イトーキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イトーキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

イトーキは東京証券取引所プライム市場に上場しています。ワークプレイス事業と設備機器・パブリック事業を展開し、オフィス家具や物流・研究施設向け設備を提供しています。業績トレンドとしては、直近の第76期において4期連続の増収、6期連続の増益を達成し、過去最高の売上高と利益を更新して好調に推移しています。


※本記事は、株式会社イトーキの有価証券報告書(第76期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. イトーキってどんな会社?


オフィス家具をはじめとするワークプレイス事業や、物流・研究施設向けの設備機器・パブリック事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1890年に伊藤喜商店として大阪で創業し、1908年に事務機器の生産を開始しました。1950年に伊藤喜工作所として分離独立後、1961年に株式を上場しました。2005年に旧イトーキと合併して現在の体制となり、近年は海外展開や設備機器分野のM&Aを進めています。

従業員数は連結で4,164名、単体で2,491名です。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)、第3位は生命保険事業を展開する日本生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.95%
日本カストディ銀行(信託口) 8.87%
日本生命保険相互会社 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は湊宏司氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山田匡通 代表取締役会長 1964年三菱銀行入行。同行専務や三菱証券代表取締役会長などを経て2005年同社取締役に就任。2007年より現職。
湊宏司 代表取締役社長 1994年日本電信電話入社。日本オラクルの最高執行責任者などを経て、2021年に同社顧問として入社。2022年より現職。
品田潤生 取締役常務執行役員 1985年旧イトーキ入社。同社法人営業統括部長やエンジニアリング統括部長などを歴任し、2026年1月より現職。
山村善仁 取締役常務執行役員(人事総務本部長) 1990年旧イトーキ入社。同社営業本部関西支社長や人事本部長などを歴任し、2026年1月より現職。


社外取締役は、似内志朗(ファシリティデザインラボ代表)、坂東眞理子(昭和女子大学総長)、川嵜靖之(SMBC日興証券特別顧問)、田中俊恵(元警視庁副総監)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ワークプレイス事業」「設備機器・パブリック事業」および「その他」事業を展開しています。

ワークプレイス事業


オフィス家具(デスク、チェア等)の製造販売をはじめ、内装工事、オフィス空間デザイン、移転のプロジェクトマネジメントなどのサービスを提供しています。また、在宅ワークや家庭学習のための家庭用家具も展開しており、企業の働き方戦略から個人の学習環境づくりまで幅広い顧客を対象としています。

収益源は、製品の販売代金やオフィス空間デザイン、内装工事などのサービス提供による対価です。運営は同社を中心に、伊藤喜オールスチールや富士リビング工業などの子会社が製造や物流、販売サポートを分担して行っています。

設備機器・パブリック事業


物流施設向けの立体自動倉庫システムなどの物流設備や、研究施設向けの設備機器、粉体機械設備などを製造販売しています。また、美術館や博物館などの公共施設に向けた魅力ある環境・空間構築をサポートする製品やサービスも提供しており、社会インフラや公共インフラを支える顧客が主な対象です。

収益源は、物流設備や研究施設機器などの大型設備の販売、据付工事、および保守サービスによる対価です。運営は同社のほか、ダルトンが研究設備機器等の生産・販売を、イトーキマーケットスペースが商業設備機器の販売を担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、ソフトウェア製品の開発および販売などのITシステム関連事業を展開しています。

収益源はソフトウェア製品の販売やシステム開発に伴う対価であり、主に子会社である新日本システックが事業の運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な成長を続けており、順調に拡大しています。利益面でも増益基調が定着しており、経常利益および当期利益ともに大幅な伸長を見せています。利益率も年々改善しており、収益力の向上が顕著に表れています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,159億円 1,233億円 1,330億円 1,385億円 1,537億円
経常利益 24億円 42億円 86億円 100億円 137億円
利益率(%) 2.1% 3.4% 6.4% 7.2% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 53億円 59億円 72億円 94億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益と営業利益がともに大きく伸びています。高付加価値提案の強化などにより売上総利益率が上昇し、各種の戦略的投資を実行しつつも営業利益率の確実な改善を実現しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,385億円 1,537億円
売上総利益 552億円 648億円
売上総利益率(%) 39.9% 42.2%
営業利益 101億円 137億円
営業利益率(%) 7.3% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が190億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が36億円(同7%)を占めています。売上原価合計は889億円(売上高構成比58%)となっています。

