※本記事は、トラスコ中山株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月18日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
トラスコ中山は、製造業や建設関連業向けの卸売、ネット通販企業向けの販売、ホームセンターやプロショップ向けの販売、および海外市場での販売を主要な事業としています。作業用品、ハンドツール、物流保管用品、研究管理用品など多岐にわたる商品を国内外の顧客に提供しています。
単体従業員数は1,756名、連結従業員数は1,809名です。セグメントはファクトリールート、eビジネスルート、ホームセンタールート、海外ルート、全社(共通)の5つです。
国内においてはトラスコ中山が、製造業、建設関連業、ネット通販企業、ホームセンター、プロショップなど多様なルートを通じて、作業用品や物流保管用品などを国内外の顧客に販売しています。海外では、タイとインドネシアの連結子会社が卸売業を展開しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
トラスコ中山は、日本のモノづくりを支えるプロツールサプライヤーとして、安定した事業基盤を持つ企業です。事業を通じて社会価値と企業価値の両方を生み出す「TSV」を掲げ、従業員の働きやすさや定着にも配慮していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が比較的長く、平均年齢も安定している傾向が見られます。これは、長期的なキャリア形成が可能な環境であり、人材が定着しやすい職場であることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,526,000円 |
| 平均勤続年数 | 14.7年 |
| 平均年齢 | 39.3歳 |
| 単体従業員数 | 1,756人 |
| 連結従業員数 | 1,809人 |
| 単体のグループ内比率 | 97.1% |
同社は令和7年より、確定拠出型の制度として企業型確定拠出年金制度を採用しています(確定拠出型=会社が拠出した資金を従業員が運用する)。なお、退職一時金の有無や支給条件、従業員ごとの会社拠出額などは、有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
人材戦略に関する記載はありません。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。女性活躍推進法・育児介護休業法に基づき算出されており、男女の賃金差異の理由として、女性の勤続年数が男性に比べて短いこと、平均年齢が男性に比べて低いこと、管理職に占める女性社員の割合が低いこと、世帯主に対して支給する手当の影響が挙げられています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 8.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 32.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全従業員) | 55.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正社員) | 76.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(契約社員・パートタイマー) | 81.2% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
トラスコ中山グループは、日本のモノづくりを支えるプラットフォーマーを目指し、多様な販売ルートを通じて事業を展開しています。お客様や社会から常に必要とされる企業であり続けるため、サプライチェーン全体の最適化・合理化にも取り組んでいます。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、トラスコ中山と複数の関係会社で構成されており、主に4つの販売ルートを通じて事業を展開しています。関連会社が製造した作業用品や物流保管用品などを仕入れ、国内外の得意先へ販売することで収益を上げています。海外の子会社も、卸売業として現地で販売活動を行っています。
同社グループの収益モデルは、特定の顧客に集中することなく、幅広い得意先との取引を通じて安定した収益基盤を築いています。また、売上高の大部分は日本国内の外部顧客によるものであり、国内市場が事業の中心となっています。
ファクトリールート
製造業や建設関連業などを主な顧客とする卸売事業です。全国の物流センターや在庫保有支店で市場ニーズに合わせた在庫拡充を進め、顧客の利便性向上に努めています。ユーザー様の工場に工具を設置する「MROストッカー」や、ユーザー様へ商品を直接届ける「ユーザー様直送サービス」などを強化し、収益を得ています。主に環境安全用品、ハンドツール、作業用品の売上が増加する傾向にあります。
eビジネスルート
ネット通販企業などを対象とした販売事業です。多数の仕入先との協業を基軸に、豊富な商品データベースと仕入先の在庫データを顧客システムと連携させ、商流集約を強化しています。高速自動梱包出荷ライン「I-Pack®」を導入した物流センターを活用し、納期短縮や納期精度向上に努めることで収益を上げています。主に環境安全用品やハンドツールの売上が増加する傾向にあります。
ホームセンタールート
ホームセンターやプロショップなどを対象とした販売事業です。建築現場で働くユーザー様をターゲットとしたプロショップへの売場提案や、商流集約に向けた営業活動を強化しています。ホームセンター各社のEC事業強化に対応し、同社グループの在庫と物流機器を活用したサービスを積極的に提案することで収益を得ています。作業用品や環境安全用品の受注が増加する傾向にあります。
海外ルート
連結子会社の業績と諸外国向けの販売を含む事業です。連結子会社では、現地の市場ニーズに即した在庫を積極的に投入し、在庫保有のメリットを活かした営業活動を展開しています。現地得意先や仕入先の開拓を進めることで販売活動を強化し、収益を得ています。海外部では、得意先への帳合変更や新商品、新規メーカーの提案を中心とした協業により取引を拡大しています。
| セグメント | 売上高(2024年12月期) | 売上高(2025年12月期) |
|---|---|---|
| ファクトリールート | 1,969億円 | 2,112億円 |
| eビジネスルート | 682億円 | 770億円 |
