※本記事は、株式会社パイロットコーポレーションの有価証券報告書(第24期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パイロットコーポレーションってどんな会社?
筆記具等をはじめとしたステイショナリー用品や玩具等の製造・販売を主力事業としてグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1918年に並木製作所として設立され、万年筆の製造・販売を開始しました。1938年にパイロット萬年筆へ改称し、2002年にパイロットグループホールディングスを設立して東京証券取引所市場第一部に上場しました。2003年に現在の社名であるパイロットコーポレーションへ改称しています。
現在の従業員数は連結で3,175名、単体で1,092名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位の株主も同様に信託銀行および金融機関が占めており、安定した機関投資家を中心とする株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.73% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.69% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.61% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は藤﨑文男氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤﨑文男 | 代表取締役社長 | 1984年パイロット萬年筆入社。経営企画室長、執行役員等を経て、2024年3月より現職。 |
| 小平岳志 | 代表取締役 | 1985年パイロット萬年筆入社。平塚事業所製造部長、執行役員等を経て、2025年3月より現職。 |
| 横山和彦 | 取締役 | 1983年パイロット萬年筆入社。東北支社長、執行役員等を経て、2021年3月より現職。 |
| 畑野且次 | 取締役 | 1984年パイロット萬年筆入社。企画業務部長、執行役員等を経て、2022年3月より現職。 |
| 雜村吉浩 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年パイロット萬年筆入社。経理部長、常勤監査役を経て、2022年3月より現職。 |
社外取締役は、村松昌信氏(仰星税理士法人代表社員)、柴田美鈴氏(NS綜合法律事務所パートナー弁護士)、河野弘氏(元ソニーマーケティング社長)、神山敏蔵氏(税理士法人神山会計代表社員)、藤田嗣潔氏(永田町法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。
■日本
主力となるステイショナリー用品のほか、玩具や貴金属アクセサリー、セラミックス部品などの産業資材を国内市場および一部海外に向けて提供しています。一般消費者や企業などを幅広い顧客層としています。
収益源は、文具店や量販店などを通じた製品の販売代金です。ステイショナリー用品の製造はパイロットコーポレーションおよびパイロットインキが行い、同社が販売を統括しています。
■米州
米国やブラジルなどの米州地域において、筆記具を中心としたステイショナリー用品を現地市場の消費者や小売店などに向けて提供しています。主力のゲルインキボールペンなどが人気を集めています。
収益源は、現地における筆記具などの製品販売代金です。事業の運営および製造・販売は、Pilot Corporation of AmericaやPilot Pen do Brasil S/A.などの子会社が担っています。
■欧州
フランスやドイツをはじめとする欧州地域において、環境に配慮した再生プラスチック使用のボールペンや多色ボールペンなどの筆記具を提供しています。現地の一般消費者が主なターゲットです。
収益源は、欧州市場における筆記具の販売代金です。事業の運営は、Pilot Corporation of Europe S.A.S.やPilot Pen (Deutschland) GmbHなどの子会社が行っています。
■アジア
中国、台湾、インドなどのアジア地域において、ゲルインキボールペンなどの筆記具を提供しています。経済成長が続く現地の消費者や学生などを主な顧客層として事業を展開しています。
収益源は、アジア各国における筆記具を中心とした製品の販売代金です。事業の運営および製造・販売は、Pilot Pen (Shenzhen) Co., Ltd.などの現地子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は、1,031億円から1,264億円へと順調に拡大傾向にあります。一方で経常利益は200億円前後で安定して推移しており、利益率は低下傾向にあります。海外での販売増や為替の影響が売上に寄与する一方、コスト増が利益を圧迫しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,031億円 | 1,129億円 | 1,186億円 | 1,262億円 | 1,264億円 |
| 経常利益 | 204億円 | 226億円 | 208億円 | 201億円 | 179億円 |
| 利益率(%) | 19.8% | 20.1% | 17.6% | 15.9% | 14.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 142億円 | 174億円 | 118億円 | 124億円 | 94億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で横ばいを維持しているものの、売上原価や販売費及び一般管理費の増加により、売上総利益および営業利益ともに減少しています。コスト増が収益性を押し下げる要因となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,262億円 | 1,264億円 |