(3) セグメント収益


ワークプレイス事業は、ハイブリッドな新しい働き方に合わせたリニューアル案件を中心に好調に推移し、利益率の改善も伴い増収増益となりました。設備機器・パブリック事業は、物流施設向け設備の着工遅れなどの影響があったものの、研究施設向け設備が好調で増収増益を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
ワークプレイス事業 1,023億円 1,115億円 80億円 110億円 9.9%
設備機器・パブリック事業 346億円 406億円 19億円 25億円 6.1%
その他 16億円 16億円 2億円 2億円 12.2%
調整額 -億円 -億円 2億円 2億円 -
連結(合計) 1,385億円 1,537億円 101億円 137億円 8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.4%で市場平均を下回っています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF -10億円 89億円
投資CF -71億円 -38億円
財務CF 59億円 -59億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、ミッションステートメントとして「明日の『働く』を、デザインする。」を掲げています。オフィスをはじめとする様々な環境における課題解決に貢献し、新たな価値を生み出すことを目指しています。さらに、ビジョンステートメントである「人も活き活き、地球も生き生き」の実現に向けて、人々の「働く」を支援することで、個人の幸せ、企業の幸せ、社会の幸せへの貢献を追求しています。

(2) 企業文化


同社は、顧客満足度(CS)と従業員満足度(ES)の両立を目指した事業活動に注力し、企業としての社会的責任を最大限果たすことが存在意義であると認識しています。企業理念に掲げる「正しい商道」を実践すべく、全役職員が高い倫理観をもってコンプライアンスを徹底するための「イトーキグループ行動規範」を制定し、コンプライアンス重視の経営を推進しています。

(3) 経営計画・目標


2024年から2026年までの3ヶ年の中期経営計画「RISE TO GROWTH 2026」において、「持続的な成長力を高める」ことをテーマに掲げています。事業成長により得た利益は中長期視点での戦略投資として活用するとともに、ステークホルダーへ計画的に還元する方針です。

・売上高:1,675億円(2026年度目標)
・営業利益:160億円
・営業利益率:9.6%
・ROE:18.5%

(4) 成長戦略と重点施策


重点戦略「7Flags」およびESG戦略を推進しています。新しい働き方を実装するオフィス空間への付加価値提案の強化や、家具のIoT化と空間センシングによるサービス開発を進めます。また、物流施設や研究施設領域を第2の柱に育成し、グループの生産供給体制の再編とITインフラの刷新による高収益化を図ります。さらに、人事制度改革を軸にした人的資本への投資や、グループ全体のガバナンス向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略の目標達成には、連動した人材戦略の遂行が不可欠であると考え、人材を「資本・投資の対象」と捉えています。事業戦略を見据えた人員計画の策定や、キャリアに応じた成長を支援する教育体系、働きがい向上を踏まえた人事制度の整備を進めています。また、DE&I(多様性・公平性・包摂性)を推進し、一人ひとりが特性を活かして最大限のパフォーマンスを発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.5歳 13.4年 7,573,436円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.3%
男性育児休業取得率 76.1%
男女賃金差異(全労働者) 77.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 92.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(81.9%)、有給休暇取得率(60.3%)、従業員1名あたりの年間教育訓練費(75,760円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 独占禁止法違反に関わるリスク


同社グループは公正かつ自由な競争を維持し法令遵守に努めていますが、過去に物流業務の委託に関して公正取引委員会から行政指導を受けた経緯があります。全社を挙げて取引適正化に向けた取り組みを推進していますが、万が一違反する事象が発生した場合には、信用失墜や対応費用の発生、事業制限等により業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 重要品質問題の発生に関わるリスク


厳しい品質基準をもとに製品を製造していますが、予期せぬ事情によりリコールが発生する可能性や、製品・サービスにおいて不測の事象やクレームが発生するリスクがあります。品質保証領域への経営資源の配分や検査の強化等により問題の予防に努めていますが、重大な品質問題が発生した場合、ブランドに対する信頼性の低下や多額の費用負担が生じる可能性があります。

(3) 人権問題の発生に関わるリスク


「イトーキグループ行動規範」を制定し、従業員の人権を尊重するとともに、多様性を重視し能力を最大限に発揮できる制度と環境づくりを行っています。ハラスメントや差別的行為等の防止に向けて充実した内部管理体制の確立に努めていますが、これらの活動が適切に推進できず問題が顕在化した場合は、企業の信用低下を招き、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報漏洩、サイバー攻撃の発生に関わるリスク


顧客や取引先、およびグループ内の個人情報を保有しており、厳重な管理や規程類の整備、従業員教育などのセキュリティ対策を実施しています。しかし、想定を超えた技術によるサイバー攻撃などの予期せぬ事態により情報が流出した場合、ブランド価値の低下を招くとともに、損害賠償などの多額の費用負担が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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