| ホームセンタールート | 268億円 | 284億円 |
| 海外ルート | 30.9億円 | 34.6億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高と経常利益は一貫して増加傾向を示しています。当連結会計年度においても、売上高と経常利益は前期に比べて増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に旧大阪本社ビルの売却に伴う特別利益を計上した影響により、当連結会計年度は前期比でわずかに減少しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,268億円 | 2,465億円 | 2,682億円 | 2,950億円 | 3,200億円 |
| 経常利益 | 136億円 | 151億円 | 187億円 | 201億円 | 225億円 |
| 経常利益率 | 6.0% | 6.1% | 7.0% | 6.8% | 7.0% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 116億円 | 106億円 | 123億円 | 161億円 | 159億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 175.86 | 161.15 | 186.05 | 244.09 | 240.84 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高と営業利益は、当連結会計年度において前期から増加しています。これは、組織全体の効率化が進み、従業員一人ひとりの稼ぐ力が高まっている傾向を示しています。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 173.1百万円 | 176.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 11.7百万円 | 12.6百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
トラスコ中山グループは、本業で得た資金を積極的に成長投資に回しているフェーズにあります。強固な財務基盤を維持しつつ、将来に向けた事業拡大を進めている状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループは、自己資本比率がプライム市場の製造業平均と比較して高い水準を維持しており、安定した財務基盤を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均に近い水準で推移しています。手元資金も十分に確保されており、事業運営の安定性につながっています。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 1,740億円 | 1,863億円 |
| 自己資本比率 | 64.4% | 60.4% |
| ROE(自己資本利益率) | 9.6% | 8.8% |
| 現金及び預金 | 414億円 | 476億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュフローはプラスとなっており、本業で安定的に資金を生み出している状況です。これは、税金等調整前当期純利益の計上や仕入債務の増加があった一方で、棚卸資産や売上債権の増加、法人税等の支払額があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得や無形固定資産の取得による支出が主な要因となり、マイナスとなっています。これは、物流センター移転にかかる工事費やソフトウエア構築費など、将来の成長に向けた積極的な投資が行われていることを示しています。
財務活動によるキャッシュフローは、長期借入れによる収入が長期借入金の返済や配当金の支払いを上回ったため、プラスとなっています。結果として、フリーキャッシュフローはマイナスとなっており、本業で生み出した資金を上回る規模で成長投資を行っている状況です。このような資金の流れは、同社グループが事業拡大と競争力強化に注力していることを示しており、将来的な雇用や給与の安定性・成長性につながる可能性があります。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 130.2億円 | 81.8億円 |
| 投資CF | △182.7億円 | △215.7億円 |
| 財務CF | 32.4億円 | 196.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △52.5億円 | △133.8億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、製造業を中心とした経済動向に予想外の変動があった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があるとしています。また、電気自動車の普及などにより市場の需要が大きく変化し、既存の商材やサプライチェーンの見直しが迫られるような根本的な産業構造の変化が起きた場合も、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識しています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、少子高齢化や労働人口の減少等により、有能な人材の確保及び育成が計画通り進まなかった場合、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があるとしています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
トラスコ中山は、「がんばれ!!日本のモノづくり」を企業メッセージに掲げ、モノづくり現場に貢献する卸売業として事業を展開しています。同社グループは、「人や社会のお役に立ててこそ事業であり、企業である」というこころざしを大切にしています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
トラスコ中山は、「がんばれ!!日本のモノづくり」を企業メッセージとし、製造業や建設・建築現場で必要とされる“PRO TOOL”[間接資材]やプライベート・ブランド商品“TRUSCO”を取り扱う卸売業として、モノづくり現場に貢献することを経営の基本方針としています。プロツールサプライヤーとして、いつの時代も日本のモノづくりのお役に立ち続ける企業でありたいと考えています。
