ピジョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピジョン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ピジョンは東京証券取引所プライム市場に上場し、哺乳器をはじめとする育児・女性向け用品や子育て支援、ヘルスケア・介護用品の製造・販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績は、中国事業の堅調な推移などにより売上高が増加し、増収増益を達成しました。新しい事業領域の拡大にも注力しています。


※本記事は、ピジョン株式会社 の有価証券報告書(第69期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ピジョンってどんな会社?


同社は哺乳器などの育児用品を中心に、子育て支援や介護用品をグローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1957年神奈川県にて哺乳器本舗として設立され、1966年にピジョンへ商号変更しました。1995年の上場を経て、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。海外展開も積極的に進め、シンガポール、タイ、中国、米国などで子会社を設立し、グローバルに事業を拡大しています。

従業員数は連結3,042名、単体338名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)と、上位には信託業務や資産管理を行う金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.62%
日本カストディ銀行(信託口) 7.57%
JAPAN ACTIVATION CAPITAL I L.P. 3.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.4%です。代表取締役社長は矢野亮氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
矢野 亮 代表取締役社長 1997年同社入社。中国事業の現地法人社長や事業本部長を歴任。2023年取締役上席執行役員を経て、2025年3月より現職。
板倉 正 取締役専務執行役員製品&サプライチェーン戦略統括責任者(CPO/CSCO) 1987年同社入社。人事総務、開発、品質管理などの責任者を歴任し、2020年取締役専務執行役員。2025年12月より現職。
KevinVyse-Peacock 取締役上席執行役員ランシノ事業本部長 1989年CRODA UK LTD入社。2001年LANSINOH LABORATORIES,INC.のUK branch設立などを経て、2018年1月より現職。


社外取締役は、鳩山玲人(鳩山総合研究所代表取締役)、林千晶(Q0代表取締役社長)、山口絵理子(マザーハウス代表取締役社長)、三和裕美子(明治大学商学部専任教授)、永岡英則(CARTA HOLDINGS取締役CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本事業」「中国事業」「シンガポール事業」「ランシノ事業」を展開しています。

日本事業


国内で哺乳器やスキンケアなどの育児・女性向け用品、保育施設運営などの子育て支援、ハビナース等の介護用品を販売しています。一般消費者や介護施設が主な顧客です。

卸売業者等を通じた商品販売による収益が主軸です。運営は同社のほか、製造を担うピジョンホームプロダクツやピジョンマニュファクチャリング兵庫、保育事業を行うピジョンハーツが行っています。

中国事業


中国本土をはじめ、韓国、北米市場向けにピジョンブランドの育児用品や女性向け用品の製造・販売を展開しています。

現地の卸売やECチャネルを通じた商品販売から収益を得ています。中国国内での製造や販売はPIGEON MANUFACTURING (SHANGHAI) CO.,LTD.などの現地子会社が行っています。

シンガポール事業


ASEAN地域やインド、オーストラリアなどで、広口タイプ哺乳器やスキンケアなどの育児・女性向け用品の製造・販売を行っています。

各国の小売店や代理店を通じた商品販売によって収益を上げています。事業運営はPIGEON SINGAPORE PTE.LTD.やインド、インドネシアの現地子会社が中心となって行っています。