| 売上総利益 | 647億円 | 644億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.3% | 51.0% |
| 営業利益 | 178億円 | 166億円 |
| 営業利益率(%) | 14.1% | 13.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が123億円(構成比26%)、広告宣伝費及び販売促進費が87億円(同18%)を占めています。また、売上原価は619億円で、売上高に対する原価率は49%となっています。
■(3) セグメント収益
主力である米州および国内市場の売上は前期から微減となった一方、欧州やアジア市場においては売上が拡大しています。特にアジア地域は販売好調で増収となりましたが、国内や欧州での苦戦が全体に影響しました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 395億円 | 375億円 |
| 米州 | 389億円 | 381億円 |
| 欧州 | 269億円 | 274億円 |
| アジア | 208億円 | 234億円 |
| 連結(合計) | 1,262億円 | 1,264億円 |
同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を賄う「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 227億円 | 170億円 |
| 投資CF | -111億円 | -111億円 |
| 財務CF | -110億円 | -80億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、存在意義を改めて定義し、揺るがない経営の志とするために、グループパーパスとして「人と創造力をつなぐ。」を掲げています。100年にわたり筆記具を作り、販売することで、創造力の一端である「書く」を通じ、世界中の人々が思索し、記し、描き、伝え、残すことを支え続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、創業の精神であり行動指針である「社是」を通じた実践を重視しています。パーパスを体現している従業員を表彰する制度の運用や、部門でのパーパスミーティングを実施することで、従業員自らがパーパスを中心に置いて新しいことへ挑戦する風土改革を推進し、多様な人材が自律的に活躍できる文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「世界中の書く、を支えながら、書く、以外の領域でも人と社会・文化の支えとなる」という2030年ビジョンの実現に向けて、「2025-2027中期経営計画」を策定しています。持続的な成長と企業価値の向上を目指し、以下の財務目標や還元方針を掲げています。
・売上高、営業利益率、ROEの数値目標の再設定
・総還元性向70%以上(配当及び自己株式取得による還元強化)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、2025-2027中期経営計画のもと、「変化に適応するグループ経営基盤の強化」を進めるフェーズと定め、「絶え間なき進化」を遂げるための戦略を実行しています。具体的には、主力である筆記具事業の海外展開強化を進めるとともに、新たな事業を創出するための非筆記具事業の体制強化、アライアンスパートナーの開拓、そして持続可能なグループ経営の推進に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長のために人的資本を重要な要素と位置づけています。「自律・挑戦・協働」のカルチャーへの変革を進めるため、多様な人材の獲得、世界で活躍できる自律的で創造力に富んだ人材の育成、従業員エンゲージメントの向上、心身ともに健康に働ける環境の整備という4つの人材戦略を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.5歳 | 18.7年 | 7,531,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 72.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 72.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 66.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定年再雇用制度の活用率(87.5%)、1人当たりの教育研修費(63,000円)、自己啓発実施率(31.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場の変化に関連するリスク
ステイショナリー用品事業において、競合他社との競争激化や販売チャネルの再編等により市場シェアが低下した場合や、製品が陳腐化するような新技術が出現した場合、売上の減少や棚卸資産の評価損の計上が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場の変動に関連するリスク
同社は事業をグローバルに展開しており、海外での売上割合が非常に高くなっています。そのため、在外子会社の外貨建財務諸表の円換算時や外貨建て決済において、想定の範囲を超える為替相場の変動が生じた場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料等調達に関連するリスク
主要原材料である金属や樹脂等の価格は、市況や為替の変動による影響を受けます。これらに予期せぬ高騰が生じた場合や、特定の調達先への依存等により国際情勢や災害の影響で供給に支障をきたした場合、生産活動が阻害され業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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