また、「人や社会のお役に立ててこそ事業であり、企業である」というこころざしのもと、事業を通じて社会価値と企業価値の両方を生み出し、社会課題の解決や持続可能な地域社会への貢献を目指しています。お客様や社会から必要とされる企業を目指すことを掲げています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
トラスコ中山は、「人や社会のお役に立ててこそ事業であり、企業である」というこころざしと、「問屋を極める、究める」という指針を念頭に置いています。社員が安心して、安定して、長く働き続けられる企業でありたい、笑顔の絶えない会社でありたいという「ありたい姿」を掲げています。
独創的な発想で活躍できる人材を育てるため、部門を超えたジョブローテーションや多様なコース選択、各種チャレンジ制度を導入しています。評価制度には、上司だけでなく周囲の人が相互に評価しあうオープンジャッジシステム(OJS=360度評価)が採用されています。サステナビリティに関する取り組みでは、「やさしさ、未来へ」というキャッチフレーズのもと、TRUSCO「やさしさ、未来へ」プロジェクトを推進しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
トラスコ中山は、モノづくり現場における少量多品種の商品ニーズの高まりに対応するため、物流やデジタル分野への継続的な投資を強化しています。商品、物流、販売、デジタル、人材の5つの経営戦略を着実に実施することを企業価値拡大の重要な要素と考えています。
特に人材戦略では、個人の能力を最大限に引き出し、長く安心して働ける環境づくりと独自の人事制度の実行を通じて、一人ひとりの成長と会社の成長につなげることを目指しています。デジタル戦略では、サプライチェーン全体の利便性向上のため、AIやロボット活用をはじめとするデジタル変革を加速し、システム基盤づくりを進めています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
トラスコ中山は監査役会設置会社として、社外取締役からの意見も取り入れながら、的確な意思決定と迅速な業務執行を行う体制を構築しています。これにより、適正な監督と監視を可能とし、コーポレート・ガバナンスの充実を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
トラスコ中山の株主構成を見ると、筆頭株主は株式会社NSホールディングスであり、事業会社が上位に複数名を連ねる資本構成となっています。公益財団法人中山視覚福祉財団や大同商事といった財団や事業会社も上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社NSホールディングス | 12.01% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.84% |
| 公益財団法人中山視覚福祉財団 | 6.60% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.75% |
| 大同商事 | 5.23% |
なお、大量保有報告書(変更報告書)において、みずほ証券及びその共同保有者であるアセットマネジメントOneが令和7年12月31日現在で株式を所有している旨が記載されていますが、同社として当事業年度末における実質所有株式数の確認ができないため、大株主の状況には含められていません。
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は8名(男性7名・女性1名)で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は中山哲也氏が務めています。社外取締役比率は0.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中山 哲也 | 代表取締役社長 | 昭和56年3月同社入社、昭和59年10月取締役、平成6年12月代表取締役社長より現職。 |
| 中井 一雄 | 取締役 商品本部 本部長 | 平成5年4月同社入社、平成31年3月取締役 経営管理本部 本部長、令和6年11月取締役 商品本部 本部長より現職。 |
| 数見 篤 | 取締役 経営管理本部 本部長 兼デジタル戦略本部 本部長 兼オレンジブック本部 本部長 | 平成5年4月同社入社、平成31年3月取締役 情報システム本部 本部長、令和6年4月取締役 経営管理本部 本部長 兼デジタル戦略本部 本部長 兼オレンジブック本部 本部長より現職。 |
| 中山 達也 | 取締役 物流本部 本部長 | 平成25年4月同社入社、令和5年3月取締役 商品本部 本部長、令和6年11月取締役 物流本部 本部長より現職。 |
社外取締役は、大田梨沙氏(ダイナミックツール代表取締役)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役1名を選任しています。社外取締役は、株主・投資家目線からの助言に加え、公正かつ客観的な見地からの助言を行っています。また、社外監査役2名が独立・公正な立場で取締役の職務執行に対する有効性及び効率性の検証を行っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
トラスコ中山の役員報酬は、固定報酬と役員賞与で構成されています。固定報酬は各役員の職位や考課等に応じて支給され、役員賞与は親会社株主に帰属する当期純利益が計上された場合に、その3%を上限として支給されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 4名 | 3.8億円 | 95.2百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 22百万円 | 22.0百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 13百万円 | 3.2百万円 |
| 社外監査役 | 3名 | 17百万円 | 5.7百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
個人別報酬が開示されている役員は、中山哲也氏(2.39億円)です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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