ランシノ事業


北米や欧州を中心に、乳首ケアクリームやさく乳器、哺乳器といった妊娠・授乳期の女性向け用品および育児用品の製造・販売を行っています。

ランシノブランドの商品の販売代金が主な収益源です。米国子会社のLANSINOH LABORATORIES,INC.やトルコ、欧州各国のグループ会社が製造・販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、2023年12月期に一時的な利益の減少が見られたものの、売上高は概ね増加傾向にあります。特に直近2期は1,000億円を超える売上を記録し、経常利益も130億円台まで回復しており、安定した収益基盤を維持しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 931億円 949億円 945億円 1,042億円 1,092億円
経常利益 146億円 135億円 115億円 133億円 137億円
利益率(%) 15.7% 14.2% 12.2% 12.8% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 94億円 93億円 79億円 73億円 84億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が堅調に推移しています。価格改定や高付加価値商品の販売拡大により、売上総利益率は50%台へと改善し、営業利益率も向上する結果となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 1,042億円 1,092億円
売上総利益 514億円 548億円
売上総利益率(%) 49.3% 50.2%
営業利益 121億円 132億円
営業利益率(%) 11.6% 12.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が93億円(構成比22%)、発送費が62億円(同15%)、販売促進費が40億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


すべてのセグメントで前期比プラスの売上成長を達成しています。特に中国事業はSNSやライブコマースでの販売促進が奏功して売上が大きく伸び、日本事業やランシノ事業も堅調に推移して全体的な増収に貢献しました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
日本事業 349億円 364億円
中国事業 382億円 411億円
シンガポール事業 97億円 98億円
ランシノ事業 214億円 219億円
連結(合計) 1,042億円 1,092億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、北米市場における哺乳器カテゴリ周辺商品の強化や、ランシノブランドの製品ラインアップ拡充により、妊娠中および産後の女性を包括的にサポートすることを目指しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加があったものの、棚卸資産の増加や法人税等の支払いが影響し、前年同期を下回りました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出が増加したため、前年同期よりも支出額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払いが影響し、前年同期と同程度の支出となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 143億円 131億円
投資CF -11億円 -31億円
財務CF -106億円 -108億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念「愛」、社是「愛を生むは愛のみ」のもと、「Pigeon Way」の存在意義として「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」を掲げています。社会になくてはならない存在として、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「Pigeon Way」に基づき、すべての活動における心と行動の拠り所として4つのSpirit(Integrity 誠実、Dedication あくなき追究、Synergy 未来をつくるシナジー、Enjoy ワクワクを力に)を重視しています。多様な人材が自分らしく挑戦し成長できる組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第9次中期経営計画(2026年12月期~2028年12月期)では、「収益性を伴う持続的な成長」を新たな目標に掲げています。

* 売上高:1,250億円
* 営業利益:200億円
* ROE:14.9%
* EPS:110.02円

(4) 成長戦略と重点施策


哺乳器を中心とした基幹商品群を成長ドライバーとし、エイジアップ商品による顧客生涯価値(LTV)の拡大を図ります。地域戦略では、米州・欧州市場やシンガポール事業での成長を加速させる一方、日本と中国では安定的な成長により収益基盤を確保し、ESGへの着実な取り組みも推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


長期人材ビジョンとして「自律したプロフェッショナル集団」を掲げています。実力主義の人事制度や人材育成の仕組みを整え、多様な社員がお互いに違いを尊重し活かすDE&Iを推進することで、イノベーション創出を目指します。また、ワークライフバランスを重視した社内環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.8歳 15.0年 8,274,323円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 53.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(83%)、月残業時間平均(6.7時間)、障がい者雇用率(3.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向や制度変化への対応


同社グループはグローバルに事業を展開しているため、各国の法律改正や規制強化、予測を超える為替の変動、関税などの国際貿易政策の変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 保育事業における安全管理


働きながら子育てをする家族向けに保育や託児事業を展開しており、安全には万全を期していますが、予期しない事故やケガ等が発生した場合、事業運営や業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 製品の品質と安全性確保


生活者向け商品のメーカーとして品質や安全性は極めて重要です。設計段階から量産に至るまで万全を期していますが、万が一製品に欠陥が生じ回収等に至った場合、ブランド価値の低下や業績悪化につながる恐れがあります。

(4) 情報システムのセキュリティ


販売促進キャンペーンや顧客情報など多様な重要情報を保有しています。厳重なセキュリティ対策を実施していますが、不正アクセスや災害等により情報システムの停止や情報漏洩が発生した場合、営業活動や業績に支障をきたすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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