記事タイトル:「不二精機転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、不二精機の有価証券報告書(第61期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 不二精機ってどんな会社?
不二精機は、プラスチック加工用の射出成形用精密金型と精密成形品の製造・販売を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1965年に大阪市で設立され、精密プラスチック金型の製造を開始しました。その後、1989年に成形システムの販売を開始し、2004年にジャスダック証券取引所に上場しました。近年は、2019年に秋元精機工業を子会社化し、中国や東南アジアへの展開も積極的に進め、生産体制を強化しています。
同社グループは、連結で792名、単体で108名の従業員を擁しています。筆頭株主は一般社団法人千尋会で、第2位はフィリップ証券が常任代理人を務める外国法人、第3位は三菱UFJ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般社団法人千尋会 | 11.80% |
| PHILLIP SECURITIES (HONG KONG) LIMITED LIM WAH SAI | 4.77% |
| 三菱UFJ銀行 | 2.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は伊井剛氏が務めており、社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 伊井剛 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年同社入社。管理本部長、海外事業担当などを経て、2008年3月より代表取締役社長。海外子会社の董事なども兼務。 |
| 藤本由数 | 常務取締役成形事業部兼金型事業部兼ユニット事業部兼管理本部担当 | 1994年同社入社。東南アジア事業統括部長などを経て、2021年4月より常務取締役。秋元精機工業代表取締役などを兼務。 |
| 塩井寿史 | 取締役金型事業部長 | 1987年同社入社。中国事業統括、金型事業部製造部マネージャなどを経て、2019年7月より金型事業部長。2021年3月より現職。 |
| 北林勝博 | 取締役成形事業部長 | 1987年同社入社。中国事業統括、インドネシア子会社社長などを経て、2021年4月より成形事業部長。2022年3月より現職。 |
社外取締役は、高橋秀昭(元三井銀行(現三井住友銀行)入行)です。
2. 事業内容
同社グループは、「射出成形用精密金型及び成形システム事業」および「精密成形品その他事業」を展開しています。
■射出成形用精密金型及び成形システム事業
プラスチックを加工するための各種射出成形用精密金型および、金型と周辺機器を組み合わせた成形システムの製造・販売を行っています。主に医療機器用、食品容器用、情報関連用などの分野に向けて、高生産性の金型技術を提供しています。
顧客の設備投資計画に基づく受注生産により、販売対価として収益を得ています。運営は主に同社および中国の常州不二精机有限公司が製造・販売を担い、タイのTHAI FUJI SEIKIやインドネシアのPT.FUJI SEIKI INDONESIAなどが販売を行っています。
■精密成形品その他事業
精密成形品その他の製造・販売を手掛けています。自動車部品や二輪車部品を中心に、電気自動車(EV)化に対応したパワーユニットに左右されない精密部品の開発・量産化を進めています。
製品の引き渡し・出荷時に顧客から対価を受け取ることで収益を上げています。運営は同社および国内子会社の秋元精機工業のほか、タイ、中国(上海)、インドネシアの海外製造子会社が製造・販売を担い、東南アジア市場を中心に展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は75億円から87億円へと順調に拡大しています。経常利益は3億円から6億円の範囲で推移し、直近では回復傾向を見せています。一方で当期利益は一時マイナスに落ち込みましたが、当期には黒字に転換しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 78億円 | 83億円 | 83億円 | 87億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 5億円 | 4億円 | 3億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 6.4% | 4.8% | 4.0% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 0.6億円 | -0.9億円 | -0.9億円 | 0.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の売上高は83億円から87億円へ増加し、それに伴い売上総利益も16億円から18億円へと順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率も改善を見せており、コストコントロールの成果が表れています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 83億円 | 87億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 18億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.4% | 20.7% |
| 営業利益 | 4億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が3.7億円(構成比28%)、賞与引当金繰入額が0.3億円(同2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の精密成形品その他事業は、自動車関連部品の安定受注により売上規模を維持しています。一方、射出成形用精密金型及び成形システム事業は、医療分野向けなど高付加価値製品の販売が好調に推移し、全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 射出成形用精密金型及び成形システム事業 | 26億円 | 31億円 |
| 精密成形品その他事業 | 57億円 | 56億円 |
| 連結(合計) | 83億円 | 87億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
不二精機グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、精密金型および成形システム事業、精密成形品その他事業の堅調な販売実績に支えられております。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資などを自己資金および金融機関からの借入金により調達する計画です。財務活動によるキャッシュ・フローは、金融機関からの借入金により、設備投資や長期運転資金を調達しております。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 9億円 |
| 投資CF | -6億円 | -6億円 |
| 財務CF | -0.2億円 | 1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、中期スローガンとして「安心をお届けする不二精機グループ」を掲げています。精密金型のコア技術をもとに高生産性・高付加価値製品の提供に努め、ステークホルダーの信頼と期待に応える透明性の高い事業活動を展開することを使命としています。
■(2) 企業文化
「『考動』で価値を創る」をグループ全社員の行動理念とし、「お客様の利益の最大化」を目標に据えています。新たな価値創造に加え、全拠点での「5S活動(改善活動)」を基本とした着実な品質改善活動を徹底し、グループ一体となった顧客満足の追求を図る文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、高付加価値製品の拡大および地道な生産性の改善を進めることで、中長期的な収益力の向上を目指しています。
・連結営業利益率10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
日本市場では医療用品・食品容器分野の開拓を進め、アジア市場では自動車部品分野の拡充により稼働率の向上を目指します。技術革新による医療関連製品への集中や生産性向上によるコスト競争力強化、電気自動車化に対応したパワーユニットに依存しない精密部品の受注活動を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材は最も重要な経営資源」であると位置づけ、多様性の確保と育成に注力しています。各事業における不足人材層を明確化した採用計画の実行に加え、安全衛生委員会を通じた労働環境の改善やe-ラーニングを活用したリスク管理教育を推進し、持続可能な成長基盤の確保を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 39.6歳 | 13.8年 | 5,573,327円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には一部の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 政治・経済情勢の影響
同社グループは国内外の各地で生産・販売を行っているため、主要市場における政治的混乱や深刻な景気後退、米国の関税政策の変更などが発生した場合、生産や販売の縮小を招き、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の取引先への依存と業績悪化
精密成形品の一部製品は主として特定の取引先に販売されています。そのため、当該取引先の経営成績の悪化や事業撤退、大規模な在庫・生産調整、大幅な値下げ要求などが生じた場合、同社の売上減少につながるリスクがあります。
■(3) 製品の欠陥等による信用失墜
厳格な品質管理規程に基づき生産を行っていますが、全ての製品に欠陥が生じない保証はありません。万が一重大な製品の欠陥が発生した場合、多額の損害賠償負担や同社グループの信用失墜を招き、経営に大きな影響を与える可能性があります。
■(4) 原材料価格の高騰と調達リスク
生産に必要な原材料は複数の取引先から購入しリスク分散を図っていますが、取引先の都合による供給不足や、原油価格の上昇・需給バランスの崩れによる価格高騰が生じた場合、生産縮小やコスト上昇につながる恐れがあります。



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