当 | 1985年同社入社。ベトナム法人代表取締役、上席執行役員等を経て2022年に常務執行役員へ就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、青山藤詞郎氏(一般財団法人慶応工学会理事長)、斉藤麻子氏(BLOOM代表取締役)、嶋本正氏(PwC Japan有限責任監査法人監視委員会独立非業務執行役員)、本坊吉博氏(東ソー社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「筆記具及び筆記具周辺商品事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 筆記具及び筆記具周辺商品事業
筆記具や、筆記具事業で培った技術を応用した化粧品等の筆記具周辺商品の製造・販売を行っています。国内外の市場向けにボールペン、シャープペンシルなどの高付加価値な商品を提供しているほか、海外ブランドの製品も取り扱っています。
顧客からの製品販売代金を主な収益源としています。製造は同社のほか、山形三菱鉛筆精工やユニポリマー、海外の製造子会社などが担い、販売は三菱鉛筆東京販売をはじめとする国内・海外販売会社が担当しています。また、C. Josef Lamy GmbHが海外ブランドの製造販売を行っています。
■(2) その他の事業
筆記具以外の多角化事業として、食品向けや衛生用品向けの粘着テープ事業、および手工芸品事業を展開しています。
各製品の顧客からの販売代金を収益源としています。粘着テープ事業はユニ工業が運営し、手工芸品事業はホビーラホビーレが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は619億円から898億円へと右肩上がりで拡大を続けています。経常利益についても前期までは増益傾向が続いていましたが、当期は原材料価格やコスト上昇の影響等により100億円へと減少しました。利益率は11%から17%の安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 619億円 | 690億円 | 748億円 | 888億円 | 898億円 |
| 経常利益 | 83億円 | 101億円 | 129億円 | 130億円 | 100億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 14.6% | 17.2% | 14.6% | 11.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 51億円 | 52億円 | 67億円 | 141億円 | 81億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は888億円から898億円へと微増した一方で、売上総利益は468億円から445億円へと減少しています。これに伴い売上総利益率も52.7%から49.5%へ低下し、営業利益も122億円から97億円へと減益となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 888億円 | 898億円 |
| 売上総利益 | 468億円 | 445億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.7% | 49.5% |
| 営業利益 | 122億円 | 97億円 |
| 営業利益率(%) | 13.7% | 10.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が104億円(構成比30%)、販売促進費が52億円(同15%)、研究開発費が42億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
筆記具及び筆記具周辺商品事業は、国内外での新製品販売や化粧品・産業資材の好調により増収となった一方、原材料価格等のコスト上昇により減益となりました。その他の事業は、粘着テープの販売が好調に推移し、増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 筆記具及び筆記具周辺商品事業 | 865億円 | 874億円 | 120億円 | 95億円 | 10.9% |
| その他の事業 | 23億円 | 25億円 | 2億円 | 2億円 | 7.2% |
| 調整額 | - | - | 0.3億円 | 0.4億円 | - |
| 連結(合計) | 888億円 | 898億円 | 122億円 | 97億円 | 10.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
三菱鉛筆グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、新感覚水性ボールペン「uniball ZENTO」シリーズや、木製グリップ軸仕様のシャープペン「KURUTOGA Wood」など、革新的な筆記具の開発・販売を通じて生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、これらの新製品開発や品質向上、安全性確保、環境問題への対応といった研究開発活動に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関等からの借入等により、事業運営資金の調達や設備投資の資金源として活用されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 65億円 | 24億円 |
| 投資CF | -279億円 | -79億円 |
| 財務CF | 41億円 | -19億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「最高の品質こそ 最大のサービス」を社是に掲げ、「生まれながらにすべての人がユニークである」という信念に基づき事業を展開しています。単なる筆記具メーカーから、世界中の人々の個性と創造性を解き放ち、表現する喜びをお届けする「世界一の表現革新カンパニー」となることを長期ビジョンとしています。
■(2) 企業文化
「違いが、美しい。」をコーポレートブランドコンセプトとして掲げています。「書く、描く」という行為を通じて、人それぞれのユニークを引き出し、性別、文化、障がいなど、人が生まれ持ったさまざまな違いを可能性に変えることを重視し、豊かな表現や新しいつながりを生み出す文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年から2027年までの中期経営計画において、「uni Advance」を基本方針とした企業変容とイノベーション創出の実現を掲げています。最終年度の2027年における財務目標として、以下の数値を設定しています。
* 売上高:1,030億円
* 営業利益:155億円
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンの実現に向け、筆記具事業の成長継続と多角化を推進し、高付加価値商品の提供や新興国市場を中心とするエリア拡大を図ります。また、非筆記具事業を新たな成長の柱として育成し、異業種共創を通じたイノベーション創出に注力するほか、ステークホルダーと連携した経営基盤の強化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「違いが、美しい。」というコンセプトのもと、従業員一人ひとりの能力やスキルを最大限に発揮し、自律的な成長を促す人材育成方針を掲げています。階層別研修や選択型コアスキル研修などを通じて自律型人材を育成するとともに、年齢や性別、国籍にとらわれないダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.9歳 | 17.7年 | 8,284,256円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.4% |
| 男性育児休業取得率 | 81.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 61.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 39.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職における外国人の割合(0.9%)、管理職における中途採用者の割合(12.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動によるリスク
同社は海外市場への売上高比率が高く、外貨建ての決済を多く行っています。また、製品に使用する輸入部材も外貨で決済しているため、予測を超える為替の変動が生じた場合、同社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) カントリーリスク
同社グループは米国、アジア、欧州など世界各国で販売・製造事業を展開しています。これらの国々において予測できない政治的・経済的変動、租税制度の改定、社会混乱等が発生した場合、事業活動に支障をきたし業績に悪影響を与えるおそれがあります。
■(3) 市場ニーズの変化と新製品開発
筆記具市場において、デジタルシフトによる需要構造の大きな変化や消費者の価値観の多様化が進んでいます。これらの市場環境の変化に迅速に対応し、ニーズに合った魅力的な高付加価値商品をタイムリーに提供できない場合、将来の成長性や収益性に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 原材料調達とコスト高騰
同社は製品の主要な原材料として、原油価格の影響を受ける樹脂材や、原産国の資源・環境政策の影響を受ける金属材を使用しています。予期せぬ事態でこれらを安定的に調達できなくなった場合や、原油価格や物流費の高騰が長期化した場合、利益水準が低下するリスクがあります。



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